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ノウハウ ガバナンスとは?コンプライアンスやリスクマネジメントとの違いと強化方法を解説

投稿日:2024年11月21日

ガバナンスとは?コンプライアンスやリスクマネジメントとの違いと強化方法を解説

ガバナンスとは?コンプライアンスやリスクマネジメントとの違いと強化方法を解説

ガバナンスが機能していると、不正や不祥事の防止や企業価値の向上を期待できます。では、ガバナンスとコンプライアンス、リスクマネジメントとの意味や役割にどのような違いがあるのでしょうか。

 

本記事ではガバナンスが機能していない時の問題点や種類を説明しながら、内部統制の強化などガバナンス強化の方法を解説します。ガバナンスと深く関係する内部統制についても触れています。

 

 

ガバナンスとは何か

英語でgovernanceと綴り、「統治」「管理」と訳されます。

組織や社会、団体、プロジェクトなどを適切に管理・運営し、その目標を達成するための仕組みやプロセス、ルールを指し、単に指導や統制を意味するのではなく、透明性、公平性、効率性を確保しながら、複数の利害関係者間で調和のとれた意思決定を行うことを目的としています。

コーポレートガバナンスとは

企業でのガバナンスを指し、「企業統治」とも呼ばれます。

 

東京証券取引所が作成した「コーポレートガバナンス・コード」で以下のように定義されています。

 

会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み

コーポレートガバナンス・コード

 

コーポレートガバナンスとは、例えば取締役と執行役の分離、社外取締役の設置、内部統制を担うチームづくりなどを指します。

 

株主をはじめとしたステークホルダーから強固な信頼を得るために重要な仕組みと言えるでしょう。

ガバナンス・コードとは?その概要

コーポレートガバナンスの機能に必要な原則をまとめたものです。

 

5つの基本原則で構成されます。

  • 株主の権利・平等の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会等の責務
  • 株主との対話

 

上場企業には、株主の権利が確保され、適切に行使される環境整備が求められます。また、少数株主などへの配慮といった株主の平等性を保つことも要求されます。

 

企業の成長には従業員、顧客、地域社会など株主以外からもリソースが提供され、また、貢献されていることを認識して、還元していくことが重要です。

 

企業は財政状況・財務情報や経営戦略と課題などの積極的な開示が求められ、株主との対話に重要な情報のため、分かりやすい形にすることが必要です。

 

また、株主との対話の機会として設けられるのが株主総会です。株主総会に限らず株主から面談の申し出があった時には対応し、求められた情報を開示します。

取締役会は株主への説明責任があり、経営陣や取締役の監査も行うものです。

 

コーポレートガバナンス・コードの原則の確実な実施で、成長と中長期的に企業価値の向上を続けるための対応を企業が自発的にとることとなります。結果、組織、投資家、そして経済全体の発展に貢献すると考えられています。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは「法令遵守」と訳され、ビジネスシーンでは法令にとどまらず、社内規定や社会規範、社会的責任(CSR)も守らなければならないとされています。

 

法令や規則、社会的規範、倫理基準を遵守することを指し、特に企業や組織がその活動を行う際に、法律だけでなく、社会的に求められる行動規範や倫理観を守ることを重視する考え方です。

ガバナンスとコンプライアンスの違い

ガバナンスはコンプライアンスなどが機能するよう管理する体制のことです。

コンプライアンスは企業の透明性を維持するための法令遵守といった対応や取り組みを指します。

 

ガバナンス強化がコンプライアンスが機能する環境を築くと言えます。

ガバナンスが整っていることのメリット

不正や不祥事の防止で企業価値の向上が予想されます。また、企業の成長と競争力強化も期待されます。

不正や不祥事の防止

ガバナンスが機能している状態は、組織の監視体制が機能しているということです。不正や不祥事が起こりにくく、健全な経営を進めやすいです。

企業価値の向上

不正や不祥事を起こさないことに積極的な企業への信頼は厚いです。

企業価値の向上で金融機関からの信頼も高まります。出資や融資を受けやすくなり、財政状態を安定させられるでしょう。経営が安定すれば株主やステークホルダーの利益を守ることになり、企業の持続的な成長につながります。

