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ノウハウ 公正証書とは?契約時のメリットや効力、作成方法を企業目線で解説!

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年10月5日

公正証書とは?契約時のメリットや効力、作成方法を企業目線で解説!

公正証書とは?契約時のメリットや効力、作成方法を企業目線で解説!

企業活動では「取引先が売買代金を支払わない」「株主総会の決議の効力を争われる」など、さまざまなトラブルが起こるリスクがあります。そんなとき、公正証書があるとトラブルの解決に役立ちます。

 

この記事では、「公正証書とは何か」「企業にとってどんなメリットがあるのか」「公正証書の作成方法」について解説します。

 

 

 

公正証書とは?

公正証書には通常の契約書等にはない、さまざまな法的効力を有しているので、契約におけるトラブルの解決や予防に有効です。そのため、ビジネスでもさまざまな場面で公正証書が活用されています。まずは、公正証書とは何かについてご説明します。

 

公正証書は「公証人がその内容を証明する書類」である

公正証書とは、契約の成立など人と人との間における権利・義務に関する一定の事項について、公証人法に基づき公証人が作成し、その内容を証明する公文書のことです。

 

契約書は当事者だけで作成した文書でも法律上有効ですが、ときに相手方から「自分が署名・押印したものではない」「そんな約束はしていない」などと主張され、契約の効力が争われることも少なくありません。

 

その点、契約書を公正証書にしておけば契約者が本人であることと、その本人が確かに記載内容に則した契約を結んだことを公証人が証明してくれます。それによって、契約に関するトラブルを防止することにつながります。

 

公正証書は、当事者が公証役場へ出頭して、公証人の面前で作成されます。公証役場は法務省が管轄する役所であり、各都道府県に最低1箇所は設置されています。

 

公証人とは、原則として裁判官や検察官などを長く務めた人など法律に関する学識経験が豊富な人の中から、法務大臣によって任命される公務員(正確には「準公務員」)です。

 

売買契約や不動産の賃貸借契約も公正証書化できる

公正証書にはさまざまな種類がありますが、企業活動で重要となる公正証書としては、主に以下のものが挙げられます。

 

・売買契約公正証書

・土地建物賃貸借契約公正証書

・事実実験公正証書

 

売買契約や土地建物賃貸借契約では、目的物やその対価としての代金・賃料の金額、支払い方法、目的物の引き渡し時期、目的物が滅失したときの危険負担、契約の解除事由などさまざまな条件を明確に決める必要があります。

 

当事者が合意すれば、事柄に関係なくどんな契約内容でも公正証書にでき、公正証書に記載した内容は公証人によって証明されます。

 

事実実験公正証書とは、公証人が五感の作用によって直接体験・認識した事実に基づいて作成する公正証書のことです。事実証明ができれば他人とのトラブルを解決または防止できるような場合で、他にめぼしい証拠がない場合に事実実験公正証書が作成されることが多いです。

 

一例として、特許権侵害の差し止めや損害賠償を請求する際の証拠を確保するために、特許権が侵害されている状況を公正証書化します。また、株主総会の議事進行について後にトラブルとなることを防止するために、議事の進行状況を公正証書化するようなケースが挙げられます。

 

その他に、私生活においても以下のような金銭の支払いが生じるときに公正証書が作成されることが多くあります。

 

・金銭消費貸借契約を結ぶとき

・遺言書を作成するとき

・離婚時に財産分与、慰謝料、養育費などの支払いを取り決めるとき

 

公正証書の効力と、ビジネスで公正証書を作成するメリット

公正証書には、当事者だけで作成した契約書等にはない法的な効力が認められています。そのため、ビジネスで公正証書を作成するメリットは大きいといえます。ここでは、公正証書の効力とビジネスにおいて作成するメリットを詳細に解説します。

 

文書の成立を巡るトラブルが防止できる

「文書の成立」とは、その文書が作成名義人の意思によって作成されたものかどうかという疑念を、間違いなく本人の意思で作成された文書であるという事実を証明するものです。契約書など法律行為の内容が記載された書面を「処分証書」と呼称しますが、処分証書では成立の真正を立証することが非常に重要となります。

 

