ノウハウ リーガルテックとは?国内の市場規模や種類ごとのサービスなど解説
更新日:2024年11月29日
投稿日:2020年01月22日
リーガルテックとは?国内の市場規模や種類ごとのサービスなど解説
日本でもここ数年で注目を集めるようになった「リーガルテック」。言葉だけなら多くのビジネスパーソンにとって、聞き覚えのあるキーワードかと思います。
一方で、「そもそもリーガルテックとはどのようなものなのか?」「利用メリットはあるのか」「どのようなサービスが存在するのか?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
今回の記事では、皆様が疑問に思う下記について分かりやすくまとめました。
- リーガルテックとはなにか
- リーガルテックにはどのようなサービスがあるのか
- 国内企業におけるリーガルテックの利用事例
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リーガルテックとは
「リーガルテック(LegalTech)」とは「法律(リーガル・Legal)」と「技術(テクノロジー・Technology)」を組み合わせた言葉で、法律に関わる業務の利便性向上のために作られたテクノロジーのことです。
クロステック(X-Tech)と呼ばれる、ITの活用で既存産業に新たな価値や仕組みを提供する領域の1分野です。
クロステックにはリーガルテック意外にも、様々な分野があります。例えば、「金融(Finance)」と「技術(Technology)」の組み合わせであるフィンテック(FinTech)がその一例です。モバイル決済のサービスやクラウド会計サービスなど既に身近な存在となっているサービスも多く存在しています。
他にも、HRTech = 「人材(Human Resource)」×「Technology」、MarTech = 「マーケティング(Marketing)」×「Technology」、AgriTech = 「農業(Agriculture)」×「Technology」といった分野が話題を集めています。
日本におけるリーガルテックの市場規模
国内におけるリーガルテックは、どれほど普及しているのでしょうか。
矢野経済研究所の2022年調査「電子契約サービス市場に関する調査」によると、リーガルテックの一つである電子契約サービスについて2021年の電子契約サービス市場規模は140億円で、前年比38.6%増の成長を見せていると報じています。
また、2025年の国内電子契約サービス市場規模は395億円に拡大すると予測しています。
引用:矢野経済研究所「電子契約サービス市場に関する調査を実施(2022年)」
アメリカのリーガルテック
様々な先進テクノロジーと同様にリーガルテックも発祥は米国です。
情報センサー 2019年12月号にて、EY弁護士法人 杉浦弁護士は下記のようにリーガルテックの起源についてまとめています。
“LegalTechの歴史は、1970年代に開始された米国のCALR(Computer-Assisted Legal Research)に関する技術の研究開発まで遡(さかのぼ)ることができます※1。
情報センサー2019年12月号「LegalTech(リーガルテック)で法務サービスはどう変わるのか」
コモン・ロー(先例主義)を採用する米国においては、法律実務は過去の裁判例に沿って日々形成されていきます。そのため、シビル・ロー(成文法主義)を採用する国と比較して先例の調査・分析の意義が極めて高く、法律実務家が裁判例に容易にアクセスできるサービスが不可欠であり、判例・法律のリサーチは早くから米国で普及しました。
AI技術の後押しを受け、米国におけるLegalTechのマーケットは近年さらに活性化しています。LegalTechを活用したサービスを提供するスタートアップの資金調達額は、16年、17年は約2億ドルで推移していたところ、18年には10億ドルを超えたと報じられています。また、19年9月時点においても10億ドルを上回るとされており、LegalTechは一つの市場として確立しつつあります※2。”
日本国内でリーガルテックが注目される背景
