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ノウハウ 労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや記載事項を解説

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年06月4日

労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや記載事項を解説

労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや記載事項を解説

企業が人を雇用した場合、「労働条件通知書」を交付することは労働基準法により定められています。この「労働条件通知書」とあわせて「雇用契約書」を発行している企業も多くあるのではないでしょうか。

この記事では「労働条件通知書」と「雇用契約書」、2つの種類の書類へ
書くべき内容、種類の違いや、ペーパーレス化の流れを受けて2019年に改正された、労働条件通知書の電子化緩和について解説します。

雇用契約書の電子化についてはこちらの記事で解説しています。

 

 

 

 

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、企業が労働者と労働契約を結ぶ際に、労働条件について明示する書面のことを指します。企業が人を採用する場合には、労働者に対して事前に労働条件を通知しなければなりません。

 

労働条件通知書に明記すべき内容は、下記の8項目です。

 

①労働契約の期間

②就業場所

③従事すべき業務内容

④始業及び終業時間

⑤休日

⑥休暇

⑦賃金の計算及び支払い方法

⑧退職に関する事項

 

労働条件通知書は労働者を保護することが目的です。労働条件通知書に明示される契約期間や就業時間、賃金などは、労働者が仕事に従事する上で基礎となる事項であるところ、これらが不明確であると、様々な支障が生じます。

例えば就業時間が定まっていなければ、労働者はいつ出勤し、どこから残業扱いとなるか知ることができません。雇用する企業側としても、就業時間や賃金の計算方法などを明記しておくことで、雇用する側と労働者側の間で共通認識を持てるというメリットがあります。共通認識によって、後々のトラブルを回避できます。

 

対象

労働条件通知書は、企業が労働力として雇う人材すべてに発行する必要があります。つまり、正社員だけではなく、パートやアルバイトなどの短時間労働者や、契約社員などの労働期間が決まっている者、日雇労働者全てに発行しなければなりません。

 

基本の就業時間や休暇の取得方法、給与の計算方法など、ある程度全社員に共通するものは社員がいつでも閲覧できる就業規則として発行できます。労働条件通知書に記載される内容は各労働者で条件に違いがあるため、労働条件通知書はすべての労働者に対して個別で発行しなければなりません。

 

交付時期

職業安定法が改正され、2018年1月1日に施行された新制度では、新卒の場合、正式な内定までに労働条件通知書を交付しなければいけないことになりました。もちろん、パートやアルバイト、中途採用の正社員、契約社員を雇うときにも、雇用契約を結ぶなら交付する必要があります。

 

パートやアルバイト、中途採用で、ハローワークなどに求人を出す場合、労働条件の明示が義務付けられています。また、自社のホームページに採用情報を掲載するときも、募集要項で条件を明示しなければなりません。さらに、新制度では労働条件に変更があった場合、変更内容をできるだけ速やかに明示することも求められています。

 

労働条件通知書の各項目別の書き方

 

契約期間

労働の契約期間の有無、つまり期間の定めがある契約なのか、期間の定めなしの契約なのかを記載し、期間の定めがある場合は、契約期間の日付を記載します。

 

契約更新の有無もここに含まれます。更新をしないor自動的に更新するという選択肢のほか、更新する場合があり得るという条件付きの選択肢もできます。もし、更新が条件付きの場合は、判断材料も合わせて明記するようにします。たとえば、労働者の能力や実績、勤務態度のほか、企業の経営状況や契約更新時に担当している業務の進捗状況などです。

 

就業の場所及び従事すべき業務

就業場所は実際に労働者が働く場所を記載します。基本的には実際に仕事をする会社や店舗などの住所を記載しますが、「本社総務課」など部署を記載してもかまいません。将来的に就業の場所が変わる可能性があるとしても、雇用契約を交わしたあと、最初に就業する場所を記載すれば足ります。

 

従事すべき業務に関しては「総務業務」や「経理業務」など、実際にどのような業務を行うのかを具体的に記載します。もし、携わる仕事が複数の業務にわたっている場合は、並列していくつ記載してもかまいません。

 

始業及び終業の時刻

企業や店舗によって、業務を始める前に朝礼を行うところがあるなど、実際に仕事を始める時間と出社しなければならない時間にズレがあるところもあるでしょう。そのようなケースでは、朝礼などの時間も労働時間に含めて始業・終業の時刻を記載します。

 

サービス業などでシフト制である場合や、フレックスタイム制や裁量労働制を採用している企業の場合は、それぞれの始業・終業の時刻を記載することが必要です。ただし、複雑になるケースでは、勤務規定などを別途設けて参照するように記載しても問題ありません。始業及び終業の時刻の欄では、ほかにも休憩時間や所定労働時間の有無の記載も必要です。

 

休日・休暇

労働基準法では法定休日が定められており、最低週1回、または4週間のうち4日の休日が必要です。ただ、あくまで法定休日は事業者が最低限労働者に与えなければならない休日の日数であり、それ以上に休日を取得させることもできます。法定休日を超える分の休日は法定外休日と呼ばれています。実際には週休2日制が広がったことにより、週1回や4週間で4回以上に休日のある企業も多いでしょう。1年単位の変形労働時間制を採用している企業の場合は、年間の休日を記載する必要があります。

