ノウハウ 契約書の甲乙丙の順で?割印の位置や失敗しないためのコツを伝授
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年08月20日
契約書の甲乙丙の順で?割印の位置や失敗しないためのコツを伝授
契約書の証明のために必要とされている割印(わりいん)ですが、そもそもなぜ押さなければならないのかご存知ですか?また、割印を押すときは契約書のどこに押すのが正しいのでしょうか?
この記事では、契約書における正しい割印の位置や割印と契印、消印の違いなどをご説明します。割印についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
契約書における割印とは?
ビジネスシーンで必要となる契約書。そんな契約書では、署名の隣に押す契約印のほかにも、契約書の上部や見開き部分などにいくつか押印することがあります。そのうちのひとつが割印です。契約書を作成する際に必要だと知っていても、そもそも割印は何のために押すのか知っている人は案外少ないでしょう。ここでは割印の役割について、簡単にご紹介します。
割印の役割
割印とは、同じ契約書が複数存在する場合に、各契約書にそれぞれ印影がかかるように押す印鑑のことです。印影を分割して契約書に残すことから、割印と呼ばれています。この割印は、契約書の同一性、非改ざん性を証明するために使用されます。
では、なぜ割印を契約書に押すことで、同一性・非改ざん性を示すことができるのでしょうか?一般的に契約書は同じものを2部以上作成し、契約を取り交わした企業がそれぞれ1部ずつ保管します。この際、割印を行うと、後々契約書を照らし合わせたときに印影のずれがないかどうかを確かめられます。印影のずれがなければ、各企業が持つ契約書が同一時に作成されており、互いに認めあった同じ内容のものであること(同一性)を示すことが可能です。
もし、割印が片方の契約書においてずれていたり、印影自体が契約書になかったりする場合、その契約書は同一の契約書ではないと判断できます。加えて、通常割印は契約を結ぶ双方の印鑑が必要なので、どちらかが勝手に契約書を改ざんすることを防止(非改ざん性)できるのです。
割印は、企業間の契約書のほかに、原本と写し、契約書と覚書などの関係性を示したいときにも使用されます。ただし後述しますが、収入印紙に使用するものは消印と呼ばれます。印鑑を押す媒体によって、呼び名が変わるため注意しましょう。
割印は必須ではない
前述したように、契約書の同一性、非改ざん性を示すのが割印の役割です。「これまで契約書に割印を押していなかったが、契約書として認められないのでは」と不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、割印はあくまでも同一性、非改ざん性を示すためのものであり、割印がないからといって、契約書の法的効力がなくなる訳ではありません。
ですが、万が一トラブルが起きた際、割印がないと同一の契約書だと証明ができず、被害を受けるおそれがあります。契約書の書き換えが起きた場合に、不利になることもあるため、トラブルを避けるためにも紙の契約書の場合は、割印を忘れずに押しましょう。
ちなみに、海外の企業などと契約を取り交わす場合は、割印を押すは必要ありません。そもそも契約書に印鑑を押すのは日本の文化であり、海外ではサインが一般的であるからです。それぞれの文化に従い、契約書を作成するようにしましょう。
電子契約書の場合の割印
近年、企業においてさまざまなITツールの導入が進んでいます。契約業務に関しても、脱はんこ化やテレワーク推進などにより契約書管理システムを利用する企業が増えてきていますが、電子契約書で契約を取り交わす際、割印はどのように押すのでしょう。
実は、電子契約では改ざんをされないようなファイルで契約書を作成・共有するため、契約した時点で契約書の同一性・非改ざん性が証明できます。また、先に説明した通り、割印の有無と契約書の効力に関連性はないため、電子契約書では割印を押す必要はありません。割印を押す手間を省き、よりスムーズに契約を取り交わしたいなら、電子契約サービスの導入を検討してみてもよいでしょう。
ちなみに電子契約を取り交わす場合は、電子署名とタイムスタンプによって、「だれが、何を、いつ」契約したかがわかる仕組みになっています。電子署名とは、紙の契約書における印鑑やサインのように、電子文書が本人によって作成されたこと(本人証明)、また改ざんされていないこと(非改ざん証明)を証明するためのものです。ただ電子上で署名するだけでなく、電子証明書の発行や認証局とのやり取りを通して、デジタル上で正式な署名であることがわかる仕組みになっています。
一方、タイムスタンプとは、暗号情報などが記載された時刻スタンプを押すことで、その時刻に文書が存在していたこと(存在証明)、またその時刻以降文書が改ざんされていないこと(非改ざん証明)を行うものです。電子媒体では、書き換えや付け足しなどの改ざんが起きやすいと思われがちですが、この2つの仕組みを駆使することによって、契約内容の改ざんリスクを最小限に抑えています。
