ノウハウ 生産性向上には何が必要?数値の測り方から施策の例まで解説
投稿日:2024年11月21日
生産性向上には何が必要?数値の測り方から施策の例まで解説
「生産性向上」はどんな企業にも重要性の高いミッションです。
しかし、そもそも何をもって生産性が向上したといえるのか?具体的に何をすれば生産性が向上するのか?などの悩みを抱える方も多いはずです。
そこで今回は、生産性向上に向けて知っておくべき指標とその計測方法、生産性向上の手順などを詳しく解説します。
生産性向上へ効率的に取り組めるシステムもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
生産性向上とは?
企業における生産性とは、投入した資源(原料・設備・時間など)に対してどれだけアウトプット(生産物の量・付加価値)を得られたかの比率です。
つまり生産性向上とは、「少ない投資で多くの成果を得られる」という状態を指します。
労働力人口の減少や国際競争力の低迷が問題視されている現代において、生産性向上に向けた取り組みはは業種を問わずあらゆる企業にとって重要です。
生産性を測るための指標と計測方法
自社の生産性は、以下3つの指標をもとに計測できます。
・物的労働生産性 ・付加価値労働生産性 ・全要素生産性 |
各指標をもとにした生産性の計測方法を、以下より解説します。
物的労働生産性の計測方法
物的労働生産性は、以下のように計算します。
・労働者1人あたりの生産性=生産量÷労働者数 ・動労時間1時間あたりの生産性=生産量÷労働者数×労働時間 |
物的労働生産性とは、労働者や労働時間に対する製品の生産量・個数など、目に見える物的な生産性の指標です。
食品や自動車などの製造業といった、形を持つ商品を取り扱う企業の生産性を測る際の指標となります。
付加価値労働生産性の計測方法
付加価値労働生産性の計測では、以下の計算式を用います。
・労働者1人あたりの付加価値労働生産性=付加価値額÷労働者数 ・動労時間1時間あたりの付加価値労働生産性=付加価値額÷労働者数×労働時間 |
※付加価値額:売上から諸経費を引いた粗利
付加価値労働生産性とは、労働者や労働時間に対して得られる商品の付加価値(粗利)の比率です。
情報・サービスなど、形を持たない商材を扱う企業の生産性を測る際に用いられます。
資本生産性の計測方法
資本生産性は、以下の計算式で計測します。
資本生産性=付加価値額÷有形固定資産の量 |
資本生産性とは、保有している機械・設備・土地などの資本1単位あたりに生産できる成果の比率です。
労働生産性の高さは、資本生産性の高さと相反します。
例えば製造工程を自動化するための機械を導入した場合、有形固定資産の割合が増えることになるため資本生産性は低下します。
しかし、機械の導入により必要な労働者の人数は少なくなるため、労働生産性は高くなります。
全要素生産性の計測方法
全要素生産性とは、労働力や付加価値額に加え、ブランド価値や技術革新など、目に見えない価値も含めた生産性のことです。
計測の際はあらゆる要素が計算に加わるため計算式に決まりはありませんが、一般的には以下のように算出します。
・全要素生産性=生産量÷(労働力+資本+原材料など) ・全要素生産性=付加価値額÷(労働力+資本+原材料など) |
主に、「技術の進歩」や「生産の効率化」など、労働力や資本の量的な変化のみで説明できない要因がどれだけ企業成長に寄与するのかを示す指標として用いられています。
現在の日本における労働生産性の統計情報
公益財団法人日本生産性本部が2023年11月に発表した「日本の労働生産性の動向 2023」では、2022年度における日本の就業1時間当たり付加価値額はUSドルにして52.3ドルという結果が出ています。
38のOECD加盟国の中では30位であり、世界的に見ると日本企業の労働生産性は低いことが伺えます。
また、1人当たり労働生産性は85,329ドルであり、OECD加盟38ヵ国中31位と、1970意向で最も低い順位に落ち込んでいます。
日本の労働生産性が低い原因
日本の労働生産性を低下させる大きな原因としては、少子高齢化の加速に労働力人口の不足が挙げられます。
