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ノウハウ 【2022年施行】育児・介護休業法の改正!生活はどう変化する?

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年08月26日

【2022年施行】育児・介護休業法の改正!生活はどう変化する?

【2022年施行】育児・介護休業法の改正!生活はどう変化する?

育児・介護休業法が2021年6月9日に公布され、2022年4月より段階的に施行されます。

 

今回の改正では、主に育児休業に焦点があてられ「出生時育児休業制度」の新設により「男性版産休」などとマスメディアにもてはやされています。

 

しかし、今回の法改正は男性の育児休業の促進に限ったものではなく「男性女性問わずに育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」「出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設」を趣旨としています。

 

具体的にどのように改正されるのか、また今回の改正に至った背景、今後企業が必要とされる対応などを解説していきます。



 

 

育児・介護休業法とは

 

育児・介護休業法とは、正式名称を「育児休業・介護休業等育児又は家族介護をおこなう労働者の福祉に関する法律」といいます。

 

育児・介護休業法の目的は「育児や介護を理由に、労働者が退職せずに仕事を続けられるように支援すること」です。

 

元は1992年に「育児休業法」として施行され、その後1995年に「育児・介護休業法」へと改正されました。

 

前回の2019年12月27日に公布され、2021年1月1日に施行された育児・介護休業法は以下の2点が改正されています。

 

改正前

改正後

1日単位、または半日単位のみ取得可能

時間単位での取得可能

1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得不可

全労働者が取得可能




育児・介護法の改正ポイントは?

 

2021年6月9日に公布され、2022年4月から順次施行されていく「育児・介護休業法」の概要は次のとおりです。


育児・介護休業法の概要

引用: 厚生労働省「 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要」(令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布)



今回改正されたポイントを大きく分けると次の5つです。

 

  • 本人または配偶者に育児休業を取得するかの意思確認や育児休業制度の周知、雇用環境の整備を義務化
  • パートなどの非正規労働者に対する育児休業取得の要件の緩和
  • 【出生時育児休業制度】を新設
  • 育児休業を分割して2回まで取得することが可能となる
  • 常時雇用の労働者数が1,000人超の事業主に対し育児休業の取得状況を公表する義務付け

 

上記は段階を経て2022年4月、2022年秋以降、2023年4月に順次施行されていきます。

 

それぞれを詳しくみていきましょう。

 

育休の取得意思確認や制度の周知と雇用制度環境の整備を義務化

 

まず今回の改正では「雇用環境整備」「個別の周知・意向確認」の措置が事業主の義務となり、次のように定められています。(2022年4月1日施行)

 

  • 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)
  • 妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

 

つまり育児休業を申請しやすい雇用環境作りのため、育児休業に係る研修制度と育児休業の相談窓口の設置が事業主の義務となります。

 

また男性女性問わず、妊娠出産を申し出た従業員に「育児休業の取得意志の確認」と「制度の周知」を事業主に義務付けすると定めています。(具体的な周知、意向確認の詳細については、今後厚生労働省よりガイドラインが発表されますので注視していきましょう。)

 

これまで男性従業員が妻の妊娠または出産を申し出た際、企業側から育児休業を取得するかの意志確認が行われた割合は大変少ないものでした。

 

男性従業員は「育児休業を取得できる制度がある」と知っていますが、前例がないこともあり育児休業を取得しづらい企業風土がありました。

 

しかし今回の改正により、男性女性問わず全ての従業員が育児休業を取得しやすい柔軟な雇用環境となっていくでしょう。

 

非正規労働者に対する育休取得要件の緩和

 

パートやアルバイト、契約社員など非正規労働者に対する育児・介護休業の取得要件が緩和されます。(2022年4月1日から施行)

 

現行と改正後がどのように変わるのか、次に表で示します。

 

現行の育児休業取得の対象者

改正後の育児休業取得の対象者

引き続き雇用された期間が1年以上

廃止

1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

存知



改正後は「引き続き雇用された期間が1年以上」が廃止され、無期雇用労働者と同様の取扱いとなります。

 