日本国内でリーガルテックが注目されている背景には、いくつかの要因があります。
まず、新型コロナウイルスの影響です。世界的な感染症の流行により移動が制限されたため、その対応策としてリモートワークやデジタル化が急速に進みました。法務業務も例外ではなく、オンラインで契約業務の遂行や締結といったサービスの導入が拡大しました。
加えて、リモートワーク対応のできるような法改正や規制の見直しにより、よりデジタル技術を導入しやすい体制となったことも後押しとなっています。
また、グローバル競争が激化する現代社会において、企業は法務コストを削減しつつ、迅速かつ的確な法的対応が求められています。しかし、法律業務は従来から時間とコストがかかるもので、特に契約書の作成やレビュー、法律リサーチなどの業務は多くの人手を必要とし、高額な弁護士費用が発生します。リーガルテックは、そのような非効率を解消し、自動化することで、コスト削減が可能となります。
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そもそもリーガルテックはどんなものがあり、どんなことに活用できるのかという点で理解を深めたい方は、次項よりリーガルテックの種類と機能を解説しますので参考にしてみてください。
リーガルテックの種類
一言にリーガルテックといっても様々なサービスが存在します。
リーガルテックの中で特にサービスが多数存在する領域が「契約系サービス」です。電子契約やAIレビュー、契約書の作成、管理といった契約業務の一部を効率化するサービスや、契約業務全体を管理・マネジメントするサービスなどに分類することが出来ます。
しかし、リーガルテックのサービスは数多くあるものの、契約関係の「⼀部業務」に特化したサービスが中⼼で、業務全般を網羅するサービスはごく少数です。
ここでは、様々に存在する国内のリーガルテックをカテゴリごとに把握していきます。
電子契約サービス:デジタルで締結するサービス
電子契約サービスは、締結をオンラインで行うためのサービスです。紙ベースの契約プロセスをデジタル化することで、印紙代の削減といったコスト削減、締結リードタイムの短縮などのメリットがあります。電子契約システムの基本的な機能や具体的なメリットは、以下の通りです。
【主な機能】
- 契約書作成・テンプレート機能
契約書を1から作成するだけでなく、契約の種別ごとに適した内容のテンプレートも用意されているため、専門知識がなくても適切な内容の契約書を簡単に作成できます。 - 契約書合意機能
契約相手が同様のサービスを利用していなくても、自社が送信した契約書へ合意することが可能です。 - ワークフローの管理機能
ワークフローとは、契約書の申請から承認までの一連の流れを指します。 - 契約書のワークフローを事前に設定することで無断で契約書が送信されるリスクを防ぐと同時に、承認の進捗状況も確認できます。
- 電子署名・タイムスタンプ機能
電子署名やタイムスタンプを付与し、契約当事者の本人性と契約書の非改ざん性を証明できる機能です。これにより、電子契約の法的効力が担保されます。 - 検索機能
ファイル名や契約相手の名前などで、必要な契約書を検索できる機能です。
【メリット】
- 電子署名
電子契約システムでは、作成した契約書データをインターネット上でやり取りできます。これにより、出社、印刷、押印、ファイリングといった物理的な作業が不要となり、迅速に契約を締結、保管できます。 - アクセス性の向上
クラウドベースの電子契約サービスでは、インターネット環境があれば場所や時間に制約されることなくアクセスが可能で、必要な時に必要な情報を閲覧することができます。 - セキュリティとコンプライアンス
適切なアクセス制限を設定することで、契約書の機密性とデータの安全性を担保することができます。郵送の場合に起こり得る紛失リスクもデジタルではありません。 - コスト削減
電子契約には印紙の貼付が不要なため印紙代をはじめ、印刷や郵送に関わる紙代の削減が可能です。
関連記事:電子契約を行うメリット、デメリットは?導入検討のポイントを分かりやすく解説
文書管理サービス:文書をデジタル上で保管・管理するサービス
