ノウハウ 5分でわかる契約書の作成方法|注意点やポイントも!
更新日:2024年10月17日
投稿日:2020年04月10日
5分でわかる契約書の作成方法|注意点やポイントも!
新たなプロジェクトの発生や、新規のサービス立ち上げ等、新たに契約書を作成しなくてはならなった時、「専門知識もないのに個人で勝手に作って大丈夫?」「書き方がわからないけどテンプレートはある?」等と、不安や戸惑いを感じる方も多いのではないでしょうか?
本記事では、契約書の作成に悩みや疑問を抱えている方のために、契約書を作成する前に確認しておくこと、契約書の作り方、ポイント、注意点について解説します。あわせて契約書作成サービスもご紹介します。
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契約書を作成する前に確認しておくこと
契約書の作り方を説明する前に、確認しておくべきポイントがあります。契約書はただ形式的に交わすものではなく、明確な目的やメリットがあります。
安易にインターネット上にあるテンプレートを流用したり、ただ漠然と作成して締結してしまうと、後々トラブルの原因になったり、自社に大きな不利益を招くことにもなりかねません。
作成の前に、まずは契約書の基本を把握しておきましょう。
契約書とは?
契約書とは「2人以上の当事者間で、相対する(申し込みと、それに対応する承諾の)意思表示が合致することによって成立する、法的な権利と義務が発生する行為」である契約内容を記載した書面です。
この「意思表示の合致」のみで契約、つまり法的拘束力をもつ約束が有効に成立し、「契約自由の原則」により、どのような方式で契約を締結するかも自由に決定することができます。
つまり契約は口頭(口約束)でも成立し、契約書の作成は必要ないのです。
(一部、例外として契約書の作成が法律により義務付けられている契約もあります。)
契約書を交わす理由
では、なぜ契約書を作成するのでしょうか。
ビジネスにおいてはきちんとした契約書がないと、契約の存在自体や契約内容の詳細も不明瞭となり、言った言わないの水掛け論のようなトラブルの原因となることは明らかです。万が一トラブルが発展し裁判となった時には、契約書が何よりも重要な証拠となります。
つまり、きちんとした契約書を作ることには、次のような目的・メリットがあるのです。
- 契約の内容・意思・成立を明確にできる
- 紛争を予防する
- 裁判になった際の証拠の確保
- 契約履行の手引きとなる
反対に、契約書がなかったり、不十分な契約書を提示したりすると、
- 契約内容が明確でない
- 紛争のリスクが高くなる
- 法律違反をしていないことを立証できない
- 企業としての信用度が下がる
というデメリットやリスクが伴うことになります。
契約の内容・意思・成立を明確にできる
詳細は後述しますが、契約は口頭だけでも成立します。
契約書を作成すれば契約内容など重要なポイントを文字で示せるため、相手方に口頭で伝えた場合よりも慎重に検討してもらうことが可能です。
そのうえで署名や押印をしてもらえば、当事者が契約書に記されている内容に関して「自分の意思で合意した」という事実を明確にできます。
紛争を予防できる
契約書を通して内容・合意の意思を明らかにすることは、紛争へ発展するリスクの回避に有効です。
契約に関して何らかのトラブルが発生したとき、「言った」「言わない」の水掛け論となり事態が複雑化する可能性があります。
しかしあらかじめ契約内容を契約書に明記しておけば、当事者同士の認識の齟齬に起因するトラブルを回避できます。
また、万が一トラブルが起きても記載内容に基づき交渉することが可能です。
裁判になった際の証拠の確保
契約に関して訴訟となった場合、契約書は重要な証拠の1つになります。
民事訴訟法上、証拠とする文書は真正であることを証明しなければなりません。(第228条4項)
契約書の場合は「本人または代理人の署名または押印があるとき」は真正に成立したものと推定されます。
“4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。” |
当事者本人の署名・押印つきの契約書があれば、それに定められた内容が訴訟で重視されます。
▶関連記事:契約リスクとは?リスクの種類と最適なリスクマネジメント方法
企業としての信用度を確保する
一般的に、コンプライアンス意識の高い企業ほど社会的な信用度も高くなります。
コンプライアンスという観点でも、契約書は重要な存在です。
契約事項に関して精査しながら契約書を作成することで、自ずと社内のコンプライアンス意識が向上しやすくなります。
契約書の法的効力
契約は締結の方法に関わらず、当事者間で「債権」という権利と「債務」という義務が発生します。
契約が締結した以上は、債務者にあたる当事者は契約内容を実現させる義務があるとされています。
契約書は、債務の履行のために必ずしも用意すべき書類というわけではありません。
口約束でも当事者間には上述した権利・義務が発生するからです。
しかし、当事者が契約内容の通りに権利を行使したり、義務を履行したりする保証はありません。
万が一トラブルから裁判へ発展すると、契約の真正性や内容の認定についての証拠が必要になります。
先述したように民事訴訟法228条の内容から契約書は重要な証拠となり得るため、契約書は作成することが大切です。
契約書はだれが作成する?
