ノウハウ 電子化(ペーパーレス化)の費用対効果とは?コスト削減のコツも解説
投稿日:2024年11月21日
電子化(ペーパーレス化)の費用対効果とは?コスト削減のコツも解説
書類の電子化はコスト削減に効果的というメリットがありますが、やみくもに電子化を進めるだけでは、むしろ初期コストがかさみ費用対効果が落ちる恐れがあります。
コストを抑えながら十分な成果を得るには、あらかじめコストを算出のうえ、いくつかのポイントを意識して進めることが大切です。
そこで今回は、電子化にかかるコストの算出方法や電子化のメリット・デメリット、費用対効果を高めるコツなどを分かりやすく解説します。
電子化にかかるコストを算出する方法
電子化とは、紙の書類を電子化する取り組みのことです。
しかし、電子化を進めるにあたってデジタルツールの導入や電子化作業による人件費など様々なコストが発生します。
電子化によるコスト削減の効果を得るためには、まず初期コストがどれくらいかかるのかを算出し、費用対効果を高める施策を定める必要があります。
以下より、電子化にかかる主なコストの算出方法を解説します。
電子化する書類の数を把握する
書類の電子化においては「書類をスキャンして電子データに変換する」という方法が主流ですが、それにはスキャニング作業を行うためのコストがかかります。
スキャニング作業のコストを算出するうえで、電子化する書類の枚数を把握しておく必要があります。
作業を外注する場合の費用は、枚数や用紙のサイズなどによって変わるからです。
なお、A4サイズの書類をモノクロでスキャンする場合の単価は、1枚当たり6円程度とされています。
膨大な量の書類でも、厚みを計測すると大まかな枚数を把握することが可能です。
一般的に、普通紙は100枚重ねると1cm程度の厚みになるため、この目安をもとに枚数を算出しましょう。
また、コピー機・複合機によっては印刷枚数のカウント機能が備わっている場合があります。
素早く確実に枚数を数えてくれるため、自社のコピー機・複合機にカウント機能があれば活用するのもおすすめです。
ただし、これはFAX送信に付随する機能であるため、架空の番号を入力のうえ使用する必要があります。
誤って取引先の番号を使わないように、十分に注意しましょう。
スキャンに必要な時間を測る
枚数だけでなく、作業時間もスキャニング作業のコストを算出するうえで必要な要素です。
外注ではなく自社の人員で対応するにしても、スキャニング作業にかかる時間の分だけ人件費が発生します。
しかし総額にしてどれくらいの人件費が発生するのかは、電子化する書類の枚数と担当者の時給によって変わります。
「1枚の書類のスキャンにかかる時間×担当者の時給」で、電子化に伴う人件費を算出しましょう。
システム導入する場合のコストを出す
電子化した書類のデータを管理・活用する場合は、システムの導入も必要です。
企業に導入されるシステムには、構築から運用保守まで自社で行う「オンプレミス型」と、提供事業者が運用・保守する「クラウド型」があります。
オンプレミス型の場合は構築や保守運用を行うための人件費や依頼費用、クラウド型は年額または月額制として利用料金が発生します。
「業務のデジタル化」の過程として書類を電子化するのであれば、システム導入に伴うコストの相場も知っておく必要があります。
システムの内容にもよりますが、例えば文書管理システムの初期費用はオンプレミス型なら10万円~数百万円程度、クラウド型なら月額で数千円~5万円程度が相場です。
書類を電子化するメリット
書類を電子化することで、中長期的にみると様々な点でメリットが生じます。
ここでは、費用面とその他のポイントに分けて書類化を電子化するメリットをご紹介します。
費用面のメリット
書類の電子化では、費用に関する以下3つのメリットが得られます。
保管コストを削減できる
紙の書類ならではの難点として、保管コストの増幅があります。
膨大な書類を保管するとなれば、1枚1枚をファイリングのうえキャビネットに収納する必要があるため、各備品の購入費やスペースの無駄遣いは避けられません。
書類を電子化すれば、すべて自社サーバーやクラウド上にデータを保管できるため、紙の書類と比べて保管コストの大幅な削減に期待できます。
郵送コストを削減できる