文書管理サービスは、デジタル上で契約書をはじめとした文書を管理、保存、共有、検索するためのサービスです。紙ベースの文書をデジタル化し、効率的な管理を可能にすることで、業務の効率化やセキュリティ向上を図ります。
基本的な機能の内容やメリットは、以下の通りです。
【主な機能】
- 保管機能
文書データを種類や部署などのカテゴリ別に分類・保管する機能です。
また、OCR機能により紙の文書の内容を読み取って電子化できる場合があります。 - アクセス制限機能
契約書や機密文書などのデータに対してアクセス制限を設け、特定の権限を持つ人にのみ閲覧を許可することもできます。
【メリット】
- 文書のデジタル化
電子契約した文書の保管のみならず、紙の文書をスキャンしデジタル化し保管できるため、紙、印刷、保管スペースのコストが削減されます。 - アクセス性の向上
クラウドベースのシステムでは、場所や時間に左右されることなく必要な文書にアクセスすることができます。 - セキュリティの強化
アクセス制限、暗号化、バージョン管理、バックアップなどの機能により人的な紛失リスクを低くし、文書を安全に保管します。 - 検索機能
OCRなどで記載内容を読み取り、登録することで検索性があがり、キーワード検索により必要な情報を簡単に取り出すことができます。 - コラボレーション機能
同時に複数人がアクセスしリアルタイムに編集のできる機能を提供しているものもあり、文書の作成、編集、保存、共有のプロセスが迅速かつ効率的に行えます。
文書作成サービス:法的文書の作成を効率化、自動化するサービス
リーガルテックの文書作成サービスは、契約書といった法的文書の作成を効率化し、自動化するためのサービスです。リスクの低い定型的な契約書の作成をサポートし、リスクの高い契約書の作成、レビューへ時間を割くことができます。
以下に文書作成サービスの主要な機能、メリットについて説明します。
【主な機能】
- テンプレートライブラリ
専門家の監修を受けたテンプレートを提供し、用途に応じた文書を迅速に作成できます。自社独自のテンプレートの登録が可能なものもあります。テンプレートに沿って作成することで、手作業での作成に比べて短時間で手間なく文書作成ができます。
また、外部の法律事務所に依頼するコストを削減し、内部での文書作成を効率化できます。 - コラボレーション機能
複数人がアクセスし同じ文書を編集できる機能を提供しているものもあり、文書の作成、編集、保存、共有のプロセスが迅速かつ効率的に行えます。 - カスタマイズ可能性
テンプレートや自動化ツールをカスタマイズし、個々のニーズに合わせて文書を作成できます。
【メリット】
- あらゆる文書作成の手間を省ける
企業では、契約書・営業資料・報告書・マニュアルなど実に様々な文書を作成する必要があります。
文書作成サービスなら文書の種類ごとに豊富なテンプレートが用意されている場合も多く、どんな部署でも活用できる柔軟性を備えています。 - 文書管理システムの機能も活用できる
文書作成サービスの中には、文書作成だけでなく文書管理システムと同様の機能が搭載されていることも多いです。
文書の作成から保管まで一元管理したい場合にも、文書作成サービスは役立ちます。
契約書レビューサービス:法的文書の審査業務を支援するサービス
契約書レビューサービスは、AIなどを活用し法的文書のレビューを効率化するサービスです。最新条項の提示などの時間のかかる作業を一部自動化することで迅速かつ正確に契約レビューを行うことができます。
以下に契約書レビューサービスの主要な機能、メリットについて説明します。
【主な機能やメリット】
- AIレビュー
AIを用いて文書の内容を分析し、リスク、曖昧な条項、不備を特定します。大量の文書を短時間でレビューできるため、限られた人員で大量のレビューを行う場合にも役立ちます。 - 自動化機能
契約書の特定部分を自動的にハイライトし、標準的な条項や条件とを比較します。 - リスク軽減
リスクを自動で特定でき必要な対策を講じることができます。 - コスト削減
外部弁護士へのレビュー依頼費用を軽減することができます。
サーチ系サービス:法律にまつわる種々の資料の閲覧を可能にするサービス
