ノウハウ DXを進めるならロードマップが必要!作り方を徹底解説
投稿日:2024年10月24日
DXを進めるならロードマップが必要!作り方を徹底解説
DX推進を成功に導くには、ただシステムを導入するだけでなく「何をゴールとしてどのように進むか」を示すロードマップの作成が必須です。
今回はDX推進におけるロードマップの必要性や作り方、作成に役立つフレームワークなどについて詳しく解説します。
「そもそもDX推進は何から手をつけるべきなのか」とお悩みの方にも有用な内容なので、ぜひ最後までご覧ください。
DXの基本的な進め方
企業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて業務フローの改善・新しいビジネスモデルの改革をもたらす取り組みを指します。
業種や会社の規模にかかわらず、目まぐるしく変化する時代に適応して競争優位性を保つためにもDX推進は必要な取り組みです。
DXの進め方は企業によって変わりますが、基本的には以下のような流れで行います。
1 現状の把握と課題の洗い出し 2 現状や課題に合わせてDXのゴールや目標を設定する 3 ゴールや目標に到達するためのロードマップを作成する 4 DX人材の確保やDX推進に向けた環境構築に取り組む 5 デジタル技術で業務改善を実施する 6 定期的な効果測定・施策の改善と実行を繰り返す |
DX推進はただ便利なシステムを取り入れて終わりではありません。
事前の入念な準備と実行後の継続的な改善も含めて、長期的な取り組みとなることを念頭に置きましょう。
DX推進における計画・ロードマップの必要性
DX推進では、「ゴールや目標を定めたうえで計画を立て、ロードマップを作成する」という段階が欠かせません。
この段階を通じて自社にとって理想的な姿が明確になれば、効率的にDXを推進するための道のりを見つけやすくなるからです。
また、適切なロードマップを作成すれば一部の部門や担当者にタスクが偏ることを防げるだけでなく、必要なタスクを効率的に解消するための方法も見つけやすくなります。
つまり計画とロードマップ作成は、DX推進の効率と実現可能性の向上につながるということです。
DXロードマップの作り方
ロードマップを作るにあたって、DX推進に必要な工程を大まかに示すことを意識しましょう。
細かくスケジュールやタスクを表示すると複雑化し、DX推進の全体像がつかみにくくなります。
ロードマップにおいて特に重要なポイントが、「視覚的にDX推進に必要なステップを把握できること」です。
文字だけでなく図や表なども取り入れて、視覚的な情報として機能するようなデザインに仕上げましょう。
では、具体的にどのような手順でロードマップを作成すれば良いのでしょうか。
ロードマップ作成の基本的な手順を、以下より解説します。
DXの目的・目標を設定する
ロードマップを作成する前に、DX推進の目的や目標を設定しましょう。
自社は何を目指し、そのためにどんなデジタル技術を活用するかといったポイントを決めていきます。
いわゆる「ビジョン」を明確にすれば、後でタスクやスケジュールをスムーズに設定できるようになります。
なお、DX推進は全社規模で取り組むものです。
従業員経営層だけでなく、各部門の意見も積極的に取り入れながら調整していきましょう。
現状分析と課題を特定する
ビジョンの明確化と同時に、自社が抱えている課題の特定も必要です。
社内アンケートで業務の課題点をヒアリングする、競合がどのように・どの程度DXを推進しているのかリサーチするといった、現状分析を行いましょう。
社内アンケートの実施は、現状の業務に潜む課題点を洗い出して業務改善につなげるために必要です。
競合のリサーチは、DX推進の成功までの道のりを見いだすための参考となるだけでなく、自社にしかない強みが明確となり他社との差別化を図る施策を立案しやすくなります。
DXに向けた戦略を策定する
明確化したビジョンや自社の現状・課題を踏まえて、どのようにデジタル技術を活用するのかを決めましょう。
具体的には、手作業・紙ベースで行っていた業務をシステムで電子化する、レガシーシステムを特定するといった観点で決めていきます。
ただし、一度に広範囲でデジタル技術の導入を進めると、その分現場の混乱も大きくなりがちです。