契約書の作成については、当事者のどちらから案を提示しても問題ありません。
基本的にその取り引きに関して慣れている方が契約書案を作成した方が合理的ではありますが、相手にとって有利な条件・自社にとって有利な条件が記載される可能性がないとは断言できません。
ある程度の修正を求めることはできますが、すべての要望が通るとは限らないため、可能であれば自社で作成した方が上記のようなリスクを回避しやすくなります。
契約締結の種類
契約には、口頭・書面の契約書・電子契約書・公正証書を用いて締結する方法があります。
口頭
契約は当事者双方の意思を示して締結となるため、契約内容の提示と同意の旨を口頭で伝える「口約束」でも有効となります。
ただし、契約の内容によっては一定の様式が必要になる場合もあります。
書面契約
紙の契約書を用いて契約を締結する、ビジネスにおいて最もポピュラーな手段です。
契約書の作成に手間がかかる反面、裁判となったときは証拠として機能するため安心感があります。
電子契約
IT技術の発達により、電子データの契約書を交わして契約を締結するケースも増えています。
電子署名法では、「本人が行っていること」「改ざんされていないか確認できること」を満たす電子署名のある電子契約は真正に成立したものと推定できると記されています。
“第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。” |
つまり適切な電子署名を用いれば、電子化した契約書でも紙の契約書と同等に真正性を証明するための重要な証拠となるのです。
▶関連記事:電子契約とは?システム選定ポイント、メリットデメリット、導入の流れまでをわかりやすく解説
公正証書
公正証書とは、個人・法人からの嘱託により公証人が作成して内容を証明する公文書のことです。
以下に該当する契約では、公正証書によって締結する必要があります。
・任意後見契約 ・事業用借地権設定契約 |
▶関連記事:公正証書とは?契約時のメリットや効力、作成方法を企業目線で解説!
契約書の種類(企業間取引で使われる代表的な契約書)
契約書には、内容や目的に応じて様々な種類があります。ビジネスで登場する機会の多い契約書を紹介します。
秘密保持契約書(英語:Non-DisclosureAgreement 略称NDA)
別名「機密保持契約書」(英語:Confidential Agreement 略称CA)とも呼ばれますが、同じ意味で違いはありません。外部に漏洩させたくない秘密情報を業務上取引先相手に渡す場合、情報漏洩のリスクを回避するため秘密を漏らさないよう相手方を拘束する契約書を意味します。
▶︎▶︎【秘密保持契約(NDA)について知りたい方はこちら】秘密保持契約(NDA)について解説ー必要項目や雛形も
基本契約書(取引基本契約書)
企業間の継続的な取引の際に、個々の取引に共通して適用される条項を規定した契約です。売買契約や請負契約で締結されることが多く、個々の取引条件を定めた個別契約書と基本的にセットで使われます。個別契約書の代わりに注文書・注文請書や、発注書・受注書で締結される場合も多いです。
売買契約書
売買を行う際に交わされる契約で、企業間取引では「仕入れ」や「購買」、「物販」の契約に該当します。売買の対象となる目的物に対し、売買を行う為の契約書を意味します。動産、債権、不動産、知的財産権など財産的価値のあるもの全てが売買の対象となり、目的物の種類や性質に応じて契約書の内容も大きく異なります。
▶︎▶︎【売買契約書について詳しく知りたい方はこちら】売買契約書とは?種類や項目について解説
業務委託契約書
発注者が自社の業務を外注し、受注者が自己の裁量と責任により、委託された業務を実施する際に交わされる契約書で、幅広い業務で利用されています。ただし「業務委託」という言葉は民法にはなく、業務委託契約は法的な定義がありません。一般的には、委託された業務の完成責任を負う「請負契約」か、業務の遂行を行う「委任(または準委任契約)」のいずれか、または両者混合の契約に該当します。いずれであっても、委託者が指揮命令することはなく、あくまで受託者が主体的に業務を遂行することなります。定義のない契約だからこそ、業務内容や成果物の基準について詳細に明文化しておくことが重要です。
代理店契約書
