ノウハウ 法人向けストレージサービス10選!セキュリティ対策や比較のポイントは?
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年10月1日
法人向けストレージサービス10選!セキュリティ対策や比較のポイントは?
クラウドストレージサービスを導入するにあたって、製品の選び方でお悩みではありませんか。クラウドストレージサービスにもメリットとデメリット、利用上の注意点など、押さえておきたいポイントがあります。
この記事では、おすすめの法人向けストレージサービスとその選び方、製品を比較するポイントなどを解説します。
ストレージサービスとは?
ストレージサービスとは、インターネット上にあるクラウドサーバー上にデータを保存できるサービスで、保存したファイルは他のユーザーと共有できます。テレワークの普及もあり、離れた場所にいるユーザーと大容量データを簡単にやり取りできるストレージサービスに注目が集まっています。
オンライン上でデータを共有できるクラウドサービス
インターネット上のクラウドサーバーを利用してデータを保存するストレージサービスは「オンラインストレージ」「クラウドストレージ」「ファイル共有サービス」などとも呼ばれています。
ストレージサービスの利用では、大容量のハードディスクやサーバーを自社で購入したり保管したりする必要はなく、運営会社が管理する各地のサーバーにデータが分散保存されるため、災害による社屋破損でデータを失うといった最悪の事態を避けることもできます。
ストレージサービスはインターネットに接続すれば社外からでも利用できます。ストレージサービスに保存したファイルは、複数のユーザーで共有して閲覧や編集ができるので、テレワークで業務を効率的に進めるためになくてはならないツールとなりつつあります。
ファイル転送サービスとの違い
大容量のファイルを相手に送る方法としては「ファイル転送サービス」もあります。これは、所定のWebサイトにファイルをあらかじめアップロードして、送信先にそのWebサイトのアドレスをメールなどで伝えてデータをダウンロードしてもらう仕組みです。電子メールに添付できない大容量のファイルを送る方法として普及したサービスで、「宅ふぁいる便」「firestorage」などが有名です。
ファイル転送サービスの場合、一定時間が経過すれば相手がダウンロードしたかどうかに関わらずファイルは自動で消去されます。これに対し、ストレージサービスではファイルを継続的に保存・管理できる点で異なります。
また、ファイル転送サービスでは、ファイルをWEBサイトからダウンロードして各自の端末上で閲覧・編集するものであり、最新のファイルをリアルタイムで共有しているわけではありません。ですから、自分が端末で保存しているファイルが最新の状態がどうか常に確認する必要がありますし、最新のファイルに古い内容のファイルを上書きしてしまうといった作業ミスも起こりがちです。
一方、ストレージサービスなら、互いに利用できるサーバー上でファイル自体を共有するので、すべてのユーザーが常に最新のファイルを扱うことができるのです。
さらに、クラウドストレージサービスでは、保存したファイルやフォルダごとに共有設定を細かく設定できるので、アクセスできるユーザーを限定しやすいのも特徴です。ファイル転送サービスでもパスワードを設定することはできますが、ダウンロード先のURLとパスワードを知っていればファイルを閲覧できるので、セキュリティ面では不安が残ります。このように、セキュリティ面ではクラウドストレージサービスの方がはるかに優れています。
データ容量の増加やテレワークの拡大により需要増
最近ではテレワークの拡大、チャットツールの利用機会増加、技術の進歩に伴うファイルの大容量化なども手伝ってオンラインストレージサービスの需要が増加しています。ストレージサービスなら、日々積み上がる保存データの増加にも対応しやすいのがメリットです。
動画編集なども一般的になり、大容量データの需要は増える一方ですが、ストレージサービスならこういった大容量ファイルでも複数のユーザーで共有して閲覧・編集ができます。
また、SlackやChatwork、Teamsなどチャットツールが業務で使われる機会も増えており、チャットと並行して大容量ファイルをリアルタイムで共有できるストレージサービスの利用拡大を後押ししています。
