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ノウハウ リスク管理と危機管理とは?違い・事例・進め方とBCPとの関係を解説

投稿日:2024年11月21日

リスク管理と危機管理とは?違い・事例・進め方とBCPとの関係を解説

リスク管理と危機管理とは?違い・事例・進め方とBCPとの関係を解説

震災など緊急事態が発生しても迅速に事業の復旧を目指すためには、リスク管理(リスクマネジメント)と危機管理(クライシスマネジメント)に取り組むことが重要です。

 

本記事では、両者の考え方ややるべきことの違いが分かるよう、具体例とあわせて解説します。BCPにも参考になる進め方も説明します。

 

 

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントとは、想定されるリスクを回避したり、その被害や損害を最小限に抑えるための管理手法を指します。適切なリスクマネジメントを行うことで、事業の継続性が向上し、競争優位性を維持することが可能になります。

 

それはひいては、企業価値の維持・向上にも寄与すると考えられます。なお、「リスク管理」という表現は、リスクマネジメントと同義として用いられることが一般的です。

クライシスマネジメントとは

クライシスマネジメントとは、予期せぬリスクを含む、事業の継続を脅かす危機が発生した際に備える対応策を指します。有事の際には、影響を最小限に抑え、速やかに平時の状態へ回復することが求められます。この取り組みでは、企業の重要な資源を守りつつ、事業の継続を実現することを目指します。

 

なお、「危機管理」という表現も、クライシスマネジメントと同義で使用されることが一般的です。

リスク管理と危機管理の異なる対象

リスク管理の対象範囲は広範で、企業活動や事業運営において発生が想定される多様なリスクをカバーします。これらは、発生可能性や影響度に応じて分類され、適切な対応策が講じられます。

リスク管理の対象範囲

起こり得るリスクを洗い出して対処を考えておくことがリスク管理です。

法的リスクなど事業活動への影響が大きく、事前に予測できるリスクを管理します。

危機管理の対象範囲

危機的状況が発生した時の対応を管理するのが危機管理です。

対応が遅れると事態が悪化するだろう事象や、いつ・どのような事態になるか分からない震災などへの備えが求められます。

 

 リスク管理危機管理
対象想定されるリスク想定外の危機
目的リスクの回避・影響の最小化影響の最小化・平時への復旧
タイミング平時に予防的に実施有事に緊急対応として実施
サイバーセキュリティ対策、法令順守策テロ対策計画、パンデミック対応策

リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違い

予防を目的とするのか対応を重視するのかが異なります。具体的な対処を見ると、違いが分かりやすいかと思います。

予防と対処の視点から見る違い

リスクマネジメント(リスク管理)は予防、クライシスマネジメント(危機管理)は対処を目的に行われます。

 

リスクマネジメントはリスクを発生させないか、発生したとしても最小限に抑えることを重視します。想定されるリスクの洗い出しと管理するリスクの優先順位づけ、リスク防止のための施策立案などを行います。

 

クライシスマネジメントは発生した問題への対応を重視します。

危機が生じた時の対応の計画、実際に生じた際にはすぐに対策の実行、関係者への情報発信、再発防止策の検討などを行います。

リスクマネジメントと危機管理の具体例

リスクマネジメントと危機管理の参考となることをそれぞれ紹介します。

リスクマネジメントの例

例えば製造部門の品質管理です。不良品が販売されないよう、マニュアルを用意して基準に沿った製造と品質チェック、定期監査などを実施します。品質チェックでは不良品の有無を調べ、不良品が見つかった場合は原因の分析などを行います。

 

リスクマネジメントで自然災害への備えも可能です。工場建設の必要がある場合、ハザードマップなどを参考に自然災害のリスクの低いエリアを選定するなどは、リスクマネジメントを意識した自然災害から企業を守る行動と言えます。

 

事業活動では契約業務が欠かせませんが、契約にまつわるリスク管理もあります。

例えば紙の契約書で契約締結や文書管理をしているケースです。保管場所のルールが設定されていないと、必要な時に書類を見つけるまでの時間がかかります。紛失も懸念されます。

