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ノウハウ 【2021年施行までフォロー】建設業法の改正!ポイントについて解説。

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年09月27日

【2021年施行までフォロー】建設業法の改正!ポイントについて解説。

【2021年施行までフォロー】建設業法の改正!ポイントについて解説。

改正建設業法が2020年、2021年に立て続けに改正されました。一連の改正について何となく理解はしていても「具体的に建設業法のどのような点が改正されたのかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。 建設業法とはどのような法律なのか、改正の目的や施行後の注意点など、事業者や企業としてとるべき対応についても押さえておきたいところです。

本記事では、2020年10月と2021年9月に施行された改正建設業法のポイントや、建設業法の概要などについてわかりやすく解説しています。建設業に関わる企業として必要な対応についても紹介しています。建設業法や改正建設業法についての理解を深める際にお役立てください。

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建設業法とはどんな法律?

そもそも建設業法とはどのような法律なのでしょうか。まずは、その概要について解説します。

1949年に制定された建設業に関する法律

建設業法(昭和24年法律第100号)とは、昭和24年(1949年)に制定された建設業に関する法律です。建設業に関わる事業者や企業のうち、29種類に該当する業種へ適用されるもので、建設業の資質向上や適切な施工など、建設業の発展と公共の福祉増進への寄与を目的としてさだめられています。

家やビル、道路といった公共の設備など、規模の大きな工事を行なう建設業では、多くの人や企業が関わって進めることとなるのが一般的です。

その中で交わされる契約や工事の内容、完成後の安全性を守るためのルールなどについて、国が法律としてさだめたものが建設業法となります。

発注者と受注者の双方を守る

建設業法には、注文を受けて建設に関わる側だけでなく、発注する顧客を保護する目的も含まれています。

建設業法が制定された当時は、戦後の復興から道路や橋、ビルや家屋など、さまざまな建設工事が急務となっていました。

現在においても、自然災害時からの復興は重要でしょう。建設業には、こうした「地域の守り手」としての役割も担っています。

その中で、突貫工事や手抜き工事、費用の吊り上げやダンピングといった不正行為を取り締まり、逆に工期の短すぎる契約や下請への不払いなど、労務者を苦しめるような発注の防止も大切です。

建設業法でさだめられた規定を守って建築が行われることで、建設に関わる業界の健全性が保たれると同時に、建築物の品質や発注者側の利益を守る要素にもつながっています。

 

 建設業法の2020年改正ポイントは?

建設業法は、制定後の長い歴史の中で、時代に応じて改正を重ねてきました。2020年10月に施行された建設業法の改正では、以下のような内容が改正ポイントとなっています。

建設業における契約や労務等に関わる改正

今回の改正のうち、工期や契約、労務などに関わる改正については、以下のようなポイントが挙げられます。

・著しく短い工期での契約締結を禁止

工期が極端に短い内容で建設工事の請負を契約することが禁じられ、発注側には短すぎる工期で発注をすることのないよう努力する義務が課せられることとなりました。

「極端に短い工期」を判断する目安については、、令和2年7月20 日に開催された中央建設業審議会で基準の内容の審議を行い、7月31日にその実施が勧告されました。参照:報道発表資料:工期に関する基準の実施を勧告~建設工事の適正な工期の確保をするための基準が作成されました!~

それに違反した内容での請負契約を締結した業者に対しては、国土交通省から勧告などが実施されることとなっています(建設業法19条の6第2項)。勧告に従わない場合は、企業名が公表されることになります(同条3項)。

 

工期等に関する情報提供や見積り・契約書面の詳細化

注文者は工期や請負代金に影響があると見込まれる点がある際は、契約締結までに建設業者へ事前に情報提供をするよう義務付けられました。

また、建設業者は見積もり時に、工程についての詳細や作業、準備に必要と見込まれる日数などについて、できる限り詳細を明記するよう努めることもさだめられています。

労務費にあたる下請代金の現金払い

注文者から受注した元請建設業者は、下請代金のうち、労務費にあたる部分について、現金(銀行振り込み、小切手なども含む)で支払うこととなりました。

建設業に関わる人々の過酷な労働環境を改善する取り組みとして、このほかにも「建設業許可基準の見直し」「社会保険加入を要件化」などが今回盛り込まれ、施行済みとなっています。