信頼できる企業ということで、株主からの投資も期待できます。

企業の持続的な成長と競争力強化につながる

ガバナンス強化によって経営が順調に進めば、企業も成長を続けているはずです。成長を続ける企業は新規事業にも積極的に投資しやすいです。また、優秀な人材が集まりやすく、競争力強化が期待されます。

 

企業の成長と高い競争力の維持に優秀な人材は欠かせません。順調な企業経営で従業員の雇用が守られます。安心して働けるおかげで、従業員は能力を発揮しやすいでしょう。そして、生産性向上によるさらなる成長が見込まれます。

ガバナンスが効いていないことのデメリット

ガバナンスが効いていない場合、信用の失墜やグローバルに対応できないなどが起こり得ます。

社会的信用が失われる

ガバナンスが機能しないと、不正や不祥事の起こるリスクが高まります。

不祥事を起こす企業は信用されません。万が一不正や不祥事が起きれば社会からの信用が低下し、業績にも影響するでしょう。

グローバル化の対応ができない

国外でもビジネスを行うのであれば、現地の法令や文化への理解が求められます。各国それぞれに合った規則を守る意識が希薄だと、法令などに反する恐れがあります。

 

罰則を受けたり、現地での評判が低いことによる信頼と経済的損失を被ることが予想されます。最悪の場合、その国での営業許可が取り消されるといったことも起こり得ます。

リスクマネジメントの意義

リスクマネジメントもコンプライアンス同様、ガバナンスと混同しやすい言葉として挙げられます。

リスクマネジメントとは何か

リスクマネジメントとは、組織や個人が直面する可能性のあるリスク(危険や不確実性)を特定し、評価し、適切に対応・制御するプロセスを指します。リスクは、自然災害や事故、経済的な変動、法律の変更、情報漏洩など、組織や活動に影響を与えるさまざまな要因から発生します。

リスクマネジメントと内部統制の関係

内部統制とは組織全体の管理を通じて企業が健全に、そして効率的に経営を行うための仕組みです。

 

内部統制とリスクマネジメントは深い関係があります。例えば不正防止のための承認プロセスなどは、リスクマネジメントを考慮した内部統制の一種です。

 

内部統制はリスクマネジメントを実施する手段のひとつと言え、両者は組織のリスクを管理・対処するために機能しているとも捉えられます。

ガバナンスとリスクマネジメントの違いとは

ガバナンスとリスクマネジメントは、どこまで管理しなければならないか、範囲が異なります。

 

ガバナンスは組織全体を統制・管理するための仕組みです。企業の健全性の担保に関わる幅広い事項の対応を考えなければなりません。例えばステークホルダーへの情報開示に備えるなどです。

一方、リスクマネジメントに求められるのは、適切なリスク管理です。

 

両者の管理範囲に違いがあるものの、適切なリスクマネジメントが健全な経営の基礎となることから、リスクマネジメントによってガバナンスの機能した状態を築けるといっても過言ではありません。

企業における内部統制の強化

リスクマネジメントが働くことでガバナンスも機能します。内部統制がリスクマネジメントのひとつということは、内部統制の強化がガバナンスにもつながるとも考えられます。

 

では、強化すべき内部統制にはどのような役割があるのでしょうか。

内部統制の役割とは

内部統制とは、組織の目標達成を支援し、業務の効率化やリスク管理、法令遵守を実現するための仕組みやプロセスを指します。特に企業や公共団体において、不正やミスを防止し、透明性の高い運営を行うための重要な手段として位置づけられています。

 

金融庁の資料では、内部統制の役割を以下4つを達成するためとしています。

 

  • 業務の有効性・効率性の確保
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令などの遵守
  • 資産の保全

