ノウハウ 2021年9月1日施行!デジタル改革関連法とは〜企業に必要な対応を解説〜
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年09月1日
2021年9月1日施行!デジタル改革関連法とは〜企業に必要な対応を解説〜
デジタル改革関連法が2021年9月1日より施行されます。企業においていかなる準備が必要なのか、解説していきます。
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デジタル改革関連法の基本情報
公布日:令和3年5月19日
施行日:原則、上記6法とも令和3年9月1日(「施行までに一定の準備期間が必要なものを除く。」等の一部例外あり)
「デジタル改革関連法」とは、一つの法律を刺すのではなく、以下の6個の法律案を総称したものを言います。
民間企業が対応すべき法律についてはこちらで詳しく解説しています。
では、各法律について概要を見ていきましょう。
各法律の概要
①デジタル社会形成基本法
以下の趣旨や目次を参照してもわかるように、具体的な施策や法律の改正などを定めたものではなく、デジタル社会を推進するにあたっての基本理念、国等の責務、基本方針などを定めた法律です。
【趣旨】
「デジタル社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針、国、地方公共団体及び事業者の責務、デジタル庁の設置並びに重点計画の作成について定める。」
【目次】
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 基本理念(第三条―第十二条)
第三章 国、地方公共団体及び事業者の責務等(第十三条―第十九条)
第四章 施策の策定に係る基本方針(第二十条―第三十五条)
第五章 デジタル庁(第三十六条)
第六章 デジタル社会の形成に関する重点計画(第三十七条・第三十八条)
②デジタル庁設置法
上記のデジタル社会形成基本法36条の「別に法律に定めるところにより」(下線部)とされている「法律」に該当するのが、このデジタル庁設置法になります。
【趣旨】
「デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務とするデジタル庁を設置することとし、その所掌事務及び組織に関する事項を定める。」
【内容】
- デジタル庁の所掌事務
- デジタル庁の組織(デジタル大臣の設置、関係行政機関の長に対する勧告権等、デジタル監の設置、デジタル社会推進会議を設置など)
引用・参照:デジタル庁設置法案の概要
③デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律は、「デジタル社会形成基本法に基づきデジタル社会の形成に関する施策を実施するため」、関係法令の改正を行うことを目的とした法律になります。
この法律には以下の4つの柱があります。
以下、この4つの柱について内容を解説していきます。
個人情報保護制度の見直し(個人情報保護法の改正等)
- 個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化。
- 医療分野・学術分野の規制を統一するため、国公立の病院、大学等には原則として民間の病院、大学等と同等の規律を適用。
- 学術研究分野を含めたGDPR(EU一般データ保護規則)の十分性認定への対応を目指し、学術研究に係る適用除外規定について、一律の適用除外ではなく、義務ごとの例外規定として精緻化。
- 個人情報の定義等を国・民間・地方で統一するとともに、行政機関等での匿名加工情報の取扱いに関する規律を明確化。
施行日:公布から1年以内(地方公共団体関係は公布から2年以内)
マイナンバーを活用した情報連携の拡大等による行政手続の効率化(マイナンバー法等の改正)
- 国家資格に関する事務等におけるマイナンバーの利用及び情報連携を可能とする。
- 従業員本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供を可能とする。
施行日:公布日(①のうち国家資格関係事務以外(健康増進事業、高等学校等就学支援金、知的障害者など))、公布から4年以内(①のうち国家資格関係事務関連)、令和3年9月1日(②)
マイナンバーカードの利便性の抜本的向上、発行・運営体制の抜本的強化(郵便局事務取扱法、公的個人認証法、住民基本台帳法、マイナンバー法、J-LIS法等の改正)
<マイナンバーカードの利便性の抜本的向上>
- 住所地市区町村が指定した郵便局において、公的個人認証サービスの電子証明書の発行・更新等を可能とする。
- 公的個人認証サービスにおいて、本人同意に基づき、基本4情報(氏名、生年月日、性別及び住所)の提供を可能とする。
- マイナンバーカード所持者について、電子証明書のスマートフォン(移動端末設備)への搭載を可能とする。
- マイナンバーカード所持者の転出届に関する情報を、転入地に事前通知する制度を設ける。 等
施行日:公布日(①)、公布から2年以内(①以外)
<マイナンバーカードの発行・運営体制の抜本的強化>
- 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)による個人番号カード関係事務について、国による目標設定、計画認可、財源措置等の規定を整備。
- J-LISの代表者会議の委員に国の選定した者を追加するとともに、理事長及び監事の任免に国の認可を必要とする等、国によるガバナンスを強化。
- 電子証明書の発行に係る市町村の事務を法定受託事務化。 等
施行日:令和3年9月1日