代理店契約は、代理店がメーカー(サプライヤー)の代理として商品やサービスの拡販を行うため、メーカーと代理店との間で締結される契約です。あくまで営業の代行の契約であり、代理店と顧客との間に契約関係はありません。販売店契約や販売代理店契約と混合して使われてしまうこともあるため、タイトルによらず内容をよく確認する必要があります。
雇用契約書
企業が従業員を雇い入れる際に締結する契約書です。企業は労働法により一定の契約内容、つまり労働条件を規定し、労働者に明示する義務(労働条件通知書)があります。また、労働者が10人以上の企業では就業規則の作成義務があり、いずれも雇用契約書の作成は必須ではありませんが、労働条件の認識違いによるトラブルも多く、雇用契約書を作成することで、企業と労働者の双方が労働条件を認識・共有でき、トラブル回避に繋がります。契約書には労働条件を明示するほか、正社員・パート社員・契約社員など、雇用形態に応じた内容を記載をする必要があります。
▶︎▶︎【雇用契約の電子化 について知りたい方はこちら】5分で理解する「雇用契約の電子化」と導入のススメ |事例もご紹介
(引用参考元:
・https://topcourt-law.com/category/contracts
・https://akatsuka-law.jp/column/types-of-contract.html
・https://xn--wtsq13a09q.jp/category/commentary-on-contract-by-type/ )
契約書作成は専門家に依頼するべき?
ざっと見ただけでも細かい法の規定やそれに応じた書類などがあり、知識がないと書き方が分からず個人で契約書を作成することにますます不安を感じてしまうかもしれません。
法的リスク回避やトラブル予防のため、契約書の作成にあたっては、自社の法務部門や弁護士など専門家によるリーガルチェックを入れることが一般的には基本でしょう。しかし、企業によっては社内に相談環境がなかったり、外部専門家にどこまで依頼したらいいのかなど判断に迷うこともあると思います。
当然ながら、契約金額が高額になるほど企業は契約に慎重になり、できるだけ自社に有利となる契約を目指します。もし個人で作成した契約書に不備があり裁判へ発展した場合、信用面やコストなど甚大な不利益を被ることになります。それを考えると、専門家にリーガルチェックを依頼しておく方が、リスクが回避され、長い目で見て無駄なコスト発生を抑えることができます。
契約内容に紛争やトラブルの原因になりそうなデリケートな要素が含まれているなら、専門家へ作成やリーガルチェックを依頼することをお勧めします。また後述しますが、契約書では、「契約の内容を分かりやすく明確に記載する」ということが最も重要です。
もし以下のような状態なら、やはり専門家へ依頼することをお勧めします。
- 契約に合った適切なテンプレートが分からない
- 契約内容を正確に理解できない(=正確に書面に落とし込めない)
- 契約書について相談、確認できる人が社内にいない
作成した契約書は、上司や代表、顧問弁護士などへ確認・共有します。不明点や疑問がある場合には一人で抱えず、相談や確認をもちかけかけましょう。
契約書の作り方
ここからは契約書の作り方について、流れ、体裁、形式について具体的に説明していきます。
契約書作成の流れ
まず、契約書作成の全体の流れを把握しておきましょう。
1、契約内容の確認
契約は、当事者間の意思表示の合致により成立するものでした。当事者同士が何に合意するのか、打ち合わせなどでまずは明確にしておきます。
具体的には、「いつまでに(期間)、いくらで(金額)、相手に何をしてもらい(義務)、自社が何をするのか(義務)」です。
ここで合意に至らなければ、契約にも至りません。
2、契約書のドラフトを作成
合意した内容をもとに、契約書を作成します。
ちなみに、契約書の作成は、法令で義務づけられている場合を除き、当事者のどちらが作成しても構いません。
ただ、作成する側になると、その後の交渉や文面の修正において主導権を握ることができるため、自社に優位に進めやすくなります。
また、このドラフトの段階では、契約年月日の記入、署名・押印はしません。署名・押印するとその内容で納得したという意思表示になりますので気を付けましょう。
3、契約書の確認・修正
契約書のドラフトを、社内フローに沿って確認・承認を経た後、相手方にもメール添付などで確認依頼します。
相手側がドラフトを作成した場合は、記載されている内容に問題ないかを、自社で確認します。
相手から修正や訂正の依頼があったら、