当事者だけで作成された契約書の場合、作成名義人の署名・押印があったとしても、その人が「自分が署名・押印したものではない」「誰かが偽造した契約書だ」と反論することがあります。公正証書があれば、前述したような文書の成立を巡るトラブルを防止することが可能です。なぜなら、公正証書を作成する際には公証人が当事者の実印と印鑑証明書などで、必ず本人確認を行うからです。

 

それに、公正証書は公務員である公証人が職務上作成したものなので、真正に成立した公文書であることが民事訴訟法によって推定されています。要するに、その文書が作成名義人の意思に基づいた上で作成に至ったと法律上推定されるのです。

 

そうすると、「その文書は自分の意思で作成してない」と主張する人は、そのことを自分で立証しなければなりません。ないという事柄の証明は非常に困難な場合が大半であるため、公正証書を作成すれば、高確率で文書の成立を巡るトラブルが防止できるといえます。

 

▶関連記事:契約の成立とは?基礎から実務までまとめて解説

事実関係を認める証拠能力が高い

公正証書は公証人が立ち会って作成するため、「記載のある事実関係は真実である」という高い証拠能力が認められます。

 

法律行為の内容ではなく、作成者の見聞きした内容や意見等が記載された書面を「報告証書」といいます。報告証書は、処分証書のように法律行為の内容に基づいた契約の成立そのものを立証するのではなく、記載された事実関係が真実かどうかを問われるものです。

 

株主総会の議事録等のように事実関係が記載された書面については、作成者が「総会は適法、適切に進行した」と記載しても、それだけでは内容の真実性を裏づける効力はありません。

 

しかし、公正証書には公務員である公証人が中立公平な立場で立ち会って見分した事実関係が記載されているので、一般的にその内容は信用性の高いものとなります。そのため、信憑性が保証され高い証明力があるのです。

 

訴訟を経ない強制執行が可能になる

金銭の支払いに関する権利・義務が記載された公正証書では、「強制執行認諾文言」を付しておけば債権者は訴訟を経ずに強制執行を申し立てることが可能となります。

 

強制執行の申し立ては、公的に確定している債権・債務を証明する「債務名義」がなければ認められません。通常はまず債権者が裁判所に訴訟を提起して勝訴判決を得て、その判決が確定するのを待つ必要があります。確定した判決書が債務名義となります。

 

裁判での訴訟をするにはそれなりの労力と時間、費用がかかります。判決が確定するまでの間に相手方の支払い能力が悪化すると、結局債権を回収できなくなるというリスクもあります。

 

その点、強制執行認諾文言付き公正証書を作成していれば、それが債務名義となります。わざわざ訴訟をしなくても、公正証書を用いて裁判所へ強制執行を申し立てることを可能にし、相手方の財産の差押えも滞りなく遂行できるのです。

 

契約の不履行を防ぐ心理的効果が期待できる

公正証書を作成していれば、強制執行を申し立てなくても、相手方の契約不履行の可能性を下げることが期待できます。

 

公正証書を作成する際には、当事者が公証人の面前で具体的な契約内容を確認した上、その疎明資料や本人確認資料も公証人に提供するという厳正な手続きが行われます。金銭債務に関する公正証書には、約束どおりに支払わなければ訴訟を経ずに差押えを受けるという執行力もあります。

 

これらの要素が当事者双方に約束を厳守することを促し、「約束どおりに代金を支払わなければ大変なことになる」といった心理的効果を生むので、契約の不履行を防ぐことにつながります。

 

原本は公証役場において安全に保管される

公正証書の原本は、公証役場で保管されます。保管期間は20年間であり、その間の内容の改ざんや紛失、盗難などのおそれがありません。通常の契約書の場合は原本2通を作成し、当事者双方がそれぞれ1通ずつを保管します。この場合、保管状況によっては紛失や盗難のおそれがあります。

 

原本が手元からなくなってしまうと、相手方が契約の履行を拒んだときに請求しようとしても証拠がないことになります。相手方が保管している原本を提示させたとしても、それが改ざんされていれば誤りを証明することは困難です。

 

その点、公正証書の場合、原本は1通のみ作成されて公証役場で保管されるので、証拠が安全に保管されることになります。当事者には正本や謄本が交付されますが、万が一、それを紛失した場合にも公証役場で再交付が受けられます。

