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ノウハウ 著作権法最新改正!令和3年最新改正(令和4年施行)まで徹底解説。

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年07月21日

著作権法最新改正!令和3年最新改正(令和4年施行)まで徹底解説。

著作権法最新改正!令和3年最新改正(令和4年施行)まで徹底解説。

著作権法は、社会の情勢の変化に敏感に対応し、変わりゆく時代に合わせてクリエイターの権利を保護するため、毎年のように改正を繰り返しています。

今回は、令和3年1月1日までに施行(施行済)の令和2年改正令和4年1月1日施行(施行前)の令和3年最新改正の内容をご紹介していきます。

著作権については著作権とは?侵害しないために絶対に知っておかなければならないことで詳しく解説しています。

 

令和2年改正について

 

「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」が、第201回通常国会において、令和2年6月5日に成立し、同年6月12日に令和2年法律第48号(以下「令和2年改正」と呼びます)として公布されました。

 

令和2年改正の内容は、令和3年現在、全て施行されております。したがって、以下紹介していく内容は、既に実際に運用されている法内容になります。



令和2年改正の概要

 

令和2年改正のポイントは

  1. インターネット上の海賊版対策の強化
  2. 著作物の円滑な利用を図るための措置
  3. 著作権の適切な保護を図るための措置

にあります。(※)

 

これらを実現するために、以下のように具体的な改正が行われております。

 

ポイント

具体的な改正

関連条文

Ⅰインターネット上の海賊版対策の強化

リーチサイト対策【施行日:令和2年10月1日】

113条2項~4項、119条第2項4号・5号、120条の2第3号等

侵害コンテンツのダウンロード違法化【施行日:令和3年1月1日】

30条1項4号・2項、119条3項2号・5項等

Ⅱ著作物の円滑な利用を図るための措置 【施行日:令和2年10月1日】

写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

30条の2

行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)

42条第2項

著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

63条の2

Ⅲ著作権の適切な保護を図るための措置 【施行日:令和3年1月1日】

著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化

114条の3

アクセスコントロールに関する保護の強化

2条1項20号・21号、113条7項、120条の2第4号等

※その他、プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)についての改正もあります。【施行日:公布日から1年以内で政令で定める日、令和3年1月1日】

 

網掛けをした改正は、令和2年改正において重要な点です。

以下、  部について説明していきます。



①リーチサイト対策&②侵害コンテンツのダウンロード違法化

 

海賊版サイト漫画村の運営者が逮捕された事件をご存知でしょうか。

リーチサイト(リーチアプリ)とは、

  • 公衆を侵害コンテンツに殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト
  • 主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト

と定義されており、漫画村はリーチサイトの典型例です。簡単に言い換えれば、違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)へのリンク情報を集約したサイトを指します。

 

このようなリーチサイトにより、漫画・雑誌のほか、写真集・文芸書・専門書、ビジネスソフト、ゲーム、学術論文、新聞など、著作物の分野・種類を問わず、“タダ読み”等の被害が発生しております。被害額は莫大(漫画村だけで3000億円分がタダ読み)であり、漫画家や出版社の収入の大幅な減少につながっています。

 

このような事態への対策として以下のように改正が行われました。



改正前

改正後

著作権者の許可なく著作物(全般)をインターネット上にアップロードすることは違法

→アップロードのみ違法だった!

【リーチサイト対策】

違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を集約した「リーチサイト」を規制

①サイト運営行為と②リンク提供行為の両方とも違法!

違法にアップロードされた音楽・映像を、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることは違法

→対象が音楽と映像のみだった!

【ダウンロード違法化】

違法にアップロードされた著作物(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)を、違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすることも、一定の要件の下で違法

→違法ダウンロードの対象が著作物全般に拡大!