ストレージサービスの導入メリット
では、ストレージサービス導入の具体的なメリットについて細かく見ていきましょう。
テレワーク下でもファイル共有や共同作業が容易になる
ストレージサービスでは、アクセスが許可されているユーザーなら同じファイルを同時に閲覧・編集できます。インターネット回線があれば遠隔地からでもファイルにアクセスできるため、テレワーク中のスタッフとも常に最新のファイルを共有できますし、メールには添付できないような大容量データも扱えます。
ファイル送受信の手間が不要で、ファイルの内容が最新かどうか確認する必要もないため、テレワーク下の共同作業で業務の効率化が図れる点が大きなメリットです。
バックアップ作業の手間が大幅に減る
データは万が一の事態に備えて定期的にバックアップ作業を行う必要があります。パソコンや自社サーバーにデータを保存している場合には、バックアップも自社で計画的に行わなければならず手間がかかります。
これに対して、ストレージサービスでクラウド上のサーバーに保存されているファイルは自動的にバックアップが行われているため、改めてバックアップ作業をする必要がありません。
中には、自社サーバーに保存したデータのバックアップをクラウド上に自動同期する機能があるサービスもあります。自社サーバーデータのバックアップシステムとしてクラウドストレージサービスの利用を考えている場合には、こういった機能についてよく確認するのがおすすめです。
パソコンやタブレットなどの端末が故障したり、自然災害などで社内に保存しているデータが使えなくなったりするようなアクシデントは予想外のタイミングで起こるものです。こういった場合も、ストレージサービスなら、運営会社が各地に置いたサーバーにデータが保管されているため、素早い復旧が可能になります。
データの管理を一元化できる
ストレージサービス上のデータならどこからでも接続、更新できるので、支社、支店、営業所など複数の拠点がある企業や、テレワークを実施している企業でも、全てのユーザーが常に最新のデータを確認できます。
従来の方法では、それぞれの拠点で最新データを管理しているケースが多く、最新の売り上げなどリアルタイムのデータを知りたいときには各拠点から最新のデータを受け取って集計しなければなりませんでした。これに対し、ストレージサービス上にデータがあれば、最新のデータをまとめて一元管理できるので、情報の共有がしやすくなりますし、ファイルの上書きなどのミスも防ぐことができます。
データ保管にかかるコストが明確になる
ストレージサービスではコスト管理がしやすいことも大きな利点です。
自社サーバーでデータを保管する場合、データ管理やサーバーのメンテナンスに必要な担当者の人件費などが可視化しにくく、月々のコストがいくらになるのかはっきりしない部分があります。
一方、ストレージサービスはたいてい月額制のスタイルを取っており、月々の運用コストが把握しやすく、コスト管理も容易です。ストレージサービスなら機器のメンテナンスや更新なども自社で管理しなくてすむので、その分の人件費が削減できます。
【法人向け】ビジネス利用におすすめのクラウドストレージサービス10選
クラウドストレージサービスにも、個人向けのサービスと、ビジネス利用を想定した法人向けのサービスがあります。ここでは、機能性に富みビジネス利用に適した企業向けのクラウドストレージサービスを紹介します。
OneDrive for Business
Microsoft社の法人向けストレージサービスが「OneDrive for Business」です。
Word、Excel、PowerPointやコミュニケーションツールのTeamsなど、Microsoft社の各種アプリとシームレスに連携できるのが魅力で、これらのアプリを中心にして業務を進めている場合やグループウェアとしてMicrosoft 365を導入している場合におすすめのサービスです。最大100GBまでのファイルの共有が可能で、ファイルの追加はTeamsなどを通して簡単にできます。
スマートフォンなどのモバイル端末からも専用アプリで使えるので、外出先で領収書や名刺などの書類を撮影して保管したいときにも便利です。
Bizストレージファイルシェア
