ノウハウ ワークフローの電子化で押印簿が不要に?電子化の効果やポイントを解説
投稿日:2024年10月24日
ワークフローの電子化で押印簿が不要に?電子化の効果やポイントを解説
契約書や社内に用いる申請書などを回覧する際、押印した書類を記録するリストが「押印簿」です。
押印簿は印鑑の使用履歴を管理する際に役立ちますが、押印簿の作成や保管、紙の書類と押印によるワークフローに非効率性を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、押印簿による管理を不要にすることも可能な「ワークフローの電子化」について詳しく解説します。
ワークフローにおける押印の必要性
ビジネスシーンでは、稟議書・決裁書・申請書などを特定の担当者へ回覧して承認を得る「ワークフロー」が少なからず発生します。
その際、書類の内容を承認した証として担当者が押印を行います。
押印は、担当者の名前が彫刻された印鑑を該当の書類に押すことで「誰が承認したか」を示すために必要です。
万が一書類の内容に不備が見つかった際、作成者だけでなくその内容を確認のうえ認めた担当者にも責任があります。
ワークフローにおいて押印の意義とは、誰に責任の所在があるのかを明確に示し、迅速な対応を可能とする点にあるということです。
また、会社として押印する印鑑に関しては「押印簿」や「捺印簿」というリストで管理されることもあります。
押印簿・捺印簿とは、会社として押印した書類の名前・提出先・日付・印鑑の種類などを記録するものです。
これらの情報を記録して印鑑の使用履歴を管理することで、紛失・盗難・なりすましのリスクを防ぐことができます。
紙の稟議書や押印簿の運用で生じる課題
稟議書などの書類の作成・回覧から押印までアナログな手法で行うことにより、書類の管理が煩雑化しやすくなります。
また、回覧においては承認者の不在によりフローが停滞し、決裁までの時間が長引くというケースも多いです。
フローが停滞しても進捗状況や書類の所在を把握できないため、催促すらも不可能な状態に陥ります。
また、押印簿の運用方法としては「押印簿で印象管理担当者へ申請を行ってから押印する」という流れが一般的です。
しかし、この工程においても担当者の不在で停滞するという問題があります。
また、申請者によるなりすましを防ぐため、「担当者が自身の業務を止めて押印簿の内容を確認のうえ押印する」という作業が発生するため非効率です。
ワークフローの効率化ならシステムによる電子化がおすすめ
紙の書類を用いたワークフローの非効率性を解消するなら、システムを活用したワークフローの電子化がおすすめです。
ワークフローシステムでは、稟議書や申請書などの書類の作成から、申請・回覧・承認・保管までオンラインで行えます。
さらに実印の電子化を可能とする「電子印鑑機能」が搭載されているシステムなら、ユーザーのログイン情報を元に印影が自動で作成されるため、どの担当者が承認したのかも容易に示せます。
電子化したワークフローで押印する方法
ワークフローを電子化する場合、紙の書類に印鑑を押すという工程の代わりに電子印鑑を用いる必要があります。
電子印鑑とは文字通り印鑑を電子データに変換したもので、実印の印影を画像化して書類のデータに貼り付けて使います。
ただし、この方法で作成した電子印鑑は複製や偽造が可能なため、法的効力を持ちません。
そのため、使用に適したシーンは社内で完結するワークフローに限られます。
契約書など、社外でやり取りする書類の押印を電子化したい場合は、先述した電子印鑑機能を備えているワークフローシステムを選びましょう。
電子印鑑機能なら実印の画像変換が不要なため手間を省けることに加え、システムが自動で押印に関する情報を記録・表示するため、不正押印や代理押印の防止につながります。
ワークフローシステムで電子化するメリット
システムによるワークフローの電子化には、押印の管理以外にも様々なメリットがあります。
ここでは、ワークフローシステムを活用することによる主なメリットを5つご紹介します。
書類の承認フローを効率化できる
ワークフローシステム最大のメリットは、申請・承認のフローを効率化できることです。