「合意した内容と相違ないか」
「合意していない内容が書かれていないか」
「自社に不利な内容になっていないか」
などを確認します。
妥協できない条件などがあれば粘り強く交渉していきます。
この時に発生した修正事項ややり取りは、議事録などで双方確認のもと残しておくと、万が一トラブルが発生した際に証拠資料となりますし、また、契約書に関する知見やノウハウが自社に財産として蓄積されます。
修正した内容で最終的に合意に至ったら、修正を反映し確定させます。
4、契約書の製本と署名・押印
紙の契約書の場合は、当事者の数だけ製本し、当事者それぞれが署名欄に記名または署名と押印を行います。製本、署名・押印の詳細は後の形式の項目で詳しく説明します。
5、収入印紙の貼付(必要な場合)
印紙を貼付する必要のある契約書には、必要な額の印紙を貼付します。
印紙の額は契約内容によって異なります。詳しくは以下記事で解説しております。
▶︎▶︎【収入印紙について詳しく知りたい方はこちら】収入印紙とは?収入印紙が必要・不必要な契約書や条件・理由を紹介!
6、契約書の郵送と保管(紙書類で契約を締結する場合)
当事者全員の押印が済んだ契約書を当事者全員が1部ずつ保持します。
契約書を郵送する場合は、紛失によるトラブルを防ぐため、対面配達や追跡・補償がある書留を利用すると安心です。
契約書は、会社法関連の契約書なら10年、経理関連の契約書なら7年の補完が義務付けられています。契約中はもちろんですが、終了したからと安易に廃棄しないよう注意しましょう。
ただし、電子帳簿保存法により、税法上保存義務が定められている帳簿等の資料について、一定の要件をクリアすると、電子データによる保存が可能となり、原本を破棄して良いとされているものもあります。
詳しくは以下記事にて対象書類を確認してください。
▶︎▶︎【電子帳簿保存法について詳しく知りたい方はこちら電子帳簿保存法徹底解説!令和4年1月改正まで完全フォロー。
また、電子契約であれば郵送対応が必要なく、契約締結をおこなうことができます。
電子契約については以下記事で詳しく解説しております。
▶︎▶︎【電子契約について詳しく知りた方はこちら】【オススメ21選を徹底比較】電子契約とは?システム選定ポイントから導入の流れまでを解説
契約書の体裁
では次に契約書の体裁をみていきます。
以下はあらゆる契約書に共通する項目です。
1、表題(タイトル)
契約書に表題をつけ、文書の冒頭に表示します。
「雇用契約書」や「業務委託契約書」など契約書の種類が反映されていることが一般的です。
表題は何についての契約なのかを示すものなので、契約書の中身と法律的にも合致しているか、確認しましょう。
2、前文
通常、表題の後に前文を入れますが、なくても問題ありません。
前文では、契約の当事者を明らかにし、本文中に何度も出てくる当事者の略称を定義しておきます。
(例:「株式会社●●(以下「甲」という)と、株式会社●●(以下「乙」という)とは、以下のとおり契約する。」)
一般的に、略称には「甲」「乙」から、2名以上の場合は「丙」「丁」と、十干(じっかん)が上から順に使われます。
上から使うことで当事者間の上下関係を示唆するようで抵抗があるという場合は、他の表現(発注者・受注者、買主・売主、委託者・受託者、開示者・受領者、等)を使用しても問題ありません。
▶関連記事:契約書の甲乙丙の順で?割印の位置や失敗しないためのコツを伝授
3、本文
次に本文となり、契約の内容を具体的に記載します。
契約自由の原則により基本的に記載方法は自由ですが、内容は法律により規定されているものもあります。
一般的には「第●条(●●)」のように内容の項目ごとに条で区切り規定していきます。
カッコ内に項目の見出しを入れると分かりやすく検索性も高まります。
本文の条項には大きく「一般条項」と「主要条項」とがあります。
「一般条項」は、記載すべき、またはしておいた方がよい条項として、契約内容にかかわらず共通して定められることの多い基本的な条項です。
「主要条項」は一般条項以外の条項で、個々の契約の内容によって大きく異なります。
条項は「時系列」や「重要度」に沿って順に規定していくことが一般的で、個々の契約によって異なる業務内容や成果物、納品、検査、料金、支払方法などの「主要条項」を先に規定し、後で「一般条項」を規定するという流れが多くなります。
契約書は、「自社の権利と義務」と「相手方の権利と義務」を記載する書面でした。