契約書など社外への共有が必要な書類の場合、郵送のための出費も発生します。
1回あたりの郵送代は安くても、トータルでみると決して少なくない出費になります。
一方で書類を電子データにした場合、メールで送信したりシステム上で共有したりといった手段での共有が可能です。
これにより、逐一郵送代を支払って社外に郵送するコストと手間が不要になります。
時間コストを削減できる
書類を紙で保管していると、後から内容を確認する際にファイリングされた書類を1枚ずつめくって探さなければなりません。
書類探しのために限られた業務時間が圧迫されて、生産性の低下を招きます。
例えば1日のうち書類探しにトータル10分を費やしており、それが毎日続くことを想定のうえ時給に換算してみると、多額の無駄な人件費も発生していると気がつくはずです。
書類を電子化していれば、検索機能で即時必要な書類を取り出せます。
業務に直接関係のない作業に時間を取られないため、時間的なコストの削減と生産性向上に期待できます。
その他のメリット
書類の電子化は、費用面以外にも複数のメリットが得られる取り組みです。
以下より、費用面を除く電子化のメリットをご紹介します。
業務効率化につながる
書類を電子化すれば保管スペースが不要になる他、書類探し・郵送手配・書類の処分といった作業も省略できます。
日常業務の中にある細かな作業が省略されることで、業務全般の効率化につながります。
業務効率化により、時間に余裕が生まれてコア業務へ集中しやすくなるため、生産性が向上します。
セキュリティが強化される
電子化した書類のデータを文書管理システムなどで保管すると、システムの機能を利用して閲覧権限を管理できるようになります。
書類の内容に合わせて閲覧できる人を限定することで、情報漏洩のリスクの回避につながります。
インターネット環境で利用するクラウド型のシステムも、高レベルな不正アクセス対策を施している場合もあるため、導入すればセキュリティ強化が見込めます。
適切な情報管理がしやすくなる
書類の電子データは、保管時に煩雑化しにくくデータの抽出や破棄も簡単な操作で実行可能です。
必要な情報は随時素早く引出し、不要な情報は簡単に破棄できるようになるため、情報管理の適正化にも役立ちます。
また、バックアップを取っていれば自然災害や火災などが発生しても書類の破損・汚損・消失といったリスクを回避できるため、BCP対策の強化にもつながります。
電子化で費用対効果を追求する際の考え方
電子化で費用対効果を高めるには、以下2つのポイントを押さえて施策を検討することが大切です。
電子化にかかる「費用」と「効果」を明確にする
そもそも電子化に取り組むべきか否かの段階から検討する場合は、電子化にかかる「費用」と「効果」を明確にしたうえで比較しましょう。
費用や効果の中には、測定しやすいものと測定しにくいものがあります。
例えば「業務効率化による人件費削減」は数値化しやすい効果ですが、「企業風土の変化に伴うビジネスモデルの変革」や「情報管理の適正化」などは数値化が難しいです。
しかし測定のうえ数値化しやすい費用・効果だけを明確にしても、電子化のメリットが発揮される領域が限られてしまい、将来的な企業成長という観点で有効性は望めなくなってしまいます。
そのため、自社が電子化へ取り組んだ際に見込まれる費用と効果は、測定しやすい・しにくいにかかわらずすべて明確にすべきです。
活用単価を下げてコストパフォーマンスを高める
活用単価とは、電子化した書類を1回活用した際にかかる単価のことです。
「電子化したものの、電子化にかけた費用の分だけ現場で活用されることがなかった」という事態を防ぐためには、活用単価を下げてコストパフォーマンスを高める必要があります。
例えば合計5,000枚の書類すべてを1枚6円で電子化(スキャニング)した場合、30,000円の費用がかかります。
しかし1,000枚の書類はすでに情報が古くなっており、電子化しても活用されなかった場合、6,000円分の費用が無駄になってしまいます。
実際に活用された書類に基づき計算すると「30,000円÷4,000枚=7.5円」、つまり本来よりも実質的な単価が高くなりコストパフォーマンスが悪化します。
そのため、現在保有している書類のすべてを電子化するのではなく、実際に活用が見込まれる書類を厳選のうえ電子化に取り組んで活用単価を抑えることが大切です。