 

現場の合理化・適正化を目的とする改正

今回の改正のうち、現場における体制の合理化や適正化を目的として施行された改正ポイントについても見てみましょう。

現場の技術者に関する要件の合理化

元請業者と下請業者の両方において、現場に置くべき技術者の要件が合理化されています。

これまで、一定要件下では現場の監理技術者を置く必要があり、また監理技術者が複数の現場を兼務できないといった規制がありました。

今回の改正では、元請業者において現場に一定の要件をみたす補佐役を置くことで、監理技術者が2つの現場を兼務できるようになっています(建設業法施行令29条)。

また、下請業者においては主任技術者の設置要件が合理化され、一定の工事金額を下回る場合には、再下請や二次以降の下請業者について主任技術者を設置しなくてもよいように改正されました。

「元請の監理技術者は、現場に補佐がいれば2つの現場兼務が可能」である点と、「下請の主任技術者がいれば、再下請や二次、三次下請で主任技術者を置かなくてもよい」点がこの改正のポイントとなるでしょう。

なお、一定の工事金額を下回る場合とは、工事の下請にかかる金額が3,500万円を超えない範囲での型枠・鉄筋工事(特定専門工事)であり(建設業法施行令30条)、一定の要件をみたす補佐役については「主任技術者要件と監理技術の基礎的知識や能力を有する者」であることがさだめられています(建設業法施行令28条)。

施工不良時等発生時の建設資材メーカーへの勧告命令

建設資材の欠陥による施行不良等の問題が発生した場合に、これまで建設業者にのみ行われていた改善勧告や命令が、要因となった建設資材メーカーに対しても行われるように改正されました。

 

経営・事業譲渡・相続などに関する改正

最後に、建設業経営や事業譲渡、相続などに関わる改正点について解説します。

建設業経営に関する要件の合理化

建設業経営に際し、これまで経営業務管理責任者(5年以上の建設業経営経験者)を役員に含めることが許可要件となっていましたが、今回の改正によって「事業全体で適切な責任体制を有する」という包括的な内容へと変更されました。

事業譲渡や合併時の事前認可制度新設

建設業者が事業譲渡や会社合併などのM&Aを行う際には、新たに建設業の許可を取得する必要がありました。これまでは建設業許可申請を取り直すまで営業ができませんでしたが、、今回の改正では事前認可が可能になりました。

この改正によって、建設業許可の承継がスムーズにできるようになっています。

相続時許可申請の見直し

建設業を営む個人事業主が亡くなった場合、相続人は新たに建設業許可の申請を取得するまでは営業ができなかった点についても改正が実施されています。

今回の改正では、被相続人の死後30日以内に許可申請をすることにより、許可の可否の通知がされるまでの間も建設業の許可を受けたものとして扱われ、営業が継続できるようになっています。認可の申請に対して、許可がなされた場合、建設業を継続することができます。

建設業法改正2020で企業が必要な対応は?

2020年10月施行の建設業法改正により、関連する企業では、どのような対応が必要となるのでしょうか。

改正における3つの要点を押さえた対応を

今回の建設業法改正では、「働き方改革を目的とする改正」「現場の生産性向上を目的とする改正」「持続可能な事業へと導く改正」の3つが要点となっています。

現場の監理や完成物の品質を向上させるといった目的はもちろんですが、建設業に従事する雇用者や下請業者の環境を整える意識が大切となります。

事業の相続や承継をスムーズに行えるようになっている点なども重要であるといえるでしょう。

具体的には、建設業経営者や営業担当、企業の人事部門のほか、相続やM&Aに関連する企業担当者においても、改正に応じた対応が必要となります。

これら3つの要点を押さえた上で、企業に必要となる建設業法改正への対応事例について、以下でそれぞれ見ていきましょう。

働き方改革を目的とする改正への対応例

働き方改革を目的とする改正としては、社会保険加入要件を満たしている雇用者の保険加入や、元請では労務関連費用の現金払いなど、支払い方法の変更にも対応が必要となるでしょう。

