ノウハウ 文書管理とは?システムを用いた方法や管理体制整備のメリット
更新日:2024年11月18日
投稿日:2021年07月8日
文書管理とは?システムを用いた方法や管理体制整備のメリット
文書管理とは、書類の作成や受領から、保管期間を過ぎて廃棄されるまで、紛失を防ぎ適切に管理することを指します。管理体制が整うことで、リスクの軽減や検索性の向上といったメリットを得られます。
文書管理には、紙媒体での管理とシステムを活用した管理の2種類がありますが、いずれの場合もルールを定め、それに基づいて運用することが求められます。
本記事では、文書管理体制を整えるメリットや、文書管理を進める際の方法とポイントについて詳しく解説するとともに、文書管理システムを活用する際の利点についてもご紹介します。
文書管理とは
文書管理とは、書類が生まれてから有効期限が終了するまでのライフサイクルの中で有効な文書を紛失したり損失しないように適切に管理することです。
特に、契約書をはじめとしたビジネスにおいて発生する文書は、やり取りの履歴となり裁判で証拠と認められる重要書類にされるなど文書管理はビジネスリスク管理にも直結しています。
新しい書類を保管することと合わせ、有効期限の切れた文書を廃棄することも文書管理の一要素です。
また、文書管理が上手くいっていないと、必要な時にすぐに取り出せない、保管期間の過ぎた文書を残したまま、反対に必要な文書を誤って処分してしまうなどの問題が生じます。
マニュアルなど執務に関する文書がすぐに見つからないと、業務効率の低下にもつながります。
品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001でも、文書管理について定めがあり、必要な時・場所で入手できる、いつでも利用しやすい(読みやすい)状態、機密性が守られている状態を求めているなど文書管理は品質に関わる重要な仕組みとされています。
なぜ文書管理なのか?文書管理の目的と重要性
そもそも、文書管理の目的とは何なのでしょうか。
ひとつには、法律で保存が義務付けられている文書を、適切に保管・保存することが挙げられます。
定款や株主名簿、仕訳帳や総勘定元帳、労働者名簿、社会保険に関する書類などは法律で保管が義務付けられています。また、保管の義務がない文書でも、さまざまな個人情報が記載されているものがあります。社会的な責任を負う意味でも、適切な管理が求められるでしょう。
また、企業活動に必要な情報や事業を営むうえで有益な情報を有効活用するためにも、文書の保管や保存が必要です。これまで蓄積してきた営業ノウハウや秘伝のレシピ、顧客情報などがそれらの情報に該当します。
たとえば、顧客との商談に必要な書類がある場合、すぐに取り出せる環境を構築できていれば、特に問題ありません。
しかし、必要書類がどこにあるのか分からないといった状態では、顧客を不安にさせてしまいます。本来なら大口の契約となるはずが、顧客を失ってしまう羽目になるかもしれません。ビジネスチャンスを失わないためにも、文書管理は重要です。
また、コスト削減につながるのも、文書管理が欠かせないといわれる理由です。
適切な管理体制と環境が整っていれば、保管に関する手間を軽減でき、紙文書のスペースも削減できます。
文書管理が重要なのは法的に必要な書類を適切に管理したり、コスト削減にとどまりません。
業務効率化のための文書管理
文書が適切に管理されていれば探す手間を省けます。結果、業務をスムーズに進められます。
企業には、保管が義務づけられた文書も数多く存在します。時には、保管中の文書が必要なことも。
探すことに時間をとられてしまうと、社内で情報共有を円滑に行えないために生産性に影響を及ぼしかねないだけではなく、ビジネスチャンスを失うかもしれません。
たとえば、顧客との商談に必要な書類がある場合、すぐに取り出せる環境を構築できていれば、特に問題ありません。
しかし、必要書類がどこにあるのかわからないといった状態では、顧客を不安にさせてしまいます。本来なら大口の契約となるはずが、顧客を失ってしまう羽目になるかもしれません。ビジネスチャンスを失わないためにも、文書管理は重要です。
World Commerce&Contracting(世界唯一の商業実務の標準を普及させ、能力を高めることを目的とした非営利団体)の調査によると、優れた契約書の作成と管理は、年間収益の平均9%を節約できるという調査結果が出ています。
Poor Contract Management Continues To Costs Companies 9% Of Their Bottom Line