よって本文を書く時は、以下のうち「どれについて書いているのか」を常に意識することが大切です。
- 自社の権利
- 自社の義務
- 相手方の権利
- 相手方の義務
契約書ではこれらについて、「分かりやすく、漏れなく、明確に」記載されていることが大変重要です。
混乱を避けるため、長文は避け簡潔に書くことを心がけましょう。
以下に、あらゆる契約に共通する「一般条項」を挙げます。
(1)損害賠償
契約が不履行、不完全などで生じた損害の賠償責任について定めます。
損害賠償請求は民法に定められているため、民法により損害賠償請求をするだけであれば、この条項は必須ではありません。
それでも一般的に記載されるのは、「解釈の違いによる争いを予防する」「損害賠償請求がありうることを示し、義務を履行させる」という意図があるからです。
▶関連記事:損害賠償条項は必要?契約書に書くこととは【テンプレート付き】
(2)権利義務の譲渡禁止
契約で発生した権利や義務を相手方の許諾なく、第三者に移転・譲渡することを禁止する条項です。
(3)契約解除事由
相手方が契約違反など、この条項で定めた解除事由を満たした場合は、契約をすぐに解除できることを定めます。
もし契約書に解除の規定がないと、契約を解除できるのは相手方に債務不履行があった場合だけです。
これでは、相手方が行政処分を受けたり経営が不安定になった場合など、債務不履行は無いが契約を解除したい場合に、すぐには契約を解除することができません。
解除事由は相手方の承認があれば自由に決めることができます。契約を解除したい時にすぐに解除できるよう、想定される状況があるならば解除事由に加えておきましょう。
(4)反社会的勢力の排除
互いに反社会的勢力でないことを保証する条項です。
それに反する事実が判明したとき、規定がないと、契約の解除や損害賠償の請求がすぐにできず、信用面やビジネス面において自社がダメージを被ることになります。
万一に備え、ただちに契約を解除できるよう規定しておきましょう。
▶︎▶︎【反社チェックについて詳しく知りたい方はこちら】基礎からわかる反社チェックー重要性と具体的な調査方法を徹底解説―
(5)秘密保持
契約によって知り得た情報について、外部に漏洩しないことを定めます。契約期間終了と同時に漏洩や利用されては困ります。
その場合には、契約期間が終了してもこの条項を有効とするといったことを定めます。
(6)契約期間
契約の有効期間を定めます。
ただし先の秘密保持など、一定の条項についてはこの有効期間が過ぎても効力を存続させることが可能です。
特に申し出がなければ契約期間が自動で延長されることなども定めておくことができます。
(7)合意管轄
当事者間でトラブルが生じた場合、どこの裁判所で裁判を行うか、第1審の管轄裁判所を定めておくことができです。
万一の場合には裁判所に通うことになりますので、相手方の都合のみで遠方の裁判所に設定されないよう注意しましょう。
(8)契約書に書いてはいけないこと
契約書には書くと問題になる「記載してはいけない事項」も存在します。
- 公序良俗に反する内容
愛人契約や殺人の依頼、過度の違約金の定めやギャンブル資金の貸付に関する定めなど、道徳観念から考えて妥当とはいえないものや反社会的な内容のものなど、公序良俗に反する内容は契約書に書いても全て無効となります。
- 強行法規に違反する内容
強行法規とは、公の秩序に関する法令の規定のことで、契約当事者による合意よりも優先され、これに違反する内容は全て無効となります。分かりやすい例では、金銭消費貸借契約において法に定める上限を超える高利の定めは無効となるなどです。
4、後文
契約の合意を確認し、契約書を何通作成し、誰が所持しておくかを末文として記載します。
(例:「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲、乙各記名押印の上、各1通を保有する。」)
5、日付欄
日付の記載がない契約書は「いつの時点での契約なのか」を特定できないため、過分な紛争原因となりかねませんので、必ず記載しましょう。
作成した契約書の内容で当事者が合意に至った日付を記載するのが基本ですが、会計や年度の観点から調整されることもあります。
その場合は当事者同士で話し合いの上、設定します。
6、署名押印欄
当事者の数だけ、略称の順に署名(企業なら一般的に「住所・会社名・役職・代表者名」、個人なら「住所・氏名」を記載)と、その横に押印するスペースを設けます。
