ノウハウ BCPとは?進める手順・注意点と緊急時の対応方法
投稿日:2024年10月17日
BCPとは?進める手順・注意点と緊急時の対応方法
BCP(事業継続計画)は、緊急時に企業が素早く事業を再開し、継続するための計画であり、リスク管理の一環として欠かせないものです。自然災害やサイバー攻撃などの突発的な事態に備え、適切な行動を取ることができるように、事前に計画を立てておくことが必要です。
BCPは、緊急時に対応するためだけでなく、平時においても企業のリスク意識を高め、業務プロセスの改善に役立つ計画でもあります。有事に備えた準備を進めることで、日常的な業務効率の向上にもつながります。
では、BCPをどのように作成すれば良いのでしょうか。本記事では、BCP策定時の注意点や計画作成のステップを詳しく解説し、緊急時の対応方法を具体的にイメージできるようにサポートします。特に災害発生時などの緊急対応について、具体例を挙げながら解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
BCPとは
BCPとは、Business Continuity Planningの頭文字をとった言葉で、「事業継続計画」と訳します。
自然災害、テロ、システム障害といった緊急事態が発生した際、すぐに事業を復旧して継続できるための備えのことです。
BCP策定の目的
緊急時に迅速な対応を行う他、経営戦略に活かしたり企業価値を守るためにも、BCPは役立ちます。
緊急時に迅速な対応をするため
緊急時の備えはBCPの大きな目的です。
緊急時にやるべきことが分かると、判断に迷ったり誤った行動をとったりを避けられます。すなわち事業の縮小や廃業のリスクを小さくすることにつながります。
事業の復旧までが早いほど、損失は最小限にとどまります。内容が明確で、すぐに行動に移せる計画が重要です。しかし、計画があっても、従業員が存在を知らないと実行に移せず、損失を増やすことが懸念されます。緊急時の計画の存在を周知することも求められます。
経営戦略に活かすため
緊急時において事業の早期復旧を目指すためには、優先して復旧すべき業務の重要度を明確にすることが重要です。この優先順位がはっきりしていないと、的確なBCP(事業継続計画)を策定するのが難しくなります。
そのためには、まず業務棚卸を行い、全体の業務を整理し、どの業務が重要か、またどの業務が復旧を急ぐべきかを明確にする必要があります。この作業を通じて、緊急時に限らず、企業にとって今後の成長や存続に重要な業務が浮かび上がってきます。また、効率化や自動化が必要な業務も見えてくるため、経営戦略を立てる際にも大いに役立ちます。
企業価値を守るため
災害時などの不測の事態においても、適切な対応ができる企業は、取引先や消費者から高い信頼を得ることができます。緊急時にもしっかりと事業を継続できる企業は、取引先に対して「信用できるパートナー」として選ばれやすく、取引関係の維持・拡大につながるでしょう。
また、消費者に対しても安心感を与え、信頼される企業として支持されることが期待されます。信頼を築くことで、危機を乗り越えた後も継続的なビジネスの発展に寄与するでしょう。
BCP対策の手順
- BCP策定の目的設定
- リスクの評価と影響分析
- リスクの洗い出しと優先順位付け
BCP策定の目的設定
企業の目標などをいま一度振り返り、何を守るべきか明らかにします。例えば従業員や顧客の安全、組織の信頼などです。
企業によってリソースなどの状況は異なります。そのため、同程度の緊急事態でも企業に与える影響は異なります。
他社の計画をそのまま取り入れても、自社では意味をなさないかもしれません。そこで、自社でBCPを策定する目的が重要になります。
リスクの評価と影響分析
自然災害やシステム障害、サイバー攻撃など、事業活動の継続を脅かすリスクが発生した時の影響の大きさを評価します。
リスク発生時に業務プロセスのどの過程が大きく影響を受け、事業の停止といった影響・損失を数値を用いてシミュレーションします。
リスクの洗い出しと優先順位付け
考えられるリスクを全てピックアップし、リスト化します。リスクが及ぼすだろう被害も具体的に併記します。例えば自然災害が発生したら原材料の入荷が十分にできず、遅延や生産量の削減を余儀なくされる、などのようにまとめます。
緊急時はリスクに対処するためのリソースが少ない状態です。全てのリスクに対処するのは容易ではないでしょう。
