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ノウハウ 契約書の電子化のやり方とは?法律やメリット・デメリットも解説

更新日:2024年11月21日

投稿日:2020年10月29日

契約書の電子化のやり方とは?法律やメリット・デメリットも解説

契約書の電子化のやり方とは?法律やメリット・デメリットも解説

感染症流行が落ち着いた現在、契約書の期限管理漏れ、更新しなくても良いものを更新してしまったりといったミスから自社でも電子契約書を導入しようと考え始める企業が増えています。

 

しかし実際に、契約書の電子化する電子契約システムを導入するにあたって、有効性や導入方法について心配に感じる管理部門のご担当者様は多いかと思います。

 

この記事では、契約書を電子化することによるメリット・デメリットなどについて解説します。併せて、契約書電子化におすすめのシステムもご紹介いたします。

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契約書の電子化で注意すべきポイント

 

 

 

契約書の電子化とは?

「契約書の電子化」とは、従来紙に署名・捺印をして締結し、ファイリングして管理していた契約書をwordやpdf等の電子文書を使って契約の電子締結を行うことです。



契約といえば、紙の契約書を用いるイメージがありますが、必ずしも紙の契約書を用意する必要はありません。契約を締結するだけであれば、たとえ口頭であっても成立します。

 

近年、「働き方改革」の動きや「リモートワーク」を導入する企業が多い中、契約書の締結フローを、これまでの紙で契約書を締結・押印し、キャビネットで管理する方式からオンラインで契約の締結を行いオンラインで管理する契約書の電子化を検討する企業が増えています。実際に契約書を電子化することにより、契約締結時間の短縮化や業務効率化、ペーパーレス化によるコスト削減など、様々なメリットが得られます。

電子化できる書類の例

電子化が認められている契約書の種類は、以下の通りです。

 

・雇用契約書

・労働者派遣契約書

・業務委託契約書

・代理店契約書

・請負契約書

・取引基本契約書

・秘密保持契約書

・売買契約書  など

 

従来の日本では契約書において押印が必須とされていましたが、電子署名に関する法整備が進んだ現在は多くの契約書の電子化が可能となっています。

電子化できない書類

現状として法律により電子化ができない契約書は、以下の通りです。

 

・任意後見契約書

・事業用定期借地権設定のための契約書

・農地の賃貸借契約書  など

 

上記の契約では公正証書による契約締結が義務となっているため、電子化ができません。

2024年1月現在では上記に関わる法改正は予定されていないため、紙での運用が必要です。

 

電子化できない書類とは?法律の要件や改正ポイントを解説!

電子契約と紙契約との違い

紙契約は、文字通り紙の契約書を用いて契約を締結します。

 

押印の際は印鑑を使用するため、その押印が本人によるものであることを印鑑証明書で証明できます。

また、契約書の改ざん防止として契印・割合を用いることも特徴です。

 

一方で電子契約は、電子データを用いて契約を締結するやり方です。

紙契約のように直接押印はできないため、暗号技術を利用した電子署名を付与して本人性を証明します。

また、改ざん防止としてタイムスタンプという技術が使われます。

 

電子契約の契約書は紙契約と様々な点が異なりますが、電子署名やタイムスタンプで本人性・非改ざん性を証明できれば、紙の契約書と同等の法的効力が認められます。

電子契約書の有効性

電子契約書は、特定の要件を満たせば法的に有効性が認められます。

 

詳細は後述しますが、電子契約書の効力については「電子署名法」という法律で規定されています。

電子契約書は、紙の契約書よりも改ざんが容易という弱点があります。

その対策として、電子署名法では「本人性」と「非改ざん性」を証明するための要件を定めており、これを満たした電子契約書なら押印済みの契約書と同様の効力があるとみなされます。

契約書の電子化に関わる5つの法律

契約書を電子化するにあたって、以下5つの法律に基づき運用する必要があります。

IT書面一括法

IT書面一括法は、書面の交付・提出が必要な書類に関して、一定の条件を満たせば電子的手段の利用を認める法律です。

正式には「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といいます。

 

IT書面一括法では、総務省・財務省・金融庁・厚生労働省など幅広い省庁が所管する法律の中で、書面の電子化を認める改正が行われました。

e-文書法

e-文書法は、以下2つの法律および関連する政令・省令などの総称です。

 

・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(通則法)

・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)

 