NTTコミュニケーションズ株式会社が運営するストレージサービスです。いわゆるファイル転送サービスとして使える「ファイル送受信」と、ストレージサービスの「共有フォルダー」の2通りを分かりやすい形で提供しています。
「ファイル送受信」ではWebブラウザ上で合計2GB、10ファイルまでファイルを送信できます。ユーザーごとにファイルの送信先を制限する「送信先制限」機能や、上長の承認を受けてからファイル送信する「上長承認」、送信したファイルにアクセスができる期間を設定する「アクセス期間」など、セキュリティ面にも配慮されています。
「共有フォルダー」でも同様にWebブラウザ上で合計2GB、10ファイルまでファイルをサーバーにアップロード可能です。また、ファイルの履歴をたどれる機能や、自動削除機能などもあります。
また、大手通信キャリアが母体のサービスとあって、接続が安定していて作業効率アップが図れると評価が高いサービスです。
Box over VPN
世界10万社以上に利用されている定番ストレージサービス「Box」を、NTTコミュニケーションズのVPN(仮想専用線)と組み合わせたサービスです。
Boxはファイルサイズ5GBまでのファイルアップロードが可能です。ストレージ容量は無制限で、容量を気にする必要はありません。ファイルのアクセス権は、閲覧のみ、編集可能など7通りから選択できます。プレビュー機能も充実しており、Adobe Photoshopのファイルなど120種類以上の拡張子に対応していて、専用アプリの起動が不要です。
Box over VPNでは、このBoxへの接続をインターネット回線ではなくVPNに限定してセキュリティを格段に高めています。そしてVPNからBoxまですべてヘルプデスクが一括して24時間365日対応しており、トラブルがあっても安心です。
Dropbox Business
個人向けのサービスで世界的なシェアを誇るDropbox社運営ストレージサービスのビジネス版です。
個人向けツールとの違いは、ユーザーの招待や削除などの管理機能、端末の承認機能などにあります。ユーザーをプロジェクトごとなどでグループ化して、ファイルへのアクセス権限をグループごとに設定したり、プランによっては各ユーザーが行ったファイルの追加や編集、移動や削除、共有など、すべてのファイル操作のログを監視したり、ファイルがどのユーザーに共有されているかなどの共有状況を把握したり、編集権限を関するといった細かい設定もできます。
また、個人向けサービスではファイル履歴保存期間が30日ですが、ビジネス版はすべてのプランで180日にわたって保存されます。また、ファイルが復元できる期間も30日から180日に延長されます。
PrimeDrive
大手通信キャリアのソフトバンクが運営するサービスです。
他のサービスの多くはユーザー1人追加するごとに課金する料金体系ですが、PrimeDriveはストレージ容量に応じた固定料金制を採用していて、どのプランでも1万ユーザーまで自由に登録できます。
ですから、人事異動でユーザーを頻繁に入れ替えたい場合や業務拡大でユーザーを増やしたい場合でも柔軟に対応可能で、追加料金も発生しません。
iPad、iPhone、Androidにも対応しており、端末で撮影した写真や動画も手軽に共有できるので、本社と店舗間での情報共有などにも便利です。大人数で利用したい場合にはコスト面で有利になるのでぜひ検討したいサービスです。
Fileforce
ファイルフォース株式会社が提供する日本発のクラウドストレージサービスです。
専用アプリの「Fileforce Drive」で、各パソコン内にあるファイルや社内サーバーにあるファイルと同様の感覚で使うこともできますし、Web用画面の「Fileforce Web UI」を通してWebブラウザにアクセスし、スマートフォンやタブレットから専用アプリで使うこともできます。
Fileforceの一番の特徴は開発から運用、サポートまで全て国内で行っていることです。開発と運用の拠点がすべて国内に置かれており、もちろんデータセンターも国内にあるので、ストレージ上のすべてのデータが日本の法律で守られています。日本の商習慣や日本的な感覚に合った使い心地で、マニュアルも日本語、日本語の手厚いサポートも受けられます。
GigaCC ASP
日本ワムネット株式会社が提供する日本発のストレージサービスで、企業間でのファイル受け渡しを特に意識して開発されています。
