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ノウハウ 著作権とは?侵害しないために絶対に知っておかなければならないこと

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年08月16日

著作権とは?侵害しないために絶対に知っておかなければならないこと

著作権とは?侵害しないために絶対に知っておかなければならないこと

“著作権”という言葉は誰もが耳にしたことがあるでしょう。音楽、小説、映画や漫画など、私たちが日常的に楽しんでいるものの中にも、たくさんの著作物が存在します。何週間、何ヶ月もかけて作成した曲や小説を、勝手にコピーして売り出されてしまっては、作った人は納得しませんし、もう曲を作ったり、小説を書いたりしなくなってしまうでしょう。

著作権法は、このような事態を防ぎ、「著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」ための法律です(著作権法1条参照)。

 

一方で、著作者以外の私たちに目を向ければ、どんなものが著作権法によって保護されている著作物なのか、何をしたら著作権侵害になるのかを正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

著作権侵害は非常に身近に起こりうるもので、知らず知らずのうちに著作権を侵害しているといったこともあります。そのため、一般の方でも訴訟に巻き込まれる可能性が有ります。

 

著作権法の制度を理解し、音楽を聞いたり映画を見たり、著作権を侵害することなく身の回りの著作物の利用を楽しめるようにしましょう。

 

 

著作物とは

 

著作権が保護しているのは、当然ながら「著作物」です。創作されたものが、「著作物」に該当すれば、著作権が発生するのです。

逆に、著作物がいかなるものかわかっていなければ、知らず知らずのうちに著作権を侵害してしまうかもしれません。

 

では、どのようなものが著作物に当たるのか、見ていきましょう。

 

著作権法は、以下のように定義しています。

「著作物」=「思想・感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)

 

ここから、著作物に当たるためには、①「創作的」であること、②「表現」であることが要件になります。

「創作」性

 

“創作的である”とは、作者の何らかの個性が表れていることを指します。

 

いくら思考を凝らして生み出したものであっても、平凡かつありふれたもの、誰でも考えつくようなものだった場合には、創作性が認められず著作物にはなりません。

「表現」性

著作物と言えるためには、「表現」でなければなりません。これは、単なるアイディアにすぎないものは著作物に該当しない、という意味を持ちます。

たとえば、新しいスポーツのルールを考えたり、新しい料理のレシピを考えたりしたとしても、それは単なるアイディアに過ぎないため、「著作物」ではありません。

 

「アイディア」にすぎないか「表現」といえるかという点は、しばしば訴訟でも争われるポイントになります。

著作物の具体例

 

著作物であるためには、①創作性、②表現性が必要であることがわかったと思いますが、それぞれ抽象的で、わかりづらいです。

では、それらを満たすものとは具体的にはどんなものでしょうか。

 

著作権法10条は、著作物について例示しています。

(著作物の例示)

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説脚本論文講演その他の言語の著作物

二 音楽の著作物

三 舞踊又は無言劇の著作物

四 絵画版画彫刻その他の美術の著作物

五 建築の著作物

六 地図又は学術的な性質を有する図面図表模型その他の図形の著作物

七 映画の著作物

八 写真の著作物

九 プログラムの著作物

2 略

3 略

小説、論文、音楽、絵画等の美術、映画などが著作物に当たることはご存知の方も多いでしょう。

日常的に目にするものでわかりづらいのは、建築、地図、写真あたりでしょうか。これらに共通するのは、全ての建築、地図、写真が著作物になり得るわけでなく、著作物性が認められる場合とそうでない場合があるという点です。

 

逆に、小説、音楽、絵画、映画など、プロの創作家以外が作ったものであっても、1から自分で考えて生み出したものであれば著作物として保護されるものもあります。極論、即興の鼻歌であっても、独自のメロディであれば、生み出された瞬間に音楽の著作物となるのです。

具体的に1つずつ見ていきます。

建築:著作物性を肯定するためには建築芸術であることが必要(福島地決H3.4.9,大阪高判H16.9.29)

建築物は高い芸術(創作)性、独創性のある建物でなければ著作物に該当しないとされています。

なぜなら、家の形というのはその機能性からもある程度限定的である(三角屋根に窓とドアがあって…など)からです。

 