 

また、有給休暇の取得の有無も記載事項のひとつです。事業者は労働者が6カ月継続勤務した場合、年10日の有給休暇を与える義務が発生します。有給休暇は勤務日数が少ないパート勤務の場合も、勤務日数に応じた有給休暇を与えなければなりません。2019年4月には働き方改革の関連法が施行されたことにより、年10日の有給休暇のうち5日は時期を指定して必ず取得させなければいけなくなりました。

 

賃金

賃金を記載するときは、まず最低賃金を把握したうえで具体的な金額を記載します。最低賃金とは、最低賃金法で定められている賃金の下限のことです。都道府県ごとに異なっており、詳細は厚生労働省のホームページで確認することができます。企業によって基本賃金以外に家族手当や通勤手当などのさまざまな諸手当を支給しているところもあり、労働条件通知書の賃金欄では諸手当の額とともに計算方法もそれぞれ記載します。たとえば、家族手当が全部で8000円の場合、計算方法は「配偶者5000円、子3000円」などと記載するのです。

 

また、残業したときなどの割増賃金率も記載しておきます。ただ、割増賃金率は同じ残業でも深夜残業や法定時間外残業など、残業の種類によって異なるため、それぞれ記載することが必要です。たとえば、法定外残業は1.25倍で、法定外残業かつ深夜残業であれば1.5倍になります。ほかにも、賃金の締切日や支払日、支払方法なども記載してかまいません。

 

退職に関する事項

退職に関する事項に関しては、定年制度の有無や再雇用制度の有無のほか、労働者が退職するときに必要な手続き方法を記載します。たとえば、退職する日の何日前までに届出をする必要があるなどです。その他の項目では、社会保険の加入状況や雇用保険の有無を記載しておきます。

 

注意点

明示義務事項

明示義務事項には、書面交付による明示事項・口頭でも差し支えのない明示事項の2種類があります。

 

絶対的明示事項とは?

絶対的明示事項とは企業が労働者に交付する労働条件通知書の中に必ず記載しなければならない項目のことであり、書面で労働者に明示する義務があります。

 

労働契約の期間

就業の場所・従事する業務の内容

始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項

退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

相対的明示事項とは?

制度がなければ記載しなくともよいが、制度を定めた場合は明示しなければいけない事項のことです。これらの事項は口頭の明示でも構いません。

 

昇給に関する事項

退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項

労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項

安全衛生に関する事項

職業訓練に関する事項

災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

表彰、制裁に関する事項

休職に関する事項

 

雇用形態別必要事項

 

前述のように、労働条件通知書の交付対象者は、正社員やパートタイマー、アルバイトや有期契約社員など、労働契約を締結するすべての労働者です。

 

この中で、短時間労働者に該当する者や有期契約労働者に対しては、全社員に共通する明示事項以外に個別に明示する必要のある事項が別途決められています。

 

パートタイム労働者やアルバイト(短時間労働者)向けの労働条件通知書

短時間労働者は勤務時間があらかじめ決まっていることが多いため、労働時間は事前に労働者の希望時間と擦り合わせた労働時間を記載します。

 

勤務は○月~○月まで

勤務は週に○日

労働時間は1日に○時間

などと記載し、特別な条件があれば追記します。賃金は時給制の場合が多いため、「時給○○○円」などと記載します。

 

また「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則第2条」では、労働者に明示すべき項目が以下のように定められているのです。

 

昇給の有無

退職手当の有無

賞与の有無

相談窓口

相談窓口は、平成27年4月の法改正により事業主に設置が義務付けられています。

 

派遣社員向けの労働条件通知書

派遣社員向けの労働条件通知書は、派遣元企業から派遣社員に交付されます。この場合、

 

派遣先企業の労働条件が書いてあるケース

派遣元起用の条件が書いてあるケース

 

の2つがあります。

 

派遣先企業の労働条件:「○○の派遣先へ○月~○月まで派遣予定」と記載した後、その他派遣先の職場の具体的労働条件が続く

派遣元企業の条件:「派遣件数の最大の希望は○件」「職種は○年○月から○カ月間派遣されるものを希望」といった記載となる

 

登録型派遣労働者に対して労働条件通知書と就業条件明示書を同時交付する際、記載が一致し重複する事項については、一方を省略して差し支えありません。

 

有期契約労働者の場合

有期契約労働者の場合、契約期間終了後の契約更新の有無や判断基準を記載しなければなりません。

 

厚生労働省が参考として示しているのは下記のような例です。

 

自動的に更新する

更新する場合があり得る

契約更新はしない

また、契約更新する場合の判断基準についても厚生労働省が参考として下記のような例を挙げています。

 

契約期間満了時の業務量により判断する

労働者の勤務成績、態度により判断する

労働者の能力により判断する

会社の経営状況により判断する

従事している業務の進捗状況により判断する

 

