ノウハウ 請負契約とは?委任・業務委託との違いや、契約書に盛り込むべき内容
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年07月26日
請負契約とは?委任・業務委託との違いや、契約書に盛り込むべき内容
近年、働き方改革の影響もあり、様々な業務のアウトソーシングが進んでいます。その際に用いられる契約として、請負契約が一般的です。しかし、請負契約と委任契約など他の契約との違いや、請負契約書に記載すべき事項については詳しくない方も多いかもしれません。
この記事では、請負契約と委任契約の違いやそれぞれのメリット・デメリット、請負契約書に盛り込むべき内容などについて解説します。
請負契約とは
請負契約とは、簡単に言えば、受注者が受託した業務を完了し、それに対して発注者が報酬を支払う、という契約です。
民法では以下のように定められています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第632条)
具体例としては、「建物の設計・建築、監理、農地の耕作、物品・旅客の運送といった有形の結果を残す場合に限られず、音楽の演奏、講演などといった無形の仕事をも含みます。」
有形無形に関わらず、“結果=仕事の成果物を出すこと”を依頼する場合に用いられる契約類型といえます。
類似の他の契約類型
業務をアウトソーシングする際の契約類型としては「請負契約」の他に、「委任契約(準委任契約を含む)」と「派遣契約」があります。
よく耳にするものとして「業務委託」がありますが、業務委託とは、請負契約や委任契約(順委任契約)を含め、第三者に業務を依頼する場合全般を指す言葉です。
そのため、契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっている場合でも、中身は請負契約や委任契約である場合があります。
では、「委任契約(準委任契約を含む)」と「派遣契約」各契約の内容と、請負契約との違いについて解説していきます。
委任契約と請負契約
まずは、「委任契約」の詳細と「請負契約」との違いについて説明をします。
委任契約とは
委任契約とは、法律行為(権利・義務を発生させたり、消滅させたりする行為)の遂行を依頼する契約です。
準委任契約とは、事実行為(法律行為でない事実上の行為)の遂行を依頼する契約です。
民法では以下のように定められています。
委任:委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手型がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。(民法第643条)
準委任:この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。(民法第656条)
つまり、委任契約と準委任契約は、目的とされる行為が法律行為か否かという点が異なるだけで、根本的な差異はないと考えられるため。以下では、委任と準委任を合わせて「委任契約」と呼ぶことにします。
「請負契約」と「委任契約」の違い
「請負契約」と「委任契約」は、具体的に以下2点が異なります。
- 請負契約が成果物の完成を目的とするのに対し、委任契約では業務の遂行それ自体を目的とするため、仕事を完成・成功させる責任が生じないこと
- 報酬を支払うこととの文言がないため原則無償の契約であり、特約として明示的に報酬を定めないと報酬請求権は発生しない」
例えば、コンサルティング業務、システム保守・運用など、業務の遂行それ自体を目的とし、成果物が求められないような業務を依頼する場合には「委任契約」が適切です。
「派遣契約」と「請負契約」
ここからは「派遣契約」と「請負契約」との違いについて詳細を説明します。
派遣契約とは
派遣契約は、派遣会社と労働者が雇用契約を結び、派遣先企業で就業するという形の契約類型です。
「派遣契約」と「請負契約」の違い
請負契約とは具体的に、以下4点で異なります。
- 仕事を発注する企業側と受注する側の間に上下関係がある
- 請負契約のように成果物の納品を目的とせず、業務の遂行自体を目的としている(この点は委任契約と類似)
- 業務上のトラブルや問題などが生じた場合、雇い主である派遣会社とやりとりをする
- 所属する派遣会社や派遣先企業などに一部労働基準法が適用される
もっとも大きな相違点は、企業側の指揮・命令を受けることがないため、請負人の仕事に対して自由度が高く、裁量も多く与えられている点です。