具体的な機能はシステムによって変わりますが、基本的にはシステム上で書類作成が可能なため、紙に印刷する必要がありません。
また、申請・承認の種類ごとに回覧のフローを設定できるため、承認先を探さなくても簡単に書類のデータを回覧することが可能です。
書類作成のフォーマットも登録できる場合がほとんどなので、簡単に不備のない書類を作成できるうえに、内容を全社で統一できて管理も容易になります。
迅速な決裁が可能になる
複数の承認者がいる場合、各承認者の都合によって決裁までのスピードが落ちることも珍しくありません。
ビジネスにおいて決裁までのスピードは重要であり、承認の遅れが顧客獲得の機会を招く可能性も考えられます。
ワークフローシステムならオンラインで承認することができ、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど複数のデバイスに対応しています。
どこにいても簡単な操作で承認できるため、外出やテレワークなどで承認者が社内にいなくても短時間の決裁が可能になります。
承認者にとっても、「テレワークをするはずが承認のためだけに出社することになった」という事態を避けられるため、嬉しいポイントです。
承認の進捗が可視化される
紙の書類で回覧・承認フローを進める場合、「進捗状況が不透明」という課題に直面するケースがほとんどです。
ワークフローシステムなら、どこまで承認が進んでいるのかがシステム上に自動で表示されます。
リアルタイムで最新の進捗状況を確認できるため、承認が止まっていたり承認の抜け漏れにいち早く気づくことが可能です。
承認が抜けている担当者に対し、システム上で状況を確認し、個別に催促できるため、決裁までのスピードが大幅に落ちる心配もありません。
なお、ワークフローシステムでは、申請や承認の種類ごとに承認ルートを設定できます。
自動的に設定したルートで申請されるため、規定外の申請・承認による不正も防止できます。
ただ承認フローを迅速化するだけでなく、承認フローの「見える化」につながるという点もワークフローシステムのメリットです。
テレワークに対応できる
クラウド型のワークフローシステムなら、インターネット環境さえあればログインのうえ申請や承認の操作が可能です。
先述したように、場所や使用端末を問わず使用できるため、テレワークにも対応できます。
すでにテレワーク中の担当者も、押印のために出社する手間を省けます。
万が一災害などで出社が困難な状況に陥っても遠隔での業務で事業を迅速に再開できることから、ワークフローシステムの導入はBCP対策としても有効です。
紙ベースの運用に伴うコストやリスクの削減
ワークフローシステムを導入すれば、書類作成から承認記録の管理までシステム上で行えます。
そのためペーパーレス化が進み、書類作成に伴う金銭的・人的コストの削減につながります。
また、書類データは検索機能により即時探し出し、確認することが可能です。
膨大な書類の保管のためにスペースを取らず、紛失や破損のリスクも避けられます。
ワークフローシステムで電子化するデメリット
ワークフローシステムは様々なメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあることに留意しておきましょう。
新たなオペレーションの周知に負担がかかる
従来は紙の書類を用いていた承認フローや押印の管理を電子化するとなれば、少なからず業務プロセスの変更点が生じます。
そのため、いきなりシステムを導入して電子化を始めようとすれば現場の混乱は避けられません。
また、長らく続けていた業務プロセスに慣れているため、変更に対して反発する従業員が出てくる可能性もあります。
システムの導入にコストがかかる
ワークフローシステムで電子化すれば紙の書類の作成・保管のコスト(ランニングコスト)を削減できますが、ある程度の初期投資は必要になります。
具体的な出費としては、システムや新しい機器などの導入費用などです。
特に、自社で構築から保守・運用まで行う「オンプレミス型」のシステムを導入するとなれば初期費用は高くなります。
初期費用を抑えるなら、比較的低コストで導入できる「クラウド型」のシステムを選ぶと良いでしょう。