ファイル送信の宛先制限機能や送信時の上長承認を設定できる「ワークフロー機能」、いつ誰がどこからアクセスしてどんなファイルを送信したかが分かる詳細な履歴ログの管理機能、ファイルの転送や共有でサーバーに登録されたコンテンツのすべてのコピーを別途保管しておく「全件バックアップ機能」などを利用することができます。
また、既存の業務システムと連携してファイル共有を自動化するような高度なカスタマイズも可能です。
クリプト便
機密情報の受け渡しに特化したビジネス向けのストレージサービスです。
提供は野村総研系列の情報セキュリティ会社・NRIセキュアテクノロジーズ株式会社で、意図しないファイル操作や操作ミスを防ぐためのユーザーインターフェース設計や、ファイルアクセス権限の設計を特に重視して作られています。もちろん、クラウドの情報セキュリティ管理に関する各種の規格や認証をクリアしています。
こうしたセキュリティ重視の設計思想は特に金融業界から高く評価されており、サービス利用企業の半数近くは金融関連企業が占めています。
DirectCloud-BOX
ジラングループ系列の株式会社ダイレクトクラウドが提供するストレージサービスで、ユーザー数無制限で月3万3000円(税込)から始められる抜群のコストパフォーマンスが大きな魅力です。
サーバーは日本国内で運用されており、国内3か所に置かれたデータセンターは24時間365日体制の管理で安心です。サービス稼働率も月間平均99.95%と非常に高く、高い品質のサービスが期待できます。
IMAGE WORKS
日本有数の精密機器メーカー、富士フイルムが運営するストレージサービスです。
IMAGE WORKS最大の特徴はAIを利用した画像ファイル検索機能「類似画像検索機能」です。この機能を使えば、手元にある画像などをもとに、ストレージに登録されている似た画像を自動で探し出すことができます。文字情報ではなく、画像に写っているシーンや人物そのものを分析して検索・抽出ができるので、画像の整理やタグ付けは不要です。
また、この機能を使えば、日本語でキーワード検索ができなくても画像で類似画像検索ができるので、グローバルな企業活動では特に大きなメリットになります。
ストレージサービスを比較するポイント
ストレージサービスにもいろいろな種類のサービスがあります。サービスを選ぶときには、まず自社の目的に合っているかどうか、操作性に問題はないかなどをチェックし、第三者機関の評価なども参考にしながら比較するのがおすすめです。
法人向けか、個人向けか
ストレージサービスには個人向けサービスと法人向けサービスがあります。
個人向けのサービスには無料で利用できるプランや低価格のプランが数多くありますが、利用できるストレージ容量が少なく、利用できるユーザーの数も限定されています。セキュリティ面の機能も法人向けサービスほど充実していないのが普通です。
こういった点を考慮すると、法人向けのサービスを選ぶのが適切であると言えます。
操作性や使い勝手はいいか
使い慣れていなくても直感的に操作しやすい、使いやすいサービスを選ぶことも重要です。これまで自社サーバーに置いたストレージを使ってファイルを共有してきたのであれば、同様の操作で使えるサービスを採用すれば混乱も生じにくくおすすめです。
使いにくいサービスを選んでしまうと、社内に利用が定着するまで時間がかかり、別途使い方の研修など行う必要が出てくるなどコスト増加につながることもあるため注意が必要です。
さまざまなデバイスで利用できるか
パソコンやスマートフォン、タブレットなど、仕事で使う端末にはさまざまな種類があります。従業員が現在使っている端末で使えないようでは、新たに端末を購入する費用がよけいにかかってしまいます。ですから、各種の端末に対応しているサービスを選ぶと便利です。
各種OSや各種バージョンへの対応、ブラウザごとの対応にも気をつける必要があります。スマートフォン向けの専用アプリがあるかどうかや、アプリの使い勝手も確認しておきましょう。
価格設定と課金形態
ストレージサービスも、使いたいストレージの容量と発生する利用コストのバランスを見て、自社にとって最もコストパフォーマンスが良い製品を選ぶのが鉄則です。
ストレージサービスの料金は、大きく分けてユーザー数に応じて課金される方式と、データ容量の上限に応じて課金される方式の2通りです。