サーチ系サービスは、法律にまつわる種々の資料の閲覧を可能にするサービスです。解析により判例の関係性や傾向を視覚的に理解できるようにサポートするものもあります。
判例検索は必要性が高く、以前よりサービスが提供されていました。最近では、AIを活用した検索ツールも登場しています。
以下にサーチ系サービスの主要な機能、メリットについて説明します。
【主な機能やメリット】
- 情報の出力
書類作成の際に参考にしたい情報を見つけたら、文書データにコピー・ペーストしたり、WordやExcel形式などでダウンロードしたりできます。 - 検索機能
単純なキーワード検索だけでない高度な検索が可能です。質問形式の検索にも対応可能なものもあります。法令、書籍、パブリックコメントなど膨大などの膨大な法的データを解析し、関連性の高い情報を抽出します。
必要な法的情報を迅速に取得できることで、調査の時間を短縮することができます。 - ナレッジマネジメント
調査した結果をまとめたり共有することができる機能により他のメンバーにも情報共有できます。 - 最新情報の提供
法律や規制の変更をリアルタイムで追跡し、最新の情報を探し出すことができます。自社では管理できないほど膨大な情報も、信頼性の高いコンテンツを通して簡単にアクセスできるため、網羅的かつ効率的な情報収集が可能です。 - リスク軽減
最新の法的情報を素早く取得し適切な対応を行うことで、法的リスクを軽減できます。
審査・登録系サービス:出願や登録申請など、行政手続の効率化を図るサービス
審査・登録系サービスは、出願や登録申請など行政手続きに係る業務を効率化するためのサービスです。具体的には、特許や商標、著作権などの知的財産の出願手続きや管理、会社設立、許認可申請などの行政手続をサポートします。
以下に審査・登録系サービスの主な機能、メリットについて説明します。
【主な機能やメリット】
- 特許出願・商標出願支援
依頼者や代理人がオンラインで出願、報告書の受領、案件管理をできるようにします。特許の出願プロセスは非常に複雑で時間がかかるものですが、クラウド上で文書のやり取りや進捗管理ができることで効率的に業務を進めることができます。 - 更新管理
登録している特許や商標の期限管理を行い、適切に更新、手続きができるよう管理するツールです。 - オンライン登記
会社設立に必要な登記手続をオンラインで行えるサービスです。必要な書類の作成から、電子署名、法務局への提出まで一括で管理できます。 - 書類不備の防止
システム上の画面に従って入力するだけで、各種申請・出願に必要な書類を簡単に作成できます。
これにより必要項目の記載漏れがなくなるため、書類不備の発生を防止できる点もメリットです。
紛争・訴訟系サービス:訴訟やもめごとへの対処の効率化や提訴をサポートするサービス
紛争・訴訟系サービスは、訴訟や紛争の解決に向けた業務を効率化し、法律家や当事者がスムーズに手続きを進められるよう支援するサービスです。
以下で主な機能、メリットについて説明します。
【主な機能やメリット】
- デジタルフォレンジック
不正行為の証拠を電子機器に残るデータから抽出し、解析する技術です。法的に有効な証拠を収集できます。 - 文書自動生成
訴状や答弁書、証拠書類など、法的文書の自動生成をサポートするツールです。テンプレートを用いることで、必要事項を入力するだけで正確な文書が作成できます。 - eディスカバリ(電子情報開示)
訴訟に必要な電子証拠(メール、デジタルドキュメントなど)の収集、保存、分析を行うツールです。膨大なデータの中から関連性の高い情報を迅速に特定し、整理します。 - 調停・仲裁プラットフォーム
オンラインでの調停や仲裁を支援するプラットフォームです。当事者が物理的に会うことなく、オンラインで紛争解決の手続きを進められます。 - ケース管理
訴訟案件を一元管理するシステムです。案件の進捗状況、担当弁護士、スケジュール、関連書類などを一括管理し、効率的な運営をサポートします。 - 訴訟に伴う手間の削減
訴訟となれば、文書作成の他に証拠収集など決して少なくない労力を費やすことになります。紛争・訴訟系サービスならそのような作業を支援してくれるため、準備や訴訟そのものの手間を減らすことが可能です。 - 本人訴訟のハードルが下がる