どのような過程で成果物を完成させるかについて受注者に委ねられており、受注者がどのように仕事をするかについては基本的に受注者の自由です。
請負契約のメリット・デメリット
3つの契約類型の相違点をみてきましたが、どのような場合にどの契約類型を選ぶべきかを判断するために、請負契約を選んだ場合のメリット・デメリットについてみていきましょう。
「請負契約」を選択するメリット
まず、請負契約は社内にノウハウがない業務を新たに開始する際に、コストを抑えることができる手法です。通常であれば、知見がある人を雇ったり、社員の教育をしたりすることにコストがかかるところ、これらのコストをカットすることができるためです。
また、成果物を得るのにかかるコストを予見しやすいこともメリットの1つです。請負契約では契約時に成果物に対する報酬を定めます。
仮に成果物に不十分な点があったとしても、修補を求めることができるため、当初の見積もりを大幅に超えるコストが生じる見込みは少ないです。
さらに、委任契約とは異なり、請負人は「仕事の完成」について責任を負っているので、それを果たせなかった場合には損害賠償請求をすることもできます。この点は、業務の遂行それ自体を目的とする委任・派遣契約にはないメリットになります。
その他、派遣契約と異なり、労働基準法が適用されないため、労務管理が不要です。
「請負契約」を選択するデメリット
一方で、請負契約は外注の性質上、社内にノウハウが溜まりづらくなります。また、契約の時点で成果物の備えるべき品質・機能などを特定するため、事後的に仕様を変更することは難しいです。依頼する成果物が明確な場合に請負契約を利用することが望ましいと言えます。
さらに、上述のように請負契約は派遣契約と異なり、請負人が企業側の指揮・命令を受けることがありません。そのため、事前に定めない限り、基本的には仕事の進め方などについてクレームをつけることができませんし、業務途中の管理ができないことから、仮に成果物の完成が契約した期日に間に合わない場合は、何らかの損害を負うことも考えられます(その場合損害賠償請求は可能)。
▶関連記事:契約リスクとは?リスクの種類と最適なリスクマネジメント方法
偽装請負に注意が必要
見てきたように、「請負契約」と「派遣契約」の最大の相違点は、受注者との間に指揮命令関係があるか否かという点です。請負契約を締結した場合には、受注者には仕事の進め方などに自由な裁量が与えられます。ここで、表面上請負を装いながら、実質的には派遣契約に該当するといった、「偽装請負」にならないよう注意する必要があります。
受注者との間に指揮命令関係が存在する場合には労働者派遣に該当します。表面上は請負の形をとっているにも関わらず、指揮命令関係が認められてしまうような業務態勢になっている場合は、この「偽装請負」として派遣法や職業安定法に違反するおそれがあります。
偽装請負に該当するか否かは厚労省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」を踏まえて判断されます。
以下のような場合には偽装請負に該当するおそれがあります。
・受注者に対して業務遂行方法について細かく指示している場合
・発注者が受注者の人事評価を行っている場合
・発注者が受注者の始業時間・就業時間や休憩時間などを管理している場合
・受注者が単に肉体労働を提供している場合
偽装請負とならないためには、受注者との間に指揮命令関係が存在しないような環境を構築することが必要です。
例えば、以下のような対策が考えられます。
- 業務の内容を明確に定め、業務の遂行方法について変更の指示などをしなくて良いようにしておく
- 受注者が自らスケジュール管理をできるようにする
- 受注者が自社内で働く場合には、自社従業員と受注者の就業場所を分ける
- 受注者が自社の福利厚生を用いることができないようにする
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請負契約に盛り込むべき内容
ここまで、請負契約の内容について詳しく説明してきました。
ここからは、具体的に「請負契約」の書面に記載すべき項目について説明します。
成果物
請負契約は成果物の完成を目的とする契約です。したがって、成果物が備えるべき品質や内容、成果物の数量に関しては明確に定めておきましょう。
納期