タイムスタンプとは?取得方法や各法律との関係などわかりやすく解説
割印の押し方と位置
実際に割印を押す場合、どこに押すのが正しいのでしょうか。ここでは割印の位置や、割印に使う印鑑の種類について紹介します。
割印の押し方の基本
割印は、同時に作成した契約書を重ね、縦と横に少しずらした状態で印影がすべての契約書にかかるようにして押印します。このとき、契約書の厚さによっては段差ができ、印鑑が押しにくくなってしまうため、以下の方法で押すのがおすすめです。
・段差が低い方の契約書の下に紙を敷き、契約書の高さを合わせる
・捺印マットを引く
これらの方法を駆使して、契約書に分割された印影がきれいに残るようにしましょう。もし、万が一印鑑の一部がかすれてしまっても、基本的には契約書にまたがって押印されてさえいれば同一性や非改ざん性は証明できるため、問題ありません。それでも押印し直したい場合は、失敗したものの隣に押印してください。その際、失敗したものを消す必要はありません。
また、割印は契約締結に関わったすべての会社の印影が必要です。2者で契約書を作成した場合は2者、3者で契約書を作成した場合は3者がそれぞれ押印しましょう。
なお、割印に使用する印鑑の種類については、法律上の規定はなく、実印でも認印でも問題ないとされています。
例えば契約書の記名欄には実印を使用し、割印には認印を使うことも可能です。ただし、法人名での契約の場合は、社名の入った印鑑を割印として使用しましょう。また、一般的には、契約で使用した印鑑を割印として使用することが多いようです。
ちなみに実印とは、役所で印鑑登録をした印鑑のことをいいます。公的な書類や契約書など、重要な取り引きの際に使用され、主に企業間取り引きの契約書で使用されるのは実印です。一方認印とは、印鑑登録をしていない印鑑全般を指し、実印は法的効力がある一方、認印には実印ほどの法的効力はないとされています。
100円ショップや文具店などで気軽に購入できるインク浸透印は認印としてのみ使用可能ですが、インクの耐久性が通常の朱肉に劣る点や、同じ印影が大量生産されているなどの理由から契約書や公的な文書では使用しないのが一般的です。
契約書における割印の位置
割印を押す位置は、法律などでは決まっていません。そのため、本来契約書のどこに押しても問題ありませんが、慣習的に割印は契約書の上部に押すことが多いです。マナーを押さえていると取引先企業に伝える意味も込めて、契約書の上部に押印するのをおすすめします。後述しますが、契約書の見開き部分や製本テープと表紙の間に押す印鑑は、割印ではなく契印です。印鑑を押す位置によって呼び名や目的が異なるため、混同しないためにも、割印は契約書の上部に押しておくとよいでしょう。
割印と混同しがち 契印や消印とは
割印と同じく用紙と用紙の間にまたがるように印鑑を押すものに「契印」と「消印」があります。これらを混同していると、契約書を作成する際に困ってしまうことが多いです。そこで、割印・契印・消印の違いを詳しくご説明します。
契印とは
契印とは、書類が複数枚にわたる際、それぞれのページがつながっているものだと証明するために押す印鑑を指します。
例えば契約書をホッチキスで止めていた場合、誰かがキレイにホッチキスを外して契約書の書類を入れ替えてしまったり、別の内容のものと交換してしまったりすると、簡単に契約書の改ざんが行われてしまいます。そこで、連続するページに契印を押しておくことで、書類の追加や抜き取り、差し替えなどの不正を防ぐのです。
改ざんを防ぐという点や使用する印鑑が同じ場合もあること、用紙と用紙の間にまたがるように押すことから、契印は割印と同じようなものだと捉えられがちです。事実、事務手続きでは割印と契印のどちらも、まとめて割印と呼ばれることがあります。しかし、契印と割印では大きく違う点が2つあるので、この機会に正しい意味を知っておきましょう。
1つ目の違いは、押印の目的です。契印は「ひとつの契約書」における「非改ざん性を証明すること」を目的としています。一方、割印は「複数の契約書」における「同一性、および非改ざん性を証明すること」を目的としています。それぞれ押印で証明できるものが異なるため、目的に応じて使い分けるようにしましょう。ひとつの契約書に対して、契印と割印どちらも必要になることも少なくありません。
2つ目の違いは、押印する位置です。契印は一般的に、「ページの見開き部分のつなぎ」もしくは「製本テープと表紙の間」などに押印をします。一方、割印は前述したとおり、主に「契約書の上部」に押します。押す位置が異なるため、どちらの印鑑が必要なのかよく確認するようにしましょう。
ちなみに契印を押す位置は、契約書の状態によって異なります。ホッチキスで留めてある契約書であれば、基本的にすべてのページの見開き部分に押印をしなければなりません。一方、袋とじなどをして製本された状態の契約書であれば、表紙か裏表紙どちらかの製本テープと表紙の間に印鑑を押すだけで済みます。契約書が複数ページに及ぶなら、製本した状態で作成しておくと契印を押す手間が省けます。