1漫画数コマなど「軽微なもの」、二次創作・パロディ、「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードは規制対象外。

2刑事罰については、正規版が有償で提供されていること、反復・継続してダウンロードを行うことが要件。



③写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

 

許可なく、絵画を写真で撮影したり、音楽を録音したりすることは、著作権法上の「複製」(21条)にあたり、一定の例外(権利制限規定)に該当する場合を除き、著作権侵害行為となります。

もっとも、例えば公道で写真撮影をする場合に、たまたま後ろに著作物に該当する建造物や絵画などが映り込んでしまった!ということもあるでしょう。

そのような場合に、一定の要件を満たせば著作権侵害にならないと規定しているのが、30条の2写り込みにかかる権利制限規定です。

 

平成24年に創設された規定で、著作権侵害とならないための要件がその当時必要であったものに限定されています。そのため、スマホやタブレット端末等の急速な普及や、動画投稿・配信プラットフォームの発達など、社会実態が大きく変化している中で、従来の規定では不都合が生じる場面が顕在化して来ました。そこで、著作権侵害とならない範囲を拡大する方向の改正が以下のように行われています。

大きな変更点は3つです。

 

 

改正前

改正後

対象行為

「写真の撮影」・「録音」・「録画」を行う際の写り込みのみが対象

複製・(複製を伴わない)伝達行為全般

スクリーンショット・生配信・CG化なども広く含まれる

著作物創作要件

著作物を創作する際に生じる写り込みのみが対象

無制限

→固定カメラでの撮影やスクリーンショットなど、創作性が認められない行為を行う場面における写り込みも対象

分離困難性

メインの被写体から分離困難な著作物の写り込みだけが対象

メインの被写体に付随する著作物であれば、分離困難でないものも対象

→子供にぬいぐるみを抱かせて撮影する場合なども含まれる

※「正当な範囲内」という要件を設け、濫用的な利用や権利者の市場を害するような利用(例:経済的利益を得るためにあえて著作物を入れ込む)を防止

 

この改正の具体的な目的は、日常生活における様々な行為(例:動画投稿・配信プラットフォームを活用した個人による生配信)や、新たなビジネスニーズ(例:ドローンで撮影した映像をリアルタイムで遠隔地に配信するサービスや、ゲーム制作に当たっての風景のCG化)に対応すること、です。

上記行為をする際に、写り込みによる著作権侵害を過度に心配する必要がなくなったわけです。



④著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

著作物は、原則的に著作権者でなければ利用することができません。しかし、著作権者から許諾してもらうことにより、許諾を受けた者(ライセンシー)も利用することができるようになります。これをライセンス契約(利用許諾契約)といいます。

また、著作権者は、著作権を譲渡することができます。譲渡すると、譲り受けたものが著作権者になります。

では、著作権が譲渡された場合に、旧著作権者から許諾を受けていたライセンシーは、著作物の利用を継続できるのでしょうか。著作権の譲渡を受けた新著作者が利用を拒否したら、ライセンシーは利用できなくなるのか。

この点について、規定がなかったため創設されたのが、今回の改正です。

 

【改正内容】

著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権が譲渡された場合の譲受人などに対しても対抗すること(利用の継続を求めること)ができる仕組みが導入されました。



引用:著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料) P31



⑤著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化

著作権侵害訴訟においては、裁判所は、原告からの申立てに基づき、侵害立証や損害額計算のために必要な書類を保有する被告に対して、提出命令を発することができることとされています。これを書類提出命令手続といいます。

 

この手続きの際に問題となっていた点が2点あり、その解決策として本改正が行われました。

 

問題点

改正

提出命令を発する必要性の有無を判断する前に実際の書類を見ることができないため、提出命令の可否について適切な判断ができない場合がある。

①裁判所があらかじめ実際の証拠書類を閲覧した上で提出命令発出の要否を判断することを可能とする

被告は、裁判所が提出命令を発する必要性があると判断したとしても、正当な理由がある場合は、書類の提出を拒否できることとなっているところ、裁判所はその正当な理由の有無を適切に判断するために、実際の書類を見ることができるが、専門性の高い書類については必ずしも十分に内容が理解できない場合がある。