本人訴訟とは、弁護士や司法書士などの専門家を代理人として立てずに自分で裁判を行うことです。
紛争・訴訟系サービスなら本人訴訟に特化した書面作成などの支援機能を利用できる場合もあり、「専門家への依頼コストを抑えられる」という本人訴訟のメリットを得やすくなります。
なお、紛争・訴訟系サービスを利用すれば必ずしも本人訴訟を難なく実施できるとは限りません。
法知識を持たない方が本人訴訟を行うと、適切な主張立証ができず裁判が不利に進むリスクも伴うため、十分な注意が必要です。
契約書のAIレビューは違法?リーガルテックの適法性とは
先述の通り、リーガルテックのひとつである契約書レビューサービスの中には、AI技術を活用しているものもあります。
AIによる契約レビューサービスでは、AIが学習したデータをもとに契約書のリスクを洗い出したり、リサーチに必要な文書を提示したりする機能を利用できます。
ただしAIで契約書をチェックする際、弁護士法72条の内容を理解しておくことが望ましいです。
弁護士法72条では、弁護士や弁護士法人でない者は、報酬を得るために弁護士が行うべき業務を行ってはならないと定められています。
それを踏まえると、弁護士など専門家の代わりに法的観点で契約書をチェックする契約書レビューは、弁護士法72条違反にあたる可能性も否めません。
なお、AIによる契約書等関連業務支援サービスと弁護士法72条との関係については、法務省より見解が示されています。
法務省の見解によると、以下3つの要件すべてを満たす行為は弁護士法72条に違反する可能性があるとされています。
・そのサービスが「報酬」を得る目的で提供されている ・紛争の当事者間で和解契約を締結する場合など、「事件性」がある事案において文書作成のサービスを提供している ・弁護士法第72 条の「鑑定…その他の法律事務(法律上の専門的知識に基づき法律的見解を述べること)」に該当する |
報酬目的という点では、ほとんどのサービスに該当すると考えられます。
一方で「事件性」については、自社や親子会社・グループ会社で業務フローを明確にするために契約書を作成、または以前から取引を継続している会社間での業務で契約書をチェックする分には、該当しないと判断するケースが一般的です。
「鑑定」に該当するかどうかはケースバイケースであり、サービスで提供される機能や利用者に対する表示内容で判断するものとされています。
一般的な契約業務にAIレビューサービスを活用する分には、違法とみなされる可能性は低いことでしょう。
法務省の見解の詳細については、「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について」をご覧ください。
リーガルテック導入のメリット
リーガルテックを導入することには多くのメリットがあります。以下に、主なメリットを挙げます。
作業の効率化と生産性向上
書類作成、データ入力、リサーチなどの時間のかかるタスクを自動化し、迅速に行えることで、重要度の高い業務に集中できるようになります。
また、人の手では漏れが生じる過去の判例や関連法令検索も漏れなく短時間で検索・分析できます。
コスト削減
手動作業の削減により、人件費や時間コストが減少し運用コストが削減されます。また、オンラインツールを利用することで、紙ベースの業務コストも削減できます。
ツールを導入することで、外部のリサーチサービスやドキュメント作成サービスの利用頻度を減らすことができます。
質の平準化
AIや自動化ツールがデータを処理するため、人為的なミスが減り文書や手続きの正確性が上がります。法務経験の浅いメンバーでもツールを活用することで、ナレッジマネジメントが可能で過去の情報や手法を共有できるため、ミスのリスクを減らしながら教育に活かすことができます。
また、案件の進捗状況をリアルタイムで共有できることで透明性が向上し、担当者待ちが可視化されフォローがしやすくなります。それだけではなく、業務一つ一つにかかる時間が減ることで案件の対応スピードが向上し、より素早く締結ができるようになったりと依頼者の満足度を高めることができます。