 

企業が公正証書を作成するべき場面の例

企業としては、どのような場面で公正証書を作成すべきなのでしょうか。

 

ここでは、企業活動において公正証書を作成するメリットが大きい主な場面について、作成すべき理由やどんな公正証書を作成すればよいのか、それによってどんな効果が得られるかを解説します。

 

取引先との売買契約時

公正証書が重要な意味を持つ典型的な場面として、取引先と売買契約をするときが挙げられます。その理由は、商品を販売する以上は相手方から確実に代金を回収しなければ自社に損害が生じるからです。特に、相手方の代金支払いに不安がある場合には公正証書を作成すべきといえます。売買契約公正証書に記載すべき主な重要事項は、以下のとおりです。

 

・契約の目的物

・代金の額と支払い方法

・所有権が買主に移転するタイミング

・引き渡しの時期と場所

・強制執行認諾文言

 

特に重要なのは、最後の「強制執行認諾文言」です。具体的には、「債務不履行の場合には直ちに強制執行に服することを認諾する」という文言を記載した条項を公正証書に盛り込みます。強制執行認諾文言を盛り込むには相手方の同意が必要なことに注意しましょう。

 

売買契約公正証書に強制執行認諾文言を付しておくことで、万が一相手方が約束どおりに代金を支払わない場合には、訴訟を行わずして強制執行を申し立てることが可能となります。相手方の財産が散逸する前に迅速に差押えをすることができるので、代金を回収できる確実性が高まります。また、相手方が差押えを回避するために誠実に債務を履行するという心理的効果も期待できます。

 

▶関連記事:売買契約書とは?種類や項目について解説

オフィスなど不動産の賃貸借契約時

企業が使用するオフィスを借りるときなど、不動産の賃貸借系客を結ぶときも公正証書を作成する必要性が高いといえます。貸し手が公正証書の作成を求めてくる場面が多いですが、借り手にとっても公正証書で契約内容を明確にしておくことは重要です。特に、賃料が高額になりやすい都心部のオフィス賃貸借契約などでは、トラブルを防ぐために公正証書を作成しておくべきでしょう。

 

なお、事業用借地権設定契約の場合は公正証書を作成しなければならないことが借地借家法で定められているので注意が必要です。

 

不動産賃貸借契約公正証書に記載すべき主な重要事項は、以下のとおりです。

 

・賃貸借期間

・賃料

・賃料増額・減額事由

・使用目的

・契約の解除理由

・法的更新と合意更新

・更新料や権利金・敷金・補償金の額

・原状回復義務の範囲

・明け渡しの時期と方法

 

以上の各条項について、借り手にとって不当に不利な内容となっていないかを確認しておく必要があります。その他にも、売買契約の場合と同じく強制執行認諾文言が記載されることが多いです。記載された場合、万が一賃料の滞納が一定期間続くと訴訟を経ずに財産の差押えを受けてしまうので、注意しましょう。

 

株主総会における議事録作成時

株主総会の議事録も、「事実実験公正証書」で作成しておくべき場合があります。中小企業の場合はそこまでの必要性がないことも多いですが、決議の成立や内容が争われる可能性があるときには、後日の紛争を防止するための証拠とするために公正証書を作成するのが有効です。

 

株主総会議事録の事実実験公正証書を作成するには、公証人に株主総会の会場に出張してもらい、議事の進行を見聞きしてもらって公正証書を記載してもらうことになります。ただ、公証人は議題に関する専門家であるとは限りません。そのため、正確な公正証書を作成するためには、事前の打ち合わせをしっかり行って内容を理解してもらうことが重要となります。

 

株主総会ではそもそも議事録を作成することが義務づけられていますが、通常の議事録は証明力が高いとはいえません。公証人が見聞きした事実実験証書にしておくことで、証拠能力を高めることができます。

 

議事や進行の手続きが適正であったことを公正証書で証明できるので、仮に後日紛争が生じたとしても、決議の成立や内容を立証することが可能となります。

 