文書管理の効率化を実現すれば、別の重要な業務に人手を回すことができ、組織全体の業務効率化とコスト削減につながるでしょう。
セキュリティ強化とコンプライアンスの確保
適切な文書管理ができていれば、文書の保管場所や利用者を把握できるため、情報漏えいのリスクを下げられます。セキュリティ対策のなされた組織と言えます。
機密情報や個人情報の含まれる文書が流出したとなると、企業の信用問題に関わります。訴訟に発展してもおかしくありません。
機密情報や個人情報を流出させない体制の整った組織は、コンプライアンスを遵守していると見なされます。
保管義務のある文書の提示を求められた時に見つけられずに対応できないと、説明責任を負ったり、罰則を科されることもあります。法令を守ることで、コンプライアンスの強化につながります。文書管理は、コンプライアンス意識を高める一環と言えるでしょう。
紙かデータかで変わる文書管理の方法
近年、ペーパーレス化を推進しようとする企業が増えています。
新型コロナウイルスの影響でリモートワークを導入する企業が増え、それに伴いペーパーレスへと移行する企業がさらに増加しました。
文書管理の方法は、紙と電子データで異なります。従来、多くの企業は紙のまま文書の保管を行ってきました。そのため、紙書類の管理方法についてはある程度イメージのつく方も多いかも知れません。
一方、電子データによる保管は、従来と大きくやり方が異なります。そのため、中には抵抗を感じてしまう方もいるでしょう。新しいことへチャレンジする時は、不安を抱くものです。しかしそれを考慮しても、電子データでの保管には多くのメリットがあります。
文書を電子化すれば、検索性が向上します。ファイル名から取り出せるのはもちろん、特定のキーワードでも検索できます。つまり、必要な時に目的のデータをすぐに取り出せるのです。
書類の紛失リスクを下げられるのも、メリットといえるでしょう。紙の書類では、勘違いで廃棄してしまう、シュレッダーにかけてしまうといったことが起きかねません。もし、機密情報を記載した重要な原本や個人情報が掲載された文書を紛失した場合、企業の信用を大きく損ないます。電子データなら、このようなリスクを回避できます。
このように、文書の電子化にはいくつものメリットがあります。従来と保管・保存の方法が異なるのは事実ですが、メリットを考慮すれば電子データでの保管がおすすめといえるでしょう。保管スペースの無駄をなくすためにも電子化をおすすめします。
なお、現状で紙のまま保管している文書でも、スキャンやテキスト化により電子データとして管理できます。これを機会に検討してみてはいかがでしょうか。
契約書をスキャンしPDF化するメリットとは?|おすすめのスキャン代行サービスも
紙で管理する方法
相手方が電子契約に対応していない場合などは、紙の契約書を使うことになります。
見る機会が少なく、保管期間も短いか定められていない文書であれば、電子化するより紙のまま保管していた方が都合が良いこともあるでしょう。
紙で保管する場合、残しておく必要があるか否か確認することから始まります。保管すべきか悩まないよう、処分する基準を設けて共有しておくことをおすすめします。例えば、○年以上使用していない文書は処分するなど。
使用頻度が不明なものの頻繁に使用していないものについては、再取得が容易であれば処分を検討しても良いでしょう。
年度別や業務別などに分類し、場所を決めて保管すると、必要な時に見つけやすいです。
処分するタイミングではないものの、分類に当てはまらない書類も出てくるかもしれません。適切な保管場所が分からない文書については、一時保管場所を設けることがおすすめです。紛失の心配をしなくて済みます。
文書管理システムで一元管理
デジタル化したファイルの保存を可能とするツールが、文書管理システムです。電子データとして保管する文書ファイルは、システムの導入により一元管理を行えます。さまざまなシステムがリリースされており、フリーで利用できるオープンソースのものもあります。
「できるだけ紙のまま保管したい」といったケースでも、文書管理システムは役立ちます。システムに情報を登録しておけば、どこに保管してあるのか容易に検索できるからです。
文書管理システムの機能はさまざまですが、一般的にはファイルのデータベース化や検索機能、プッシュ通知、アクセス権限付与、情報管理などの機能が備わっています。また、文書を整理して保存できるファイルサーバー、共有機能なども実装しています。