データの利活用
ツールを使うことで収拾した過去のデータを分析し、リスクを予測することができるようになり、戦略的な意思決定がしやすくなります。
案件の状況や、対応負荷が可視化されることで案件分配やリードタイムが可視化され、業務負荷の分析や改善案の立案にも寄与します。
【関連記事】契約書のメタデータを活用した業務効率化とデータベース化の方法を解説
リーガルテックの導入によるデメリット
リーガルテックの導入には多くのメリットがありますが、デメリットや注意点も存在します。以下に、主なデメリットと注意点を挙げます。
導入コストがかかる
ツールの導入には、費用がかかります。特に中小規模の法律事務所や企業にとっては、コストが負担になる場合があります。
また、新しいツールやシステムの導入には、従業員へのトレーニングが必要であり、そのための時間や費用も発生します。
トラブル発生のリスク
システムのダウンタイムやバグ、セキュリティの脆弱性などの技術的な問題が発生する可能性があります。場合によっては、業務が一時的に停止するリスクがあります。
また、過度にシステムに依存することで、システムトラブルの際に人の手での対応が困難になる可能性があります。
セキュリティリスク
クラウドベースのリーガルテックツールを利用する場合、機密情報や顧客データの保護が重要です。セキュリティ対策が不十分だと、データ漏洩のリスクが高まります。
海外との取引や国際的な案件を取り扱う場合、各国のデータ保護規制(例えばGDPRなど)に準拠する必要があり、これに違反すると法的な問題が発生する可能性があります。
また、すべての法的業務に対してリーガルテックが適用できるわけではありません。特に複雑な法律問題や高度な専門知識が必要な業務には、人の手が必要です。
リーガルテックの導入による注意点
適切なツール選びが肝心
自社の業務に適したリーガルテックツールを選定することが重要です。過剰な機能や不必要な機能を含むツールを導入すると、利用に係るレクチャーに時間と手間がかかりかえって非効率になることがあります。
また、機能が足りない場合にも選定後に再調査が必要となったりと2重業務が発生するため現場の意見を聞きながら自社に最適な使いやすさと機能を持ち合わせたツールを吟味しなければなりません。
トレーニングは丁寧に
新しいツールを効果的に使用できるよう、適切な教育とトレーニングを実施する必要があります。急に導入が決まった場合、新しいやり方やフローに対して抵抗を示すことが大いにあります。このため、導入前に十分な説明とサポートが必要です。
継続的なアップデートとメンテナンス
リーガルテックツールは、法改正や技術の進歩に対応するために定期的なアップデートが必要です。これにより、継続的な費用が発生することがあります。
また、システムの安定運用のためには、定期的なメンテナンスが必要で、怠るとシステム障害のリスクが増大します。
AIの判断への依存
AIが法的判断を行う際、そのアルゴリズムやデータセットにバイアスが含まれる可能性があります。これが法的な公平性に影響を与えるリスクがあります。AIの回答を過度に信頼せず、判断の必要があるものに対しては人の目を挟みましょう。
電子契約できないものがある
契約の類型により、電子締結できないものが存在します。自社で取り扱う契約書が該当しないか確認しましょう。下記の契約書は、電子契約できません。
・事業用借地権設定契約書
・農地の賃貸借契約書
・任意後見契約
いずれの契約書も、「公正証書により」または「書面により」との規定が置かれているため、電子化できないこととなっています。
また、取引先の受け入れ態勢上、電子締結を受け入れてもらえない場合もあります。
リーガルテック導入のポイント
リーガルテックをうまく導入するためのポイントをご紹介します。
目的を設定する
まず、自社が抱える具体的な課題や問題点を明確にします。例えば、文書管理の効率化、リサーチの迅速化、契約管理の改善などです。どのような課題がありどのように改善したいか明確にすることで最適なリーガルテックツールを選び出すことができます。