契約書の形式
契約書を紙で交わす場合は、製本し、署名・押印へと進めます。ここでは、製本の仕方と押印、印紙など形式面について説明します。
1、製本
製本には、「作成後の契約書を、改ざん目的などで後から勝手に中身をすり替えられないようにする」という狙いがあります。
その目的にかなうやり方で製本します。
(1)綴じ方
契約書が複数枚にわたる場合は、契約書の全ページをまとめ左側2箇所をホチキス留めします。
ホチキスの芯を覆い隠すように左端を製本テープなどで綴じます。
(表紙側のテープの端を上下とも背表紙側に折り込み、背表紙側のテープを覆って貼る「袋綴じ」をします。)
(2)契印
契印とは、「複数枚の書類のページが別の紙に移る際、連続した書類であることを証明するために押す印」のことです。
この場合、複数枚におよぶ契約書の全ページに契印するのは非常に手間がかかるため、表紙と製本テープにまたがって当事者全員が契印を押します。
これにより、中の一部を差し替えようとしても、製本テープを剥がさねばならず、また相手方の契印に使われた印鑑を入手する必要が生じます。
契約書の枚数が少なく、製本テープを使わない場合は、見開きの全ページに、半分ずつまたがるよう契印します。
なお、印は一般的に十干の順に上から押します。契印までが製本となります。
▶︎▶︎【契印・割印について詳しく知りたい方はこちら契印・割印の違いとは?それぞれの押印ルール・ポイントを解説。
2、署名・押印
署名・押印欄への署名と押印について説明します。
(1)署名
印字やゴム印など自署以外の方法で名前を記載することを「記名」といい、直筆による自署のことを「署名」といいます。
署名は筆跡鑑定を行えば、本人が契約した証拠として証拠能力が極めて高く、一方、記名は本人の筆跡が残らないため、署名に比べて証拠能力が低くなります。
そのため重要な契約では、出来る限り署名の方が望ましくなります。
また、法律で『署名すべき場合には、記名押印をもって、署名に代えることができる。』と規定されており、「記名+押印」で、「署名」に代えることができるとされています。
つまり、契約においては署名があれば、押印がなくても契約有効となります。
しかし、日本では一般的に署名にも押印するのが通例であり、署名の場合にも押印してもらうのが安心・安全といえるでしょう。
法的証拠能力としては「署名+押印」「署名のみ」「記名+押印」の順に高くなります。
(2)押印
契約書の押印には、一般的に実印を使用します。
実印は「代表者印」とも言い、法人設立登記の際に法務局へ届け出した印鑑で、複製や不正使用される確立が低くなります。
実は、契約書の押印に認印やシャチハタなどのインク浸透印を使用しても、契約の有効性は損なわれません。
しかし、シャチハタなどは誰でも同じものを入手・複製される可能性が高くなります。
後から契約書を偽造され、「契約書に押印していない」と主張された時、反論が難しくなります。
実印が押印してあれば複製された可能性は低く、契約書の合理性が高くなります。万一の為に実印で押印するのがよいでしょう。
契約書の改ざんを防止する措置として「電子署名」は大変有効です。
▶︎▶︎【契約書の捺印ルールについて詳しく知りたい方はこちら】契約書の捺印ルールとは?印鑑の種類や位置の基本を押さえよう
3、割印
重要な契約書には、「割印」をすることがあります。
全当事者分の契約書にまたがるように押印することで、同一の書面であることを示し、同じく、偽造や改ざんを防止する狙いがあります。
割印は、署名・押印に使った印鑑と同じでなくても良いとされています。
実印を使った契約書であったとしても、割印には認印を使うことができます。
契約の当事者が3社以上で契約書が3通以上になる場合、専用の縦長の印を使うとよいでしょう。
4、印紙
契約書の中には印紙税の対象となるものがあり、該当する契約書には印紙の貼付が必要となります。
対象となる契約書の一覧と印紙税額については、国税庁のホームページをご参照ください。
なお、印紙を貼るのは自社保管分の1部のみですが、もし貼っておらず、それが税務調査等で指摘された場合、印紙税額の3倍の金額が課税されるケースもあるので、必ず貼るようにしましょう。
印紙を貼る箇所に決まりはありませんが、最初のページの右上空白部へ貼付する場合が多いです。
▶︎▶︎【収入印紙について詳しく知りたい方はこちら収入印紙とは?収入印紙が必要・不必要な契約書や条件・理由を紹介!