年々労働力人口が不足していく現状に反し、従来と同様の働き方を継続しているために、1人1人の業務負担増加に伴う生産性の低下を見過ごしている企業は少なくありません。
他にも、レガシーシステムへの依存・長きにわたり続けてきたアナログ作業へのこだわりなどからデジタル化が遅れており、業務効率が低い状態が続いていることも生産性に影響しています。
労働生産性が低迷している状態が続けば、グローバル市場における競争優位性の確保が困難となります。
円安の影響により国内市場が縮小傾向にある現代で日本企業が生存するためには、労働生産性向上の取り組みで国際競争力をつける必要があります。
生産性向上の手順
生産性向上に有効な施策は企業によって異なりますが、基本的な取り組み方は同様です。
以下より、生産性向上に取り組む際の手順を解説します。
目標を設定する
生産性向上の取り組みは、漠然とした目標のもとに進めても思うような効果は得られません。施策を検討する前に、可能な限り具体的な数字で示すことができる目標・ゴールを設定しましょう。
目標がゴールが明確だと、効果的な施策を容易に見いだせるだけでなく、実行後に効果測定がしやすくなります。
現状の生産性を把握する
正しく生産性向上へ取り組むために、自社の現状を把握・可視化する必要があります。
企業の生産性は労働者や資本などの量的要素に加え、業務のノウハウ・ビジネスモデル・従業員のスキルといった質的要素から成り立っています。
それらを把握するために、現状の業務における以下のポイントを洗い出しましょう。
・業務を遂行するための手順や方法 ・部署ごとが担当している業務 ・業務の担当者 ・業務の所要時間 ・業務に必要な設備・原材料・コストなど |
上記のポイントは業務マニュアル・フローチャート・組織図・原価管理表などを作成のうえまとめることで、誰の目からも現状を把握できるようになります。
生産性低下の原因を分析する
現状を把握したら、その中で生産性の低下を招いている問題点を探します。
無駄な工程・非効率的な作業・属人化している業務の有無などがないか、確認しましょう。
複数の問題点が見つかった場合は、緊急度・重要度のどちらも高い問題点から優先順位を付けて、解決に向けて取り組みます。
問題解決に効果が見込まれる手法を特定する
洗い出した問題点を解決するための手法を特定し、生産性向上に向けた施策を本格的に検討します。
例えば非効率的な作業が存在する場合は、工程の削減に役立つデジタルツール・システムの導入や、アウトソーシングの利用を検討します。
また、人員の適性も生産性低下の原因である場合は、再配置やスキルアップの取り組みも視野に入れましょう。
生産性向上に有効な施策例
生産性向上の際に用いられる施策としては、以下のようなものがあります。
分野 | 施策 |
オフィス業務 | ・RPAによるデータ入力の自動化 ・電子契約の導入 ・会計システムによる会計処理の効率化 ・労務管理システムによるクラウド上での勤怠管理 ・人事労務システムによる労働時間の管理や給与計算の自動化 |
コミュニケーション | ・チャットツールによる社内コミュニケーションの円滑化 ・WEB会議ツールを活用したリモート会議・面接の導入 |
営業活動 | ・SFAによる顧客・案件情報の一元管理 ・MAでマーケティング活動の自動化・効率化 |
製造 | ・生産管理システムで生産・販売・原価などを一元管理 ・熟練工の技術をデータ化・継承 |
生産性向上で得られるメリット・効果
生産性向上へ取り組むことで、以下のようなメリットが得られます。
・企業の競争力が強化される ・労働力人口不足に対応できる ・労働環境の改善による従業員のモチベーション向上 ・利益拡大・顧客満足度の向上 |
生産性向上には、既存業務の改善・効率化が避けて通れません。
そのため従業員1人1人の業務負担の軽減につながり、結果として労働環境が改善します。
人手不足が加速する中でも正常に業務を回せるようになり、人員の流出も防止できます。
また、生産性向上への取り組みがレガシーシステムからの脱却のきっかけとなり、DX推進の一助となることでしょう。
生産性向上のポイント
過程のひとつとして「業務効率化」は必要ですが、業務効率化だけを目指した取り組み方にならないよう注意が必要です。