▶関連記事:株主総会議事録とは?必須の記載事項など書き方の注意点【例文付き】

知っておきたい、公正証書作成時の注意点

公正証書の作成には、いくつかのルールがあります。実際に公正証書を作成する際には、ある程度の時間や労力、費用も必要となります。そのため、あらゆる場面で公正証書を作成することが得策とまではいえません。ここでは、企業の担当者が知っておきたい、公正証書作成時の注意点をご紹介します。

 

そもそも公正証書の作成が必要かどうかはよく検討を

強制執行認諾文言付き公正証書を作成することで、訴訟にかかる時間・労力・費用を削減することはできますが、それでも公正証書の作成にはある程度の時間・労力・費用を要します。そのため、費用対効果の面から、そもそも公正証書の作成が必要かどうかをよく検討すべきといえます。

 

たとえば、売買契約で債権額が60万円以下の場合は、万が一相手方が代金を支払わない場合には少額訴訟も利用できます。少額訴訟では通常の訴訟よりも時間・労力・費用の負担が大幅に軽減されるので、トラブルの解決手段として有効です。債権が少額で、信頼できる取引先が相手の場合は、公正証書は必要ないということもあるでしょう。

 

万が一のトラブルに備えることは必要ですが、費用対効果の面からリスクの大小を判断することも大切です。

 

契約に関する公正証書の作成には双方の出頭が必要

契約には相手方がいるので、公正証書を作成する際には当事者双方が公証役場に出頭しなければなりません。法人の場合は代表取締役の出頭が求められます。委任状があれば代理人の出頭も可能ですが、一人の代理人が当事者双方を代理することはできません。必ず、双方から当事者本人または代理人が出頭することが肝要です。

 

そのため、相手方の協力が得られなければ公正証書を作成することはできません。相手方との関係性が悪化した後や、トラブルが発生してからでは協力を求めることは難しくなります。公正証書を作成するなら、相手方との関係が良好なうちに話し合って合意し、協力してもらうよう約束しておくことが大切です。

 

公正証書の作成にかかる期間

公正証書を作成するには、ある程度の期間がかかります。仮に必要書類を不備なく揃えたとしても、即日公正証書ができるわけではありません。

 

通常、まずは公証役場へ申し込みをして、公証人と打ち合わせを行い、その後に予約した日時に当事者双方が出頭して公正証書が作成されます。この手続きは早ければ数日で完結させることは可能ですが、平均して2週間前後かかることが多いです。公証役場の混雑状況によっては、さらに時間を要することもあります。

 

特に急ぐ場合には複数の公証役場へ作成日程を問い合わせるのもひとつの方法です。公証役場には特に管轄は定められていないので、遠方の公証役場で公正証書を作成しても問題ありません。早期に対応してもらえるのであれば、あえて遠方の公証役場を利用するのもよいでしょう。

 

公正証書作成のために必要な費用

公正証書を作成するためには、意外に高額の費用が必要となることがあります。費用対効果の面から公正証書作成の要否を判断するためにも、どれくらいの費用がかかるのかを知っておく必要があります。

 

ここでは、公正証書を作成する際に必要な費用について解説します。

 

公証役場へ支払う手数料

公正証書は無料で作成できるものではなく、公証役場へ手数料を支払う必要があります。契約などの法律行為にかかる公正証書については、原則として目的価額に応じて公証人手数料令第9条別表により以下のように定められています。

 

目的物の価額

手数料

100万円以下

                                          5000円

100万円超~200万円以下

                                          7000円

200万円超~500万円以下

                                        11000円

500万円超~1000万円以下

                                        17000円

1000万円超~3000万円以下

                                        23000円

3000万円超~5000万円以下

                                        29000円

5000万円超~1億円以下

                                        43000円

1億円超~3億円以下

43000円に超過額5000万円までごとに13000円を加算

3億円超~10億円以下

95000円に超過額5000万円までごとに11000円を加算

10億円超

249000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算

(参照元:https://www.koshonin.gr.jp/business/b10)

 

たとえば、金銭消費貸借契約で乙が甲に300万円の借金を返済する公正証書を作成する場合には、11000円の手数料が必要となります。

 

事実実験公正証書については、公証人手数料令第26条により、公証人が事実実験と証書作成に要した時間について1時間までごとに11000円の手数料がかかります。ただし、休日や午後7時以降に事実実験が行われ場合には、手数料が50%割増となります。

 