収入印紙が必要な契約書は?
契約書の中でも、印紙税法の別表第1に記されている20種類の「課税文書」に該当する場合は収入印紙が必要になります。
課税文書に該当する契約書の例としては、以下の通りです。
・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機又は営業の譲渡に関する契約書 ・請負に関する契約書 ・継続的取引の基本となる契約書 ・信託行為に関する契約書 ・債務の保証に関する契約書 など |
すべての課税文書については以下より確認できます。
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
契約書作成のポイント、注意点
以下のポイント・注意点を意識しながら、適切な契約書を作成しましょう。
必要事項が記載してあるか確認
契約書の一般的な記載事項は、以下の通りです。
・表題 ・当事者 ・本文 ・後書き ・契約締結日 ・署名・押印 ・その他 |
また、労働者派遣契約書など法律で記載するべき項目が定められている契約書もあるため、よく確認しておきましょう。
甲、乙が正しく対応しているか確認
契約書では、契約当事者を「甲」や「乙」で表します。
契約書を作成したら、前文で甲・乙はそれぞれどちらを指すのか、本文中の甲・乙が正しく対応しているかどうかも確認しましょう。
なお、どちらを甲・乙にするかは自由ですが、相手方を甲にして自社を乙とする場合が多いです。
取引のリスクは何か確認 リスクの例を書く
契約の条件から、取引の中で想定されるリスクは何かを洗い出しておきましょう。
例えば業務委託契約なら「委託先の業務不履行」、売買契約なら「売買の目的物の欠陥」といったトラブルが起こり得ます。
万が一トラブルが起きたら誰が・何を・どのように収拾するのかなど、処理に関する内容も契約書に記載しましょう。
最新の法律に準拠しているか確認
例えば請負契約書や売買契約書は民法、株式譲渡契約書は会社法、個人情報保護に関する契約書は個人情報保護法など、法律の内容に準拠した契約書が必要な場合もあります。
法律によっては改正されていることもあり、従来の契約書では法律に抵触する契約となりかねません。
契約書が必要となったら、契約に関わる最新の法律についてよく調べておきましょう。
▶関連記事:リーガルチェックのポイント解説!契約書のレビューは正しくできていますか?
双方で認められる内容になっているか確認
相手方が契約書に署名・押印をすれば契約締結となり、法的拘束力が生じます。
契約内容に関して相手方が完全に把握できていなくとも、後から契約に関してトラブルが生じたらその契約書が有力な証拠になります。
しかし今後の事業を円滑に進めることを考えれば、トラブルは回避するに越したことはありません。
契約の締結前に契約書の内容を相手方に提示し、双方が納得できる内容となるまで確認し合いましょう。
テンプレート(雛型)をそのまま使用しない
ネット上には、様々なサイトで契約書のテンプレートが公開されています。
テンプレートを利用すれば手間なく契約書を作成できますが、すべての契約に対応しているわけではないため注意が必要です。
ネット上のテンプレートはそのまま使用せず、内容をよく見直して適宜修正を加えましょう。
契約書のルールとマナー
契約トラブルの回避という観点から、契約書は正しく署名・押印するべきです。
民事訴訟法228条にもある通り、契約の真正性を推定するには本人の「署名」が必要になります。
そのため契約者本人が氏名を手書きするか、ファイルにタイムスタンプが付与された電子署名を添付します。
押印については重要な契約なら実印の押印と印鑑証明書の添付、比較的重要性が低い場合は認印を使います。
紙の契約書を相手方に郵送する場合は、配達記録が残るように簡易書留または配達記録郵便を利用しましょう。
また、署名・押印した契約書を返送してもらうための返信用封筒や郵送した書類について記した送付状を同封するのがマナーです。
契約書作成サービス
契約書作成の機会が恒常的に発生するなど、作成する数や頻度が多いなら、業務効率化としてサービスの導入も一つの選択肢となるので、簡単に紹介しておきます。
サービス導入のメリット・デメリット
数多く発生する契約書を毎回、専門家に作成・チェック依頼をしたり、または依頼するべきかの判断をすることも、手間となります。