エクセルを用いて文書管理を行っている企業も少なくありません。システムとは呼べませんが、エクセルでは簡易的な文書管理台帳を自作することが可能です。ただ、メンテナンスの手間が発生するため、おすすめとはいえません。
近年では、クラウドサービスの文書管理システムも登場しています。システム導入の手間を省け、高機能なシステムを容易に導入できるのが魅力です。無料試用期間が設定されたサービスも多くあるため、実際に操作性や機能を確認してから導入できます。
ContractS株式会社が提供しているContractS SCANなら、過去契約書を箱に詰めて送るだけで、クラウド上での契約台帳管理を可能にします。
文書管理体制を整備するメリット
必要な文書をすぐに見つけられる、機密やリスク管理できるなどの他、業務効率化のきっかけとなるペーパーレス化が進むというメリットも得られます。
必要な文書が短時間で見つかる
管理台帳を使って文書の保管場所を明らかにする、文書管理システムでキーワードや作成日時から検索できるようにするなどで、必要な文書を探す時間が短縮されます。必要な時に文書をすぐに用意できることは、効率化にもつながります。
紙で管理していると、台帳に記載の保管場所(キャビネットや倉庫など)まで行って文書を取り出すことが必要です。ファイル内を1枚ずつ確認しながら見つけなければならず、手間も時間もかかります。台帳の記載通りに保管されていなければ、探すのも一苦労です。
文書を電子化してシステムで管理すれば、キーワード検索などで確実に見つけられます。検索性の向上に加え、文書の共有もスピーディーになります。
さらに、文書が増える度に物理的に保管スペースを拡張せずに済みます。
ペーパーレス化が進む
紙の管理は、文書が多いほど保管スペースが必要になります。保管場所を確保し、定期的に整理しながら紛失や劣化がないかの確認も要します。
文書管理体制の整備を通じ、文書管理システムを使う方が管理の手間を省けるなどメリットが大きいと感じ、システムを導入するケースは少なくありません。
文書管理システムは紙の文書にも対応しているものの、電子媒体の方がシステムの強みを実感できるでしょう。検索から必要な文書の取り出しまでの時間が短くなること、物理的な保管場所が不要、劣化の心配がないなどのためです。
文書管理システムがきっかけでペーパーレスの恩恵を受けられ、業務の進捗にも支障がないと分かれば、ペーパーレスを推進しやすくなるはずです。
ペーパーレスが進めば印刷や郵送が不要になります。コスト削減にも有効です。
加えて、システムで文書の閲覧・編集・共有ができれば、出社しなくても業務を進められます。リモートワークも進みやすいです。
アクセス権の管理で機密を管理できる
紙管理の場合、機密性の高い文書の管理には特に配慮が必要です。鍵のかかるキャビネットへの保管など、文書の閲覧・保管・取り出し時の厳格なルールが求められます。
加えて、アクセス権を適切に管理するためには、文書を閲覧・取り扱う権限を持つ人のリストを作成し、閲覧や持ち出しの記録を手動で残す作業が発生します。アナログでの作業は手間がかかり、書き間違いや記入漏れといったミスが発生するリスクも高まります。
電子文書管理の場合、システム上で文書へのアクセス権限を細かく設定することが可能です。ユーザーごとに閲覧や編集の権限を制限できるため、文書の機密性の高さに応じて権限を設定できます。アクセス履歴も自動で記録されるため、セキュリティの向上も図れます。
紛失防止などリスク管理できる
文書を紙のまま保管していたとしても、持ち出し時のルールが作られていてどの従業員も守っていれば、持ち出しによる紛失や情報漏えいにはシビアかと思います。
それでも、電子文書と比較すると、紛失リスクが高いことは否めません。例えば、営業担当者が顧客から申込書を受け取り、事務所で他の業務を行ううちに、申込書をどこに置いたか忘れてしまうといったケースです。
書類の原本の保管場所のルールがあいまいな結果、重要な書類が机の奥に紛れ込んだり、誤って他のファイルに挟み込まれて紛失してしまうことが起こり得ます。
問題は、文書管理の仕組みが機能していないことです。物理的な書類を扱うため、誰がどの文書をどの時点で保管・処理しているかを把握する仕組みが不十分だと、現時点の書類の持ち主や保管場所を特定できず、紛失リスクが高まります。
文書管理システムで電子化した文書を管理すれば、持ち出しによる紛失は避けられます。アクセス権を持つ人を限定できることも相まって、情報漏えい対策もしやすいです。
