ノウハウ 契約書に収入印紙を貼る場合・貼らなくていい場合を徹底解説!
投稿日:2025年01月16日
契約書に収入印紙を貼る場合・貼らなくていい場合を徹底解説!
契約書や領収書など、取引に関する書類には「印紙税」が課税されます。
印紙税を収めた証明として収入印紙を書類に貼る必要がありますが、取引書類でも内容によっては収入印紙を貼らなくていい場合もあります。
そこで今回は契約書に着目し、収入印紙を貼らなくていい場合・貼る場合の具体的な条件を解説します。
印紙税の金額や、契約書で印紙税が課税されなくなる方法も解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
収入印紙とは
経済取引に関わる各種文書には、「印紙税」が課税されます。
作成した時点で納税義務が発生し、作成者が文書の種類に応じて定められた金額の印紙税を収める必要があります。なお、本記事の後半に出てくる消印をする必要があります。
その際、印紙税を納めるために使用されるものが「収入印紙」です。
法務局・郵便局・コンビニエンスストアなどで購入し、該当の文書に貼り付ければ印紙税を納付したことになります。
なお、施設によって購入可能な収入印紙の金額は異なります。
印紙税が高額になる場合は、すべての収入印紙を購入できる法務局の利用がおすすめです。
収入印紙と間違えやすいものに「収入証紙」があります。両者の違いは納税先です。
収入印紙は国に、収入証紙は地方公共団体に納付する際に貼付けます。
契約書にも収入印紙が必要な場合がある
印紙税が課税される「課税文書」は印紙税法で20種類定められており、その中には契約書など業務に使うことが多い文書もあります。
紙の契約書を用いて契約締結する場合は、事前に収入印紙が必要になることがあるため注意しましょう。
その他の課税文書については、国税庁のホームページで詳しく記載されています。
必要な場合にもかかわらず収入印紙を貼らなかったら?
契約書を含め、課税文書にもかかわらず収入印紙を購入のうえ貼らなかった場合はペナルティを受ける可能性が高いです。
具体的には、印紙税の納付漏れとして「過怠税」が課税されます。
本来収めるべき印紙税の2倍の金額で過怠税がかかり、なおかつ本来の印紙税の支払いも求められます。
つまり、印紙税額の3倍に相当する費用負担になるということです。
契約書に収入印紙を貼らなくていい場合とは
印紙税の課税文書には契約書が含まれていますが、厳密には「特定の条件に該当する契約書」が課税文書とされています。
逆に、条件に該当しない契約書は収入印紙を貼る必要がありません。
以下より、契約書における課税文書の条件も含めて、収入印紙を貼らなくていいケースを解説します。
不課税文書の場合
印紙税法上の課税文書に該当しない文書のことを、「不課税文書」といいます。
以下の契約書は不課税文書であり、収入印紙が不要です。ただし、具体的な契約内容や記載事項によって判断が異なる場合があるため、個別の状況に応じて慎重に確認する必要があります2。不明な点がある場合は、管轄の税務署に相談することをお勧めします。
・リース契約書 ・無償の委任契約書 ・建物賃貸借契約書(土地賃貸借契約書を除く) ・ 動産売買契約書 ・ 秘密保持契約書 ・雇用契約書 など |
1万円未満の取引に用いる契約書の場合
印紙税法上は課税文書に該当する文書でも、例外的に収入印紙が不要になる「非課税文書」もあります。
課税文書の各種類には様々な契約書が含まれていますが、第1号・2号・15号文書に該当する契約書で、取引金額が1万円未満の場合は収入印紙が不要です。
具体的には、以下のような契約書が対象になります。
種類 | 契約書 |
第1号文書 | ・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書 (不動産売買契約書など) ・地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書 (土地賃貸借契約書など) ・金銭借用証書 (消費貸借に関する契約書など) ・運送に関する契約書 (運送契約書など) |
第2号文書 | 請負に関する契約書 (工事請負契約書、物品加工注文請書など) |
第15号文書 | 債権譲渡・債務引受けの契約書 (債権譲渡契約書、債務引受契約書) |
契約の成立の証明を目的としない写し・コピーの場合
契約書は、原本だけでなく写し・コピーを作成する場合があります。
契約書の原本を複写機でコピーしただけで、署名や押印といった証明がないものは単なる写しに過ぎないため、収入印紙は不要です。
例えば、社内で確認するためだけに契約書を複写・コピーした場合がこれに該当します。
一方で、以下の条件に該当する場合は契約の成立の証明を目的にしているとみなされるため、収入印紙が必要です。
・契約当事者の双方または文書の所持者以外の一方の署名または押印があるもの ・正本などと相違ないこと、または写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの |
電子契約を締結した場合
印紙税法では、「課税対象となる文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」と定めています。
ここでいう作成は印紙税法基本通達第44条第1項にて、「課税文書の用紙に課税事項を記載し、当該文書の目的に従って行使すること」と定義されています。
つまり、課税文書に該当する内容の文書を紙で交付した場合に印紙税の納税義務が発生するということです。
そのため、電子データで契約書を取り交わす電子契約では収入印紙が不要になります。
契約書に収入印紙を貼る必要がある場合とは
ここでは、収入印紙の貼り付けが必要な契約書の条件を詳しく解説します。
課税文書に該当する場合
先述したように、課税文書は全部で20の種類に分けて定められています。
そのうち、契約書に含まれている種類と具体的な契約書の内容は以下の通りです。
種類 | 課税文書になる契約書 |
第1号文書 | ・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書 (不動産売買契約書など) ・地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書 (土地賃貸借契約書など) ・金銭借用証書 (消費貸借に関する契約書など) ・運送に関する契約書 (運送契約書など) ※取引金額が1万円以上 |