優先的に取り組むべき範囲を定め、スモールスタートで進めていきましょう。
実行計画を策定する
デジタル技術の活用方法を定めたら、実行計画の全体像を固める段階に入ります。
先述したように、DX推進は長期的な計画となる場合がほとんどです。
長期的な計画では、重要な節目に沿って細かい目標(マイルストーン)を設定すると良いでしょう。
マイルストーンを設定すれば、作業進捗をひと目で把握できる他、目標達成までのモチベーションを維持することにもつながります。
設定したマイルストーンとDX推進の目標に必要な工程を時系列に沿って並べ、実行計画の策定を進めていきましょう。
また、実行計画を策定しながら、DX推進の過程で発生しうるリスク・問題点も洗い出します。
人員や予算など複数の観点からリスクを洗い出し、解決策を検討することでよりスムーズにDX推進へ取り組みやすくなります。
ここまでが、DX推進におけるロードマップ作成に必要なステップです。
以降は、作成したロードマップに沿って実際にDX推進へ取り組む段階となります。
DX推進体制を構築する
ロードマップをもとに、DXを推進しやすい環境を整えます。
DXの推進体制を整える方法としては、以下の3通りが挙げられます。
・DX推進チームを設置する
・既存の情報システム部門が主体となって計画を進める
・各部門がDX推進に向けて計画を実行する
上記のうち、最も多いケースがDX推進チームの設置です。
経営層の直下でDX推進に向けて動く専門部署を立ち上げれば、経営層が定めたビジョンに向けてスムーズに計画を実行しやすくなります。
ただし、他の部署から納得を得て全社で一丸となって取り組むため、各部署との連携も重視する必要があります。
社内文化の変革とスキル育成を実行する
DX推進には、DXへの理解を深めて前向きに取り組む社内文化への変革も必要です。
従業員一人一人が、ただデジタル技術を理解するだけでなく、デジタル技術が組織やビジネスに変革をもたらすことの理解と活用する能力を身につけることが大切です。
そのためにもDXに特化した講座・研修を活用したり、DXリテラシーの高い人材によるナレッジシェアリングを行ったりして、全社規模で知識を深めていきましょう。
進捗管理と効果測定を行う
DX推進にあたって、多くの部署や人が絡むほど進捗管理が難しくなり、社内で足並みをそろえて進められているかどうかが把握しにくくなります。
その対策として、プロジェクト管理ツールを活用した進捗管理がおすすめです。
タスク管理・共有が可能な範囲やメンバー間でのコミュニケーションの取りやすさなどに注目し、活用するツールを選びましょう。
ツールをうまく活用しながら、当初設定したスケジュール通りに進行しているかを確認します。
その際、ロードマップの作成時に設定したKPIもここで活きます。
それぞれの段階で設定された目標の数値と実際の数値を比べて、到達度を算出することでDX推進プロジェクトの効果を数字として可視化することができます。
DXを次のステップへ進展させる
DXは計画した施策を実行して終わりではなく、プロジェクトを進める中で見えた問題点や社会情勢の変化などに合わせて施策に改善を加える必要があります。
効果をもとに施策の改善の必要性を見直す機会を定期的に設けて、PDCAサイクルを回していきましょう。
DXロードマップ作成時のポイント
ロードマップを作成する手順だけでなく、適切な形に書き出すためのコツも理解しておきましょう。
以下より、DXロードマップを作成する際に役立つ3つのコツを解説します。
経済産業省「DXレポート2」を参考にする
「DXレポート2」とは2022年7月に経済産業省が公表した資料で、デジタル産業の変革に向けた具体的な方向性・アクションについて記されています。
DXレポート2で注目すべきは、DX推進のために取り組むべきアクションの例を、超短期・短期・中長期と3つの時間軸に分けて示している点です。
各分類に含まれているアクションは、以下の通りです。
アクションの分類 | アクションの例 |
超短期(直ちに取り組むべき) | ・業務環境のオンライン化 ・業務プロセスのデジタル化 ・従業員の安全・健康管理のデジタル化 ・顧客接点のデジタル化 |
短期 | ・DX推進体制の整備 ・DX戦略の策定 ・DX推進状況の把握 |
中長期 | ・デジタルプラットフォームの形成 ・産業変革のさらなる加速 ・DX人材の確保 |