ただし、労使協定を締結した場合には、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者の対象から除外される可能性があります。

 

【出生時育児休業制度】を新設

 

今回の改正により、出生時育児休業制度が新設されました。

 

この改正は公布日から1年6月を超えない範囲内に定めるとされているため、2022年の秋以降に施行となるでしょう。

 

政府は男性従業員の育児休業取得率を、2025年には30%に引き揚げる目標を掲げています。

 

そのため今回の出生時育児休業制度は、男性の育児休業取得促進のために設けられた制度といえるでしょう。

 

具体的な内容を次に示します。

 

  • 出生後8週間までの間に2回に分けて分割の取得が可能(4週間まで取得可能)
  • 休業する2週間前までに申請すれば取得可能
  • 労使の合意のもと、休業中の就業が可能



現行の育児休業制度は原則分割取得が不可能だったのに対し、新設される出生時育児休業制度は、産後8週までの間に2回に分けての分割取得が可能となります。(4週まで取得可能)

 

これまでの育児休業制度と平行して設けられるため、出生後8週までのあいだは現行の育児休業制度と出生時育児休業制度のどちらかを選択できます。

 

たとえば産後8週までの間でしたら、次のように柔軟な育児休業の取得が可能です。

 

  • 1回目の育児休業を妻子が退院するタイミングで取得し、一旦復職する
  • 2回目の育児休業を、妻子が里帰りから戻るタイミングで取得する

 

さらに現行の育児休業制度は原則1カ月前に申請することが義務付けられていますが、改正後は2週間前の申請で取得が可能です。

 

これによって予定より出産が早まった、または遅くなったなどの事態に対応ができるでしょう。

 

最後に現行の育児休業制度は休業中の就業は禁止でしたが、改正後は可能となります。

 

これによりどうしても外せないミーティングなどへの出席が可能となりますので、より育児休業が取得しやすくなるでしょう。

 

ただし休業中の就業は労働者の意に反したものとならないよう、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で事前に調整した上でのみ可能となります。

 

 具体的な流れは以下のとおりです。

 

  1. 労働者が就業しても良い場合は事業主にその条件を申出
  2. 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
  3. 労働者が同意した範囲で就業



育休が2回まで分割して取得可能となる

 

育児休業が2回まで分割して取得可能となります。(出生時育児休業制度をのぞく)

 

この改正においても前述のとおり、公布日から1年6月を超えない範囲内に政令で定めるとされているため、2022年の秋以降に施行となるでしょう。

 

現行と改正後がどのように変わるのか、次に表で示します。

 

育児・介護休業法

現行

改正後

分割

原則不可

2回まで取得可能

育休開始日

1歳~1歳半・1歳半~2歳の初日に限定

柔軟に設定可能



この改正により、以下の図のように夫婦が交代しながら育児休業が取得できるようになるでしょう。

 

男性は出生時育児休業制度と合わせ、最大で合計4回取得できます。


制度改正により実現できる働き方、休み方のイメージ

引用:厚生労働省「育児休業給付関係」

 

育児休業の取得状況を公表する義務付け

 

2023年4月1日からは、常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主に対し、育児休業の取得状況について公表する義務が生じます。

 

この改正の目的は、育児休業を取得しやすい環境整備を企業側へ意識づけするものでしょう。育児休業の取得状況を公表することは男性の会社選びの判断基準ともなります。

 

育児休業取得率が高い会社は少子高齢化が進み働く世代が減少していくなか、優秀な人材確保にもつながっていくでしょう。

 

育児・介護法改正で企業が必要な対応は?

