ノウハウ 会社法とは?ビジネスで最低限押さえておきたいポイントを解説!
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年09月2日
会社法とは?ビジネスで最低限押さえておきたいポイントを解説!
会社法とは、会社をめぐる利害関係者の利害調整のためのルールを定める法律を指します。
つまり、会社の設立から解散、組織運営や資金調達など、あらゆるビジネスのルールを定めたものが会社法です。会社法を理解することでビジネスを円滑に進めることができ、それにより健全な企業活動が可能となります。
また、会社法の大部分は、当事者が法律と異なる契約をした場合、その契約が無効となる規定になっています。会社法を正しく理解して、法令違反をしないように気をつけることが大切です。
企業法務に関わりたい、あるいは経営者になりたいのなら、会社法の知識は必須といえるでしょう。
(第960条〜第979条)
第1編の「総則」から第8編の「罰則」まで、膨大な数の条文が規定されているため、すべての条文を判読することは非常に労力を費やします。
そこで、まずは押さえるべき条文第2編「株式会社」、第3編「持分会社」、第5編「組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転」、第7編「雑則」に絞って本記事では解説いたします。
会社の種類
日本の会社は、株式会社が圧倒的に多くを占めますが、会社の種類は株式会社だけではありません。株式会社とは別の会社の形態として、持分会社(法575条1項)というものがあります。これは、合名会社・合資会社・合同会社という3つの形態の総称です。
持分会社の3つの形態は、各会社を構成する社員が有限責任社員か無限責任社員か、によって異なります。
有限責任社員は、会社に出資すべき額を限度として責任を負います(法580条2項)。それに対して、無限責任社員は、会社の債務が残る限りは無限に責任を負うことになります。
まとめると、以下の通りとなります。
株式会社 | 有限責任の株主だけ |
合名会社 | 無限責任社員だけ |
合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員が混在 |
合同会社 | 有限責任社員だけ |
参照:高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦「会社法(第3版)」(2020)
合名会社と合資会社には必ず最低一人は無限責任社員がいることになります。会社債権者は最終的に無限責任社員に対して支払いを求めることができます。
合同会社の例としては、GAFA(Facebookを除く)が有名です。
合同会社は、会社債権者と社員との関係という視点で見ると、株式会社に近いといえます。
しかし、株式会社と違い、出資者と経営者が同一人物かつ、株や株主というものがないので、経営が自由かつ迅速に行えるというメリットがあります。
一方で、「人」に重点を置いているので、人間関係が経営に影響しやすくなります。また日本では株式会社に比べて信用度が低く見られがちであるというデメリットがあります。
以上のように、会社にとってのニーズをきちんと考えて、会社の形態を選ぶようにしましょう。
資金調達、株主、所有と経営の分離、株式譲渡自由の原則
資金調達
株式会社ではどのような事業を行うにせよ、とりあえず資金が必要です。そういった場合、資金をどのように調達するのでしょうか。
方法1 貸付け
まず思いつくのは、銀行などの金融機関からの貸付けを受けるという方法です。
この方法には、以下のような特徴があります。
①銀行等の債権者に、あらかじめ契約で定められた額・率の利息を支払わなければならない。
②期限が来たら、負債を弁済する必要がある。
こうした利息の支払いや負債の弁済は、業績が良く資金に余裕があるときには問題ありませんが、業績が悪いなどの理由で資金に余裕がなければ、会社にとって不都合となります。
方法2 出資
そこで、会社法は、株式会社について、人々から出資を受けるという方法を用意しています。
この方法では、以下の特徴があります。
一つ目は、会社が出資を受ける場合、出資者に支払うべきリターンが不確定であることです。会社の資産から債権者の取り分(負債と利息)を除いた残りの部分に応じて、出資者が受け取るリターンの額も変動します。
二つ目は、その出資金それ自体が、原則として出資者に返却しないことです。一見すると、この点は、出資者にとって不利であるように見えますが、実はそうでもありません。出資者は、剰余金の配当や株式の売却によって、出資金を回収することができるからです。
三つ目は、出資者の権利が、債権者の権利に劣後することです。会社がなくなる場合には、まず会社は債権者に元本と利息を弁済し、その後、残った財産があれば、株主はそこから分配を受けることができます(法150条1項2号、502条)。
参照:高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦「会社法(第3版)」(2020)
以上の特徴を考慮して、2つの資金調達方法から賢く選択できると良いですね。
株主
株式とは、上で述べたように、出資者が出資の対価として得る、会社に対するさまざまな権利の総体を指します。
株主とは、会社から株式の発行を受けて株式を保有する者、または、かかる株式保有者から株式を譲り受けたり、相続するなどして株式を保有する者をいいます。
株主には、剰余金配当や残余財産の分配を受ける権利のほか、株主総会の議決権のように、会社経営に参与する権利も与えられます。
株主の権利の大きさは、原則として、会社が発行した株式の数(発行済株式数)に対する当該株主の保有株式数の割合(持株比率)によって定まります。
例えば、株式会社が剰余金の配当(法453条)をする場合、各株主は、保有株式数に応じて配当財産を受け取る権利があります(法454条3項)。
また、株主総会では、各株主は原則として、保有する株式一株につき一議決権を有します(一株一議決権の原則。法308条1項)。
所有と経営の分離
会社の経営が、構成員たる株主から分離していることを所有と経営の分離といいます。
この仕組みによって、財産があるけれど経営の才能を持たない者も、株主となることにより、経営に携わることができます。また、経営の才能はあるけれど財産のない者は、取締役として経営に関与し、報酬を受け取ることができます。