書類の電子保存におけるルールを定めた通則法、個別法の一部改正により通則法ではカバーできない部分を整備したのが整備法です。

 

e-文書法の施行により、民間企業に保存義務がある書類(国税関係書類など)や医療書類など、約250本の法律に関わる書類の電子保存が可能となりました。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法では、保存が義務とされている書類の電子保存に関して要件が定められています。

国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引のいずれかに該当する書類の電子保存に適用される法律で、契約書は国税関係書類の「取引関係書類」と「電子取引」に該当します。

そのため契約書を扱う場合は、電子帳簿保存法の要件を理解しておかなければなりません。

 

2023年12月13日までは宥恕措置として、電子取引の文書データについて紙での保存が認められていました。

2024年1月からは電子取引で受け取ったデータの電子保存が完全義務化となり、紙での保存は認められません。

 

2024年電子帳簿保存法対応:契約書の電子化方法を徹底解説

電子署名法

電子署名法は、電子契約に用いる電子署名に関してルールを定めた法律です。

 

同法で特に重要な点は、電子契約の電子署名について本人性と非改ざん性を求めていることです。

具体的には、以下のような要件が定められています。

・当該情報(電子データ)について行われる措置(電子署名)であること

・当該情報(電子データ)が電子署名を行った者が作成したことを表示する目的であること

・当該情報(電子データ)に改変がないことを確認できるもの

参考:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov 法令検索 

電子署名法の内容についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

電子署名法とは?電子署名法2条、3条について解説

デジタル改革関連法

デジタル改革関連法は、「デジタル社会」の実現を目指すために設けられた以下6つの法律で構成されています。

 

・デジタル社会形成基本法

・デジタル庁設置法

・デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律

・公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律

・預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律

・地方公共団体情報システムの標準化に関する法律

 

デジタル改革関連法の一環として、以下のような電子契約に関する法改正も行われています。

 

・金融庁や総務省などの省庁に関連する22の法律で書面の押印義務の廃止

・内閣府、金融庁、総務省などに関連する32の法律で書面化義務の緩和

電子契約書と紙の契約書の違いとは

電子化した契約書を用いた契約と紙の契約書を用いた契約では、締結までの流れがやや異なります。

以下より、それぞれの契約書を用いた契約締結の一般的な流れをご紹介します。

紙の契約書の契約締結の一般的な流れ

紙を使った契約書の契約締結までの一般的な流れは以下の通りです。

 

契約業務の流れを示した図

 

【一般的な契約締結までの流れ】

1, 契約内容の合意
2, 契約書の印刷(自社・取引先の2部)
3, 製本
4, 押印
5, 封入/郵送
6, 取引先に到着後、取引先が内容を確認し2部押印
7, 取引先から1部返送
8, 契約完了してファイリング
9, 契約完了して保管


上記の通り、紙契約の場合、契約締結までにさまざまなフローを経る必要があります。

 

【契約のフローについて詳しく知りたい方におすすめ】
契約の発生から締結、管理まで|流れとツールを解説

電子契約書の契約締結までの一般的な流れ

一方契約書を電子化すると、紙の契約書で行っていた「印刷」「製本」「封入/郵送」「返送」「ファイリング」の工程を省略できます。

 

特に、紙契約では契約書の郵送や返送で時間がかかることが多いですが、電子化された契約書ならこれらの工程をすべてカット可能です。メールやシステム上で取引先に電子データを送付するだけで済むので、紙で締結する契約書に比べ電子化された契約書はスピーディーに契約締結できます。

電子契約の検討につながる課題としてよくあるケース

従来は紙で作成していた契約書の電子化を検討するきっかけの多くは、紙契約ならではの課題に直面したときです。

紙ベースの契約業務においてよくある課題としては、以下のようなケースがあります。

 

・契約書の作成と保管のためにコストが増幅する

・膨大な契約書の中から必要な情報をすぐに取り出せない

・適切な承認ルートを通過せずに内容が決定してしまう

・案件ごとの契約期限を管理しきれなくなる

 

上記のような課題は、契約書の電子化で解決が見込めます。

 

紙契約の課題や、課題を対処せずにいることのリスクは以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。

 