ただし、システムへの不正アクセスによる情報流出などは紙での保管にはないリスクのため、セキュリティ対策が強固なツールを使うことは前提です。
誰が編集したか履歴が残るため、改ざんも防ぎやすいです。
文書管理の基本的な進め方
文書管理は、企業全体で段階を踏みながら進めなければなりません。
適切な文書管理を効率的に進めるにあたっての課題の分からない企業もあれば、文書管理のルールは整備されているものの周知できていない段階の企業もあるでしょう。
両者で何から始めるべきか異なりますが、本記事では文書管理に一から取り組みたい企業でも始めることが分かるよう、基本的な進め方を紹介します。
現状把握
やみくもに文書管理に取り組むのはおすすめしません。不要なものまで電子化してしまい、余計な手間と時間が増えてしまうからです。まずは、きちんと現状を把握することから始めましょう。
現状を把握すれば、文書管理における課題を明確にできます。どのような課題があるのか、何が問題になっているのかを抽出しましょう。そのためには、現場へのヒアリングも欠かせません。
企業によって、保管している文書の量は異なります。まずは、自社でどれくらいの紙書類を保管しているのかを把握しましょう。併せて、電子化されたデータがどれくらいのあるのかも調べてください。
次に、管理状態を確認します。どのような環境で保管されているか、属性別に分けられているか、ファイリングされているかなど、現状の管理体制を把握しましょう。電子文書の場合は、データ量やファイル名、階層などをチェックします。
電子文書の場合、アクセス権の付与状況も確認することをおすすめします。機密情報へ誰でもアクセスできるような状態では、いつ情報漏えいが発生するかわからないため、適切に権限が付与されているかどうかをチェックしてください。
文書管理の目的とゴールを社内で統一する
企業によって、文書管理を導入する目的は異なります。検索性を高めてスピーディにビジネスへ活かしたいといった企業もあれば、コスト削減を最大の目的として掲げる企業もあります。
組織全体の認識がバラバラでは、スムーズな文書管理システムの導入を阻害してしまいます。組織の認識を統一させるためにも、目的や最終的なゴールを規定しましょう。
そのうえで、文書管理の重要性や考え方を全社員に周知させる必要があります。上層部だけが必要性や重要性を理解し、取り組もうとしてもうまくいきません。現場から「なぜ急に電子化なのか」と反発の声があがる可能性もあります。
このような事態とならないよう、社内全体で意識合わせを行わなくてはなりません。必要に応じてセミナーや勉強会を開催し、しっかりと意識を合わせていきましょう。
文書管理の範囲を確定する
管理する範囲を確定させないと、不要なものまで電子化してしまいます。余計な手間が発生するばかりか、せっかく文書管理をしても、うまく機能しなくなるおそれもあるでしょう。
文書管理の範囲を確定するために、まずは不要な文書がどれなのかをはっきりさせましょう。不要な書類とは、法律で保存が義務付けられておらず、なおかつ今後閲覧の必要がない書類です。それらを大量に抱えていてもスペースを圧迫してしまうだけで、余計な手間も増えてしまいます。まずは不要な書類をはっきりさせ、廃棄することで、管理すべき文書の範囲を確定しやすくなります。
残った文書は、優先順位や重要度をつけましょう。この作業により、さらに不要か必要かの絞り込みができます。結果的に管理の範囲外となったものは廃棄しましょう。
文書管理のルールを作成する
ルールを定める時は、実際のワークフローに合わせて行いましょう。誰がいつどのようなタイミングで登録するのか、どこへ保管するのかといったルールを定めます。そして情報共有に関するルールを決めることも大切です。これらのルールを文書管理規定として作成します。
また、文書の分類方法も決めなくてはなりません。分類方法が曖昧では、運用開始後にさまざまな文書が混在してしまったり、検索しにくくなったりといった弊害が生じるおそれがあります。
分類方法としては、総務部などの文書を管轄する部門がトップダウンで分類方法を決定する「割り付け式」と、実務担当者が規定を作成する、ボトムアップの「積み上げ式」がよく知られています。どちらが正解といったことはないため、自社に合った方法を選びましょう。
文書の種類を分類する
企業内でのみ使用する文書か取引先とも共有する文書か、社外秘の情報や個人情報が含まれるといった機密性の高さの違いなど、文書の性質に応じて分類することから始めると、保管場所や保管方法を決めやすいです。
分類した文書をファイリングする