いつまでに何を納品すれば良いのか定めましょう。納品後の検収や、納期に間に合わない場合の対応も決めておくと良いでしょう。
報酬
成果物に対する報酬を定めましょう。いつ振り込むのか、手数料はどちらが負担するかなども記載するとベターです。後述する偽装請負にならないよう、報酬を定める際は仕事の完成にかかった時間をベースとしないように注意しましょう。
原材料の負担
成果物に原材料が必要な場合には、どちらが準備すべきか定めましょう。
成果物に対する権利
仕事の成果物については知的財産権や所有権が発生する場合があります。民法上、成果物の所有権が請負人に帰属するのか注文者に帰属するのかというのは争いがあるため、紛争に発展しないために、これらの権利がいつ・誰の元にあるのか明確に定めておきましょう。
再委託(下請)の可否
請負契約では特約がなければ、受注者が下請け業者を使用することが可能です。セキュリティの観点から下請を禁止したい場合には、契約書で予め定めておきましょう。
契約不適合責任
請負契約の成果物が「種類」や「数量」、「品質」について契約の内容に適合しないものであった場合、注文者は受注者に対して修理や不足分の引き渡し、損害賠償、報酬の減額を求めることができるほか、契約を解除することもできます。不適合があった場合に誰がどのような対応をするか、予め定めておきましょう。
解除の条件
契約の解除ができる条件も明記しておきましょう。双方の信頼関係が崩れた場合に、契約の解除ができる可能性があります。
請負契約書に必要な収入印紙の額は?
契約書や注文書などには、収入印紙の貼付が必要なものがあります。貼付対象となる書類は印紙税法に規定されています。請負についての契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」として、収入印紙の貼付が必要な書類に該当します。
具体的な金額は以下の通りです。
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
▶関連記事:なぜ電子契約では印紙が不要なのか?理由と根拠を分かりやすく解説
請負契約の電子化で業務効率化
請負契約の締結業務は、
①契約書の作成→②印刷→③押印→④出来上がった契約書の送付・返送→⑤ファイリング、契約内容の修正がある場合などは上記の作業が複数回繰り返されます。
このように、従来では非常に煩雑な業務がつきまといます。しかし、電子契約で締結する場合、業務が電子化によって業務の効率化・コストカットが図れます。
①契約書の作成の場面において、
クラウドサービス上に存在するテンプレートや過去にクラウド上に保存された契約書を参照しながら進められ、スムーズに作成することができます。
②印刷→③押印→④出来上がった契約書の送付・返送の場面において、
契約書の送付や返送は、メール送信やクラウド上でのやりとりで代用され、それらにかかっていた時間が一挙に削減されます。さらに、印刷・郵送代が不要になりコストカットにもなります。
⑤ファイリングの場面において、
クラウド上で契約書の管理ができるので、印刷した契約手のファイリングは不要となります。ファイリングの手間が省けるだけでなく、増え続けるファイルの置き場所にも困ることはありません。さらに、過去の契約書の確認などの作業に際して、ファイルの山から探し当てる必要がなく、クラウド上で検索をかけることによって容易に閲覧できます。このように様々なコストや作業時間の削減を図れます。
さらに、上述のように、請負契約書には収入印紙の貼付が必要ですが、電子契約の場合は印紙税が課税されないので、収入印紙の貼付も不要です。
会社に行き印紙を貼らなければならなかったところ、電子契約であればリモートで契約締結が完了することも魅力の1つです。
契約書の電子化について詳しい方法や注意すべきポイントについてはこちらの記事で紹介していますので、詳しい説明はこちらの記事をご参照ください。
まとめ
業務をアウトソーシングする際に、請負契約を締結すべきか、それ以外の契約類型を選択すべきかの判断は、なかなか難しいものです。また、契約書にどんな事項を入れれば良いのかわからなくなることもあるかと思います。その際に、上記のメリット・デメリットなどを参考にしていただければと思います。
そして、契約締結の際には、電子契約での締結を検討してみませんか?電子契約によって多くのメリットを得ることができます。そのための準備として、電子化の進んでいるこのタイミングで、契約管理サービス・電子契約サービスの導入を検討されるのはいかがでしょうか。