ノウハウ リーガルチェックのポイント解説!契約書のレビューは正しくできていますか?
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年09月27日
リーガルチェックのポイント解説!契約書のレビューは正しくできていますか?
企業の取引では、契約内容の書かれた「契約書」は重要な書類ですが、この契約書の内容をチェックする「リーガルチェック」について、企業の中で正しく行われているでしょうか。
リーガルチェックがきちんとされていなければ、せっかく契約書を作成したとしてもその存在意義が失われてしまうので、正しいチェックが必要となっています。
本記事では、リーガルチェックのメリットやポイント、また、近年流行っているAIによるリーガルチェックの注意点について解説していきます。
リーガルチェックとは?
契約書のリーガルチェックとは、弁護士もしくは法務担当者などの専門家に、法的な問題点がないか、自社に不利益な条項が含まれていないか、取引内容に合致しているかなどを確認してもらうことです。
「契約書のレビュー」と呼ぶこともあります。
インターネットで検索すると、無料のテンプレートがたくさん見つかります。しかし、契約書を作成するときには、一般的なひな型をそのまま流用しただけではそれぞれの取引に完璧に沿った契約書はできません。
契約書の不備があれば、代金不払いなどの債務の不履行や顧客クレームが合った場合に自社に不利な結果になってしまうこともあります。
最新の法律に適応していなかった場合は、契約書を作成した自社の信頼度が落ちてしまうでしょう。
リーガルチェックのメリット
トラブルを未然に防げる
契約書の内容が不明瞭なためトラブルが起きることも多くあります。リーガルチェックによって、曖昧な表記がされている箇所を修正することができます。また、法改正により、契約が無効になったり、損害賠償請求に発展することもあります。
その場合、多くの労力や時間、費用を要することになります。それとともに大きな信頼を失うことにもなりかねません。
これらの想定されるトラブルを未然に防げるのがリーガルチェックのメリットです。
自社の利益を守れる
契約書上のちょっとした表現でも、解釈によっては自社が不利になる可能性もあります。専門的な知識を持つ第三者にリーガルチェックをしてもらえば、なかなか見落としがちな不利な契約内容を発見することができます。
他にも取引内容にあった契約であるかなど企業の利益を守る契約であるかを確認することができます。
ノーチェックや流用のリスクを防げる
過去の契約書をそのまま流用したり、リーガルチェックなしで契約をしたりすることがないように、リーガルチェックを必ず行うというルールを社内で徹底すれば、コンプライアンスやリスク管理の意識を高めることができます。
【関連記事】契約書管理とは?|運用までのステップとクラウドサービス紹介
リーガルチェックのポイント
形式的なチェックも怠らない
契約書作成にかかわった経験が少ない人が意外と疎かにしているのがこちらです。
誤字脱字などがあると、契約書の見栄えが悪くなりますし、信用度も低く見られてしまう可能性もあります。ケアレスミスなどがないかしっかりチェックしましょう。
契約書を読み込み、特有の用語を正しく理解する
当たり前のことですがず契約書をきちんと読み込み、自社の意図と異なる点や自社で対応できない点を探しましょう。
また、契約書には、「表明保証」や「契約不適合責任」、「対抗要件」といった特有の用語が使われています。これらの意味を正しく理解し、そのままで良いか訂正を求めるか検討をしていきます。
契約書を読んでも意味がわからない場合は、社内の上司やメンバー、また相手方にその意味を確認するなどの対応を心がけましょう。わからない部分をうやむやにするのは危険ですので、絶対にやめましょう。
法令を網羅的に調査する
契約書のレビューにあたっては、その契約書に関係する法令を網羅的に調査する必要があります。この際、その法令が改正されていないかを必ず確認しましょう。
そして、違法な内容や公序良俗に反する内容が含まれていないか必ずチェックしましょう。これは、リーガルチェックの中核とも言えるポイントです。
契約においては、原則として「契約自由の原則」が適用されますが、例外的に違法な内容は強行法規によって無効となります。例えば、労働基準法第13条は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。」と規定しています。労働基準法以外にも、物権法や下請法など強行法規が含まれる法律はさまざまであり、これらを判別するにはある程度法律に関する知識が必要です。
また、違法とまではいかなくても、コンプライアンスの点からもチェックしましょう。法令遵守だけでなく、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に反していないかが問題となります。