建物を建てたら全て著作物になってしまえば、似た形の建物が全て著作権法違反で作れないとなってしまいます。そのような明らかに不合理な事態を避けるため、一見誰も思いつかないような建物でなければ著作物とは認めないというのが判例になっています。

地図:情報の選択、表現方法について創作性が認められれば著作物性肯定

地図は、本来地理を正確に表現するものです。単に地図を作っただけで著作物性が認められてしまえば、同じ地域の地図が作れなくなってしまいますし、そもそも正確な地図を書くという行為自体には何らの創作性(個性の発揮)がありません。

一方で、観光地の地図などを見ると、観光スポットをイラスト付き紹介するなどわかりやすいように趣向が凝らしてあります。このように工夫された表現やどのような情報を載せるかの選択などには創作性があるといえます。そのような場合には著作物になるのです。

写真:単に被写体を忠実に撮影した写真は著作物に該当しない

単に被写体をコピーするためだけに写真を撮る行為は、著作物に該当するために必要な「創作」的な要素が一切ないからです。例えば、「モナリザ」を単にコピーするために真正面から何の工夫もなく撮影した場合は、その写真は著作物とはいえません。一方で、「モナリザ」の絵が映えるように照明、アングル、陰影の付け方や背景の選択、配置などに趣向を凝らした場合には創作性が認められるとして著作物に該当します。

 

なお、写真の著作物性は、①撮影手法(構図・アングル、シャッターチャンスの補足、光線、陰影の付け方、色彩の配合、強調、省略、背景等)②被写体の選択、組み合わせ、配置で判断します。そのため、素人の撮った(プロの写真家なら尚更)風景画などでも、その位置からその方角に向かって写真を撮ることを選択した点で創作性があり、著作物にあたります。すなわち私たちが何気なくS N Sにアップしている絶景写真なども著作物として保護されるのです(本来的には許可なくコピーして使ってはいけません)。

著作者とは

 

著作者=著作物を創作する者(著作権2条1項2号)ですが、その基準は、

関与の程度、態様からして自己の思想または感情を創作的に表現したと評価できるか

です。

 

作成過程におけるその者の地位、権限、行為の時期、状況等を加味して実質的に判断されます。

共同著作

複数人で著作物を作成した場合、①共同性、②各人の創作的関与、③分離利用不可能性の要件を満たす場合には、共同著作となります。共同著作が成立し、複数の著作者がいるような著作物(共同著作物)を利用したい場合には、全員から許諾をとる必要があります(著作権法64,65条)。

職務著作

法人の従業員が、その法人の業務として著作物を作った場合、職務発明として著作者は当該法人となります。

典型例は、会社の従業員がP Rポスターを作成、ゲーム会社の従業員が挿入曲を作成、新聞社の新聞記者が新聞記事を作成、テレビ局のプロデューサーがテレビ番組を制作したといった場合などです。

 

フリーのデザイナーや作曲家に依頼した等、職務著作が成立するか微妙な場合は、①指揮監督関係があるか、②支払う金銭が労務提供の対価といえるか、といった点が重要になります。職務著作の成立の有無によって権利がいずれに帰属するか変わってしまい、微妙な場合は紛争の原因になります。そのような場合には契約書等で明確に権利の帰属を定めておくべきです。

 

職務著作が成立した著作物の利用をする場合、著作者たる法人の許諾をとればよく、従業員など実際に創作した者は著作者でないため、その者の許諾は不要です。

 

著作権の一覧

著作権とは

著作物が何か、著作者は誰なのかがわかったところで、肝心な発生する権利である著作権とは何なのかについて見ていきましょう。

 

著作権とは、著作物(音楽、小説、映画、漫画など、上記参照)について発生する、著作者が有する権利で、著作権法上に記載されている「複製権」「翻案権」「譲渡権」「上演権」…といった様々な権利(支分権と言います)の総称です。

 