【関連記事】契約業務で発生する具体的なリスク、課題とその解決方法

契約書の電子化のメリット

最近リモートワークで話題になった「ハンコ出社」が不要になるなど、電子契約にはさまざまなメリットがあります。ここでは、そのメリットについて詳しく見てみましょう。

コストの削減

契約を電子化することの大きなメリットのひとつが、コストの削減です。
紙で締結した契約書の場合、紙代・印刷代・印紙代・切手代など、契約書を作成して取引先へ郵送するまでに、さまざまな費用がかかります。さらに、契約書を印刷・封入・郵送する従業員の人件費や、契約書類の保管スペースを確保し、安全に保管するのにも費用が必要です。

 


紙や切手にかかる費用は、一つひとつは高くないものの、かさむと高額になります。また、契約金額に応じて費用が変わる印紙代は、契約内容によっては、1通で数万円かかることもあります。


しかし電子契約なら、紙や切手はもちろん、印紙代も不要です。契約書を電子化することにより、初期投資やランニングコストこそ必要になりますが、契約書のやり取り業務が多い建設業などでは、長い目で見てかなりのコスト削減につながるでしょう。

 

契約業務コスト削減シミュレーター

印紙税(収入印紙)が不要

そもそも印紙代とは、印紙税法で定められた「課税文書」の作成にかかる税金です。

 

(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

しかし電子メールに契約書のPDFファイルを添付のうえ送信したり、FAXで送信した契約書については、国税庁より以下の見解が示されています。

引用:印紙税法 第三条

 

しかし電子メールに契約書のPDFファイルを添付のうえ送信したり、FAXで送信した契約書については、国税庁より以下の見解が示されています。

注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

引用:(別紙)|福岡国税局

 

同様に電子データで契約を締結する電子契約についても、文書を作成したこととみなされず印紙税の課税されないとしています。

業務効率化

業務の効率化も、契約書を電子化するメリットのひとつです。


紙で契約を締結する契約書だと、契約書の作成・印刷・封入・郵送などに時間がかかります。特に契約書の郵送に時間がかかり、契約書が完成するまで1週間以上かかるケースも珍しくありません。しかし契約書を電子化すれば、契約書の作成から締結まですべてオンライン上で行えるため、早ければ当日中に契約を締結することが可能です。契約締結までの時間が短縮されることで、その後の業務効率化につながるでしょう。



さらに、保管した書類を探す手間もかかりません。もし、契約書を電子化する際電子契約システムを導入すれば、システムにクラウド上に保管した電子化された契約書を、そのタイトルや日付から検索できる機能が備わっています。さらに、OCR技術を利用することで、今まで利用していた紙の契約書も、電子化して保管することが可能です。



また、契約書を電子化すれば、場所や媒体を問わず契約業務を行えるため、業務の効率化に大きく貢献するでしょう。印鑑を押すためだけに出社する「ハンコ出社」が不要になりますし、出張中などでも契約業務を進められます。

コンプライアンスの強化

契約書を電子化することにより、コンプライアンスの強化ができるのも見逃せないメリットです。


企業活動において、契約業務は欠かせないもののひとつ。日常的にさまざまな書類のやり取りを行うため、紙の契約書を利用する場合、誰がどのような契約の締結を進めているか、正確に把握するのは困難でしょう。しかし、電子化された契約書なら、契約業務の進捗や履歴がオンライン上で可視化されるので、一目でどんな契約が進行しているかがわかります。


また、過去に契約した電子化された契約書をデータで一元管理できるため、契約書の紛失や更新漏れを防ぐことも可能です。特に災害が起きたときなど、紙の契約書なら紛失してしまうような場面でも、電子化された契約書なら原本を残しておけます。


一方で、クラウド上での電子化された契約書を保管することに不安を感じる方も少なくありません。たしかに、サイバー攻撃によってセキュリティが突破されてしまうと、オンライン上に保管している電子化された契約書は、無防備な状態となってしまいます。そのため、システム検討の際には高度なセキュリティ基盤があるかどうかなどの確認も重要です。

 

【こちらの記事もおすすめ】コンプライアンスとは?企業の違反事例と、強化のためにできる対策

周辺システムとの連携が可能

顧客名簿や業務改善システムなど、自社ですでに使用している周辺システムとの連携が可能な電子契約システムも多いです。

連携することで転記、2重入力といった業務上の無駄な工程を削減でき、さらなる業務効率化につながります。

 

【電子契約導入準備】社内規定や契約書の変更ポイントをサンプル付きで解説!