また、改正によって短すぎる工期での受発注とならないよう、契約や見積書類作成時のチェックも必要です。

建設業に従事する雇用者や下請業者を守り、無理な工期による長時間労働や賃金未払いなどのリスクを防いで、より良い環境下で働けるよう配慮することが大切となります。

現場の生産性向上に関する改正への対応例

現場の生産性向上を目的とする改正としては、一定要件下での監理技術者の現場兼務が可能になった点、一定の要件を満たす特定専門工事では、再下請や二次下請以降の業者で主任技術者の設置が不要となる点などが挙げられます。

技能を有する人材がより幅広く活躍できる環境と、比較的規模の小さな現場における重複的な技能者の設置を不要とすることにより、限られた人材や能力が無駄にされることなく、スムーズな現場作業の実現を目指すものです。

担当部署においては、「下請金額が3,500万円未満の特定専門工事であるか」「監理技術者の兼務に必要な補佐役の確保」などが対応時のポイントと考えられます。

現実的には、2021年4月に施行済みである検定制度の見直しなどもチェックしつつ、技能者の登録リストなどを現場の状況とすり合わせながら、適宜改善していくこととなるでしょう。

持続可能な事業に関する改正への対応例

持続可能な事業に関する改正としては、相続時や事業承継、会社合併時の許可申請制度の変更などが挙げられます。

実際に事業を相続したり、会社分割などのM&Aで事業を承継したりする当事者としては、こうした改正ポイントに関する知識を押さえておくことも大切です。

加えて、各種行政手続きを行なう士業事務所や不動産、M&A仲介事業の担当者についても、改正に関する研修などを実施して周知を図る必要があるでしょう。

 

建設業界は人手不足?建設業法改正2020の背景は?

今回の建設業法改正の背景には、建設業界の全体的な高齢化や少子化による人手不足が要因となっている点も理解する必要があるでしょう。

国土交通省が公表しているデータによると、現在建設業に関わる技能労働者のうち、60歳以上の割合は25%にのぼることがわかっています。

一方で、30歳未満の建設技能労働者は全体の11%程度にとどまっています。50歳以上の技能労働者を合わせると、全体の技能労働者の半数近くが50歳以上で占められていることとなるのです。

高齢でも現役で活躍している人が多い点はメリットであるともいえますが、近い将来高齢の技能労働者が大量に離職することとなれば、建設業界にとっても大きな打撃となってしまいます。

25年ぶりという期間の空いた法改正も、こうした「人手不足」の解消が急務である点から施行されたものであると考えられるでしょう。

今回の改正では、短い工期での激務を回避し、保険未加入となっている雇用者の処遇改善を図ることに加え、建設業開業や事業承継の道を緩和して、新たな世代が育ちやすい環境へと整える目的もあります。

実際の現場では、こうした法改正の真意がなかなか伝わらなかったり、改正に伴う業務の負担が増えたりする場面も少なくないことでしょう。

現場担当者と各部門間でのコミュニケーションを深めつつ、法改正の枠にとらわれない改善点も模索しながら、必要に応じて個別面談や研修も取り入れつつ善処していくことで、業界全体の活性化を目指していきましょう。

 建設業法の2021年改正ポイントは?

2021年9月に施行された建設業法の改正では、以下のような内容が改正ポイントとなっています。

建設工事の請負契約(法19条1項)と追加工事等に伴う追加・変更契約(同条2項)

建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付する義務があります(法19条1項)。また、契約を変更する場合も同様です(同条2項)。しかし、一定の要件を充たすことを条件に、電子契約で行うことが可能です(法19条3項)。

 

もっとも、工事請負契約の電子契約で行うためには、以下の2点に留意が必要です。

1.相手方の承諾

法令上、以下の3つの要件を充たす形で相手方の承諾を得ることが必要になります。

  1. 契約締結前に承諾を得ること(法19条3項、令5条の5第1項)
  2. 利用する電磁的措置とファイルへの記録の方式を示すこと(法19条3項、令5条の5第1項、規則13条の5)
  3. 承諾自体を書面または電磁的方法の何れかにより得ること(法19条3項、令5条の5第1項、規則13条の5)

2.法令の要件を充たした電子契約サービス等の利用

 

また、法令上、以下の要件を充たした電子契約サービスを利用する必要があります。

 