具体的にいいますと、

Aさんが小説aを書いたとします。すると、小説aは著作物に該当するため、Aさんは小説aに対して、著作権(複製権や翻案権、譲渡権などの支分権)を有することになります。著作権の中には(支分権として)複製権や譲渡権がありますから、小説aをコピーして人に売る(複製&譲渡)などを伴う利用ができるのはAさんだけ、ということになります。

したがって、Bさんが、小説aをAさんに無断でコピーして人に売ったりすれば、Bさんは複製権侵害、譲渡権侵害をしたとして、著作権法違反となります。

 

その他、小説を

勝手に他言語に翻訳・アレンジしてしまえば、翻案権侵害

勝手にネットに流してしまえば、公衆送信権侵害

勝手に……

といった具合に、一口に著作権といっても、様々な権利が存在(著作権は「権利の束」と言われます)し、それら全てが著作者のみに帰属するため、他の者はそれらの権利の一つをも侵害してはなりません。



著作権(支分権)の種類は?

著作権は、様々な支分権の総称であることを理解していただけたところで、実際に著作権法上どんな支分権があるのか紹介していきます。

支分権は、21条から27条に規定されています。

 

複製権(21条)

著作物をコピーする権利。

Ex.出版のために著作物を印刷、著作物たる映画や音楽などの録画・録音ファイルのコピーなど。

上演・演奏権(22条)

公に上演したり演奏したりする権利。

Ex. 著作物たる劇(脚本)の上演、音楽の歌唱、演奏など。

上映権(22条の2)

 

公に上映する権利=著作物たる映画やビデオを公衆に見せること。

公衆送信権等(23条)

 

公衆送信したり、自動公衆送信の場合は送信可能化したりする権利。

公衆送信の典型:放送

自動公衆送信の典型:ウェブサイトにアップすること

口述権(24条)

公に口述する権利。

Ex. 著作物たる文芸作品の朗読など。

展示権(25条)

 

美術の著作物や未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利。

頒布権(26条)

 

映画の著作物をその複製によって頒布する権利。

Ex.映画やビデオの複製物(DVDなど)による頒布。

譲渡権(26条の2)

 

著作物(映画の著作物は除く)を原作品や複製物の譲渡により公衆に伝達する権利。

なお、一度適正に販売された書籍や雑誌に関して、著作者の譲渡権はなくなります(譲渡権の消尽といいます)。そのため、本屋で買って読み終わった小説をブッ○オフに売ったり、メ○カリに出品したりする行為は譲渡権侵害にはなりません。本屋で販売されている時点で、一度適正に販売されているので譲渡権は消滅(消尽)しているのです。

貸与権(26条の3)

 

複製物の貸与により公衆に提供する権利。

ビデオ・C Dレンタル店などは、著作権者に金銭を支払い許諾を得て営業しています。

翻訳権・翻案権等(27条)

 

翻訳権:著作物を翻訳する権利。

翻案権:編曲や変形、脚色、演劇化、映画化などに関する権利。

Ex.小説を漫画化したり映画化したりする、キャラクターを3D化してフィギュアにするなど

 

参照:日本電子出版協会H P

 

以上の権利が、著作権と総称されている権利の束の1つ1つになります。

理解していただきたいのは、「著作権者のみこれらの著作権を持っている→他者がこれらに該当する行為をすれば著作権法違反である」という法律の構造です。

著作権はいつ発生する?存続期間は?

 

著作権は、著作物が創作された瞬間に発生し、登録などの特別な手続きは不要です。

(cf. 特許権、意匠権、商標権など、その他の知的財産権は、「登録」を要します。)

そして、原則として著作者の死後70年間経過するまで存続します(51条2項)。

 

なお、いくつかの例外があり、映画の著作物、団体名義で発表された著作物は、「公表」後70年間、となっております。

権利制限とは?