押印・書面の交付等を求める手続の見直し(48法律の改正)
本見直しによる改正は、
❶押印を不要とするもの(22法律)
❷書面の交付につき電磁的記録のよる提供を可能にするもの(32法律)
に大別されます(6法律につき重複⇨合計48法律)。
【改正イメージ】
❶押印を不要とするもの(22法律) | ❷書面の交付につき電磁的記録のよる提供を可能にするもの(32法律) | ||
改正前 | 改正後 | 改正前 | 改正後 |
第○条 △△が、これに署名し、印をおさなければならない。 | 第○条 △△が、これに署名しなければならない。 | 第○条 △△は、書面により交付しなければならない。 (新設) | 第A条 (略) 2 △△は、前項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、相手方の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供することができる。この場合において、△△は同項の書面を交付したものとみなす。 |
以下、改正される全ての法律のまとめです。
【改正法まとめ】
改正された法律 | ❶押印の見直し | ❷書面の見直し |
《内閣府関係》 | ||
| ✖︎ | 特定専門家派遣の申込みの際に添付する理由書等の書面の電子化 等 |
《金融庁関係》 | ||
| 監査報告書における押印の廃止等 | 財務書類証明書の電子化 |
| ✖︎ | 会員の表決権の行使の電子化 |
| ✖︎ | 総会の招集書面の電子化 |
| ✖︎ | 権利者集会の書面による決議等の電子化 |
| ✖︎ | 被害回復分配金の支払決定の送付 |
《総務省関係》 | ||
| 直接請求に係る署名簿への押印の廃止 | 認可地縁団体の総会に出席しない構成員による表決権の行使の電子化 |
| 公害等調整委員会が行う不服の裁定に係る申請書への押印廃止 | ✖︎ |
| 政党等の登記手続における添付書面への押印廃止(登録印等の押印を求めるものを除く) | ✖︎ |
| 口頭で審査請求を行う陳述人の押印廃止 | ✖︎ |
《法務省関係》 | ||
| 領事が作成する公正証書遺言及び秘密証書遺言の封紙に対する遺言者及び証人の押印廃止 | 受取証書の電子化 |
| ✖︎ | 定期借地権の設定や定期建物賃貸借における契約に係る書面、事前説明書の電子化 |
| 抵当証券交付申請書への押印廃止 | ✖︎ |
| 戸籍の届書への押印廃止 | ✖︎ |
| 区分所有者の集会の議事録における押印の廃止 | 復旧決議に伴う買取請求に関する通知等の書面の電子化 |
| ✖︎ | 被災地短期借地権設定契約における契約書面の電子化 |
| 刑事収容施設における審査の申請等に係る書面への押印廃止 | ✖︎ |
《財務省関係》 | ||
| 通関士における押印廃止 | ✖︎ |
《厚生労働省関係》 | ||
| 死産の届出に関する書類への捺印廃止 | ✖︎ |
| 年金数理に関する業務に係る書類への押印廃止 | ✖︎ |
| 社会保険労務士が申請書等(省令で定めるものに限る。)を作成した場合等において、その作成の基礎となった事項等を付記等をした際の押印廃止 | ✖︎ |
| 年金数理に関する業務に係る書類への押印廃止 | ✖︎ |
| 存続厚生年金基金に係る年金数理に関する業務に係る書類への押印廃止 | ✖︎ |
《農林水産省関係》 | ||
| ✖︎ | 農事組合法人の総会に出席しない組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
| ✖︎ | 清算人が総会に提出する決算報告書等の電子化 |
《経済産業省関係》 | ||
| ✖︎ | 会員による議決権の行使の電子化 |
《国土交通省関係》 | ||
| ✖︎ | 建設工事の見積書の電子化 |
| 設計図書への押印の廃止 | 設計受託契約等に係る重要事項説明書の電子化 |
| 宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書等への押印の廃止 | 宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書の電子化 |
| 鑑定評価書への押印の廃止 | ✖︎ |
| 不動産特定共同事業契約の成立前に交付する書面等への押印の廃止 | ✖︎ |
| マンション管理業者による管理受託契約に係る重要事項説明書への押印の廃止 | ✖︎ |
| 不動産鑑定士補による鑑定評価書への押印の廃止 | ✖︎ |
| ✖︎ | 保証金の支払請求に係る書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
| ✖︎ | 解体工事等に関する発注者への説明書面の電子化 |
| ✖︎ | サービス付き高齢者向け住宅に係る契約締結前説明書面の電子化 |
| ✖︎ | 組合員による議決権の行使における書面の電子化 |
なお、
❶押印の見直しの対象にならず、押印の義務付けが存続するものとして、
- 【行政手続】商業・法人登記申請、相続税申告における押印
- 【民間手続】定款への発起人の押印、取締役会議事録への押印 等
❷書面の見直しの対象にならず、書面性の要求が存続するものとして、
- 消費者による契約解除の申込み
- 信用金庫法等における書面による役員解任請求 等
(※消費者・弱者保護や紛争予防の観点等から書面とすることに意義が認められるものは対象としない。)
が挙げられます。
施行日:令和3年9月1日(施行までに一定の準備期間が必要なものを除く。)
引用・参照:デジタル改革関連法案について、押印・書面の見直しに係る法改正事項について