上記に沿ったロードマップでは、すぐにデジタル化・オンライン化が可能なものから実行し、DX推進の体制を盤石にしたうえで、より大規模な変革をもたらすための取り組みを進めるといった時系列になります。
自社の現状とも照らし合わせながら、適切なロードマップを作成しましょう。
デジタルガバナンス・コードを参考にする
「デジタルガバナンス・コード」も経済産業省が公表した資料です。
デジタル技術による社会変革を踏まえて、いかに経営ビジョンを策定・公表するかという、経営者に求められる対応がまとめられています。
デジタルガバナンス・コードは、大きく分けて以下4つの柱で構成されています。
柱 | 概要 |
ビジョン・ビジネスモデル | デジタル技術による社会および競争環境の変化が、自社にもたらす影響を踏まえ、経営ビジョンの策定やビジネスモデルの設計を行って示すこと |
戦略 | ・設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用する戦略を公表すること ・デジタル技術を活用する戦略に必要な体制を構築すること |
成果と成果指標 | デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標を定めて公表すること |
ガバナンスシステム | ・デジタル技術を活用する戦略の実施に関して、経営者自らが対外的にメッセージを発信すること ・経営者のリーダーシップのもと、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題の把握を行うこと ・戦略の実施の前提となるサイバーセキュリティ対策を推進していること |
上記に沿って考えれば、自ずと策定すべきDX戦略が見えてきます。
また、デジタルガバナンス・コードに対応する企業として国に申請すれば、デジタル変革が可能な企業「DX-Ready」であることを認定してもらえます。
フレームワークを活用する
ロードマップを作成するにあたって、フレームワークを活用すると作業がスムーズに進みます。
DX推進のロードマップに役立つフレームワークの例としては、以下の4つが挙げられます。
3C分析
3C分析は、以下3つの「C」で構成された分析方法です。
・Customer(顧客) ・Company(自社) ・Competitor(競合) |
顧客の心理や行動に対する自社と他社の戦略を比較して、自社の強みや課題点を理解します。
SWOT分析
SWOT分析は、以下4つのポイントを軸に、内部環境・外部環境における自社の強みと弱みを分析する手法です。
・Strength(強み) ・Weakness(弱み) ・Opportunity(機会) ・Threat(脅威) |
上記のうち、S・Wが自社や自社製品・サービスに影響を与える内部環境の要素、O・Tが自社や自社製品・サービスに影響を与える外部環境の要素を指します。
PEST分析
PEST分析は、以下4つの外部環境を分析する際の手法です。
・Politics(政治) ・Economics(経済) ・Society(社会) ・Technology(技術) |
自社を取り巻くこれらの外部環境が現在または将来どのような影響を与えるのかを把握・予測し、時代に合った戦略を策定します。
VC分析
VC分析は「バリューチェーン(Value Chain)分析」の略で、原材料の調達から商品・サービスが顧客へ届くまでの活動の連鎖を可視化・分析するフレームワークです。
工程を主活動・支援活動に分けて可視化し、どの工程で付加価値を出しているのかを把握できます。
これにより、自社の強みや弱みを簡単に把握することが可能です。
DXはロードマップをもとに目標達成を積み重ねることが重要
DXを効率的に進めて成功へ導くにあたって、事前の計画とロードマップ作成という段階は必要不可欠です。
DX推進におけるロードマップは、DXを進める目標・ゴールに沿って、その達成に必要な戦略や実行計画を策定し、視覚的な情報として作成します。
長期的な取り組みになるため、マイルストーンを設定して小さな目標の達成を積み重ねることをおすすめします。
まずはシステムを活用した書類のデータ化・業務プロセスのデジタル化など、小さなことから取り組んでいきましょう。