ユーザー1人につき月額で料金が発生するタイプのサービスは、ユーザー数に応じた料金で済むので少人数で使いたい場合でもリーズナブルに始められます。ただし、ユーザーの人数が非常に多い、またユーザーの変更が頻繁にある場合は料金がかさむケースもあります。
一方、データ容量に応じた定額の料金を月々支払うタイプのサービスでは、ユーザー数が増加しても追加料金は発生しません。ただし、利用するユーザー数が少ないと割高になる可能性があります。
ですから、自社で必要なデータ容量やユーザーアカウント数に向いたサービスを選び、無駄なく費用を抑えることが大切です。実際に各社の料金体系に沿ってシミュレーションし、コストを試算してみると選びやすくなります。
どの程度の容量が利用できるか
特に、データのバックアップを目的としてストレージサービスを利用するなら、手持ちのデータを全て保存できる容量が確保できなければ意味がありません。
保存ファイルの総容量は年々増加するのが普通です。ですから、今後のストレージ使用量増加を見越して、大容量のプランを選ぶか、利用容量を切り替えられるプランを選ぶのがおすすめです。併せて、容量切り替えで発生するコストについても確認しておくことが大切です。
フォルダ階層の設定は可能か
ストレージサービス内に保存したデータを「フォルダ構造」で利用できるかどうかもポイントです。
「フォルダ構造」では、フォルダの形で階層を作ってファイルを分類し保存する方法です。ひとつのドライブ内でフォルダごとにファイルを分類して収納できるので、探しやすさで優れています。また、フォルダ内部にアクセス権の異なる共有フォルダを設定することができるので、社外とのファイル共有にも利用しやすいというメリットがあります。
「フラット構造」では、例えば「cドライブ」など、1つのドライブにすべてのファイルを分類しないで保存して利用する方法です。この構造でファイルを分類する必要が生じた場合、「cドライブ」「dドライブ」など複数のドライブを作成してファイルを保存しなければならず、アクセスすべきドライブ数が増えてファイルを探しづらくなります。これは複数のユーザーでファイルを共有したい場合は非常に不便です。
このように、ビジネス利用など複数のユーザーでの利用を想定するなら「フォルダ構造」が適しています。
サポート体制は充実しているか
サポート体制もサービスによって異なります。オペレーターの電話応対やメール返信などのサポートは平日の日中だけに限定されている場合もあるので、休日対応や夜間対応についてもチェックしておきましょう。
海外発のサービスは日本的な感覚では使いにくい場合もあります。海外発のサービスの場合は、日本語サポートの有無や、サポートを受けられる内容についてもよく確認する必要があります。
国際規格や第三者機関による評価
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)や、その基盤となる情報セキュリティの国際標準規格ISO/IEC 17799、日本工業規格のJIS Q 27002などに準拠しているかどうかもチェックしておきたいポイントのひとつです。第三者機関に評価されているサービスは信頼度が高く、安心して利用できます。
セキュリティ対策は万全か
オンラインでデータをやり取りするストレージサービスの場合、サイバー攻撃によるデータの漏えいや改ざんなどのリスクも存在します。
さまざまなリスクに備えるためには、ウイルス対策、暗号化、アクセス制限、アクセスログ解析など、セキュリティ関連対策の充実度も念入りに確認しなければなりません。セキュリティレベルを高めるためには、押さえておきたいいくつかのポイントがあります。
特に注目したい、企業に必要なセキュリティ対策のポイント
ビジネス上の重要データを保管するクラウドストレージサービスに必須のセキュリティ対策としては「多要素認証」「アクセスログ管理」「アクセス制限」などが考えられます。リスクを軽減するために、ポイントを外さずにセキュリティ対策を行うことが大切です。
複数の認証機能が利用できるか
ID・パスワードだけでログインできるサービスでは、不正利用される恐れが極めて高くなります。「2段階認証」、さらに複数の要素で認証する「多要素認証」が利用できれば、不正ログイン対策につながります。