生産性向上の目的はあくまでアウトプットを最大まで引き出すことであり、そのためには人員の再配置など、業務効率化以外の手法が必要になる場合もあります。
また、効果的な施策を見出しても、短期的な取り組みですぐに効果が出るとは限りません。
長期的な取り組みになることを前提として、コツコツと続けていく姿勢も重要です。
生産性向上に活用できるツール
現在は多岐にわたる分野に対応したツールが開発されており、自社が問題を抱えている業務・部門に合ったものを導入すれば生産性向上に近づくことができます。
なお、生産性向上に活用できるツールには無料の場合と有料の場合があり、それぞれ機能性が異なります。
以下より有料・無料それぞれのツールの例をご紹介しますので、施策を検討する際の参考にしてみてください。
無料ツール
システムの導入経験がない現場や、まずはコストをかけずに運用をシミュレーションしたい場合は無料トライアルが利用できるツールがおすすめです。
ここでは、無料で利用可能なツールを2種類ご紹介します。
【チャットツール】Chatwork
国産ビジネスチャットツールのChatworkは、社内外のメンバーと簡単にコミュニケーションを取ることができます。
直感的な操作性が特徴で、ITシステムの利用に慣れていないユーザーでも操作に迷う心配がありません。
また、Chatworkではチャットをそのままタスクとして設定することが可能です。
例えばやり取りの中でリーダーから指示があったとき、そのチャット内容と担当者を紐づけてタスク化し、画面の右側に表示されるようになります。
【顧客管理ツール】HubSpot
HubSpotは、インバウンドマーケティングに必要な機能が揃っているアメリカ製の統合型CRMプラットフォームです。
専門知識がなくても簡単にWEBサイトやLPを作成できるだけでなく、SEOの観点から最適なコンテンツ案を提案してくれます。
他にも、顧客へ送信した営業メールがどのくらいマーケティング成果を得られているかを確認できる機能なども備わっています。
営業中の案件・受注案件・不成立案件など、各案件の一元管理も可能です。
有料ツール
年額・月額料金が発生する有料ツールはコストがかかりますが、無料版よりも幅広い機能が利用できるため、より広範囲・高度な施策の実行に役立ちます。
以下より、生産性向上に活用できる有料ツールをご紹介します。
【契約管理システム】ContractS CLM
ContractS CLMは、契約書作成・承認・締結・管理など、契約業務に必要な工程のすべてを実行できるCLM型の契約管理システムです。
1つのシステムで複数の契約業務を効率化でき、迅速な契約締結を可能とします。
また、紙の契約書を取り込む際にAI-OCR機能で内容をテキストデータに変換できるため、大量の過去契約書の電子化から今後発生する契約書の電子化まで行うことができます。
【タスク・プロジェクト管理ツール】Backlog
タスク管理ツールのBacklogは、1つのプロジェクトにおけるタスクの管理に特化した機能が備わっています。
プロジェクトの期限を設定しておくとすべてのタスクがガントチャートによって可視化され、納期に基づく柔軟な進捗管理が可能になります。
また、どのメンバーが・何のタスクを消化しているのか、各タスクは未対応なのか処理中なのかなどのステータスをリアルタイムで把握できます。
【会計システム】freee
freeeはクラウド型の会計ソフトで、事業規模を問わずどんな企業の会計・経理業務の効率化に活用できます。
管理画面から収支・発生日・金額・勘定科目といった項目を入力するだけで、日々の取引を簡単に記帳できるという操作性の良さが魅力です。
法人だけでなく、会計処理の知識に不安がある個人事業主のユーザーからも支持されています。
生産性向上には数値測定による現状の把握と効果的なツールの活用が重要
企業成長に欠かせない生産性向上へ取り組むにあたって、現状の生産性を測定のうえ、生産性低下を招く問題点に合わせた施策を検討する必要があります。
労働者や資本など自社の事業に関わる要素を踏まえ、本記事で解説した方法を参考に測定してみてください。
生産性向上の過程として業務効率化を目指すなら、非効率的・改善の余地がある業務へのデジタルツールの導入がおすすめです。