 

ではここからは育児・介護休業法の改正によって企業が必要とされる対応をみていきます。

 

まずは育児・介護休業法の改正に伴い、就業規則の「育児介護に関する項目」を改正後の法令に準ずるよう修正する必要があります。

 

厚生労働省のホームページに規定例が公開されているため、参考にするのもよいでしょう。

 

参照:厚生労働省「就業規則への記載はもうお済みですか‐育児・介護休業等に関する規則の規定例‐)

 

改正の第一段階である2022年4月1日から、育児休業の制度に係わる研修や相談窓口の開設が義務付けされるため、企業側はそのための準備を急ぐ必要があります。

 

また男性女性問わず妊娠出産を申し出た従業員に対し、育児休業取得の意向確認が事業主に義務付けられます。

 

これにより男性従業員が育児休業を取得する割合が増えますので、従業員が安心して育児休業を取得できるような対策が必要となってくるでしょう。

 

まずは属人化している業務を洗いだし、標準化を進めることがもとめられます。

 

属人化とは特定の従業員が業務を受け持つことで、担当者以外の従業員がその業務の内容がわからないことを示します。

 

属人化によって、他の人に迷惑がかかるという思いから育児休暇を取得しづらい従業員がでるのを防ぐためです。

 

具体的には次のような対策が必要となってくるでしょう。

 

  • 共有するマニュアルの作成
  • 業務の仕組みを簡素化する
  • チーム化して業務をフォローし合う



最後に今回の改正は義務ですので、怠った企業は労働局による指導勧告の対象となります。

 

虚偽報告や報告を怠った場合は企業名の公表や過料などの行政指導が行われるため、早めに改正点を洗いだし管理方法を検討しておきましょう。



男性の育児休業の現状は?



厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2020年度の男性の育児休業取得者の割合は12.65%(政府目標は13%)と前年度の7.48%よりかなり向上しました。


育児休業取得率のグラフ。男性は徐々に増加している

引用:厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要」

 

とはいえ2021年1月18 日発表の労働政策審議会建議では、2019年においての男性の育児休業取得に関して以下のような報告がされています。

 

  • 男性が育児休業を取得した期間の8割が1カ月未満
  • 育児休業の取得を希望していた男性労働者のうち制度の利用を希望していたが、できなかった人の割合は約4割
  • 「育児休業を取得する意向確認の働きかけが企業側からあったか」の問いに、男性従業員の6割以上がなかったと回答

 

以上の結果から、男性従業員の休業取得の希望が十分かなっていない現状がうかがえます。

 

政府は2025年までに男性の育休取得率を30%に引き上げる目標を達成させるためにも、育児休業を取得しやすい環境を整備するためには「事業主による労働者への個別の働きかけや、職場環境の整備を進めることが有効」だとの判断から今回の改正に至った模様です。

 

まとめ

 

本記事では、2021年6月9日に公布され、2022年4月より段階的に施行される育児・介護休業法について解説してきました。

 

育児・介護休業法とは、正式名称を「育児休業・介護休業等育児又は家族介護をおこなう労働者の福祉に関する法律」といい、「育児や介護を理由に、労働者が退職せずに仕事を続けられるように支援すること」を目的とした法律です。

 

今回の育児・介護休業法の改正は、2022年4月・2022秋以降・2023年4月と段階を経て順次施行されていきます。

 

第一段階として2022年4月1日からは、育児休暇を取得しやすい雇用環境整備が事業主に義務付けされます。

 

そのため、企業側は育児休業に係る研修制度の対策と育児休業の相談窓口の設置を急ぐ必要があるでしょう。

 

2022年秋以降の第二段階では男性版産休とも呼ばれる「出生時育児休業制度」が施行されるため、企業側には業務の標準化がもとめられます。

 

これまで属人化されていた業務に関しては、共有できるマニュアルを作成したりチーム化したりして業務をフォローし合うなどの対策を講じていく必要があるでしょう。

 

なお今回の改正は全事業主に義務付けされますので、大企業・中小企業問わず従業員が柔軟な育児休業を取得できるよう、事業主は早めに管理方法を検討していく必要があります。