なお、契印に使用する印鑑は、契約印として使用した印鑑を用いることが多いようです。しかし、契約に使用する印鑑、つまり実印は法的効力を持つ印鑑であり、盗難や不正利用をされると、大きな損害を被るおそれもあります。そこで、複数箇所に印鑑を押さなければならない契印では、認印を使用するケースも見られます。取引先企業との関係やその場の状況に応じて、実印と認印を使い分けるとよいでしょう。また、契印は割印と同じく、契約に関わったすべての企業の押印が必要です。
消印とは
消印とは、郵便切手やはがき、収入印紙がすでに使用済みであることを示すために押す印鑑のことをいいます。
例えば、契約書の作成で収入印紙を貼ったときに消印を押していないと、その収入印紙を剥がして別の契約書に使われてしまうことも考えられます。そこで、消印を押しておくことで、収入印紙の再利用を防ぎます。
注意点として、契約書に収入印紙を貼る際には、消印がなければ効力が発揮しません。割印や契印と違い、消印は契約書に収入印紙を貼るなら必須のため注意しましょう。万が一収入印紙に消印を忘れてしまった場合は脱税となり、収入印紙代の2倍にあたる過怠税の支払いを求められます。
収入印紙へ押印する際は、契約書と印紙にまたがるようにして押印をします。2種類の書類に印影がまたがるようにして印鑑を押すという点では、割印や契印と似ています。押印の位置としては、特に決まりはありませんが、一般的には収入印紙の右側に押すことが多いです。また消印は、印鑑だけでなくサインでもかまいません。サインの場合は、後から消せないペンで、名字もしくは屋号などを書くようにしましょう。斜線や「印」と書くだけでは消印とは認められません。
割印には企業姿勢が表れる?割印のコツ
先ほどご紹介した通り、割印の押し方には法律上の規定はありません。しかし慣例上のマナーは存在しており、そのマナーに従うことで、企業姿勢を取引先企業に提示することもできます。そこでここでは、割印を押すときのポイントについて確認してみましょう。
印影の大きさが均等になるように割印
割印のマナーとして、それぞれの契約書に同じ大きさになるように印影を押すことが挙げられます。もしどちらか一方の書類の印影が大きくなってしまった場合、印影が大きい契約書の方が重要な契約書だと捉えられかねません。取引先企業に不快な思いをさせないためにも、印影の大きさは揃えるようにしましょう。
先に取引先企業が割印を押している場合は、最初に押されている印影をきれいに合わせ、ずらさないようにして押すのがポイントです。
相手に渡すのは印影の上部側が押印された契約書
割印を押すと、印影の上部が押された契約書と下部が押された契約書ができます。では、取引先企業にはどちらの契約書を渡せばよいのでしょうか。
一般的なマナーとしては、上部の印影が写った契約書を取引先企業に渡すのがよいとされています。法律で決まっている訳ではないため、下部が写った契約書を渡しても問題ありませんが、慣例上のマナーとして覚えておくとよいでしょう。相手に悪い印象を与えることなく、スムーズに契約書のやり取りが行えます。
甲乙の順?割印の順番や位置は?
割印は契約書の上部に押しますが、その際、左右の位置や押す順番に法律的な指定はありません。また3者で契約を取り交わした際に、左から甲乙丙で押すのか、また甲を真ん中にするのかなどの順番も規定はありません。ただし、契約書によっては順番が決められているものもあるため、事前に取引先企業に確認しておくとよいでしょう。
特に規定がない場合は、取引先企業とどの順番で押すかを話し合っておくとスムーズに押せます。「甲乙の順で左から押す」「甲を真ん中に、乙丙は左右に押す」など、わかりやすいような形でルールを決めておきましょう。
袋とじやホッチキス留め 製本された契約書では一工夫
数枚の契約書でも、重ねると段差ができ、印鑑を押しづらくなってしまいます。特に、すでに袋とじになっている場合や、ホッチキスで留められている場合、書類がかさばって、下に紙を敷いたり捺印マットを敷いたりするだけでは、うまく割印を押せないこともあるでしょう。
そんな製本された契約書に割印を押す場合は、表紙だけを重ねて押印するのがおすすめです。表紙以外のページは後ろに折り曲げるなどして、なるべく段差ができないようにし、印鑑を押しやすくしましょう。
3部以上の契約書に割印するコツ
3者以上で契約を結んだ場合には、同時に作成される契約書が3部以上になります。通常の印鑑では、3部以上の契約書に対して一度に割印を押すことは難しいでしょう。
その場合は、2枚ずつ割印を押すという方法があります。例えば、ABCの3つの契約書がある場合、まずはABに割印を押し、次にBCに割印を押すことで、3つの契約書の同一性を保持します。この場合も、契約書に記名したすべての人の印鑑が必要です。
そのほかに、割印専用の印鑑を使用する方法もあります。割印専用の印鑑は、通常の印鑑よりも縦長の形をしており、一度で複数の紙に割印を押せます。