電子化のコストを下げるコツ
電子化の費用対効果を追求するにあたって、余計なコストの発生を抑止することは必須です。
最低限のコストで電子化を進めるコツとしては、以下の3つがあります。
電子化が不要・不可能な書類を把握する
先述したように、現状保有している書類のすべてを電子化するとなればコストが増幅するだけでなく、活用されない書類の分だけコストが無駄になってしまいます。
電子化へ取り組む際の事前準備として、電子化する書類・しない書類を分けておきましょう。
書類の中には、情報が古いため今すぐ電子化する必要がない書類、法律上電子化が認められていない契約書などもあります。
それらは対象から除外し、活用価値の高い書類・検索のスピードが求められる書類・電子化で破棄が可能な書類などを優先的に電子化しましょう。
自動読み取りが可能なシステムを導入する
書類を管理・活用できるシステムの中には、OCR機能による自動読み取りが可能な製品もあります。
スキャンのみでは書類を画像データにしか変換できませんが、自動読み取りが可能なシステムならテキストデータとして活用できるようになります。
電子化をしたあとのデータ入力作業の手間が大幅に削減されるため、さらなる人件費削減に効果的です。
OCRとは
OCR(Optical Character Recognition)とは、スキャンした紙媒体の文書に書かれた文字を自動で読み取り、テキストデータに変換できる技術のことです。
コンピューターはスキャンした書類の内容を「画像」ではなく「テキスト」として認識するため、システムへの転記作業が効率化されたり、書類の内容をキーワードにして検索できたりといった効果が得られます。
また、近年はAI技術を組み合わせたAI-OCRを搭載するシステムも登場しており、非定型的な書類や手書きで作成された書類も高い精度で読み取りが可能です。
外注費用と自社対応の費用の差に注意する
電子化の作業を外注すると、短期間かつ高品質に電子化できる代わりに依頼費用がかかります。
逆に、すべてを自社対応すれば費用は抑えられますが、時間がかかるうえに専門のスタッフでなければ品質が低くなる可能性があります。
時間的なコストの面も踏まえると、書類のボリュームや期限によっては外注の方が効率的な場合も考えられます。
ただ依頼に伴うコストだけを見るのではなく、対象書類の数・想定しているゴールまでの期間・求める品質なども加味しながら、外注か自社対応するかを検討しましょう。
電子化を外注する場合の見積もりの注意点
電子化を外注する場合、事前に費用を見積もりする必要があります。
納得できる依頼先を見つけるため、以下の点に注意しながら見積もりを確認しましょう。
費用の内訳は業者ごとに異なる
電子化の費用総額は、以下のようなポイントの影響を受けて変わります。
・書類のサイズと数量 ・書類の種類 ・モノクロかカラーか ・ホチキスやクリップ止めの有無 |
また、サービスによっては上記以外のポイントも費用に影響する場合がある他、単価やひとつの項目に含まれる費用なども異なります。
各社で前提条件が変わるため、正確に比較検討できるように、費用の内訳の詳細を提示するように求めましょう。
見積もりしたい書類のボリュームや現状を伝える
見積もりでは、電子化する書類の特徴を詳細に伝えましょう。
数やサイズだけでなく、特殊な紙を用いた図面や契約書など機密事項が記載された書類などは、一般書類と比べて費用が大きく変わることがあります。
また、書類の数を伝えるときは、「枚」と「ページ」を混同しないように注意しましょう。
両面に印字されている書類の場合は、1枚につき2ページ扱いとなるため、費用が変わります。
電子化の費用対効果は中長期的な視点による測定で高められる
電子化の費用対効果を高めるには、まず電子化へ取り組んだ場合に見込まれる「費用」と「効果」のどちらも明らかにする必要があります。
目先の効果だけでなく中長期的な取り組みにより得られる効果も測定し、余計なコストを抑えながら取り組むことで、費用対効果の向上に期待できます。
また、電子化した書類のデータを業務に活用する、「業務のデジタル化」を目的とするならば、検索機能やOCRなど便利な機能が搭載されたシステムの導入もおすすめです。