雇用形態別に労働条件通知書記載の注意事項が異なります。それぞれのケースごとに注意点をしっかりと押さえましょう。



見直しが必要になるケースがある

労働条件通知書は法改正によって、対応を変更する必要が出てくる場合があります。実際に、職業安定法の改正で2018年からは当初明示した労働条件が変更される場合は、変更内容を明示しなければならなくなりました。また、パートタイム労働法の改正で2015年からは「業務に関する相談窓口」の記載を入れなければならなくなっています。そのように、労働条件通知書は記載するべき事項が増えたり、見直しが必要になったりする可能性があるのです。そのため、不備がないように、定期的に厚生労働省のホームページなどで情報収集をして確認をすることも大切になります。

 

外国人労働者に対しても発行が必要になる

グローバル化が進んでいることや、労働力不足などの理由から、外国人労働者を雇っている企業も増えています。外国人労働者を雇う場合でも、日本人労働者と同様に労働条件通知書の発行を行うことが必要です。ただし、外国人労働者の場合は、日本語で記載された書類の内容を正しく理解できない可能性も考えられます。もし、しっかり内容を理解していないと、後にトラブルに発展するリスクもあるでしょう。そのため、双方の認識の違いを防止するためにも、労働者の母国語を使って記載するようにするとトラブルを防ぐことにつながります。

 

保管義務

労働条件通知書は労働者が就業する前に交付し、勤務している期間中だけ保管しておけばいいというわけではないため注意が必要です。労働条件通知書を発行した場合、労働者が退職したあとも3年の保管義務があります。労働者とのトラブルが発生するのは、なにも労働しているときだけではありません。退職後にもトラブルが起こるケースがあるため、万一トラブルがあったときには必要となるからです。そのため、紛失しないように保管しておくことが大切になります。

労働条件通知書の保存期間については、労働基準法第109条、労働基準法施行規則第56条で具体的に定められています。そこには労働者の退職または死亡の日から3年間は保存しておかなければならないと明記されています。

 

罰則

絶対的明示事項や相対的明示事項に関して明示がない場合:当該企業に罰金30万円以下が科せられる

短時間労働者に対して明示義務のある昇給や退職金、賞与の有無、相談窓口について明示がない場合:行政処分として10万円以下の過料が科せられる

 

労働条件通知書と雇用契約書との違い

労働条件通知書と雇用契約書の大きな違いは、一方的な通知であるか否か書面交付義務があるか否かです。

 

労働条件通知書が企業からの一方的な書類で、書面もしくは電子化で交付義務があるのに対し、雇用契約書は双方で計画内容を確認の上、合意を得るための書類で、書面にする義務はないといった違いがあります。

 

労働条件通知書では、労働者のサインや捺印は必要なく、雇用契約書では、労働者のサインや捺印が必要となり、契約書の内容に同意する旨を記載する同意欄があります。

 

労働条件通知書兼雇用契約書とは

労働者の採用に当たっては、労働条件通知書と雇用契約書を別々に作成することが望ましいでしょう。

 

しかし、両者の書類への記載内容が重複する場合「労働条件通知書兼雇用契約書」として、労働条件通知書の書面下部に、労働条件に同意すること、契約書を企業と労働者それぞれで保管することを記載し、企業と労働者双方の署名双方の捺印欄を追加して運用することも認められています。

 

電子化の影響

従来、労働条件通知書は書面で労働者に交付するものとされてきました。しかし、2019年4月より、PDFやwordファイル等電磁的方法によって労働条件通知書を交付することが認められました。

これは、2018年9月7日交付の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」の中で説明されています。労働条件通知書の交付のペーパーレス化といった規制緩和で、何がどのように変わるのかについて、改めて確認しておきましょう。

 

具体的には以下の要件を満たせば通知をメールなどにて行えるようになりました。

 

・「労働者が希望した」こと

・「受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」によること

① パソコン・携帯電話端末による E メール、Yahoo!メールや Gmail といったウェブメールサービス

②メッセージ等の RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)SMS(ショート・メール・サービス)

 ③LINE や Facebook 等の SNS メッセージ機能

その電子メール等により発行した労働条件通知書が、紙に印刷(プリントアウト)できるものであること

 

なお、上記②RCS や SMS については、PDF 等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があること、また、前提である出力による書面作成が念頭に置かれていないサービスであるため、労働条件明示の手段としては例外的と言えるでしょう。

労働条件通知書の電子発行におすすめのツール

労働条件通知書をPDFなどの電子書面にしてメール添付をして送ることも可能ですが、実際に雇用者に同意のサインをして送り返してもらう際は、書面で印刷をしてサインをもらうか、出社時にこちらで書面を改めて用意しサインをもらう必要があります。

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まとめ

このように労働条件通知書には雇用形態ごとに明示しなければいけない事項などがあり、複雑な内容になっています。しかも交付しなかったり、明示すべき事項を明示しなかったりすると罰則もあるため、慎重に作成し交付することが必要です。

 

また、労働者が希望する場合は、電子的データでの通知も可能になりました。すでに電子的データでの告知が可能である雇用契約書と合わせて、労働条件通知書も可能な場合電子データで公布し業務効率化につなげていきましょう。