契約書の電子化のデメリット

上記のように、電子契約は企業にさまざまなメリットをもたらすサービスです。しかし一方で、電子契約を取り入れることによるデメリットも少なからず存在します。

取引先の理解を得ることが大変

電子契約が自社にとって大きなメリットをもたらすとしても、必ずしも取引先に理解されるとは限りません。取引先にとっては、急に契約フローが変更されることとなります。その結果、取引先から電子契約への移行に納得してもらえないこともあります。


もちろん、電子契約を導入することによるメリットは、取引先も同様に得られます。そのため、いかにして取引先に電子契約のメリットを理解してもらうかが大切です。万が一、説明しても理解してもらえない場合、契約の締結は合意のうえで行わなければならないため、電子契約を利用することができない可能性もあります。

電子化できない契約書もある


電子契約の大きなデメリットとして挙げられるのが、契約書の中には、電子化が認められていないものがあるということです。多くの書類は電子化しても問題ありませんが、先述の通り一部の書類は法律で紙での交付が義務付けられています。

 

しかし近年は、法改正で従来書面でないと締結できなかった書類が電子化解禁となっているケースも増えてきています。


随時法律を確認しながら、電子化できる契約書とできない契約書がどれくらいあるかを確かめ、メリットが得られそうか判断するとよいでしょう。

業務フローの見直しが必要

新たに電子契約システムを導入するにあたって、既存の業務フローへ生じる影響の確認と調整が必要です。

 

長らく既存フローで業務を行ってきた従業員にとっては、新たなシステムの利用に抵抗感を覚える可能性も考えられます。

電子契約システム導入のためには、業務フローの見直し・従業員の実務状況の把握・従業員に対する研修の実施など様々な手間が生じます。

契約書電子化の注意点

契約書の電子化で特に重要となるのが、電子帳簿保存法で定められたルールです。

2022年に改正され、電子化に伴う事前申請の廃止や電子取引データの電子保存義務など複数の点が見直されています。

 

そのため、電子契約システムを導入する際は電子帳簿保存法の改正に対応したシステムかどうかの確認が必要です。

最新の法令に対応したシステムであれば、別のシステムと使い分ける必要もなく管理の手間・コストの削減につながります。

契約書電子化の手段

契約書を電子化するためには、以下2つの内どちらかの電子契約システムを検討します。

 

・当事者署名型:契約当事者同士が認証用のICカードや機器などを準備し、電子署名を付与する

・立会人型:契約当事者ではない事業者が、当事者の指示に基づいて電子署名を付与する

 

当事者署名型は当事者双方が電子署名用の鍵と電子証明書を自分で準備する必要があり、締結までに手間がかかります。

そのため、第三者となる事業者(システム提供者)に必要な鍵・電子証明書を提供してもらえる立会人型がおすすめです。

契約書の電子化のやり方

契約書の電子化は、利用するシステムのタイプによってやり方が異なります。

以下より、当事者署名型と立会人型それぞれの電子化のやり方をご紹介します。

当事者署名型の場合

当事者署名型で契約書を電子化するなら、ローカル型・リモート型のどちらかのシステムを利用します。

ローカル型はICカードやPCなどで署名鍵を管理するタイプ、リモート型はサービスを提供する事業者のサーバー上で署名鍵を管理するタイプです。

 

どちらを利用する場合も、契約の当事者双方が認証局で手続きのうえ電子証明書を取得する必要があります。

 

電子証明書は、必要書類を管轄の登記所へ提出するか、法務局が提供しているオンラインサービスで申請すると取得が可能です。

立会人型の場合

立会人型の場合、システムを導入するだけですぐに契約書の電子化が可能です。

当事者の双方または片方が電子証明書を用意する必要もなく、簡単に電子化へ移行することができます。

 

具体的なやり方はサービスによって変わりますが、基本的には片方が契約書のファイルをシステム上にアップロードし、メールなどで相手に契約書のURLを送信します。

メールを受け取った相手はURLから契約書を確認・承認すると、契約締結となります。

電子契約システムとは?