次に、解決すべき課題の優先順位を設定し、どの業務プロセスにリーガルテックを導入するのが最も効果的かを判断します。1つのツールで解決できることもあれば、複数のツールを組合わせて解決できることもあるでしょう。
要件を定義する
市場にあるリーガルテックツールを比較・評価し、自社のニーズに最も適したツールを選定します。評価項目には、機能、使いやすさ、コスト、ベンダーの信頼性、セキュリティ基準など自社に合ったものを設定します。
ウェブサイトに記載の標準機能で要件を満たさない場合、ベンダー側に必要に応じてツールをカスタマイズできるか、または自社の業務フローにどれだけ適応可能かを確認します。
ある程度製品を絞り込むことができれば、トライアルを実施し使い心地を確かめましょう。
導入計画を策定する
利用する部署を網羅した導入計画を立案します。例えば、契約業務であれば法務部門だけでなく、経営陣やIT部門、事業部など多岐にわたる場合もあるでしょう。
また、一度に全ての業務プロセスを変更するのではなく、段階的に導入を進めることでリスクを最小限に抑えます。例えば、まずは法務部から導入し、事業部にも利用範囲を拡大するなどです。
【電子契約・契約管理サービス】ContractS CLM
ContractS CLMは、契約書の作成・承認・レビュー・締結・更新・管理と契約業務のフロー全体を一元管理できるクラウド型契約マネジメントシステムです。
契約業務のステータスや承認情報、コミュニケーション履歴などをひとつのシステムで確認できるため、業務の抜け漏れを防止しつつ効率向上につなげることができます。
【審査・登録系サービス】LegalScript
LegalScriptとは、会社の法人登記に必要な書類の自動作成が可能なシステムです。
ガイドに従って情報を入力するだけで書類を作成できるため、登記に関する知識がなくても効率的に手続きを進めることができます。
パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでの操作にも対応しているため、場所を問わず書類作成が可能です。
【サーチ系サービス】LEGAL LIBRARY
LEGAL LIBRARYは、法律専門書や官公庁作成資料など、2,300以上もの書籍を収録したサーチ系サービスです。
探しやすさ・読みやすさを追求した画面レイアウトが特徴で、トップページには書籍の表紙が並んでいるため、参考にしたい書籍を直感的に探すことができます。
【紛争・訴訟系サービス】弁護士ドットコム
弁護士ドットコムは、法律に関わる相談に弁護士がオンラインで回答してくれるサービスや、弁護士の無料検索サービスを提供してるサイトです。
全国各地の弁護士を依頼内容に応じて検索できるため、効率的にマッチングできます。
また、複数の弁護士に弁護士費用の見積もりや対処方針の提案を受けることも可能です。
国内のリーガルテックサービス例
国内で提供されているリーガルテックサービスの具体例として、以下4つのサービスをご紹介します。
自社にリーガルテックを導入する際の参考としてみてください。
組織の拡大を見据えた契約インフラの整備。事業部を巻き込み、契約管理の「脱・属人化」に成功
Jリーグホールディングスの取り組み
- 社名:株式会社Jリーグホールディングス
- 事業内容:Jリーグの組織基盤や各種事業のサポートの他、各種スポーツビジネスを展開
- 従業員数:190名(2019年11月現在)
- URL:https://www.jleague.jp
課題
- 案件管理の属人化で起こりうるリスクの大きさを前職にて痛感
- 法務部立ち上げの過程で感じた、アナログな契約管理からの脱却の必要性
効果
- 過去の契約情報の見える化で「2周目の契約が楽になった」という現場の声
- 法務として現場社員を巻き込む貴重な経験に繋がった
- 年に一度の「規約改正プロジェクト」にも応用し、労力の削減に効果あり
最後に
今回の記事では、「そもそもリーガルテックとはなにか」を中心に、国内のリーガルテックサービスや取り組み事例をご紹介しました。
先行している米国とは異なり、国内におけるリーガルテックの導入は、まだまだこれから普及が進むフェーズといえます。
今回の記事が、リーガルテックを理解する手助けになれば幸いです。