そこで、保管に関するルールを整理して、従業員に徹底させることで、リスクマネジメントが働いていると言えます。

 

契約管理システムの導入も契約業務のリスクマネジメントにつながります。契約書は電子化してシステム上に保存されるため、紛失の心配がありません。作成日やキーワードなどで検索できるため、必要な書類を取り出すのもスピーディーです。

危機管理の例

大地震の影響で工場の稼働が停止した事例を紹介します。被災地以外の拠点から部品を仕入れるなどで、生産ラインを守りました。被災地の工場同士が協力して一斉に再建することで、復興につなげました。

 

医薬品に服用してはならない成分が混入していたことで、消費者に健康被害を及ぼした事例もあります。消費者を守ることを最優先に考え、商品回収と情報開示にすぐに動き、服用しないよう警告も出し続けました。同時に、異物混入を防ぐためにパッケージの変更にも取り組みました。

リスク管理と危機管理の実施方法

リスク管理体制の構築は、企業の運営においてリスクを適切に管理し、事業の継続性を保つために非常に重要です。以下に、リスク管理体制を構築するための主要なステップを示します。

リスク管理体制の構築

  1. リスク管理方針の策定
  2. リスクの特定と分析
  3. リスク管理を担うチームづくり
  4. リスク対策の立案と実施
  5. 定期的なリスク評価と改善

リスク管理方針の策定

まずは何をリスクと見なすかなどを組織で共通認識を持ちます。

企業全体のリスク管理の方向性を明確にし、リスク対応の基本的な方針を定めます。

内容は下記のようなものが考えられます。

 

・リスク管理の目的と重要性を明確化

・経営トップのコミットメントと方針の伝達

・企業のリスク許容度や優先順位の設定

・リスク管理の目的(リスク回避、リスク転嫁、リスク受容など)の定義

リスクの特定と分析

業務プロセスに伴うリスクを洗い出し、リスクの発生確率と影響度を分析します。分析によって管理すべきリスクの優先順位が明確になります。

 

分析の例

・リスク特定:内部および外部の要因から、潜在的なリスクをリストアップする。

・リスク分析:各リスクの発生可能性と影響度を評価し、リスクの優先順位を決定。

 例: 定性分析(専門家の判断、過去の事例など)、定量分析(統計的手法やシミュレーション)

リスク管理を担うチームづくり

リスク管理の担当者と責任者を決定します。各部署にリスク管理担当者が配置されると、組織全体でリスク管理を進めやすいです。



チームの例

・リスク管理委員会:経営陣や各部門の責任者が集まり、リスク管理の方針を策定し、実行します。

・専門チーム:リスクの種類に応じて、各部門で特定のリスク管理担当者やチームを設置。

 例: IT部門のセキュリティ担当者、法務部門のコンプライアンス担当者。

リスク対応策の立案と実行

特定したリスクごとに適切な対応策を決め、リスクの発生を予防するための取り組みを実行します。例えば保険に加入するなどです。



・リスク回避策:リスクそのものを回避するための措置(例: リスク源からの撤退、事業の変更)

・リスク軽減策:リスクの影響を最小限に抑えるための対策(例: 保険加入、冗長化システムの導入)

・リスク転嫁策:リスクを他者に移転する(例: アウトソーシング、契約での責任限定)

・リスク受容策:リスクを受け入れ、発生時の対処法を準備する(例: 予備費の設定、危機管理計画の策定)

定期的なリスク評価と改善

リスク管理体制を定期的に見直し、評価と対応策を改善します。評価と改善の繰り返しで、新たに想定されるリスクに対応し続けられる体制を維持できます。

危機管理マニュアルの策定

危機管理に備えるにあたり、マニュアル策定と有事の対応に関わる人材選定から始めます。

危機管理マニュアルに責任を持つ人材を確保できたら、以下の流れでマニュアルを策定します。

 

  1. マニュアル作成
  2. シミュレーションと訓練
  3. 定期的な見直し

マニュアル作成

「誰が」「いつ」「何を」「どのような方法で」が分かる内容でまとめることを心がけましょう。

 