パスワード、SNSなどの「知識情報」、デバイス制限など「所持情報」、指紋など「生体情報」を組み合わせた多要素認証なら、より安全に企業の重要データを守ることができます。
アクセスログ管理機能が備わっているか
アクセスログ管理機能も必須です。アクセスログでファイルの利用履歴や、ストレージ上のどのファイルをいつ誰が操作したかが分かれば、問題が発生したときに原因を追跡することが可能になります。また、内部不正の防止にもつながります。
アクセス権限を細かく設定できるか
自社のデータであっても、従業員全員が全てのファイルにアクセス可能な状態では重要な情報が漏えいしやすくなります。
重要データを保存している共有フォルダの場所を知っているユーザー全員がそのフォルダにアクセスできる状態では、データ漏えいや改ざんのリスクが非常に高いと言えます。
共有フォルダやファイル、アカウントごとに細かくアクセス制限をすることができるサービスならより安全に利用できます。この点も詳しく確認しておきましょう。
保存ファイルが暗号化されているか
ストレージ内に保存されたファイルが暗号化されているかどうかもポイントです。ファイル暗号化とは、ファイルを特定のルールで変換して第三者に内容が読み取れない形にすることです。
ストレージ内のデータが暗号化されていれば、万が一ファイルが流出してもデータの内容が漏えいするリスクは下がります。
誤送信を防止する機能があるか
メールの誤送信は情報漏えいの大きな原因の一つです。
これを防ぐために、送信前の上長承認機能や送信先をあらかじめ限定できる送信先固定機能など、送信ミスを防ぐ機能があれば安心して利用できます。
「期限付き共有リンク」の生成は可能か
取引先など社外のメンバーには、必要なときだけ必要なファイルの共有を一時的に行うことができれば十分というケースもあります。
この場合は、ファイル個別に共有リンクを作成し、そのURLを送信して共有する方法を取るのが一般的ですが、この共有リンクのURLに有効期限が設定できるかどうか確認しておきましょう。有効期限を設定できるサービスはセキュリティレベルが高いと言えます。
「ディザスタリカバリー対策」がとられているか
「ディザスタリカバリー(DR)対策」とは、災害時にシステムを復旧するための対策のことです。
大規模な災害が起きた場合も、業務を継続できるようにするためには、複数の拠点にサーバーやデータセンターを設け遠隔地でバックアップを取るなどの対策や、非常時にスムーズに予備サーバーに切り替えられる対策などが取られているサービスを選ぶとよいでしょう。
データセンターの物理的な位置や堅牢性もチェック
災害発生時には、自社と同じエリアにある他の建造物は同じような被害を受けている可能性があります。ですから、データは遠隔地に分散して保管されているのが理想です。ストレージサービスで利用しているデータセンターのロケーションや、サーバーを設置している建屋の頑丈さ、堅牢性についても事前に確認することが大切です。
ビジネスでストレージサービスを利用するなら知っておきたい注意点
ビジネスでストレージサービスを利用する場合には事前に知っておきたい注意点があります。こういったポイントを押さえてサービスを有効に活用しましょう。
サーバーがダウンするとデータにアクセスできなくなる
ストレージサービスで利用しているサーバーがダウンすると、一時的にデータにアクセスできなるといった不具合が発生します。最悪のケースではデータ自体が失われることもあります。
サービス提供会社もこれに対して、予備サーバー、予備システムを常に稼働させておく「冗長化対策」などを行っています。万が一の事態でもデータを失うことがないよう、信頼できるサービスを選びましょう。
Web脆弱性をついたサイバー攻撃を受ける恐れがある
Webサイトやシステムにはしばしばセキュリティ上の欠陥や弱点、つまり「脆弱(脆弱(ぜいじゃく)性」が潜んでいることがあります。このシステムの弱い部分、もろい部分を狙ってサイバー攻撃が行われシステムに侵入されると、重要なデータが流出する情報漏えいが発生したり、データが破壊されたりする恐れがあります。
情報漏えいは企業にとって重大なコンプライアンス違反で、社会的信用を失いかねない大きなリスクとなります。信頼できる運営会社かどうか確認して、安全性の高いサービスを選ぶ必要があります。