クラウド型のワークフローシステムの多くは月額制のためランニングコストがかかりますが、システムの管理は提供事業者が行うため、運用・保守費用も抑えられます。
操作性や既存システムとの互換性で現場に浸透しない場合がある
便利なワークフローシステムを導入しても、現場に浸透せず活用されないままとなるケースも珍しくありません。
その主な原因としては、「操作性の悪さ」や「既存システムとの連携が不可能」などの点が挙げられます。
特に、長らく紙ベースでの運用を続けていた現場の場合はデジタルツールへの抵抗感が大きいことに加え、操作を覚えるまでに苦戦する可能性があります。
また、人事システムや会計システムなど、既存のシステムと連携できないワークフローの場合、各システムの情報をワークフローシステムに手作業で入力しなければなりません。
結果として、ワークフローシステムの導入前よりも業務効率が低下する恐れがあります。
ワークフローシステムによる電子化を進める際のポイント
ワークフローシステムのデメリットを避け、効果的に承認フローを効率化させるなら以下のポイントを押さえながら導入を進めましょう。
電子化を前提とした業務プロセスを設計する
従来の業務プロセスにそのままワークフローシステムを当てはめても、現場の混乱を招くばかりか活用されないといった事態になりかねません。
まずはワークフローの電子化を前提として、新しい業務プロセスを設計しましょう。
具体的には、承認フローを含む業務プロセスの全体を明確にします。
その中で浮き彫りになった問題点を改善するためにどのようなシステムを選ぶか、コンプライアンス強化のために承認者を増やすべきかなどを検討しましょう。
また、システムの導入後も承認フローの変更が必要になる可能性があります。
適宜フローの見直しやフォーマットの変更などに対応できるように、システム運用の担当者を決めておくことをおすすめします。
いきなりすべての書類を電子化しようとしない
業務で扱う書類の種類が多い場合、そのすべてを電子化しようとすると、運用開始までに多くの時間とコストを消費します。
既存業務のプロセスを見直す中で特定した問題点に基づき、特に重要性が高い書類の電子化から進めていきましょう。
書類ごとの重要性はどの企業も一定ではありませんが、一般的には業務で使用頻度の高い書類・重要な情報を含む書類・法的規制に関わる書類などは優先的に電子化すべきです。
電子化の優先順位を定めて段階的に進めると、余計な時間やコストを費やさずスムーズに業務効率化を達成できます。
自社の環境に合ったシステムを選ぶ
ワークフローシステムのメリットは、現場が使いこなしてこそ発揮されるものです。
そのためにも、自社の環境に適したシステム選びが重要といえます。
自社に合ったワークフローシステムを選ぶにあたって注目したいポイントは、以下の通りです。
・業務に適した機能が備わっているか ・誰でも簡単に操作できるか ・外部連携は可能か |
一口にワークフローシステムといっても、どんな機能が備わっているかは製品ごとに異なります。
例えば従業員の外出が多い営業部門ではマルチデバイス対応のシステムにする、様々な申請が発生する総務部門では申請書のテンプレートが豊富なシステムにする…といったように選びましょう。
また、システムの使い方を正しく理解し、その機能性を実務に活かすための「ITリテラシー」は従業員ごとに差があります。
パソコン操作に慣れていない従業員でもすぐに使い方を習得できる、操作性の良いシステムを選ぶと現場になじみやすくなります。
ワークフローシステムの業務効率化という効果を高めるためにも、既存のシステムとの連携が可能かどうかも確認が必要です。
システムの活用で押印を伴う承認フローや文書管理の負担を軽減しよう
ワークフローシステムで書類作成・承認・押印・書類管理を電子化すれば、業務効率化やコスト削減、リモートワーク対応などのメリットが得られます。
また、システム上で承認フローや承認した担当者が記録されるため、監視体制・内部統制の教科にも効果的です。
その一方で、システムが現場になじまない、初期費用がかかるなどのデメリットは懸念点といえます。
自社の業務プロセスを改めて見直したうえで、機能性・操作性・互換性・費用対効果など複数の観点で自社の環境に合うシステムを選びましょう。