その他3法
公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律
- 希望者において、マイナポータルからの登録及び金融機関窓口からの口座登録ができるようにする
- 緊急時の給付金や児童手当などの公金給付に、登録した口座の利用を可能とする
⇒国民にとって申請手続の簡素化・給付の迅速化
預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律
⇒国民にとって相続時や災害時の手続負担の軽減等の実現
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律
- 地方公共団体の基幹系情報システムについて、国が基準を策定し、当該基準に適合したシステムの利用を求める法的枠組みを構築
⇒地方公共団体の行政運営の効率化・住民の利便性向上等
デジタル改革関連法の全体像
民間企業に関連するもの
まず、デジタル改革関連法の中で企業が注意して見るべき法律は、「社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」です。特に、4本の柱の中の2.3.4で紹介いたしました「押印・書面の交付等を求める手続の見直し(48法律の改正)」に関する点が重要です。
以下、改正された48法の中で、ビジネスに関係してくる法律をリストアップいたしました。
改正された法律 | ❶押印の見直し | ❷書面の見直し |
《法務省関係》 | ||
| 領事が作成する公正証書遺言及び秘密証書遺言の封紙に対する遺言者及び証人の押印廃止 | 受取証書の電子化 |
| ✖︎ | 定期借地権の設定や定期建物賃貸借における契約に係る書面、事前説明書の電子化 |
《国土交通省関係》 | ||
| ✖︎ | 建設工事の見積書の電子化 |
| 設計図書への押印の廃止 | 設計受託契約等に係る重要事項説明書の電子化 |
| 宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書等への押印の廃止 | 宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書の電子化 |
| 不動産特定共同事業契約の成立前に交付する書面等への押印の廃止 | ✖︎ |
| マンション管理業者による管理受託契約に係る重要事項説明書への押印の廃止 | ✖︎ |
以上の改正について、詳しく見ていきます。
民法
【受取証書の電子化】
改正前は、債務者が弁済をする場合には、弁済と引き換えに、受取証書(書面)の交付を請求することができました。改正後は、債務者は、書面ではなく電磁的記録の形式で交付するよう請求できるようになります。
改正前 | 改正後 |
(受取証書の交付請求) 第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。 (新設) | (受取証書の交付請求等) 第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。 2弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。 |
借地借家法 ※公布日より1年以内(附則第1条4号)
【定期借地権の設定や定期建物賃貸借における契約に係る書面、事前説明書の電子化】
前提として、借地借家法は、借主保護のための法律であり、原則として借地契約、建物賃貸借契約の更新をしない旨の特約を結ぶことはできません(5条、6条、9条、26条〜28条、30条参照)。その例外として、50年以上の借地契約及び期間の定めがある建物賃貸借については、書面によってすることを条件に更新しない旨の特約ができると規定しています(定期借地権22条1項、定期建物賃貸借38条1項)。
本改正により、その書面について、電磁的記録によることが認められました(改正後22条2項、38条2,4項)。
改正前 | 改正後 |
(定期借地権) 第二十二条(略) (新設) (定期建物賃貸借) 第三十八条(略) (新設) 2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 (新設) 以下略 | (定期借地権) 第二十二条(略) 2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、 前項後段の規定を適用する。 (定期建物賃貸借) 第三十八条(略) 2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。 3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。 以下略 |
〈参照条文〉
(定期借地権)
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
建設業法
【建設工事の見積書の電子化】
建設業者は、建設工事の注文者から請求を受けた場合には、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書(書面)を交付する義務を負っていました(20条2項)。
本改正により、その見積書の交付の電子化が認められました。
その他、36条の3についても改正がされていますが、義務規定ではないため、ここでは割愛いたします。
改正前 | 改正後 |