海外のデータセンターを利用する場合の「カントリーリスク」
ストレージサービスには海外発のサービスも多く、海外に設置されているサーバーを使っているケースもしばしばです。
しかし、法律は国によって異なり、国によっては政府や行政機関などがサーバーや保存データを閲覧することが合法であったり、サーバーが存在している国からデータを持ち出すことが違法になったりする場合があります。海外にデータセンターがあるサービスを利用するときには、政府や行政機関などがデータにアクセスするケースがないか、その国のサーバーにあるデータを日本から閲覧して利用することが問題なくできるか、その国の法律を確認する必要があります。
特に、機密性の高いデータを扱うなら、国内にデータセンターを配置しているサービスを選ぶのが無難です。
ストレージサービスのよくあるトラブル例と解決策
ストレージサービスの利用でトラブルが起きる場合もあります。よくあるトラブルと、その解決方法を合わせて紹介します。
使用容量が増え、想定よりランニングコストがかかってしまった
【トラブル例】
営業の作業報告など資料作成でストレージサービス上の共有フォルダを使っていたところ、サービス運営会社からストレージの空き容量が不足しているとの連絡を受けました。
従業員に業務で不要なデータを削除するよう要請しましたが、使用量にはほとんど変化がありませんでした。結局、ストレージ容量を増やすことになり、予定していたよりコストがかかることになりました。
【解決策】
・導入前にあらかじめ将来的に必要になると思われる容量について試算し、その容量を前提にしてコストパフォーマンスに優れた製品を選択する。
・保存しているファイルを整理・検証して無駄なデータを削除して、管理された状態にしてから導入する。
・データ増加をコントロールするため、データの削除ルールを設けて定期的に実行する
途中で契約やサービスの内容が変更になった
【トラブル例】
安価なストレージサービスを導入して特に問題なく利用していたが、サービス運営会社からサービス内容の変更と料金値上げが通知された。運用そのものは順調だったので継続利用を選択したが、予算をはるかに上回るコストが発生することになりました。
【解決策】
・不都合が発生した場合に、他のサービスに自由に移行できる状態を維持しながら運用していると安心。
・サービスの提供歴が長く、今後にわたって安定したサービスの提供が期待できる運営会社のサービスを選ぶ。
クラウドストレージをさらに安全に利用するためのポイント
社内のセキュリティポリシーの強化やデータの暗号化など、ストレージサービスをより安全に利用するためのポイントがあります。重要なポイントを押さえて、最大限にリスクを回避しながらストレージサービスの活用に務めましょう。
社内のセキュリティポリシーを強化する
ストレージサービスの導入に合わせて、改めて社内のセキュリティポリシーや運用マニュアルを確認し、必要に応じて強化しておくことが必要です。
情報漏えいの原因は、ログインしたままの端末の紛失や誤操作など、ヒューマンエラーが原因になったものが半数を占めるとも言われています。経済産業省が公表している「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」などを参考にして、人的ミスを防ぐためのセキュリティポリシーの強化を図っておきましょう。
参照:経済産業省「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」
アップロード前にデータを暗号化する
ストレージサービスに重要なデータを保存する場合、データをアップロードする前に手元でもデータを暗号化しておくという方法もあります。
法人向けのWindows 10 Proなら、暗号化したいファイルやフォルダを右クリックまたは長押しして、[プロパティ]―[全般]―[詳細設定]―[内容を暗号化してデータをセキュリティで保護する]を実行すれば内容を暗号化できます。自分でも必要に応じて暗号化を行っておくのがおすすめです。
無料ストレージサービスの利用は避ける
ストレージサービスはインターネット上にあるサービスなので、セキュリティ面には特に注意を払う必要があります。
無料のオンラインストレージサービスでも個人利用ならさほど問題になりにくいと言えますが、重要なデータを取り扱うビジネス利用ではウイルス対策やアクセス管理などあらゆる面で不安が残ります。