そこで、リスクに優先順位を付けて、優先度の高いものに限定して計画を立てることが求められます。
リスクが生じた際の影響の大きさに加え、起こる頻度も優先度を考える際のポイントになります。
重要度に応じた事業の順位付けも必要です。
売上が大きい、遅延や停止による損失が大きいといった重要な事業は、復旧を優先すべきと考えられます。
災害発生時におけるBCPの具体的な対応方法
被害状況を迅速に把握し、代替手段も含めた対応を行います。
そして、徐々に平常業務を復旧させます。
被害状況の確認と迅速な把握
従業員の安否やシステム・設備・建物の被害の有無などを確認します。
従業員の安否確認は最優先事項です。そこで、安否確認サービスの活用がおすすめです。
従業員が自身の状況を登録するだけで自動で配信されます。スマートフォンと連動して避難指示を出すことも可能です。
システムなどの状況確認は、現場からの報告や監視システムなどが有効です。緊急時にどのように情報共有するのかはあらかじめ決めておきましょう。
緊急対応と代替手段の活用
緊急時は、平常時とは異なる環境下で事業継続を図らなければなりません。従業員が出勤できないなどリソースが十分でないことは大いに想定されるため、事業の継続に必要なシステムなどを事前に把握し、緊急時の代替手段を考えます。
ただし、火災などが発生している時は、被害拡大を防ぐための対応を優先します。
仮のオフィスに移転して業務再開をするというのも代替手段のひとつですが、電子化可能な業務についてはリモートワークを導入しておくと、オフィスに出社せずにスピーディーな事業再開を実現しやすいです。
平常業務への復旧手順
BCPに従い、段階的に平常業務に復旧します。はじめに優先度の高い業務から再開し、徐々にその他の業務も再開させます。
ハードウェアやサーバー、ネットワーク環境などが回復したら、平常業務への復旧が近いです。緊急事態が原因でシステムにも影響が及んでいたら、バックアップなどを用いて平常時の稼働に戻す作業が必要です。普段からシステムの設計・設定を正確に把握し、システムのバックアップやデータ保護も必要になります。
従業員の安全が確保されたら、事業再開・継続に向けて協力してもらいます。状況によってはリモートワークをメインとすることも検討します。
BCP策定時の注意点
一度で完璧な計画を立てることは難しいです。
運用まで考慮した対策を立て、立案と改善を繰り返しながら策定することもポイントです。
一度で完璧な計画を立てられると思わないこと
自然災害などはいつ・どのようなものが起こるか分かりません。そのため、全てのリスクを洗い出して詳細に対処法を考えるのは難しいです。
完璧な計画を立てることに注力して、内容が定まらない事態を避けなければなりません。
一方、あまりに簡易的な計画だと、有事の際の行動が分からず対応できない可能性があります。計画が役立つものになるよう、自社で対応できる内容であることを心がけましょう。優先度の高いものなど、少しずつ始めることもおすすめです。
BCM、BCMSをセットで考える
計画倒れとならないよう、運用と改善まで考慮した対策が求められます。
BCPと共に考えたいのが「BCM」と「BCMS」です。
BCMとはBusiness Continuity Managemantの略で「事業継続マネジメント」という意味です。BCPを継続的に運用し、従業員を教育・訓練する管理体制を表します。
BCMSとはBusiness Continuity Management Systemの略で「事業継続マネジメントシステム」を意味します。BCMを効果的に運用できるよう、維持・改善するための仕組みです。
策定後は点検・見直しを繰り返す
例えば新型コロナの感染拡大など、リスクはその都度変わります。新型コロナをきっかけにリモートワークを導入したなど、企業の環境も変化しているはずです。
既存のBCPで最新のリスクに対応できるか、今の組織の状況で最適な対処方法は何かなどを分析し、必要があれば内容の変更が求められます。
訓練についても計画に盛り込むと、訓練を通じて見えた不備を訂正した内容を反映することもできます。
まとめ
BCPの策定は一度で完了するものではなく、継続的な見直しや改善が求められます。緊急時に機能する計画を作るためには、BCP策定の目的を明らかにした上で、優先度の高いリスクに対処できるものにし、状況の変化に応じて変更を加えることが重要です。