②実際の書類を見て判断する際に専門委員(大学教授など)のサポートを受けられるようにする。

引用:著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料) P33



⑥アクセスコントロールに関する保護の強化

近年、ライブやスポーツの興行のインターネット配信が増えていますね。このようなコンテンツは、当然代金を支払った者にのみ視聴を許諾するものです。したがって、不正利用を防止するための保護技術(アクセスコントロール)の一つして、シリアルコードを活用したライセンス認証が広く普及しています。その一方で、そのライセンス認証を回避して、コンテンツを不正利用するといった行為が横行しています。

このような行為に対応するため、コンテンツの不正利用を防止するアクセスコントロールに関して、①定義規定の改正(コンピュータソフトウェアに用いられるライセンス認証など最新の技術が保護対象に含まれることを明確化/2条1項21号)、②ライセンス認証などを回避するための不正なシリアルコードの提供等に対する規制(コピーコントロールについても同様の措置を行う/113条7項)の創設が行われました。



2条1項21号

技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

 

⇨「機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式」という部分により、ライセンス認証が保護対象に含まれることが明確になりました。

 

113条7項

技術的保護手段の回避又は技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする指令符号(電子計算機に対する指令であつて、当該指令のみによつて一の結果を得ることができるものをいう。)公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は公衆送信し、若しくは送信可能化する行為は、当該技術的保護手段に係る著作権等又は当該技術的利用制限手段に係る著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなす

 

⇨「技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする指令符号」というのが、ライセンス認証などを回避するための不正なシリアルコードなどを指し、それらを譲渡するなどの行為が著作権侵害行為であるとみなされるようになりました!

 

参照:著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料) P35



令和3年改正について

 

「著作権法の一部を改正する法律」が,第204回通常国会において,令和3年5月26日に成立し,同年6月2日に令和3年法律第52号(以下「令和3年改正」と呼びます)として公布されました。

 

令和3年改正の内容は、

  1. 公布から1年以内で政令で定める日から
  2. 公布から2年以内で政令で定める日から
  3. 令和4年1月1日から

の3段階で施行されていきます。したがって、以下紹介していく内容は、現時点では施行されておらず、将来的に運用されていく法内容になります。



令和3年改正の概要

 

令和3年改正のポイントは

  1. 図書館関係の権利制限規定の見直し
  2. 放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化

にあります。

 

それらを実現するために、以下のように具体的な改正が行われております。

 

ポイント

具体的な改正

関連条文

図書館関係の権利制限規定の見直し

①国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信

31条4〜7項新設

②図書館等による図書館資料のメール送信等

31条2項等

放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化

❶権利制限規定の拡充

34条1項等

❷許諾推定規定の創設

63条5項等

❸レコード・レコード実演の利用円滑化

94条の3, 96条の3

❹映像実演の利用円滑化

93条の3, 94条

❺協議不調の場合の裁定制度の拡充

68条



Ⅰ図書館関係の権利制限規定の見直し

 

コロナ禍で、調べ物をするために図書館に行くにも、図書館が休館だったり、躊躇せざるを得なかったりということもあるかと思います。そんな中、気軽に図書館での資料収集ができなくなったことから生じたニーズが元になった改正がされています。

以下、詳しく見ていきます。

 

①国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信

 

図書館で資料を入手しようとする際、近所の図書館に資料がなかった場合に最終的に行き着くのが国会図書館です。国会図書館には絶版になった資料などもデジタル化してあって閲覧可能なものが存在します。

しかし、現行の制度では、その閲覧方法がネックになっていました。

 

現行の制度では、国立国会図書館は、デジタル化した絶版等資料(絶版その他これに準ずる理由により入手困難な資料)のデータを、公共図書館や大学図書館等に送信することなどが可能です。もっとも、その方法だと、利用者は公共図書館や大学図書館等に足を運んで閲覧することが必要になります。

