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ノウハウ 【2022年施行】中小企業に適用!労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正ポイントについて解説。

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年09月29日

【2022年施行】中小企業に適用!労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正ポイントについて解説。

【2022年施行】中小企業に適用!労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正ポイントについて解説。

近年、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)が問題になっていますが、パワハラの防止を目的として労働施策総合推進法という法律があります。

 

パワハラについては何となく理解はしていても「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)についてはわからない」という方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、労働施策総合推進法の概要や改正ポイント、2022年に中小企業に適用となる事に触れて、必要な対応についても解説します。

 

 

 

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)とは

労働施策総合推進法とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)」の正式名称です。1966年に制定された本法律は、かつては「雇用対策法」と言われてきました。

 

2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年政令第253号))において、働き方改革の総合的かつ継続的な推進を図るため、それまでの「雇用対策法」を改正して制定された法律です。

 

労働施策総合推進法の基本理念は、労働者が生きがいを持ち能力を最大限発揮することができる社会を実現することです。具体的には「労働環境の改善」「多様な働き方を推進」が目的とされています。

 

労働施策総合推進法は、近年改正を繰り返し実施されています。

2019年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が可決され、同法の第3条に基づき、労働施策総合推進法が改正されることになりました。これにより、大企業においては、2020年6月1日から職場におけるパワハラ防止対策が義務付けされました。

2021年4月にも、改正労働施策総合推進法が施行されて、本改正により、大企業(労働者数301人以上)に対し、中途採用者数の割合の定期的な公表が義務付けられることになりました。

 

労働施策総合推進法の改正は、企業(事業主)側と労働者側の双方に影響が生じます。日本で働く労働者の根幹ともいえる法律なのです。

 

2022年に中小企業適用!労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正点は?

 

前章で労働施策総合推進法が改正されて、大企業においては、2020年6月1日から職場におけるパワハラ防止対策が義務付けされた事については解説しました。

 

改正された労働施策総合推進法では、「第30条の2(雇用管理上の措置等)」「第30条の3(国、事業主及び労働者の責務)」という条文が新設されて、パワーハラスメント対策の強化が図られています。

 

■新設:第30条の2(雇用管理上の措置等)※一部抜粋
第30条の2 
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
参照元:厚生労働省『厚生労働省告示第五号』

 

■新設:第30条の3(国、事業主及び労働者の責務)※一部抜粋
第30条の3
国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。

2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
参照元:厚生労働省『厚生労働省告示第五号』

 

現在は大企業のみ適用されていますが、中小企業(中小企業主)も2022年4月1日に義務化の対象となります。2022年3月31日までは努力義務期間です。

労働施策総合推進法における中小事業主の定義については、下記の通りとなります。

 

参照元:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

 

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正で中小企業が必要な対応は?

 

労働施策総合推進法の改正によるパワーハラスメント対策の義務付けが、2022年4月1日から中小企業も適用される事について触れてきました。中小企業は2022年3月31日まで努力義務期間ですが、義務化までに必要な対応はあるのでしょうか。

 

そもそもパワーハラスメントに関しては、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置について必ず講じなければならないと定められており、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じる必要があります。

 

事業主が雇用管理上講ずべき措置は下記の通りです。

 

■ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

■ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

■ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

■ 併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

※ このほか、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、

その原因や背景となる要因を解消するための措置が含まれます。


参照元:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

 

中小企業主も事業主に該当しますから、上記の対策を講じる必要はあります。

一方で、中小企業のなかには人事担当などがいない企業もあります。そのような場合は、パワーハラスメントの問題が発生したとき、責任の所在が曖昧になりがちです。社内方針の明確化と管理監督者を含む従業員への周知・啓発は2022年のパワーハラスメント対策の義務化に向けて中小企業が必要な対応といえます。就業規則に「ハラスメント防止」に対する規定を盛り込んだり、相談窓口を設置、研修等を実施する事も必要です。

 

厚生労働省が定めた「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(パワハラ指針)の項目の確認など、政府のハラスメント関連の資料について一通り確認する事が大切です。

 

ちなみに、パワーハラスメント対策を企業(事業主)側が怠った場合、罰則はあるのでしょうか。

 

現状、罰則規定は定められてはいませんが、労働施策総合推進法には下記の法令措置は定められています。労働者側からパワーハラスメントを行っているという事実が労働基準監督署など通報された場合、企業(事業主)側に何らかの指導が入る可能性はあります。

 

<33条1項>
・厚生労働大臣は労働施策総合推進法の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導または勧告をすることができる
<33条2項>
・事業主がこの勧告に従わない場合には、その旨の公表がされる可能性もある

参照元:法令検索

そもそもパワハラとは?定義はあるの?