(建設工事の見積り等) 第二十条(略) 2(略) (新設) 3(略) | (建設工事の見積り等) 第二十条(略) 2(略) 3建設業者は、前項の規定による見積書の交付に代えて、政令で定めるところにより、建設工事の注文者の承諾を得て、当該見積書に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該建設業者は、当該見積書を交付したものとみなす。 4(略) |
建築士法
【設計受託契約等に係る重要事項説明書の電子化】
建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約する際に、管理建築士等をして、建築主に対して、所定の重要事項について書面を交付して説明する義務があります(建築士法24条の7第1項)。本改正により、当該書面の電子化が認められました(改正後24条の7第3項)。
改正前 | 改正後 |
(重要事項の説明等) 第二十四条の七 建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、管理建築士その他の当該建築士事務所に属する建築士(次項において「管理建築士等」という。)をして、設計受託契約又は工事監理受託契約の内容及びその履行に関する次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。 一~六(略) 2(略) (新設) | (重要事項の説明等) 第二十四条の七 建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、管理建築士その他の当該建築士事務所に属する建築士(次項及び第三項において「管理建築士等」という。)をして、設計受託契約又は工事監理受託契約の内容及びその履行に関する次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。 一~六(略) 2(略) 3管理建築士等は、第一項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該建築主の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該管理建築士等は、当該書面を交付したものとみなす。 |
宅地建物取引業法 ※公布日より1年以内(附則第1条4号)
【宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書等への押印の廃止】
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等(宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者)に対し、宅地建物取引士をして、重要事項説明書を公布して説明する義務を負っています(宅地建物取引業法35条)。
その際、宅地建物取引士による記名押印義務が定められていましたが、改正後は記名義務のみとなります。
改正前 | 改正後 |
(重要事項の説明等) 第三十五条(略) 2~4(略) 5 第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、宅地建物取引士は、当該書面に記名押印しなければならない。 6(略) 7 宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。 | (重要事項の説明等) 第三十五条(略) 2~4(略) 5 第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、宅地建物取引士は、当該書面に記名しなければならない。 6(略) 7 宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない。 |
【宅地建物の売買契約等に係る重要事項説明書の電子化】
前述の重要事項説明書の電子化を認める改正となっております。
改正前 | 改正後 |
(新設) (新設) | 8 宅地建物取引業者は、第一項から第三項までの規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等、第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方又は第三項に規定する売買の相手方の承諾を得て、宅地建物取引士に、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第五項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供させることができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該宅地建物取引士に当該書面を交付させたものとみなし、同項の規定は、適用しない。 9 宅地建物取引業者は、第六項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第六項の規定により読み替えて適用する第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等である宅地建物取引業者又は第六項の規定により読み替えて適用する第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方である宅地建物取引業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第七項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。 |
- 不動産特定共同事業法
【不動産特定共同事業契約の成立前に交付する書面等への押印の廃止】