また、ユーザーアカウントの一元管理ができない、トラブル時に対応してもらえるサポート窓口がないなど機能面で物足りない部分も多く、オプションでサービスを追加したりしているとさらに高くつくこともあります。重要なデータを取り扱うビジネス利用ではセキュリティ対策がしっかりしている有料サービスを選択するのが無難です。
別途BCP対策を実施する
BCPとは「事業継続計画」のことで、自社で扱うデータの保全はBCP対策として必ず実行しなければならないことの一つです。
システム障害や災害発生など不測の事態でもデータの破損や消失を防ぎ安全に保存するために、信頼できるストレージサービスを利用することが大切です。加えて、念のため自社でもデータのバックアップを取っておくとさらに安全性を高めることができるでしょう。
ストレージサービスを上手に活用!参考にしたい3つの導入事例
ストレージサービスを活用するためには、実際の導入事例を参考にすると分かりやすくおすすめです。働き方改革推進の成功など、知っておきたいストレージサービス導入例を紹介します。
ストレージサービスの導入により働き方改革を推進した事例
住友商事では東京本社の従業員約6000人を対象に、安全性の高さ、目指すゴールなどを踏まえてNTTコミュニケーションズ株式会社の「Box over VPN」を導入、社内外との強力な情報連携を図りました。これは従業員にとっても待望の導入で、「社内外との情報のやり取りが楽になった」と歓迎する声が多く挙がりました。特にタブレットなどスマートデバイスでファイルが簡単に見られるようになった点が好評で、紙を持ち歩くことが減り負担軽減に繋がっているということです。
端末を限定せず、いつでもどこでも業務ができる自由度の高い働き方が実現し、テレワークの本格的な実施も可能になっています。
参照先:NTTコミュニケーションズ「住友商事株式会社 社内外とのグローバル情報共有基盤の強化で「新たな価値創造」に向けた働き方改革を推進」
出先での作業効率を向上!場所にとらわれない働き方を実現した事例
イオンイーハートでは、社内ファイルサーバーを廃止してクラウドストレージサービスの「Fileforce」を導入しています。
専用のデータ移行ツールを使って移行時の業務への影響を最小限に抑えながらスムーズに導入が完了しました。Fileforceは操作性が今までのファイルサーバーに近く、ユーザーもさほど違和感を持たずに移行できています。
こうしてクラウドサービスを採用したことで、社外からファイルを閲覧したり共有したりすることが簡単にできるようになり、外回りが多いスタッフを中心に業務の効率化が進んでいます。大容量ファイルでも問題なく共有できるので、作業にスピード感が生まれて業務改革が実現しています。
参照先:ファイルフォース「業務改革の一環としてファイルサーバーからFileforceへ移行」
情報共有の促進により、各拠点との関係が深まった事例
みずほ銀行グローバルトレードファイナンス営業部(GTF営業部)では、世界各地に展開している拠点間でリアルタイムにデータをやり取りすることを目的に、ファイル転送・ファイル共有に特化した「GigaCC OFFICE」を導入しました。
今までは、時差のある拠点間ではハブ拠点を通して連絡していたのですが、GigaCC OFFICEの導入でその手間がなくなり、通知事項があるときにも時差を気にせず瞬時に連絡することができるようになりました。大容量ファイルをメールでやり取りする必要がなくなり、メールボックスが容量オーバーで使えなくなることもなくなり、業務の効率化につながっています。
参照先:GigaCC「導入企業インタビュー」
まとめ
ストレージサービスとは、インターネット上にあるサーバー上でデータの保存や共有を行うサービスのことです。ストレージサービスの利用で、大容量ファイルの共有や重要データの安全な保存、社外からのファイルアクセスなどが可能になるという大きなメリットがあります。特に、法人向けのストレージサービスではユーザー権限の詳細な詳細や、高度なセキュリティ管理など、個人向けサービスに比べて高度な各種機能を利用できます。
自社の使い方と利用目的を明確にして、コスト面と機能面の両方の視点から最適なサービスを選ぶことが大切です。