そのため、感染症対策等のために図書館が休館している場合や、病気等で図書館に行けない場合に絶版等資料の閲覧が困難となってしまっているのです。

 

【改正内容】

  • 国立国会図書館が、絶版等資料(3月以内に復刻等の予定があるものを除く)のデータを、事前登録した利用者(ID・パスワードで管理)に対して直接送信でき、利用者は、国立国会図書館のウェブサイト上で資料を閲覧できるようになります。
  • 利用者側では、自分で利用するために必要な複製(プリントアウト)や、非営利・無料等の要件の下での公の伝達(ディスプレイなどを用いて公衆に見せること)を可能になります。

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p2

 

以上の改正のニーズは、以前から指摘されていましたが、コロナ流行による図書館休館などでそのニーズが顕在化しました。それに対応した改正となっています。



②図書館等による図書館資料のメール送信等

 

図書館で調べ物をした際に、資料を閲覧するだけでなく、コピーして持ち帰ったという経験はないでしょうか。

国立国会図書館や公共図書館、大学図書館等は、利用者の調査研究の用に供するため、図書館資料を用いて、著作物の一部分(「半分まで」というのが一般的な解釈・運用)を複製・提供(郵送を含む)することが可能となっています。

もっとも、現行の制度では、メールなどでの送信(公衆送信)などのデジタル・ネットワークを活用した簡易・迅速な資料の入手ができません。デジタル社会の発展やコロナ流行によって図書館へ気軽に足を運べなくなったことから、そのような入手経路のニーズが高まりました。

 

【改正内容】

権利者保護のための厳格な要件の下で、国立国会図書館や公共図書館、大学図書館等が、利用者の調査研究の用に供するため、図書館資料を用いて、著作物の一部分(政令で定める場合には全部)をメールなどで送信することができるようになります。(その際、図書館等の設置者が権利者に補償金を支払うことを求める。)

 

⇨厳格な要件とは…

  1. 正規の電子出版等の市場との競合防止

著作物の種類や電子出版等の実施状況などに照らし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、公衆送信を行うことができないと規定

  1. 利用者によるデータの不正拡散等の防止

事前に、利用者が図書館等に氏名・連絡先等を登録

登録の際、不正利用防止のための規約への同意

不正利用が判明した場合はサービスを停止

図書館等による公衆送信に当たって、技術的措置(コピーガードの付加や、電子透かしによる利用者情報の付加など:省令で具体化)を講ずること

  1. 図書館等における法令を遵守した適正な運用等の担保

以下の要件を満たす図書館等のみが公衆送信を実施できる。

  • 公衆送信に関する業務を適正に実施するための責任者を配置していること
  • 公衆送信に関する業務に従事する職員に対して研修を実施していること
  • 利用者情報を適切に管理すること
  • 公衆送信のために作成したデータの流出防止措置を講ずること
  • その他、文部科学省令で定める措置を講ずること

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p8



Ⅱ放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化

 

近年、様々なサブスクリプションサービス(いわゆる“サブスク”)がリリースされ、放送番組をインターネットで同時配信するといったサービスが登場しています。利用している人も多いのではないでしょうか。

 

立案担当者としても、“放送番組のインターネット同時配信等は、高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものであり、視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興等の観点から非常に重要”であると考えています。

一方で、“放送番組には、多様かつ大量の著作物等が利用されており、インターネット同時配信等を推進するに当たっては、これまで以上に迅速・円滑な権利処理を可能とする必要”としています。

 

そこで、本改正の目的は、

  • 放送事業者の有する権利処理に係る様々な課題に総合的に対応し、著作権制度に起因する「フタかぶせ」(権利処理未了のために生じる映像の差替えなど)を解消する
  • 視聴者から見た利便性を第一としつつ、「一元的な権利処理の推進」と「権利保護・権利者への適切な対価の還元」のバランスを図り、視聴者・放送事業者・クリエイターの全てにとって利益となるような措置を講ずる

ことにあります。

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p15

 