種類別、場合によっては部署別に分類した文書を、ファイルやボックスを活用しながら管理します。文書を分類していると、一見どのような文書か分からないものも出てくるかもしれません。分かりにくい文書は、誰が見ても分かる名称での仕分けを意識すると、ファイリングがスムーズです。
文書を分類できたら、社内で管理しやすいルールに則って保管しましょう。
保管年数を決め、ファイルボックスなどに入れておくと、廃棄するタイミングを誤りにくいです。
文書管理システムも併用すると、保管しなければならない文書と廃棄して問題ない文書、文書の分類例などを一括で確認できます。
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紙の文書の電子化
紙の文書に関しては、この機会に電子化を検討しましょう。電子化に伴う手間や費用の発生など、多少のデメリットはあるものの、それを補って余りあるメリットを得られます。近年多くの企業が文書の電子化・ペーパーレス化へと移行しているのは、多大なメリットを得られるからにほかなりません。
電子化すれば、紙の原本を保管する必要がありません。従来の保管スペースをなくすことができ、空間を有効活用できます。また、いつまでもよい状態のまま保管できるのも、電子化で得られるメリットです。
企業に保管が義務付けられている文書の中には、長期にわたるものもあります。たとえば、株主総会議事録や取引に関する帳簿、監査報告書などは、5年以上10年以下の保存期間が設けられています。
紙は、長期にわたる保管でコンディションを悪くしてしまう可能性が高いです。色があせて視認性が悪くなる、破れて読めなくなる、虫に食われてしまうといったことも起こりえます。
電子化しておけば、このような心配がありません。いつまでもコンディションのよい状態で保管でき、必要なときに新しいものをプリントアウトできます。
書類の電子データ化を行う方法はさまざまで、方法によって費用などが変わってくるため、自社の必要に応じて事前に検討しましょう。また、どのような保存形式で保管するのかも検討が必要です。
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運用開始後の定期チェックと改善
最初から何の問題もなく運用できる企業は、それほど多くありません。大なり小なり何らかの問題や修正点は発生します。そのため、運用を開始しても定期的にチェックを行い、改善を続けることが大切です。
定期チェックでは、自社で定めた最終的な目的と照らし合わせながら効果を検証してください。その都度問題点を抽出し、改善に努めましょう。文書管理を効果的に運用するうえでは、このようにトライ&エラーを繰り返すことが大切です。
また、現場の声を汲み取ることも忘れないでください。実際に運用を行うのは現場であるため、意見を軽視することはできません。部署単位でヒアリングを実施する、必要に応じて個々の社員から聞き取るなど、現場の声を聞いたうえで文書管理に反映させていきましょう。
文書管理のコツ
文書の保管場所や期間を過ぎた書類の扱いなどのルールを定め、ルールに沿った運用が大切です。そして、文書はずっと保管されるものではないことも忘れてはなりません。
書類のライフサイクルを意識する
書類は作成・受領後、保管しながら活用し、廃棄されます。情報漏えいの防止や最新の文書を保管するスペースを確保するためにも、役目を終えた書類は適切な廃棄が求められます。
文書の特性を踏まえて作成・受領からどのくらい保管するか、期限が過ぎたらどのように廃棄するか定めておくことが重要です。
ただし、株主総会議事録は会社法で10年など、保管期間の定められた文書もある点に注意が必要です。
文書の種類や用途を分類する
機密性のレベルごと、社外と共有する文書と社内でのみ用いるものなどに分けると、似たライフサイクルの文書をまとめて管理しやすいです。使用頻度の違いに応じた分類を行うことで、必要な文書をすぐに取り出せます。
保管期間を確認し適切に処理する
法令で定められた文書の保管期間を過ぎた書類は、適切に処分する必要があります。そうしないと、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
処分方法が定められているものもあるので注意しましょう。
応募者の履歴書など法令で定められていない文書もあります。個人情報や機密情報の含まれるものは特に、流出すると損害が大きいです。法令で保管期間が定められていない文書であれば自社で保管期間を定め、期間が過ぎたものは手順に沿った処分が求められます。