 

著作権は、様々な支分権の総称でした。原則的に、その権利を有する著作権者のみ著作物を利用でき、他人が勝手に利用すれば、著作権者は自らの著作権を行使して差止めや損害賠償(後述します)ができるわけです。

 

では、権利制限規定とはなんでしょうか。権利制限規定は、著作権法30条から50条まで多くのものがあります。共通する点は、権利“制限”ですので、著作権者は著作権を行使することができない、という点です。つまり、他人が勝手に著作権を利用しても、著作権者は自らの著作権を行使して差止めや損害賠償することができない場合についての規定です。

 

結論としては

権利制限=著作権の行使が制限されるもの=利用者は著作権者の許諾なく著作物を利用できる

ということになります。

 

では、権利制限規定にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ビジネスや日常生活において関係がありそうな重要なものを抜粋して5つ紹介いたします。

これら以外にも権利制限はあるため、著作物を利用する際には権利制限に当たらないかチェックすることも重要になります。

私的使用のための複製等(第30条)

 

権利制限規定で一番有名かつ重要なものとして、「利用者が、個人的にまたは家庭や友人の範囲内で使用する目的で著作物を複製するときは、複製権侵害にならない(30条1項本文)」という規定があります。

同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできます(47条の6第1項1号)。

 

多くの方が経験あると思いますが、レンタル店で音楽CDを借りてきて個人用にPCにリッピングすることは、この規定によって許されているわけです。

 

例外的に

  • コピーコントロールが施されたDVDやCDのコピーコントロールを解除して複製すること(30条1項2号)
  • インターネット上に違法にアップロードされた音楽や動画を、違法と知りながらダウンロード(複製)すること(同3号)
  • 上映中の映画の影像・音声を録画・録音することは(映画の盗撮の防止に関する法律)

は、私的使用目的であっても複製権侵害となっています。

 

さらに、CDやDVDで市販されている(または市販が予定されている)音楽や動画は、違法と知ってダウンロードすると刑罰も科されます(119条3項)。

付随対象著作物の利用(30条の2)

 

写真や動画を撮影する際、背景に映り込んでいる物や音にまで注意して撮影しませんよね?しかし、条文上は、背景に著作物が映り込んでいれば、それは「複製」にあたります。

動画を撮影していたら、たまたまどこかから流れてくる音楽を拾ってしまった!という場合に、いかなる場合にも著作権侵害とされてしまうのは一般的な感覚としておかしいです。

そのため、一定の要件を満たせば著作権侵害にならないと規定しているのが、30条の2の写り込みにかかる権利制限規定です。

 

具体的には

  1. 「当該著作物が軽微な構成部分となる」こと
  2. 「当該…著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内」であること

という要件を満たす場合は、複製権侵害とはなりません。

 

これらの要件は事案ごとに個別的に判断されますが、簡単に言えば、端っこに少し映っただけであまりよく見えない、小さな音を拾っただけで音楽として聴くには適さない、そもそも主要な対象は中心に写っている人物であるなど、問題となる著作物が著作物として価値を持たず、著作者の権利に対して大きな影響を与えないような場合は許されるのです。

 

なお、2021年に改正されている条文です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

引用(第32条)

 

「引用」という言葉は日常生活でもよく使われていると思います。レポートを作ったり発表資料を作成したりする際に、本や論文、webサイトから文章を引用するといったご経験は多くの方がしていると思います。

本や論文、webサイトの文章は当然著作物に該当します。本来その文章を利用するには許諾が必要です。しかし、当然のように引用して使うことができるのは、この「引用」の権利制限があるからです。

また、小説や絵の批評をする際に、その著作物の一部を「転載」(複製)する場合があります。表現の自由がありますから、許諾なく批評が加えられるべきです。その場合にも「引用」の権利制限が活躍します。

 

32条は、①公正な慣行に合致し、かつ、②報道・批評・研究その他の目的上正当な範囲であれば、「引用」として著作物を利用することができると規定しています。その範囲内で複製したり公衆送信したりすることができるわけです。



試験問題としての複製等(第36条)

入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製すること、インターネット等を利用して試験を行う際には公衆送信することができます。同様の目的であれば翻訳もできます(47条の6第1項2号)。

国語の試験において、あらかじめ使用する小説等の利用許諾を取らなければならないとすると、その時点で試験の出題情報が漏れてしまうことになります。そのため、許諾が不要となっているのです。

 

ただし、著作権者に不当に経済的不利益を与えるおそれがある場合にはこの例外規定は適用されません。また、営利目的の模擬試験などのための複製・公衆送信の場合には、著作権者への補償金の支払いが必要となります。