電子契約システムとは、電子データで契約を締結できるサービスのことです。

サービスによっては電子署名機能やタイムスタンプ機能、既存システムとの連携機能など様々な機能があり、自社の用途に合ったものを選べば契約に関わる業務効率の大幅な改善に期待できます。

 

基本的に締結した契約書データはクラウド上で保存されており、権限が付与された人であれば必要なときにすぐ検索・閲覧が可能です。

タイムスタンプとは

タイムスタンプとは、付与した時点で契約書のデータが存在していたこと・改ざんされていないことを証明できる技術です。

タイムスタンプの取得には、当該データの「ハッシュ値」という固有の暗号を、第三者機関である時刻認証局へ送信する必要があります。

これにより、ハッシュ値と時刻情報を含んだタイムスタンプが発行され、契約書に付与することが可能です。

 

なお、タイムスタンプ機能が備わった電子契約システムなら上記のような準備をしなくても、契約締結時にシステム上でタイムスタンプが付与されます。

電子サイン(電子署名)とは

紙の契約書の署名や押印をデジタルで行うことを電子サインといいます。

電子サインには様々な手段がありますが、そのひとつである電子署名は電子契約の際に使われます。

 

電子署名を付与すると、公開鍵暗号基盤・電子証明書・ハッシュ関数といった技術により、契約当事者が自分の意思で同意したことや署名以降に改ざんされていないことを証明できます。

ただし電子署名だけでは契約に同意したタイミングを証明できないため、それをカバーするためにタイムスタンプも用いられる場合が多いです。

電子契約締結の流れ

当事者型・立会人型それぞれのシステムを利用した電子契約締結の流れは、システムによって異なりますが、例えば以下のように行います。

 

【当事者型】

1 電子契約システムに契約書をアップロードする

2 システム上で相手方に承認(署名)を依頼する

3 相手方が契約書の承認(署名)処理をする

4 契約締結

 

【立会人型】

1 電子契約システムに契約書をアップロードする

2 システム上から相手方にメールで承認(署名)を依頼する

3 相手方にURLが添付されたメールが送信される

4 相手方がURLから契約書の承認(署名)処理をする

5 契約締結

 

当事者型は契約書のアップロードから締結までシステムを用いるため、相手も同じシステムを利用する必要があります。

一方、当事者型はメールで承認を依頼できるため、相手が同じシステムを利用していなくても問題ありません。

電子契約書に求められる要件

電子帳簿保存法の「電子取引」に該当する契約書を電子保存する場合、同法で定められた2つの要件を満たす必要があります。

それぞれの要件について、以下より解説します。

電子帳簿保存法:真実性用要件

真実性とは、対象のデータが改ざんされていないことを証明するための要件です。

真実性を確保するには、以下4つのうち1つ以上を満たす必要があります。

 

・タイムスタンプが付与されたデータの受領

・受領後、速やかにタイムスタンプを付与すると共に保存の実行者や監視者に関する情報を確認できる

・データの訂正削除を⾏った場合にその記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを使⽤

・訂正削除などの不正を防⽌する規程を定め遵守する

電子帳簿保存法:可視性要件

可視性とは、対象のデータの見読・検索ができるということです。

可視性を確保するため、大きく分けて以下3つの要件をすべて満たす必要があります。

 

【システム概要に関する書類の備え付け】

システム概要書やシステム基本設計書などを備え付ける

 

【⾒読性の確保】

・保存場所に電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタなどの操作説明書を備え付ける

・データをディスプレイの画面や書面に明瞭な状態で即時出力できるようにする

 

【検索性の確保】

・取引年⽉⽇、⾦額、取引先で検索できるようにする

・ ⽇付または⾦額の範囲指定により検索できるようにする

・⼆つ以上の任意の記録項⽬を組み合わせた条件により検索できるようにする

電子契約システム導入の流れ

電子契約システムを導入すると決めたら、まずは事前準備が必要です。どのような流れで準備を進めるのか確認してみましょう。

 

1. 現在の契約書内容と管理体制の把握

まずは現在の契約書の内容と、管理体制の把握を行いましょう。これは、契約書の内容から利用するシステムを絞るのはもちろん、システムに欲しい機能を洗い出すのにも役立ちます。主な調査内容は、「契約書の種類や内容」「発生する契約の件数」「契約までのフロー」「契約書の閲覧状況」などです。

 


現在の状況が把握できたら、欲しい機能の精査をしましょう。あると便利な機能の代表例は、「契約の進捗状況管理」「一括送信」「他システムとの連携」などです。システムによっては、カスタマイズをすることでこれらの機能が付けられるものもあります。今は不要でも今後必要になったときに機能を追加できるというため、現状の管理体制から、長期的に考えてどの機能を導入するか検討しましょう。

 

また、システムの機能を決める際は、現在実際に契約書を作成している社員に話を聞くことも大切です。現場の声に寄り添うことで、より業務効率化に役立つ機能を選べるでしょう。