ルールを定める
社内で文書管理のルールが統一されないと、必要な文書の保管場所が分からない、文書の保管期間と廃棄するタイミングや方法にバラつきが生じるなどの問題が発生します。
文書の保管場所、ファイル名の付け方、保管期間の過ぎた書類の廃棄方法などを定め、徹底させることが必要です。
文書管理規定に盛り込むべきこと
組織全体で文書管理を推進するためには、文書管理のルールである文書管理規定を作成しなくてはなりません。正式なルールを定めないと、現場が別々に文書管理を行ってしまうおそれがあるためです。では、規定にはいったいどのような内容を盛り込めばよいのでしょうか。
文書管理の適用範囲
文書管理規定で定めるルールをどこまでの範囲で適用するのかを決め、明記するようにしましょう。ルールを適用する範囲を決めないと、現場に混乱をきたしてしまうかもしれません。スムーズな運用を実現するため、適用範囲を明確にしましょう。
適用範囲の例としては、「紙文書にのみ当該規定を適用する」といった内容の明文化が挙げられます。このケースでは、紙の書類にのみ文書管理規定に明記されたルールが適用されることを示しています。
もちろん「電子文書にのみ適用する」「紙と電子データ双方に適用する」といった内容も考えられます。このあたりは、企業の目的やゴールによって違ってくるでしょう。
適用範囲が曖昧なままでは、現場に混乱をもたらし業務に支障をきたす可能性があります。業務効率や生産性を低下させるかもしれないため、はっきりとした内容を記載しましょう。
文書の保管・参照・編集に関する項目
文書の保管期限を盛り込むことも重要です。いつまで保管するのか定めていないと、次から次へとどんどん文書が溜まってしまいます。法律で保存期間が定められているものは企業で決定する必要はありませんが、そうでない文書についても期限を明確にしましょう。
保管場所に関するルールも明記する必要があります。どこへ保管するのか明確になっていないと、各々が好き勝手な場所へストックしてしまう可能性があります。保管した本人でないと場所がわからないといった属人化のおそれも生じるため、保管場所のルール設定と明記は必要です。
文書をコピーした場合の取り扱いについても記載しなくてはなりません。原本をどうするのか、コピーした書類も保存するのかなどを規定しましょう。
また、電子化された文書の場合は、ファイル命名のルールも決めておく必要があります。ルールが統一化されていないと、検索性が悪化してしまいます。必要なときに目的の文書を取り出せないといった事態になりかねず、ビジネスにおける機会損失や顧客の信頼を失ってしまうといったおそれもあるでしょう。
廃棄に関する項目
文書管理規定には、廃棄に関する項目も盛り込みましょう。文書をどのように廃棄するのか、具体的な廃棄の手順や方法をきちんとルールとして定めておく必要があります。
不要になった文書や、法定保管期限を過ぎた書類は基本的に廃棄します。廃棄しないといつまでも残ってしまい、保管スペースを圧迫してしまうでしょう。電子化している場合でも、不要なファイルをいつまでも保管していると、容量を圧迫してしまうため注意が必要です。
廃棄に関するルールをきちんと定めておくことは、とても重要です。各々が好き勝手な方法で廃棄してしまうと、情報が漏えいしてしまうリスクがあるからです。
情報漏えいは、企業にさまざまなダメージを与えます。自社のノウハウが流出しライバル企業に業績で負けてしまうかもしれません。もちろん、顧客や取引先の信頼をなくしてしまうおそれもあります。万が一、顧客の個人情報が流出してしまうと、企業の信頼を一瞬で失ってしまう場合もあります。情報管理がしっかりできない会社と批判を浴び、事業継続すら難しくなる可能性もあるでしょう。
このようなリスクを回避するためにも、文書廃棄に関するルールの策定と明文化が必要です。紙の書類ならシュレッダーにかける、溶解させたうえで廃棄するなど、情報が漏れないような廃棄手段をルールとして定めましょう。
CD-RやDVDなど、電子メディア媒体も、適切な方法で廃棄しなくてはなりません。電子メディアは、たくさんの情報を記録できるため、流出した場合のダメージは計り知れないでしょう。廃棄方法としては、CD-RやDVDならハサミで切り刻んで捨てる、カッターなどで記録層と保護層を分割してから捨てるなど、物理的な破壊が効果的です。
罰則や改廃に関する項目