 

本記事では、労働施策総合推進法の概要や改正ポイントや2022年4月からパワーハラスメント対策が中小企業でも義務付けされる事について触れてきました。

 

ところで、パワーハラスメント(パワハラ)は身近に聞く言葉ではありますが、どのようなものを指すのでしょうか。定義などはあるのか解説していきます。

 

パワーハラスメントの定義とは?

 

厚生労働省は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をパワーハラスメントと定義しています。

 

裁判例においては、「組織・上司が職務権限を使って、職務とは関係のない事項あるいは職務上であっても適正な範囲を超えて、部下に対し、有形無形に継続的な圧力を加え、受ける側がそれを精神的に負担と感じたときに成立するものをいう。(K事件(東京地判平21・10・15)【労判999号54頁】 、S事件(東京地判平20・10・21)【労経速2029号11頁 】)」と定義された例があります。

 

参照元:厚生労働省:裁判例において示されたパワーハラスメントの定義

 

職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書においては、下記の1から3までの要素のいずれも満たすものを職場のパワーハラスメントの概念として整理されています。

 

参照元:厚生労働省 パワーハラスメントの定義について

 

パワーハラスメントは見分ける方法はあるの?

パワーハラスメントの定義について、厚生労働省が定めた定義と裁判例について触れてきました。パワーハラスメントに関しては、業務上の教育指導や注意との見分けがつきにくいという難点もあります。

 

厚生労働省の資料では、下記の6類型に該当する場合は。パワーハラスメントに該当するとしています。一方で行為の態様が、6つの行為類型に該当しそうな行為であっても、上記①~③の要素いずれかを欠く場合であれば、職場のパワーハラスメントには当たらない場合があることに留意する必要があるとしています。

 

参照元:厚生労働省 パワーハラスメントの定義について

 

パワーハラスメントの線引きは難しいところですが、業務上の指導であっても、上司が部下へ対して、殴打や足蹴りなどの暴力行為を行う、人格否定や容姿など身体の対する悪口を言う場合は、「行き過ぎた指導」としてパワーハラスメントに該当する可能性もあります。

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が制定された背景は?

前章でパワーハラスメントの定義や見分け方について解説してきました。労働施策総合推進法(パワーハラスメント)が2018年に制定された背景も労働条件や職場環境等をめぐる紛争の相談件数が増加を続けている事が背景にあります。

 

厚生労働省が発表した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談件数は、2020年(令和2年)は、129 万782 件です。そのうち「民事上の個別労働紛争相談件数」は27万8,778件で、「いじめ・嫌がらせ」は 7万9,190件が相談件数として寄せられており、一番多い相談内容です。

 

参照元:厚生労働省:令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況

 

職場におけるいじめや嫌がらせの増加にともなって、うつなどの精神障害をきたす人もいます。このような状況を受け、2012年に厚生労働省が、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ、パワハラ防止措置を事業主に義務づける流れとなりました。

 

参照元:厚生労働省 職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ

まとめ

本記事では、労働施策総合推進法の概要や改正ポイント、2020年6月から大企業で適用されているパワーハラスメントの防止義務が、2022年から中小企業にも適用される事を中心に解説してきました。

 

労働施策総合推進法の改正で、企業(事業主)側へのパワーハラスメントの対策義務付けが実施されましたが、これは労働条件や職場環境等をめぐる紛争の相談件数が増加を続けている事が背景にあります。

 

2022年4月から中小企業もパワーハラスメント対策が義務付けされますが、就業規則改訂などの社内文書の見直しなどの業務の発生が予測されます。
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