企業は社会倫理に従って判断し、経営をおこなうことが求められています。さらに、社会情勢や時代の移り変わりによっても求められるものが変化していくため、定期的な見直しが必要になります。
自社に不当に不利な契約条項がないか確認する
自社に不当に不利な契約条項が含まれている場合は、相手方に対して、修正を求める必要があります。
「不当に不利かどうか」は、民法や商法の規定と比較して不利益過ぎないかどうか、あるいは、業界で使用されている標準的な契約書と比較して不利益過ぎないかどうかという観点から判断していきます。過去の同様の契約書と比較してみても良いかもしれません。
契約書の内容が自社の目的と合っているか
契約書の内容が、自社の事業目的や事業計画、契約をする目的に合致しているかどうかという観点からのリーガルチェックも必要です。他に関連する契約書がある場合はそれとの整合性の確認が必要です。
相手の許認可を確認する
許認可が必要な業種の相手方である場合は、その許認可が正しくとられているかどうかを確認することも必要です。許認可が無効であったり、取り消されれば、契約自体の有効性も怪しくなります。
【関連記事】基礎からわかる反社チェックー重要性と具体的な調査方法を徹底解説―
リーガルチェックは誰に依頼すればよいか
大企業の場合、原則として法務部が担当し、より専門性の必要な業務や作業量が大きい業務のみ顧問弁護士などに依頼する仕組みが一般的です。
企業内弁護士と外部の弁護士が協働することで、効率的な役割分担が可能になります。
法務担当者がいない企業では、外部の専門家に頼むのが無難です。法律家(弁護士や行政書士、司法書士)に依頼しつつ、社内でも確認を怠らないようにします。就業規則などの作成であれば社労士、ライセンス契約などの知的財産に関わる内容であれば弁理士への依頼も検討すると良いでしょう。
専門分野も重要な観点です。その事業分野での実績がある専門家に、海外取引においてはその国の法律や事情に詳しい専門家に、という風に契約の事情によって、適切な専門家を選びましょう。
AI(人工知能)によるリーガルチェックの注意点
昨今では、リーガルチェックをAIが自動で行うツールも提供されています。
しかし、AIは一般的な観点からリスクの検知と修正提案を行いますが、適正な判断をするためには、最終的に人間の判断が必要です。そのため、全く法律知識がない状態でAIツールに判断を任せるのは危険です。やはり社員にもある程度の法律知識があることが望ましいでしょう。
どんなに高性能なAI契約書リーガルチェックツールであっても、人間による作業や判断が完全にゼロになるわけではない点を覚えておきましょう。
主に次の点について注意が必要です。
対応できる契約類型の範囲に制限がある
AIツールが全ての契約類型・準拠法にレビュー対応しているとは限りません。
比較的複雑な投資契約や事業譲渡契約などの特殊な契約、また絶対数の少ない契約の場合、開発にかかるコストが大きすぎるため不向きだからです。そのため、秘密保持契約、取引基本契約、ソフトウェア開発委託契約、不動産売買契約、賃貸借契約など、対応できる範囲は限られています。
利用する際には、どの契約類型まで対応できるかを確認しましょう。
法令について網羅的な調査ができるか
特定商取引法や割賦販売法など、法令の中には販売方法などに応じて適用があるかどうかが問題となるようなものもあります。下請法などの重要法令については、自社と契約相手の資本金の額がわからなければチェックできません。
販売方法や資本金の額など具体的な事情までチェックするは高度な機能が必要です。そのため、基本的には人間によるチェックが必須となるでしょう。
判例や他の契約書との整合性を検討できるか
AIツールが過去の判例に関する知識を蓄積し、それを踏まえたリーガルチェックを行っているかという点を確認する必要があります。また、他に同時並行して作成している契約書の内容と矛盾した点がないかなどを比較して検討できるかも問題となります。
契約書の内容と自社の目的の合致を確認できるか
例えば、契約の商品の購入目的が自社で利用するためなのか、又は他社に転売するためなのかによって、リーガルチェックのポイントが変わってきます。人間にとっては容易な判断ですが、AIツールがこのような契約独自の目的を把握することができるのか注意が必要です。
▶契約審査の受付を一本化する方法とは?効率化のポイントを解説
まとめ
リーガルチェックについて紹介してきました。
契約についてはほんの少しの手抜きが企業にとっては命取りとなります。
外部の専門家に依頼するにせよと社内で行うにせよ、リーガルチェックは必ず行いましょう。
ContractS CLMを利用すれば、リーガルチェックの際に契約書をメールで送るなど面倒な手段を使わずに済み、全体の工程で時間と手間を節約できます。