2. 導入する電子契約システムの決定

現在の契約業務の状況やシステムに欲しい機能が確認できたら、それをもとに導入する電子契約システムを決定します。これまでは、自社で電子契約システムを一から作ることもありましたが、現在では、各企業が提供する電子契約システムを利用するのが一般的です。インストールタイプにするのか、クラウドタイプにするのかは、機能やコスト、導入目標記期日などをもとに決めるとよいでしょう。


導入前には、いくつかの企業に資料請求し、よく比較検討を行うことが大切です。製品の中には、一定期間無料で利用できるものもあります。使用感を確かめたい場合は、社内で実験的に導入してみるのもよいでしょう。社内の何人かにモニターになってもらい、よかった点や悪かった点を調査するのもおすすめです。複数の製品から、より自社のニーズに合ったシステムを選んびましょう。

3.新しい契約フローの策定 マニュアルの作成

電子契約システムを決定したら、導入後に生じ得る既存業務フローへの影響を確認します。

それに合わせて新たな業務フローを作成し、マニュアルを作成しましょう。

 

新たな業務フローの策定・マニュアル作成が完了したら、電子契約導入に関して社員へアナウンスと説明の機会を設ける必要があります。

4. 取引先企業と社員へ具体的に説明

導入する電子契約システムが決まり、いよいよ実装することになったら、取引先や金融機関、従業員へ必ず説明を行いましょう。社内外への周知を徹底することで、後々のトラブルを防げます。


取引先への説明は、先にも述べた通り、理解してもらうまでに時間がかかる可能性があります。なるべく早い段階から説明を行いましょう。もちろん、社員への説明も疎かにしてはいけません。トラブルや不平不満を防ぐためにも、電子契約システムを導入すること、それに伴いどのように業務フローが変更するのか、システムの使い方や移行する時期などを詳しく伝えましょう。

電子契約システムの選び方

上記の通り、一口に電子契約システムといっても、さまざまな企業からシステムが提供されています。どの製品にしようか迷ってしまう場合もあるでしょう。ここでは、電子契約システムの選び方や選ぶうえでの注意点をご紹介します。

セキュリティ対策は十分か

電子契約システムを選ぶ際にポイントとなるのが、セキュリティ対策です。
電子契約を行う際は、契約書など、企業にとって大変重要な機密情報をオンライン上で取り扱います。オンラインで行う以上、少なからずサイバー攻撃のリスクが発生するため、厳重なセキュリティ対策が施されているかどうかをよく確認してください。万一セキュリティ対策に不備があると、情報漏えいや改ざんが行われてしまうかもしれません。


セキュリティ対策の方法は、サービス提供者によって異なります。「暗号化送受信対応」や「自動バックアップ」など、外部から情報を守る機能が搭載されていると安心です。

導入のしやすさ

導入がしやすいかどうかも、電子契約システムを選ぶときの大切なポイントです。ここでいう導入のしやすさとは、自社よりも取引先におけるものを指します。電子契約システムのデメリットでもご説明した通り、自社はシステム導入に前向きであっても、取引先もそうとは限りません。取引先に納得してもらうには、なるべく相手が導入しやすいシステムを選び、手間をかけさせないことが大切です。

 

もっとも重要なのは、取引先に利用料を支払ってもらう必要があるかどうかです。利用料の支払いが必要な場合、ほとんどの取引先がよい顔をしないでしょう。取引先は無料で使えるサービスを導入することをおすすめします。またサービスの中には、取引先がわざわざサービスを導入し、アカウントを取得せずとも、URLを開くだけで契約締結できるものがあります。このように、取引先に負担のないサービスを選べば、了承を得やすくなるはずです。

 

そのほか、取引先から電子契約の了承を得るには、資料を作成し、説明会を開催するのもおすすめです。説明会では、電子契約システムは簡単に導入できること、導入によるメリットを伝えるとよいでしょう。サービス提供者の中には、取引先への説明支援を行ってくれるところもあります。もし説明に迷った際は、一度提供者に相談してみるのもよいでしょう。