契約書作成サービスは、弁護士が監修しているものが多く、豊富なテンプレートが用意されていたり、AIによる修正箇所の自動チェックから電子締結機能、また社内関連部署とのやり取りを共有・蓄積できるなど、作成だけに留まらず、一連の契約業務を横断的にサポートし効率化してくれるというメリットがあります。
一方、新たにシステムを導入するためには、社内にその利便性や有用性を理解してもらうことや、自社に適したサービスの選定、導入による初期費用やランニングコストの負担、社内教育体制の構築、などの対応も必要となります。
以下に代表的なサービスを紹介していますので、導入の参考にしてください。
契約書作成ソフト
ContractS CLM
【特徴】
ContractS CLMでは、契約の種類に応じて契約書の作成方法を選択することができます。
雛形が定まっている定型契約と、非定型の契約、それぞれに応じて、最適な作成方法、編集方法をお選びいただけます。
※「Word直接編集」機能のご利用には、PC上にMicrosoft Wordアプリケーションが必要です。
雇用契約、申込書など定型の雛形を活用し作成する契約書については、Word、PDF、HTMLの形式でテンプレート化可能です。自社でもっているWordファイルのフォーマットをアップロードするだけでテンプレート化可能。 一度テンプレートを作成すれば契約書をミスなくもれなくスピーディに作成可能にします。
▶︎【詳しく知りたい方はこちら】ContractS CLMの主な機能
テンプレート機能 (契約条項分類、雛形等) | ○ |
契約書管理 (保管、全文検索、ソート等) | ○ |
AIレビュー ※他サービスと組み合わせ可 | △ |
電子締結 | 〇 |
契約業務管理 (期限管理、契約管理台帳生成、メンテナンス、等) | ○ |
OCR読み取り機能 | 〇 |
API対応 (他サービスと連携が可能) | 〇 |
形態 | クラウド |
- サービス名:ContractS CLM
- 提供企業:ContractS株式会社
- URL:https://www.contracts.co.jp/
▶︎【無料ダウンロード】あらゆる契約業務を最適化!3分でわかる CLMの「ContractS CLM」サービス説明資料はこちら
民法改正による契約書の変更
2020年4月1日施行の民法改正により、「解除」や「債務不履行」等に関する規定が大幅に修正されました。
ここでは詳細は省きますが、記載内容に変更が生じる契約書も多く、施行を前に多くの企業が契約書内容の見直しを図っています。
2020年4月以降、既存の契約書テンプレートを使用・ダウンロードする際は、民法改正に対応しているかということもチェックするようにしてください。
よくある質問
最後に、契約書の作成についてよくある質問と回答をまとめました。
契約書作成はどこに頼める?
契約書作成代行の主な依頼先としては、弁護士や行政書士が挙げられます。
正しい契約書を作成するだけなら行政書士、契約に関して幅広いサポートを求めるなら弁護士への依頼がおすすめです。
契約書はなくてもいいの?有効になる?
一部の契約を除き、契約は契約書を作成しなくても成立して債権・債務が発生します。
ただし契約内容に関して後からトラブルへ発展したとき、契約書は重要な証拠として機能します。
そのため、あらかじめ内容を精査した契約書を取り交わして契約を締結させるのが望ましいです。
契約書と覚書の違いは?
契約書は契約内容だけでなく、契約についての意思表示を証明するための書類です。
一方で覚書は、当事者同士が契約内容を忘れないためのメモ的な役割を持ちます。
ただし、覚書も「当事者が合意した内容を記した文書」であるため、どちらも同等の法的効力を持ちます。
最後に
契約書の作成についてご紹介しました。法的な分野で特に文書作成には頭を悩ませておられる方も多かったのではないでしょうか。
慣れない契約書作成の対応も、基礎的な知識や重要なポイントを知っておくだけで、専門家への依頼やサービス導入の提案など、その後の進め方やスピードに大きな違いが生じてきます。
社内規格に沿ったテンプレートを準備しておくと契約書の作成者がリスクの少ない契約書を始めから簡単にかつ短時間で作成することができ生産性向上とビジネスの利益に貢献できます。ContractS CLMは自社用にカスタマイズした契約書テンプレートをシステム上で作成可能な契約管理しステムです。