簡単に言えば、放送事業者等が同時配信等をしようとする際に、円滑に配信ができるよう、許諾を不要とする制度や許諾が取りやすくするための制度を創設したのが、本改正です。

以下、詳しく見ていきましょう。

 

改正の全体像

課題

対策(改正内容)

放送では許諾が不要となっている場合も配信では許諾を得る必要がある

❶権利制限規定の拡充

放送の許諾を得る際に、あわせて配信の許諾を得るのが負担

❷許諾推定規定の創設

権利の集中管理等がされておらず、個別に配信の許諾を得るのが負担

❸レコード・レコード実演の利用円滑化

❹映像実演の利用円滑化

利用条件等の契約交渉が折り合わず、許諾を得られない

❺協議不調の場合の裁定制度の拡充

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p17



❶権利制限規定の拡充

 

テレビ番組も映像の著作物として、著作権法上保護されます。とすると、テレビ番組を無断で公衆に放送することは著作権侵害になります。YouTubeでの違法ライブ配信などをイメージしていただければわかりやすいです。とすれば、サブスクリプションサービス等で同時配信(放送)する場合にも、著作権者の許諾が必要なのが原則です。

もっとも、学校教育番組の放送や国会等での演説の利用などの一定の場合には、権利者の許諾なく著作物等を「放送」することが可能となっています。例えば、小学生の低学年時に、学校で教育番組を見た記憶がないでしょうか。そのような場合には許諾を不要とする規定があるのです。これが権利制限規定です。

 

しかし、現行法では、(録画するなどして)「放送」はできても、「同時配信等」を行う場合には、これらの権利制限規定が適用されず、権利者に事前に許諾を得る必要があります。

【改正内容】

そこで、「放送」であっても「同時配信」であっても、特段権利者に与える影響は異ならないため、「放送」では権利者の許諾なく著作物等を利用できることを定める権利制限規定について、全て「同時配信等」にも適用できるよう拡充されます。

 

<拡充する権利制限規定の一覧>

  1. 学校教育番組の放送等(第34条第1項)
  2. 非営利・無料又は通常の家庭用受信機を用いて行う公の伝達等(第38条第3項)
  3. 時事問題に関する論説の転載等(第39条第1項)
  4. 国会等での演説等の利用(第40条第2項)
  5. 放送事業者等による一時的固定(第44条)
  6. 放送のための実演の固定(第93条)

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p19



❷許諾推定規定の創設

 

テレビ番組の中で使われる写真や映像について、テレビ局が著作権を持っていない場合、「放送」することについて許諾を得て使用しなければなりません。そして、「放送」と「同時配信等」は法律上別の利用方法ですから、その写真や映像が使われている番組を「同時配信等」するのであれば、明確に「同時配信等」の許諾も得る必要があります。

 

確かに、利用している著作物が1つのみであれば、単に許諾を得れば良いだけかもしれません。しかし、放送番組には多様かつ大量の著作物等(例:音楽・写真・書籍)が利用されています。とすれば、放送及び同時配信等までの限られた時間内で、全ての権利者に対して、詳細な利用条件等を説明し、明確に同時配信等の許諾まで得るのは困難といえます。

⇒その結果、仮に権利者が内心では同時配信等を行って構わないと思っている場合でも、明確な許諾がないことを理由に「フタかぶせ」などが行われるおそれがあります。

 

【改正内容】

そこで、

権利者が、同時配信等を業として実施している放送事業者と、放送番組での著作物等の利用を認める契約を行う際、権利者が別段の意思表示をしていなければ、「放送」に加え「同時配信等」での利用も許諾したものと推定する規定を創設されました。

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p21



❸レコード・レコード実演の利用円滑化

 

例えば、テレビ番組の中で流れるBGMで流行の曲が流れることがあります。レコード(音源)・レコード実演(音源に収録された歌唱・演奏)について、「放送」で利用する場合、事前の許諾は不要とされています。一方で、「同時配信等」で利用する場合、事前の許諾が必要となります。