既存システムとの連携

電子契約システムを選ぶ際は、既存システムと連携できるかどうかも決め手のひとつです。
契約システムと連携すると便利なシステムの一例をご紹介します。

SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)などのツール

営業先や顧客の情報がまとまっているこれらのシステムと連携することで、システムに登録してある情報をそのまま流用して、契約業務に移行できます。

会計管理システム

会計管理システムと電子契約システムを連携することで、データが自動的に帳簿へ記入されます。また、作成した契約書の内容から、請求書や領収書を簡単に発行できます。

BIツール

社内のさまざまな情報を収集し、分析するBIツールと契約システムを連携すれば、データから売上の予測が行え、より戦略的に営業が行えます。

 

このように、電子契約システムと既存システムとを連携することで、業務の効率化を促進できます。API対応と書かれているものであれば、他のシステムと連携ができる証です。まずは、連携できるシステムなのかどうか確認してください。連携できるようであれば、どんなシステムと連携できるのかを確認してみましょう。

紙の契約書のスキャンが可能か

電子契約システムには、契約書をオンライン上で保管できる機能があります。この機能にプラスして、いままで契約を行っていた紙の契約書も、スキャンのうえ、電子データとして取り込み可能かどうかをチェックしましょう。紙の契約書の取り込みができれば、電子契約書とともに一元管理ができます。

紙の契約書の取り込み方法は、システムによって異なります。取り込みをするためには、どれくらいの費用や手間がかかるのかも比較するとよいでしょう。例として、先述の「ContractS CLM」では、ContractS SCANサービスを使い紙の契約書や関連書類をPDF形式でデータ化し、システム内に取り込むことが可能です。

契約書の電子化におすすめな電子契約システムとは

電子契約システムを導入する際には、自社に合った製品を選ぶことが大切です。そこで電子契約システムの一例としてContractS CLMをご紹介します。

ContractS CLM(ContractS株式会社)

特徴

・契約を作成、審査、締結、管理まで一気通貫
・相互に関連する契約の紐付けが可能。紛失知らず
・部署間の連携・共有もスムーズで属人化解消に
・OCR機能を活用し紙契約書の管理台帳取り込みがより楽に

テンプレート機能(契約条項分類、雛形等)
契約書管理(作成、保管、ソート、検索等)
電子署名・タイムスタンプ
電子締結 
契約ワークフロー
OCR読み取り
API対応(他サービスと連携が可能)

・サービス名:ContractS CLM
・提供企業:ContractS株式会社
・URL:https://www.contracts.co.jp/

電子契約を導入する際のよくある質問

最後に、電子契約の導入に関してよくある質問について解説します。

電子契約書が無効になる場合はある?

電子契約書が無効になるケースとしては、以下の2通りが挙げられます。

 

・電子契約が認められていない契約の場合

・電子契約書が法的要件を満たしていない場合

 

電子契約が可能な契約であれば、基本的に適切な電子署名機能・タイムスタンプ機能を備えた電子契約システムの利用により、有効な電子契約書を作成できます。

また、電子契約に関わる法知識に特化した、弁護士や行政書士など専門家の助言を受けるのもおすすめです。

電子契約システムに保管機能はある?

電子契約システムの多くは、契約書データの保管機能が備わってます。

なお、電子契約書の法的要件を満たすためには保管機能だけでなく、検索機能も必要です。

 

電子帳簿保存法では、契約書を含む対象書類の電子保存に関して要件を定めています。

そのうちのひとつに「検索性の確保」があり、任意の項目2つ以上を条件に検索できる機能などが備わっているシステムを利用しなければなりません。

電子契約で割印を付ける方法とは?

通常、電子契約では割印を押しません。

 

割印とは、複数の文書が一体であるときに、各文書の関連性を示すために押されるものです。

同一の契約書であることを割印で示すことで、契約書の改ざんがないことを証明できます。

 

しかし、電子契約では「電子署名」や「タイプスタンプ」の付与で非改ざん性の証明が可能です。

そのため、割印を押す必要はなく、割印を押す機能がない電子契約システムも多いです。

まとめ

契約書を電子化し、電子契約書にすることで、経費の削減や業務効率の向上が期待できます。

 

契約書を電子化するなら、当事者署名型または立会人型の電子契約システムを用いるのが主なやり方です。


契約書を電子化するのはメリットも多いですが、取引先に理解してもらいづらいなど、デメリットもあります。導入後に後悔のない決断ができるよう、比較検討を進めましょう。

電子帳簿保存法 対応ガイド

2021年の改正により、電子帳簿保存法対応が求められています。 本資料では、電子帳簿保存法の総復習として、概要から対応のポイントをまとめています。