たとえば、公証人が株主総会を3時間聴講し、証書作成に1時間かかったとすれば、合計4時間となるので44000円の手数料が必要なります(株主総会が平日の午後7時までに終了した場合)。

 

【参考】手数料の基準となる「目的価額」の考え方

契約書を公正証書にするための手数料を計算する際には、「目的価額」の意味を知っておかなければなりません。目的価額とは、その法律行為によって債権者が得られる利益と債務者が負う不利益を金銭的に評価した金額のことです。

 

贈与契約のように債務者のみが一方的に義務を負う場合は、その目的物の価額が目的価額となります。それに対して、交換契約のように当事者双方が相互に義務を負担する場合には、双方が負担する価額の合計が目的価額となることを念頭に置いておく必要があります。

 

売買契約の場合、売り主は所有権を移転させる義務を負い、買い主は売買代金を支払う義務を負うので、後者に該当します。この場合、売買代金の2倍が目的価額となります。賃貸借契約の場合は、契約期間分の賃料の2倍が目的価額とされます。

 

その他、合わせて必要となる費用の例

公正証書を作成する際には、手数料の他にも以下のような費用が必要となることがあります。

 

・印紙代

・証書代

・弁護士や行政書士に依頼した場合は、その費用

 

売買契約書や土地賃貸契約書については、公正証書にする場合でも契約金額に応じた額の収入印紙を貼付することが必要です。なお、以下の表では公正証書の手数料における「目的価額」とは異なり、契約書に記載された債権額で印紙税額が決まることにご注意ください。

 

記載された契約金額

印紙税額(1通または1冊あたり)

1万円未満

                                非課税

10万円以下

                                200円

10万円超~50万円以下

                                400円

50万円超~100万円以下

                              1000円

100万円超~500万円以下

                              2000円

500万円超~1000万円以下

                                1万円

1000万円超~5000万円以下

                                2万円

5000万円超~1億円以下

                                6万円

1億円超~5億円以下

                              10万円

5億円超~10億円以下

                              20万円

10億円超~50億円以下

                              40万円

50億円超

                              60万円

記載がない場合

                                200円

(参照元:http://www.kouseishousho.jp/hiyou.html)

 

証書代は、公正証書の正本または謄本を受け取る際に要す費用です。金額は、用紙1枚あたり250円です。なお、公証役場で保管される原本についても、用紙が4枚を超える場合には1枚超過するごとに250円の証書代が必要となります。

 

公正証書の作成手続きを弁護士や行政書士に委任した場合の費用は、報酬と日当の合計で3万~5万円程度(消費税別)が目安となります。ただし、弁護士に相手方との交渉も依頼した場合には、さらに着手金や報酬などで数十万円程度がかかることもあります。

 

手順を確認!契約に関する公正証書の作成方法

実際に公正証書を作成する際には、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、契約に関する公正証書を例として、作成する手順をご紹介します。

 

①公正証書を作成する契約内容を固める

まずは、公正証書に記載する契約内容を固めます。公証人は契約内容に関するアドバイスはしてくれないので、事前に当事者間で話し合って契約内容を固め、契約条項の形にして合意を得ておくことが大切です。

 

不十分な話し合いでは、相手方が公証役場に出頭しても「こんな約束はしていない」「この条項は入れないでほしい」などと言い出す可能性があります。そうなると、予定どおりに公正証書を作成することはできません。

 

改めて話し合って合意し、契約条項を固め直した上で再度公証役場にて予約し、公証人との打ち合わせを済ませた後、当事者双方が再び出頭するという二度手間が発生します。これら回避するために、契約内容は事前にしっかりと固めておくようにしましょう。

 

②必要書類を揃える

契約内容が固まったら、必要書類を揃えます。最低限必要となるのは、作成名義人の本人確認が可能な公的資料です。実印と印鑑証明書を用いるのが一般的ですが、運転免許証や個人番号カードなどで本人確認をしてもらうことも可能です。

 

その他にも、公正証書に記載する内容に応じて公証役場から資料の提出を求められることがあります。たとえば、不動産売買や不動産賃貸借の契約書の場合は、不動産の所在地などの表示や権利関係を確認するために登記簿謄本(登記事項証明書)の提出が必要です。また、公証人手数料を算出するために固定資産評価証明書の提出も必要となります。

