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ノウハウ 秘密保持契約(NDA)とは?必要項目や雛形について解説

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年06月22日

秘密保持契約(NDA)とは?必要項目や雛形について解説

秘密保持契約(NDA)とは?必要項目や雛形について解説

「秘密保持契約(NDA)」は、個人情報をやり取りする場合に締結をすることが多く、一般的によく企業間で取引される契約類型です。

 

一方で、その具体的な内容や締結するべき時期についてはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。こちらの記事では秘密保持契約についてチェックポイントからおすすめの雛形まで解説いたします。

 

 

秘密保持契約とは?

秘密保持契約とは、NDA(Non-disclosure agreement)ともいい、相⼿⽅から開⽰を受けて知り得た営業上または技術上、業務上の⼀切の秘密情報の⽬的外使⽤や、第三者に開⽰することを禁⽌する契約です。

交渉などで自社の秘密情報を開示する場合には、開示に先立ちNDAを締結することが一般的です。

 

契約の主な目的は下記の2点です。

①開示した情報を当該取引以外の目的に使用することを禁止するなど、使用範囲を限定すること

②他者への漏洩・開示を禁止し適正な管理を義務づけること

 

また、メリットとしては下記の点があげられます。

①相手方の秘密保持義務違反による損害が生じた場合に損害賠償請求できる

②情報の流出・漏洩に関して、不正競争防止法に基づく損害の推定規定・行為の差止めを利用できる可能性が高まる

 

秘密保持契約においては、以下のような項目について規定するのが一般的です。

・秘密情報の範囲

・秘密情報管理体制の構築義務の有無

・秘密情報漏洩時の賠償責任

・契約終了後の秘密情報記録媒体の破棄・返還義務

・契約終了後の秘密保持期間の制定

・秘密情報を取り扱う者の制限

秘密保持契約はなぜ必要?

上記のように、秘密保持契約は直接には自社秘密情報の他社への漏洩や不正利用を防ぐことを目的とします。これに加えて、以下の目的からも締結が必要となります。

特許申請

秘密情報に関して特許申請を予定している場合は、秘密保持契約を締結しておきましょう。

 

特許法では、「公然知られた発明」(公知の発明)は、特許を受けることができません(特許法第29条第1項第1号)。公知の発明とは、「不特定の者に、秘密でないものとしてその内容が知られた発明」(特許・実用新案審査基準)であり、守秘義務を締結せずに情報を話した場合には公知の発明となった結果、特許申請できなくなる可能性があります。

特許権との関係においては、機密範囲の明示が重要です。

上記のようにして「公知」になってしまった場合に特許権を取得するには、6ヶ月以内の出願であれば申請できます。

不正競争防止

秘密情報の漏洩によって、自社が開発していたのと同等の製品やサービスを第三者が作った場合、その秘密情報が不正競争防止法の「営業秘密」に該当すれば、その製品やサービスの販売に対して、差し止め請求や損害賠償請求ができます。

しかし、漏洩した秘密情報が、「営業秘密」に該当するにはその情報が秘密として管理されていなければなりません。その際、秘密保持契約を交わしていないと秘密情報だという根拠が弱くなります。

 

差し止め請求や損害賠償請求のためにも、機密保持契約においては、機密の範囲や開示許容者について、明確に規定しておきましょう。

不正使用防止

例えば、サービスのアイディアを他社に話したところ、他社がそのサービスを始めてライバルになってしまったというような「機密情報を元にした不正な活用」という場面です。こうした不正な活用を防ぐには、機密保持契約で「競業禁止義務」というものを設定するのが一般的です。

秘密保持契約を締結する時期

基本的には、締結すべきタイミングは「自社の秘密情報を開示する前」です。打ち合わせ中につい秘密情報に及んでしまう、あるいは秘密情報であるために一定の情報の開示ができず、お互いに満足のいく検討ができないといった事態を防ぐためにも、ある程度、口頭での打ち合わせをした後、本格検討をする前にNDAを結ぶのが理想だといえます。

 

そのほか具体的には以下の時期に締結すべきです。

新規取引の開始・商談時

特にBtoB取引の場合、商品やサービスの見積もりの際など、技術情報や経営情報を聞きながら、営業活動をする必要があります。こうした場合にNDAを締結し、その条件に従って秘密情報を守ることにより、業者の営業活動も、会社の購買もスムーズに行うことができ、後でトラブルが起きることもありません。

業務提携や資本提携を行う時

企業同士が双方の非公開営業情報、技術情報、経営情報を開示して話し合う場面では、NDAが使われます。業務提携情報・営業情報・技術情報・経営情報などの重要情報が外部に漏れると、株価に大きな影響が生じるので注意が必要です。

秘密保持契約を結ぶ上でのチェックポイント6点

1.目的を明らかにする

まず何を目的としてNDAを締結するのかを必ず明らかにしましょう。「協業可能性の検討」「発注内容や見積もり額の算出」「コンペ参加のための情報提供」など、NDA締結の目的を明らかにすることで、後述する対象範囲やその使用・流用禁止の範囲、禁止期間に対しても、合理的に、根拠をもって交渉できます。