一般的に、音楽については、著作権管理事業者(JASRACなど)が一括して著作権を持っています。許諾の必要な「同時配信等」での利用について、著作権等管理事業者による集中管理等が行われている場合には円滑に許諾を得ることができます。しかし、そうでない場合には、著作権者を特定した上で交渉をすることとなり、円滑に許諾を得ることが困難です。

⇒すると、(許諾が不要なため)放送で使ったレコードが、同時配信等では使えず、「フタかぶせ」などが行われるおそれがあります。

 

【改正内容】

そこで、

同時配信等に関して、集中管理等が行われておらず、円滑に諾諾を得られないと認められるレコード・レコード実演について、通常の使用料額に相当する補償金を支払うことで、事前の許諾なく利用することができるようになります。

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p24



❹映像実演の利用円滑化

 

俳優の演技など(映像実演)についても、著作権法上の保護の対象になります。

映像実演については、「放送」で利用する場合も「同時配信等」で利用する場合も、いずれも許諾が必要ですが、「放送」については、初回の放送の許諾を得た場合、契約に別段の定めがない限り、再放送については許諾を不要とする特例(報酬支払いは必要)が存在します。しかし、そのような特例は、「同時配信等」については適用されません。

レコードの場合と同様に、「同時配信等」での利用について、著作権等管理事業者による集中管理等が行われておらず、円滑に許諾を得られない場合があります。

⇒すると、再放送する放送番組が、同時配信等できないおそれが出てきます。

 

【改正内容】

そこで、

①初回の同時配信等の許諾を得た場合、契約に別段の定めがない限り、再放送の同時配信等について、集中管理等が行われておらず、円滑に許諾を得られないと認められる映像実演について、通常の使用料額に相当する報酬を支払うことで、事前の許諾なく利用することができるようにする。【改正93条の3】

初回の同時配信等の許諾を得ていない場合(初回放送時に同時配信等がされていない場合)にも、契約に別段の定めがない限り、実演家と連絡するために以下の措置を講じても連絡がつかない場合には、あらかじめ、文化庁長官の指定する著作権等管理事業者に通常の使用料額に相当する補償金を支払うことで、事前の許諾なく利用することができるようにする。【改正94条】

<実演家と連絡するための措置>

  • 実演家の連絡先を保有している場合には、その連絡先に連絡すること
  • 著作権等管理事業者に照会すること
  • 芸能プロダクションのウェブサイト等において実演家に係る情報が公表されていないかを確認すること
  • 実演家を探している旨(実演家の氏名、同時配信等を予定している放送番組の名称など)を文化庁長官の定める方法により公表すること

参照:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)p26



❺協議不調の場合の裁定制度の拡充

 

現行法上、放送事業者が、著作物を「放送」するに当たって、権利者に許諾を得るための協議を求めたが協議が不調に終わった場合、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料額に相当する補償金を支払うことで、著作物を「放送」することが可能になる、という制度(68条)があります。

もっとも、現行法では「同時配信等」を行う場合には、この裁定制度が活用できない規定ぶりになっています。

 

【改正内容】

そこで、

著作物を「同時配信等」するに当たっての協議が不調に終わった場合にも、この裁定制度を活用することができるようになりました。



まとめ

令和2年改正と令和3年改正の内容について詳しく見てきました。

再確認していただきたいのは、それぞれの施行日です。令和2年改正については既に施行されています。現時点でその内容に従って実務が運用されています。罰則に規定なども増えていますので注意が必要です。一方、令和3年改正については、まだ施行されていません。図書館関係の権利制限規定などは、国民の利用に資する改正になっていますので、施行後から活用していただければと思います。

そして、デジタル化・IT化が進み、新しいサービスやビジネスが次々と誕生する現代において、著作権法は、時代にあった適切な権利保護を実現していくためにこれからも毎年のように改正が行われていくことが考えられます。

企業としても個人としても、法改正をしっかり追い、正しく著作物を管理・利用できるように心がけましょう。