不動産特定共同事業者は、不動産特定共同事業契約の成立前及び成立時に、その内容及び履行に関する事項について、申込者に対して書面を交付して説明しなければならない旨規定しています(不動産特定共同事業法24,25条)。その際、業務管理者による記名押印義務が定められていましたが、改正後は記名義務のみとなります。
※当該書面の電子化は既に同3項によって認められています。
また、財産管理報告書の交付についても押印義務がなくなりました(同28条3項)。
なお、不動産特定共同事業とは、複数の投資家が出資して、不動産会社などが現物の不動産に関する事業を行い、その運用収益を投資家に分配する契約(不動産共同投資契約)に基づく事業のことを指します。
改正前 | 改正後 |
(不動産特定共同事業契約の成立前の書面の交付) 第二十四条(略) 2 不動産特定共同事業者は、前項の規定により交付すべき書面を作成するときは、業務管理者をして、当該書面に記名押印させなければならない。 | (不動産特定共同事業契約の成立前の書面の交付) 第二十四条(略) 2不動産特定共同事業者は、前項の規定により交付すべき書面を作成するときは、業務管理者をして、当該書面に記名させなければならない。 |
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律
【マンション管理業者による管理受託契約に係る重要事項説明書への押印の廃止】
マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(管理受託契約)を締結しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する重要事項について説明をさせなければなりません。この場合において、マンション管理業者は、当該説明会の日の一週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない(72条1項)とされています。
その際、管理業務主任者による記名押印義務が定められていましたが、改正後は記名義務のみとなります。
改正前 | 改正後 |
(重要事項の説明等) 第七十二条(略) 2~4(略) 5 マンション管理業者は、第一項から第三項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。 | (重要事項の説明等) 第七十二条(略) 2~4(略) 5 マンション管理業者は、第一項から第三項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名させなければならない。 |
- 各法律の施行日
「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「法」)の附則第1条より、
2021年9月1日施行(附則第1条柱書) | 公布日より1年以内(附則第1条4号) | 公布日より2年以内(附則第1条7号) |
・民法の改正(法1条) ・不動産特定共同事業法の改正(法37条) | ・借地借家法の改正(法35条) ・建築士法の改正(法13条) ・宅建業法の改正(法17条) | ・建設業法の改正(法10条) ・マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正(法43条) |
不動産業界の電子契約が解禁!
ここまで見てきて、お気づきの方もいるかもしれませんが、デジタル改革関連法における上記改正がされたことにより、不動産業界の電子契約が推進されることとなっています。
具体的にいうと、国土交通省関係の法律が多く改正され、それまで書面が要求されていたものについて電子化することが認められる内容の改正が多くされたため、電子契約が可能となるのです。
まず、上記のように借地借家法の改正により、定期借地、定期借家契約の書面について電磁的方法による措置に代えることができるようになり、電子締結が可能になります。
次に、宅建業法の改正によって、下記書類の書面交付が電磁的方法による措置に代えることが可能になります。
- 売買の媒介契約書(宅建業法34条)
- 賃売の重要事項説明書(宅建業法35条)
- 賃貸借契約書(宅建業法37条)
- 売買契約書(宅建業法37条)
最後に、マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正により、マンション管理委託契約書に関する電子交付も自由に可能となっています。
以上の改正から、実質的に不動産業界の電子契約は全面解禁されたといえます。
なお、借地借家法と宅建業法の改正は「施行までに一定の準備期間が必要なもの」に含まれており、施行日を公布日から最大1年間遅らせるとされていますので、直ちに前面解禁というわけではなく、施行後において解禁されるという点に注意が必要です。
【詳しく知りたい方はこちら】電子契約や電子契約システムについてはこちらの記事で詳しく解説!
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まとめ〜電子契約のすすめ〜
デジタル改革関連法は、デジタル社会の実現に向けた6法の総称です。これらによって、デジタル庁の設置、マイナンバー制度の見直し、書面の電子化の解禁など、着々とデジタル社会実現に向けた準備が整ってきています。
そして、今回の改正で、長らく書面性を要求してきた不動産業界についても電子締結が解禁されています。また、多くの企業が既に電子締結クラウドサービスなどを導入し、デジタル社会への適応を図っています。
この波に乗り、電子契約のためのインフラ整備を企業内部で進めていくべきことをお勧めいたします。