  1. 電磁的方法
  2. 技術的要件
  3. 基準

 

なお、記載事項その他の留意点については、建設業法令遵守ガイドライン(第7版)の「2. 書面による契約締結」および発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第3版)の「2. 書面による契約締結」をご参照ください。

建設工事の見積書(法20条2項)

建設業者は、建設工事の注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付する義務があります(法20条2項)。建設業法が改正され、見積書の電子化を認められました。

 

もっとも、見積書の電子化を行うためには、以下の2点に留意が必要です。

 

1.相手方の承諾(法20条3項、令5条の9第1項、規則13条の12、同13条の13)

 

工事請負契約と同様に、見積書の電子化にあたっては相手方の承諾を得る必要があります。



2.国土交通省令で定める方法により提供すること(法20条3項、規則13条の11)

 

工事請負契約の電子化にあたって充足する必要があった技術的要件(法19条3項、規則13条の4第2項)が、見積書の場合には求められていません。

 

そのため、PDFファイルをメールで送付する等の方法で行うことが可能です。

 

なお、記載事項その他の留意点については、発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第3版)の「1. 見積条件の提示等(建設業法第20条第3項、第20条の2)」および建設業法令遵守ガイドライン(第7版)の「1. 見積条件の提示等(建設業法第20条第3項、第20条の2)」をご参照ください。

特定専門工事の元請負人及び下請負人の間の合意書面(法26条の3第3項)

改正により電子化が解禁されました。

 

工事請負契約や見積書とは異なり、相手方の承諾を得ることなく、電子化をすることが可能です。 

 

また、見積書と同様に、PDFファイルをメールで送付する等の方法で行うことが可能ですが、合意が行われた証跡を確実に残す観点からは、工事請負契約と同様に、電子契約サービスを利用することが考えられます。



参照

  1. 建設工事の電子契約についての解説「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する『技術的基準』に係るガイドライン」の解説
  2. 建設業法令遵守ガイドライン(第7版)
  3. 発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第3版))

デジタル改革関連法の一貫?建設業法改正2021の背景は?

従来、建設業法において書面(紙)の作成・交付が必要とされていた書類・契約については、電子化が可能なものとそうでないものがありました。

しかし、電子商取引等を行うにあたり書面の交付あるいは書面による手続きを義務付けている法制度がその拡大の妨げになっており、わが国経済の発展を阻害する一因になっているのではないかとの懸念の声がありました。

そこで、建設業法でも、書面の交付等に代えて相手方の承諾を得たうえであれば書面に記載すべき事項を電磁的措置によって行えることとするなどの改正を行ってきました。すなわち、契約当事者の双方が電磁的措置を行う方が望ましいと判断する場合に限ってその選択肢を与えるものです。

加えて、デジタル改革関連法が2021年9月1日より施行されました。

「デジタル改革関連法」とは、一つの法律を刺すのではなく、6個の法律案を総称したものを言います。

その中でも、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号。以下「整備法」といいます。)は、「デジタル社会形成基本法に基づきデジタル社会の形成に関する施策を実施するため」、関係法令の改正を行うことを目的とした法律になります。

2021年の改正建設業法でも、この法律の4つの柱のうち、「押印・書面の交付等を求める手続の見直し(48法律の改正)」により、所定の要件をみたした場合には、書類・契約の電子化が認められることになりました。

デジタル改革関連法についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

21年9月1日施行!デジタル改革関連法とは〜企業に必要な対応を解説〜

まとめ

2020年10月に施行された改正建設業法改正では、働き方改革や生産性の向上、持続可能な事業環境を整えるための改正が多く行われています。

法改正が実施された背景には、建設業界の高齢化や労働環境の激化、少子化による人材確保の難しさによって法令順守が困難となっている点などに焦点を当てているといえるでしょう。

今回の法改正では、一人親方から大手工務店、各種建築資材メーカーから仲介業者に至るまで、多くの関連企業において対応が必要となっています。

契約書に関してチェックや見直しが必要となる点も多岐にわたるため、あらゆる契約業務の承認や管理、更新手続きの体制も見直しが必要です。

こうした契約業務をワンプラットフォームで最適化するサービスの導入を検討するなどして、法改正と建築業界の興隆に今後も注力していきましょう。