会社法は、株主のみに会社の構成員としての地位・権利を認めていることになります。
日本では、「社員」というと会社の従業員のことを指すことが多いのですが、法律上、従業員は、会社の社員でなく、会社との間で契約を結んだ者の一人に過ぎません。
参照:田中亘「会社法(第3版)」(2021)
株式譲渡自由の原則
株式会社の大きな特徴は、株式を発行して人々から出資を受けるという方法で資金を調達できる点です。
株主は、所有している株式を譲渡することができます(株式譲渡自由の原則。127条)。
株主は、株式会社の存続中は、原則として会社に対して出資の返還を求める権利がありません。そのため、出資した資本を回収するには、株式の譲渡によることが原則となります。
参照:田中亘「会社法(第3版)」(2021)
計算書類
株式会社は、株主に対して、各事業年度ごとに会社の財産や損益の状況を示すのために会計情報を作成する必要があります。これを計算書類といいます(法435条2項)。
計算書類に加えて、企業グループを一つの会社のように見立てて作成する会計情報である連結計算書類や事業年度途中に会社の財産の状況を把握するための会計情報、いわゆる臨時計算書類を作成する場合もあります(法444条1項)。
これらの会計情報には、次の4つの全部または一部が含まれます。
貸借対照表(Balance Sheet=B/S)
貸借対照表とは、ある一定時点において資産や負債などがどれだけあるのか集計し、これを一覧表の形で表示するものです。
損益計算書(Profit&Loss Statement=P/L)
損益計算書とは、ある一定期間において会社が行った事業に関する活動から生じた収益と、そのための費用の集計です。つまり、会社がどれだけの売上げを実現し、その売上げのためにどれだけの費用をかけたかなどを集計し、これを一覧表の形で表示します。
株主資本等変動書・個別注記表
計算書類には、貸借対照表と損益計算書の他に、株式会社の財産や損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定める書類が含まれます(法435条2項かっこ書)。現在では、株主資本等変動計算書と個別注記表が指定されています(計算規則59条1項)。
株主資本等変動計算書とは、資本金や剰余金など、純資産の部の項目の年度内での増減を表示します。
個別注記表は、会社の状況や会計方針、貸借対照表や損益計算書の内容などについての注記をまとめたものです。
参照:高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦「会社法(第3版)」(2020)
企業買収・再編
買収
企業の買収とは正式な法律用語ではありませんが、何らかの対価と引き換えに他の会社の株式を取得して傘下に置くことです。事業の規模や内容を拡大することで会社の企業価値を高めたい場合には、買収は選択肢の一つとなります。
対象会社の株式から株式を譲り受ける方法
上場会社の株式取得による買収は、特に公開買付け(tender-offer bid/takeover bid:TOB)によって行われることが多いです。
公開買付けとは、対象会社の株式の買付けを、「買付け期間・買取り株数・価格」を公告して、不特定多数の株主から株式市場外で株式等を買い集める制度のことです。
対象会社から募集株式の発行等(法199条以下)を受ける方法
株式の取得による買収には、買収者が対象会社から募集株式の発行等を受けるという方法があります(法199条1項)。あるいは、募集株式の発行等の代わりに募集新株予約権の発行が行われることもあります(法238条)。
再編
再編とは、会社が自ら、またはそのグループ内で行っている事業の一部を他の会社に移転したり、グループ内で事業を1つの会社にまとめたりする行為を指します。無駄を省き、より効率的な経営を行うことで企業価値を高めることを目的としています。
合併とは、2つ以上の会社が1つの会社になることです。
当時会社のうち一社(存続会社)が合併後も存続し、合併により消滅する他の当事者(消滅会社)から権利義務一切を承継する方法である吸収合併が多く使われています。
分割とは、ある会社(分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることをいいます。
会社分割は、事業の買収やグループ企業の再編等に活用されています。
株式交換とは、ある株式会社(株式交換完全子会社)がその株式の全部を他の会社(株式交換完全親会社)に取得させることをいいます(法2条31号)。
株式交換によれば、株主総会の多数決による承認を得れば、反対する株主の保有株式を含めてすべての株式を取得できます。そのため、株式交換は、他社の完全買収の手段として多く用いられています。
株式移転とは、1つまたは2つ以上の株式会社が、その株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます(法2条32号)。2つ以上の会社が共同して株式移転することもできます。
参照:高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦「会社法(第3版)」(2020)
田中亘「会社法(第3版)」(2021)
ビジネスシーンで会社法がどのように役立つか
取締役会議事録
会社法では、取締役会議事録については、出席した取締役及び監査役による署名又は記名押印が必要です(法369条3項)。取締役会議事録を電子化する場合には、署名又は記名押印に代わる措置として電子署名することが必要です(同条4項、同法施行規則225条1項6号、同条2項)。
(取締役会の決議) 第三百六十九条 3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 |
(電子署名) 第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。 2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。 |
まとめ
会社法は、膨大な条文に加えて、独特な言葉の使い回しや表現が使われており、とっつきづらいなと思う方も多いかもしれません。しかし、ビジネスマンが身につけておかなければならない知識がたくさん詰め込まれています。今のうちからこつこつと学んでいきましょう。
▶関連記事:進む?株主総会の電子化 株主総会資料電子提供制度が2022年施行予定