何を危機と見なすのか、緊急時対応を始めるタイミングや流れなどをまとめます。

緊急時の初動対応について欠かないことが重要です。避難の必要性、避難が必要な時にはどのように指示するのか、被害状況の確認方法と通知などもポイントです。

 

社内外への情報発信についても記載します。従業員はもちろん、顧客や取引先への連絡手順が用意されていると、混乱を避けながら分かりやすい情報提供を行えます。

シミュレーションと訓練

マニュアルに沿って有事を想定した訓練を実施します。実際に動いてシミュレーションしておくと、万が一の事態でもスムーズに動きやすいでしょう。

訓練によって、行動に移す時のマニュアルの課題が見えてきます。

定期的な見直し

訓練の繰り返しはもちろん、想定していた危機が発生して対応した後なら特に、マニュアルの改訂の必要性に気づくかもしれません。

想定していなかったリスクの内容や、危機を防げなかった原因を振り返りながら、新しいリスクに対応できる内容に更新します。同時に、再発防止策の検討も行いましょう。

事業への影響を最小限に抑えるBCPとは

Business Continuity Planの略で「事業継続計画」という意味です。

自然災害などの緊急事態が発生した際、損害を最小限に抑えながら、重要な事業から徐々に、そして早期に事業の復旧を進める計画を指します。

 

BCPは組織に影響を与えるだろうリスクと大きさを予測し、復旧までにやることと流れを考えることが求められます。

 

問題発生時の対応を考えることから危機管理(クライシスマネジメント)と考えられやすいですが、リスクの分析などリスク管理(リスクマネジメント)の面も持ちます。

企業におけるリスクマネジメントとクライシスマネジメントの重要性

BCPひとつ取ってもリスク管理と危機管理が関係することから、企業にとってはどちらも欠かせないと言えます。

 

リスクマネジメントによってリスクを想定し、損害を最小限にしたり予防できる可能性を高めます。リスクの発生する可能性が限りなく低い企業は信頼されやすいです。リスクの起こりにくい企業は、安定した経営が長く続くことも期待できます。

 

備えていても予期せぬトラブルはつきものです。

そこで、実際に起きたリスクへの対処を考えるクライシスマネジメントが重要になります。

クライシスマネジメントによって、事態をスピーディーに解消しながら事業の再建に取り組めます。

 

リスクマネジメントとクライシスマネジメントを統合した管理は、企業のリスク対応力を強固にすると考えられます。

リスクマネジメントとクライシスマネジメントの統合的アプローチ

リスクマネジメントによって特定されたリスクの中で、特に事業への影響が大きいものについて対応を考え、有事の際にすぐに動けるようにします。

 

リスクが顕在化した場合、すぐに危機対応へと移行できる仕組みを整備する上で、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの担当者の連携が欠かせません。2つのマネジメントの担当者の連携で、収束までがスムーズに進むことを見込めます。

 

リスクに関するデータと、危機発生時の対応を一元管理し、一緒に分析することで、新たなリスクが見えてくるかもしれません。できるだけ多くのリスクに事前に気づけると、有事にできることも増えるでしょう。

 

リスクマネジメント・クライシスマネジメント共に、シミュレーション・訓練が欠かせません。従業員が想定されるリスクと有事の対応を認識でき、万が一の時にも適切に対処できるようになると期待できるためです。

 

リスクマネジメントとクライシスマネジメントを統合して検討できると、リスクを予測できるか否かに関係なく、迅速かつ的確な対応ができるようになるでしょう。

まとめ

事業の安定を継続させるためには、リスク管理も危機管理も欠かせません。特に、災害などが発生した際に可能な限り迅速な復旧を目指すBCPの計画には、リスクマネジメントとクライシスマネジメント双方のアプローチが重要です。

BCPも検討しているのであれば、デジタルツールを上手に使って緊急時対応を明確にしておくなど、できることからリスク管理と危機管理に一体で取り組みましょう。