 

具体的な必要書類は公証人との打ち合わせの際に指示されますが、できれば公証役場へ申し込みの連絡をする際に事前確認した上で、早めに準備するようにしましょう。なお、会社の代表取締役の代理人として法務部の担当者などが公証役場へ出頭する場合は、代表者の資格証明書と委任状が必要となります。

 

③公証役場へ手続きの予約をする

準備が整ったら、事前に公証役場へ連絡し、公正証書を作成したい旨とその契約内容等を伝えて、まずは公証人との打ち合わせのための来訪の予約をとるのが一般的です。打ち合わせの後に公正証書の作成日(当事者が出頭する日)の予約をとることになりますが、状況によっては初回の連絡時に作成日(出頭日)の予約が可能なこともあります。

 

公証人との打ち合わせについても、場合によっては公証役場へメールやFAXで契約文等を送信した上で、公証人との電話連絡によって完了することもあります。

 

なお、公証人手数料も予約時の電話で確認できるので、事前に聞いて準備しておきましょう。必要に応じて、当事者のどちらが費用を負担するのかについても相手方と話し合い、予約日までに合意しておきましょう。

 

④当日、相手方とともに公証役場で手続きを行う

予約当日には、必要書類や費用をすべて持参し、当事者全員が公証役場へ出頭します。公証役場では、まず公証人が本人確認書類の提示を求めて、出頭した人が当事者本人(または代理人本人)であることを確認します。

 

その後、公証人が準備した公正証書の文面を当事者の面前で読み上げるなどして確認を求めます。当事者は公証人の面前で記載内容に間違いがないことを確認し、公正証書の原本に署名・押印します。最後に、公証人が署名・押印することによって公正証書が完成します。

 

完成した公正証書の原本は公証役場に保管され、当事者には正本または謄本が交付されます。公証人手数料は、その場で現金で支払います。

 

なお、公正証書に強制執行認諾文言を付したときは、債務者へ公正証書を送達する手続きが必要です。強制執行手続きを申し立てる際には、債務者が公正証書を受け取った旨を証明しなければならないからです。

 

送達の手続きを郵送で行うと郵便代がかかりますが、公正証書作成日に債務者本人が出頭した場合には、その場で公証人から債務者に公正証書を手渡す「交付送達」という手続きをとってもらうことが可能です。送達手続きをとったら「送達証明書」を受け取り、紛失しないように保管しておきましょう。

 

公正証書の作成は弁護士・行政書士へ依頼するべき?

公正証書の作成手続きに資格は必要ないので、やろうと思えば企業の法務担当者だけでも手続きは可能です。ただし、万が一のトラブルに備えるという性質上、公正証書の記載内容は法律上有利になるものとしなければなりませんし、漏れのない正確な内容を固めておくことも重要です。そのため、公正証書の作成にあたっては専門的な法律知識が必須であるといえます。

 

公証人は、公正証書へ記載される内容の有効性や誤字・誤植などを確認するのみで、記載内容の漏れや契約者本人の勘違いなどを指摘してくれるわけではありません。また、中立公平な立場なので、どのような内容にすれば自社に有利となるかといったアドバイスもなしです。

 

関係法令の調査など下調べには多大な時間を要するため、適切な内容で公正証書を作成するためには専門家に内容をチェックしてもらうなどの助力を得た方が安心できるでしょう。したがって、公正証書を作成するなら、重要な書面であればあるほど弁護士・行政書士に手続きを依頼するか、少なくも相談してアドバイスを受けた方がよいといえます。

まとめ

公正証書は法的な効力が強い公文書であり、ビジネス上のトラブルを回避することに役立ちます。売買契約書を公正証書化しておけば、万が一相手方が代金を支払わない場合には訴訟を経ず、直ちに相手方の財産の差押えをすることで代金を回収することが可能となります。

 

ただし、公正証書を作成するには時間と労力、費用の点で負担もあるので、重要な場面に絞って公正証書を利用するのがよいでしょう。公正証書を上手に活用して、万が一のトラブルに備えていきましょう。

 

▶関連記事:契約リスクとは?リスクの種類と最適なリスクマネジメント方法