営利を目的としない上演等(第38条)

 

公衆の前で著作物を上演(演奏・上映・口述)するには著作権者の同意が必要です(上演権・演奏権)。

もっとも、38条は例外的に、

  1. 非営利で、
  2. 観客から料金を受けず、
  3. 出演者に対し報酬が支払われない

場合は、上演権等侵害にならないと規定しています。

文化祭での演劇やライブが典型例です。

 

もっとも、「非営利」の認定は厳格にされています。たとえば、企業主催のコンサートなどは、チケット代を取らなかったとしても、企業の広告の目的として①非営利性を満たさないと判断される場合があります。

 

参照:文化庁H P

著作権だけじゃない!著作者人格権に注意!

上記図の下部にあたる、著作権者の有するもう一つの権利、著作者人格権についてご紹介します。

 

まず、著作人格権とは、クリエイターの人格や名誉を守る権利です。

著作権は、この著作者人格権と対比して、著作財産権と呼ばれることもあります。

そして、著作者人格権も著作財産権と同様、“権利の束”で、その中身として、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つがあります。

 

公表権

 

公表権とは、著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利です。

 

たとえば、ある作品を制作したが結局世に公表しなかったとします。それがボツ作品だったからにせよ、自分で楽しむために作成したからにせよ、それを勝手に第三者が公表して収益をあげたとしたら、作成者は納得いきませんよね。

公表するかしないか、はたまたいつするかを決めるというのは、作者の決定が尊重されるべきことであって、「人格」に基づく権利だといえます。

 

もっとも、未公表の著作物の著作権を第三者に譲渡した場合は、その第三者に、公表を同意したものと推定されます(18条2項1号)。

 

氏名表示権

 

氏名表示権とは、著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利です。

 

著作物について他者に利用許諾をして利用させるときに、自分が指定する名前を表示するよう要求できるわけです。表示しなかったら氏名表示権侵害として下記のように利用の差止請求等ができます。

もっとも、著作物たる音楽などを利用する場合に名前を表記することはできないため、著作物の利用の方法によっては、「公正な慣行に反しない限り」省略できることになっています(19条3項)。

 

同一性保持権

同一性保持権とは、著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利です。

 

作曲家に無断で、楽曲に別アレンジを加えることや、写真をパロディや風刺絵風に編集することなどが同一性保持権侵害にあたります。

これらの改変は、著作“財産”権のひとつである「翻案権」を侵害すると同時に、「同一性保持権」の侵害にもなる、ということになります。

 

もっとも、著作者の意に反する改変であっても、やむを得ない改変であれば、同一性保持権の侵害にはなりません(20条2項4号)。

たとえば、映画をテレビで放送する場合に、放送時間に合わせるために映画の内容の一部をカットしたり、途中で区切ってCMを入れたりする場合がこれにあたります。テレビ放送という特質上、「やむを得ない改変」に当たると考えられています。

 

著作(財産)権と著作者人格権の比較

 

「著作権」は、財産的な権利のため「譲渡」することが可能です。また、著作権者が亡くなった場合は相続人がその著作権を相続します。

著作権が譲渡された場合は、譲り受けた者が上記のような著作権(権利の束)を有することになります。著作“財産”権の場合は「著作者」が「著作権者」とは限らないわけです。

 

一方で、著作権は譲渡でき、相続の対象にもなるのに対して、「著作者人格権」は譲渡することはできず、著作者が亡くなっても相続人に相続されません。著作者が亡くなってしまうと、その時点で消滅してしまいます。

 

著作者人格権は、あくまで著作者の精神面を守るための権利ですので、著作者以外の人が著作者人格権をもつことは想定されていないのです(このような権利を、法律上、「一身専属権」と呼びます)。

 

著作者人格権は、著作者の死亡により消滅してしまいますので、存続期間という概念はありません。

もっとも、著作者の死亡後も、生きていたとすれば人格権の侵害となるような行為を行ってはならないとされています(60条)。

 

著作者人格権不行使特約の活用

 