業務の有効性・効率性の確保

業務の有効性とは事業活動や業務の目的が達成された程度、業務の効率性はリソースを合理的に使用できた程度のことです。

業務の有効性と効率性を高めて企業の目標を達成するために、内部統制によって有効性と効率性を評価・測定して高めるための対応を整備することが必要とされます。

財務報告の信頼性

財務報告は組織内外のステークホルダーが企業の動向を知る重要な情報です。誤った報告はステークホルダーに損害をもたらす恐れがあります。そして、自社の信用問題に関わることも想定されます。

内部統制は、財務報告に虚偽記載が起こらない体制づくりにもつながっています。

事業活動に関わる法令などの遵守

健全な事業活動を続ける上で法令や内部規程、行動規範などを守ることが欠かせません。内部統制が機能していることで、法令などを守ることが当たり前の環境が整備されます。

資産の保全

資産の不正な取得や使用や処分は、企業の信用を失いかねません。資産には顧客情報といった無形資産も含まれます。

組織は資産の取得・使用・処分を適切に行う責任を負います。資産が正しく使用・管理できる体制づくりに内部統制が機能します。

ガバナンスの種類

ガバナンスには、コーポレートガバナンスの他にITガバナンスやプロジェクトガバナンス、パブリックガバナンスや地域ガバナンス、環境ガバナンスなどがあります。それぞれの意味や役割をあわせてご紹介いたします。

ITガバナンス

ITの導入・活用が適切に行われるための運用・管理体制です。IT資源を効率的に使い、IT戦略の立案・実行に活かします。

プロジェクトガバナンス

経営層が複数のプロジェクトを把握し、各プロジェクトの継続や中断などを決定する仕組みです。プロジェクトの進捗を正確に認識できないために問題への対処が遅れるといった事態を防ぐためのガバナンスです。

パブリックガバナンス

政府や公的機関、地方自治体を国民・市民が監視することです。

地域ガバナンス

地域コミュニティが自発的に地域を元気にするための取り組みです。

地域を良くするために地域社会で協力する活動としてごみ捨てが挙げられます。行政は住民が分別したごみを収集し、事業者がリサイクルする、という体制によって地域の環境が整備されます。

環境ガバナンス

環境保護と持続可能な開発を両立させるための体制です。環境に関するリスク管理や、環境保全にまつわる法令遵守などを行います。

ガバナンス強化の方法

内部統制とリスクマネジメントが機能するようにする他、内外の監査も大切です。

社外取締役・監査役の設置

社内の不正防止には第三者の目が必要です。外部からの監査として有効なのが、社外取締役や社外監査役です。第三者からの視点で、社内だけでは気づかないルールの不備や業務プロセスの問題を発見できます。

内部監査の実施

外部からの監査はもちろん、内部の独立した機関からの監査も欠かせません。内部監査では、ガバナンスが機能しているか評価し、改善の必要な事項をアドバイスが行われます。外部機関からの指摘と合わせて参照することで、より強固なガバナンスを築くために必要なことが見えてきます。

内部統制の強化やリスクマネジメントを図る

内部統制が機能していると、透明性の高い情報を開示できます。

事前にリスクを想定して対処できるようにすることで、不正が起こりにくくなります。財務情報などの開示を積極的に行い、リスクに備えた体制を築いた結果、資産の保全や信頼性の向上につながり、ガバナンスが定着し、強化された状態を作り上げることができます。

法令や社内規範などの周知

法令やルールを守ることがガバナンスの前提です。ところが、法改正を知らずに違反することはあり得ます。また、社内のルールを知らないために守れないことも予想されます。

業務に関する法令、社内規則や行動規範を周知し、徹底させることがポイントです。

まとめ

ガバナンスの強化は、企業の持続的な成長を実現し、ステークホルダーからの信頼を獲得するために不可欠です。リスクマネジメントが効果的に機能することで、ガバナンスの向上につながります。内部統制はリスクマネジメントの一環と位置づけられるため、まずは内部統制の強化から着手することをお勧めします。それにより、組織全体の健全性と透明性を高め、安定した経営基盤を築く一歩となるでしょう。