2.秘密情報の定義を明確にする

ここで定義した秘密情報以外の情報で漏えいが起きても、相手方を契約違反に問うことはできないため、十分な注意が必要です。一方で、何が対象にならないか、も重要です。開示された時点で既に公になっている情報や、情報の受領者の責任ではない理由で知られることになった情報などについては、秘密保持契約の対象とすることはできません。このような事項は「除外規定」として定めます。

 

このように、秘密情報の定義は、開示側にとって情報の漏洩や目的外使用を防止のための重要な事項です。一方で受領側にとっても義務の範囲に関わるため重要な事項となります。

3.秘密保持義務の範囲を明確にする

受領側の義務を明確にします。具体的には、秘密情報を第三者に漏えいしてはならないことに加え、秘密情報を適切に管理すること、また管理する際にその情報への不正なアクセス・持ち出しを防止するための対策を施すことなどが挙げられます。

4.義務違反した場合に効果はあるか

相手方が義務違反した場合に、秘密情報が漏えいした場合に損害賠償請求ができる旨や、秘密情報の使用の差し止めを請求できる旨を明記しておくことが必要です。

5.契約期間と契約後の拘束は適切か

検討期間やプロジェクト実行期間が終了した以降も一定期間は秘密保持義務が発生することもあります。契約期間とは別に、契約終了後も、たとえば5年程度など契約内容について効果を持続させることができる、残存条項を明記しておくことが大切です。

6.契約終了時の返還や廃棄の対応を定めているか

秘密情報が記載されたあらゆる資料は、契約終了後に返還してもらうか、もしくは相手方に廃棄してもらう旨を記載しておきましょう。契約期間が終了しても相手方に秘密情報が残っていると、漏えいや不正利用のリスクも残存します。

秘密保持契約作成三つのステップ

1.契約書の雛形を確認

当事者間で協議して合意した内容を契約書に明記します。会社が契約書の雛形を持っている場合、ベースにどちらの雛形を用いるかもすり合わせます。また、自社雛形は自社に不利な内容でないことがあらかじめ分かっているため、それを使えるように進めることも重要です。

2.双方の確認と、内容の合意

契約書のたたき台を基に当事者間で内容を確認します。自社に不利な条件や不利益となる懸念がある場合、弁護士にリーガルチェックを依頼しましょう。法的リスクや事業リスクを確認したうえで、内容の合意内容を契約書に明記します。

秘密保持契約書は、双方で協議しながら作成していきます。秘密保持契約では、上記の内容を確認しておきましょう。

3.契約書に署名、記名押印する

内容が決定したら、同じ内容の原本を締結する当事者の数作成します。それぞれに両社の代表者が署名(または記名押印)を行い1通ずつ原本を保管します。ここで作成した複数の秘密保持契約書は、内容が同じものであり、また同じタイミングで締結したことを証明するため、「割印」を押します。秘密保持契約書が1枚で構成されていれば、署名や記名押印、契約日などがあるため、割印が不要となる場合もあります。

 

もし秘密保持契約書が複数ページで構成される場合には、ページの一部を抜く、差し替えるといった改ざんを防ぐため、ページの見開き部分に「契印」を押します。多くのページがある場合は必要な契印が多くなるため、製本テープなどを使って製本するのが良いでしょう。製本している場合は全ての見開きページに契印せず、帯と表紙、または裏表紙に行うだけで済みます。

 

秘密保持契約書が秘密保持に関する内容のみで構成されていれば原則として印紙税がかからないため、収入印紙を貼る必要はありません。

 

また、電子契約の場合には印紙、製本、印刷など手間とコストを抑えたうえで契約を締結することが出来ます。

 

▼契約書の作成方法はこちらにて詳しく解説しています

雛形

NDAは上述のように取引の前提として締結する性格を持つため、雛形を用意している企業も少なくありません。また、秘密保持義務だけではなく、知的財産権の帰属条項や競業避止義務まで設定したような雛形もインターネットに公開されています。

 

しかし、その反面、雛形が多いあまりに、企業同士が条件や文言を調整し合意するプロセスに本来は不要なやり取りが生まれている可能性もあります。

 

そこで、不正競争防止法を所管する経済産業省がリリースする「秘密情報の保護ハンドブック」の「参考資料2 各種契約書等の参考例」の中にある標準NDAひな形とも言えるものを参照しましょう。

このハンドブックの参考資料2に、いくつかのNDAに関連する契約書式とそのパターンが掲載されていますが、外部企業とのNDAひな形として使えるのはこの中の「第4 業務提携の検討における秘密保持契約書の例」です。

 

こちらを参考に自社にとってリスクを管理したい事項の規定について独自に文面を整えましょう。

 

参照元:参考資料2 各種契約書等の参考例

まとめ

このように締結しなかった場合の不利益が大きく、注意すべき事項も多い秘密保持契約ですが、標準雛形に沿って作成すれば難しくはありません。

契約のリスクを管理できるプロセスで効率的かつ安全にビジネスを進めましょう。

 

▼秘密保持契約書をはじめとした、契約書のリスク管理についてはこちらの記事で紹介しています