繰り返しになりますが、著作者人格権は譲渡できません。そのため、著作権の譲渡を受け著作権者になったからと言って安心してはいけません。

 

前述のように、著作物に改変を加えた場合、著作権である翻案権と著作者人格権である同一性保持権が同時に問題なります。著作権の譲渡(翻案権については61条2項による「特掲」が必要)を受けたからと自由に著作物を利用していたら、著作者から同一性保持権侵害だ!と言われてしまうことがあるわけです。

 

このような事態を回避するために、著作権を譲り受ける契約をする場合に同時に結んでおくべきなのが、「著作者人格権不行使特約」です。

契約書に、以下の条文を入れておくのです。

 

第○条

乙は、甲及び甲が指定する第三者に対して著作者人格権を行使しない。

 

この規定を入れることで、著作者は、著作権を譲り渡した相手に著作者人格権を行使できなくなります。もちろん、全く関係ない第三者が改変した場合には著作者人格権を行使できるのであって、この特約はあくまで当事者間にのみ効力がありものです。

 

ただし、このような包括的な著作者人格権の不行使特約は無効であるという考え方もあり、確定的な判例もまだありません。

そのため、契約書では、できる限り具体的な利用方法を明示して合意することが望ましいです。

著作権(著作人格権を含む)を侵害すると…

 

ここまで、著作権について詳しく見てきましたが、著作権を侵害してしまうとどのようなペナルティがあるのでしょうか。

 

差止請求(著作権法112条)

 

まずは、侵害行為をやめてくれ、という差止請求(112条1項)を著作権者からされます。

現に発生している侵害や、これから発生する侵害を止められなかったら著作権が存在している意味がありませんから、当然認められます。

 

また、差止請求をするに際しては、侵害組成物等廃棄等請求(112条2項)もできます。これは、「侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置」を請求するものです。

例えば、アニメキャラクターのフィギュアを勝手に作られた場合、アニメの著作権者は、今後のフィギュア制作の差止めと同時に、今まで作られたフィギュア自体やフィギュア製作のための機械などの廃棄まで請求できます。

なお、「前項の規定による請求をするに際し」とあるので、差止請求をせずに廃棄等請求のみすることはできません。

損害賠償請求

著作権法には「著作権侵害に対しては損害賠償請求できる」という条文がありません。しかし、“権利”の侵害であるので、民法上当然に不法行為として損害賠償請求(民法709条)が可能です。

 

一方で、著作権法には、損害賠償額の推定規定があります(著作権法114条)。原則、裁判においては、損害の「金額」については損害賠償請求する側、すなわち被害者が立証するというルールになっています。しかし、著作権侵害において具体的にいくら損害を被ったか、というのは被害者においてもはっきりしないのが通常です。相手が勝手に著作物を販売したからといってこちらの商品がどれくらい売れなかったか、というのは正確にはわからない、ということです。そのため、損害賠償額を立証しなくとも、侵害が認められればこの額(計算方法が記載されています)は損害があったと推定しましょう、という規定があるのです。

 

罰則

著作権侵害については、刑事罰の規定もあります(119条)。

・著作(財産)権侵害の場合、「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(1項)

・著作人格権侵害の場合、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(2項1号)

というもので、重い罰則となっています。

 

著作権侵害で刑事事件として立件される例としては、海賊版CD販売(譲渡権・複製権侵害)や、インターネットへの違法アップロード(公衆送信権侵害)などがあります。

近年世間の注目を浴びたものとしては、「漫画村事件」が記憶に新しいかと思います。

 

民事上の損害賠償等にとどまらず、刑事罰を受けることがあるということも頭に入れ、充分注意する必要があります。

まとめ

ここまで、著作権法の全体像について見てきました。

著作権という一見身近に感じるものでも、具体的に理解をしておかないと、知らず知らずのうちに著作権を侵害している、なんてことも起こり得ます。

また、著作権法は毎年のように改正が繰り返され、社会情勢にあった形へと日々変化しています。

 

著作権を正しく理解し、ビジネスや日々の生活において、クリエイターの知的財産を保護しつつ適切に利用しましょう。

 

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