第2号文書 | 請負に関する契約書 (工事請負契約書、物品加工注文請書など) ※取引金額が1万円以上 |
第5号文書 | ・合併契約書 ・吸収分割契約書 ・新設分割契約書 |
第7号文書 | 継続的取引の基本となる契約書 (売買取引基本契約書、業務委託契約書など) |
第12号文書 | 信託行為に関する契約書 ※信託証書を含む |
第13号文書 | 債務の保証に関する契約書 |
第14号文書 | 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 |
第15号文書 | 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 ※取引金額が1万円以上 |
先ほどは収入印紙を貼らなくていい場合として「取引金額が1万円未満の契約書」を挙げましたが、契約書によっては取引金額にかかわらず収入印紙が必要になるため注意しましょう。
なお、具体的にどの区分にどんな契約書が該当するのかは、個々の契約書の内容から総合的に判断されます。
参考:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
契約書の補完を目的に念書・覚書を作成した場合
契約書そのもの以外にも、念書や覚書にも収入印紙が必要になることがあります。
契約金額など「重要な事項」が記載されており、契約書を保管する目的で作成した念書・覚書も、課税文書である契約書とみなされるからです。
重要な事項については、国税庁が公開している「印紙税の手引」に明記されています。
収入印紙の貼り方
収入印紙の貼り方については、明確な決まりはありません。
そのため、どこに貼っても問題はありませんが、契約書の場合はタイトルの横や署名欄に収入印紙を貼るケースが一般的です。
ただし、収入印紙を貼った際は必ず「消印」を行いましょう。
消印とは、収入印紙と契約書に半分ずつ印影が残るように印鑑を押すことです。
収入印紙が不正に再利用されないように、使用済みであることを示すために必要なことで、印紙税務法にて義務付けられています。
なお、印鑑については会社名や担当者の氏名が分かればゴム印でも使用可能です。
印鑑の代わりに、収入印紙と契約書にかかるように消せないペン(ボールペンなど)で署名しても良いとされています。
契約書にかかる収入印紙(印紙税)の金額
収入印紙の購入にかかる印紙税の金額は、契約書がどの種類に該当するのか・取引金額はいくらなのかによって変わります。
ここでは一例として、第2号文書(請負に関する契約書)に該当する契約書の印紙税額をご紹介します。
取引金額 | 印紙税額 |
100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 |
※軽減なしの場合
※参考:印紙税額|国税庁
なお、文書の種類によっては取引金額にかかわらず一定の税額が課せられる場合もあります。
契約書にかかる印紙税を抑える方法
先述したように、取引金額によっては高額な印紙税がかかります。
また、1つ1つの印紙税額は安くても、取引ごとにその都度印紙税を納めるとなれば多額のコストになり得るため、節税の工夫が重要です。
ここでは、契約書にかかる印紙税を抑える3つのコツをご紹介します。
契約や文書を1つにまとめる
印紙税額は取引金額に応じて決まり、対象となる文書ごとに課税されます。
例えば課税対象になる契約書を複数取り交わす場合は、その分だけ税負担が増えることになります。
そのため、1つの契約書に複数の内容をまとめて記載すれば、印紙税は契約書1通分の金額に抑えられます。
取引相手に負担してもらう
印紙税法上、印紙税は契約当事者であればどちらが負担しても問題ありません。
従来のビジネスの慣習として、2通の契約書を用いる場合は当事者がそれぞれ1通分の印紙税を負担するケースもあります。
また、交渉次第では相手方に2通分の印紙税を負担してもらうことも可能です。
とはいえ、印紙税の負担の按分はあくまで慣習にすぎません。
1通または2通分の税負担を相手方に強いることはせず、慎重に対応する必要があります。
電子契約を導入する
より確実に印紙税の負担を抑えるなら、電子契約の導入がおすすめです。
電子契約書は課税文書に該当しないため印紙税がかからないだけでなく、印刷代や郵送代といったコストの削減にもつながります。
また、場所を問わずいつでも契約締結が可能・契約書の保管にスペースを取らないなど、業務効率化に有効なメリットもあります。
ただし、「事業用定期借地契約」や「企業担保権の設定又は変更を目的とする契約」など一部の契約は電子契約が法的に認められていないため注意が必要です。
また、電子データとして契約書を作成しても、それを印刷したものが契約書の本書になる場合は、印紙税が課税されます。
電子契約を導入するには?
電子契約を導入する方法としては、「電子契約システム」の活用がおすすめです。
電子契約システムとは、システム上で契約書の作成・署名・契約締結などを行えるシステムを指します。
製品によっては、ただ契約を締結するだけでなく、契約書データの管理や契約書の承認プロセスのデジタル化にも対応しています。
押印・自筆署名の代わりに「電子署名」や「タイムスタンプ」といった機能を利用し、契約の本人性や非改ざん性なども証明できます。
そのため、紙の契約書を使わなくても法的に有効な契約締結が可能です。
条件によっては契約書も収入印紙が必要!税負担を抑えるなら電子契約の導入を
印紙税法で定められた条件に該当する契約書は、印紙税がかかる「課税文書」となるため収入印紙が必要です。
とはいえ、日々発生する様々な取引にその都度収入印紙を用意するとなれば決して少なくない税額になります。
印紙税を削減するなら、課税文書に該当しない電子契約書の活用がおすすめです。
印紙税によるコストの増加にお悩みの方は、ぜひ電子契約ならではのメリットを理解のうえ電子契約システムの導入を検討してみてください。
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