ルールを破ったときの対処についても記載しましょう。罰則の規定がないと組織の中でルールを守らない人が出てくる可能性があります。なし崩し的に文書管理規定がないがしろになってしまうと、文書管理の運用がうまくいかないばかりか、重要な情報を漏えいさせてしまうリスクも生じます。
また、法定保存文書の場合、定められている期間を満たさずに廃棄してしまうと企業が罰則を受けてしまう可能性があります。税法上や会社法上の罰則が適用され、過料が科せられるかもしれません。このような事態を防ぐためにも、ルールを破った際の罰則を設け、記載しておく必要があります。
罰則規定には、保存文書に手を加えてしまった、誤って廃棄してしまったといったケースなどへの対処を明記しましょう。また、改ざんや誤廃棄が起きた場合、まず誰に報告するのか、その文書はどのように扱うのかなどのワークフローに関する規定も必要です。
先述した通り、法定保存文書の場合には罰則を科せられる可能性があるため、本来このような事態は未然に防がなければなりません。しかし、人が扱うものであるため、ヒューマンエラーが発生するのは仕方のないことです。罰則を設けるとともに、このような事態が発生しないような体制や環境を整えることも大切です。
また、文書管理規定は作成するだけでは意味がなく、正しく機能させることが重要です。そのために、組織全体への周知を徹底しましょう。規定の重要さや遵守することの大切さなどについても併せて周知できればベストです。必要に応じて勉強会やセミナーの開催も検討してみましょう。
高機能な文書管理システムの利点
文書管理システムを導入することで得られる5つの主なメリットを紹介します。
資料検索の効率化
紙のまま保管した文書は、自分で探して取り出さなければなりません。どこに保管しているか管理できるシステムを利用していたとしても、紙の文書であれば検索から取り出すまで一括ではできません。
しかし、システム上で保管・管理していれば、日付や書類名など、探したいことから検索できるので、素早く見つけやすいです。検索したら必要な文書をすぐに取り出せるので、利用までも円滑に進みます。
保存期限の設定と廃棄
文書は保存期間とあわせて管理できます。期限の過ぎた文書は自動で削除されるということです。
破棄し忘れによるトラブル防止に役立ちます。機密情報が漏えいしないよう注意しながら廃棄する必要もなくなるので、処分に充てていた時間を他の業務に充てられます。
編集の容易さとバージョン管理
システム上で編集できることに加え、編集履歴も残せます。文書が変更された時に通知するようにしておけば、最新の状況の共有もスムーズです。
ナレッジ共有で属人化解消
ナレッジ共有とは業務効率化や企業価値の向上などを目的に、企業や組織の知識・経験・ノウハウを共有することです。
書面に残して共有するとなると、いくら保管場所があっても足りません。内容の加筆・修正が繰り返されると、読みにくくなることも懸念されます。
文書管理システムを活用してノウハウなどを残せれば、参考となる情報にすぐにたどり着きます。他の従業員に共有したいことがある側も、読みやすさを確保しながら容易にバージョンアップできます。
操作制御でセキュリティ強化
アクセス権限の変更で、機密性の高い文書に閲覧制限をかけられます。文書を開けなければ、不要な修正も防げます。
強力なセキュリティ対策は、企業の信頼獲得に欠かせません。
文書を電子化する方法
電子帳簿保存法でも認められているように、スキャンは紙の書類を電子化する方法のひとつです。
社内の複合機でも対応可能です。しかし、スキャンしたい文書が大量にある場合、他に複合機を使用したい従業員との兼ね合いを考えながら行わなければならないため、効率的ではありません。
集中して電子化を進めるにあたっておすすめなのが、スキャンサービスです。自分でスキャンするサービスもあれば、外部に委託できるサービスもあります。
それぞれメリットとデメリットが異なるので、自社の状況とマッチするものを選びましょう。
ContractS株式会社が提供しているContractS SCANなら、過去契約書を箱に詰めて送るだけで、クラウド上での契約台帳管理を可能にします。
まとめ
文書管理は、業務効率化やリスク管理、コンプライアンスの確保につながる重要な業務です。文書管理体制が整うと、必要な文書をすぐに見つけられ、リスク管理の強化が図られます。
管理方法は紙かデータかで変わりますが、文書管理のためのルールが必要なことは共通します。
文書管理体制の整備は業務改善と密接に関わります。業務改善の一環として文書管理の見直しに取り組むのであれば、文書を電子化してシステムを活用する体制への移行をおすすめします。