ノウハウ 日本企業のDX推進の課題6選。問題点を解決する方法とは
投稿日:2024年10月17日
日本企業のDX推進の課題6選。問題点を解決する方法とは
日本企業でよくあるDX推進の課題として、人材不足や予算確保の困難さ、組織体制・文化などが挙げられます。問題点を解決するには、具体的な方法と共に失敗しないためのポイントも押さえることが重要です。
本記事ではDX推進にあたっての課題と解決手段とあわせて、進め方の手順を紹介しています。
DXの基本概念とその目的
経済産業省のまとめた文書「デジタルガバナンス・コード」でDXは以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて
DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的には、業務効率化、競争力の強化、そして新たなビジネスモデルやサービスの創出が含まれます。これらの目的を達成するために、デジタルツールの活用が重要な役割を果たします。
まず、デジタルツールを導入することで、業務効率化が実現します。業務の自動化によって、これまで人間が行っていた作業をツールに任せることで、ヒューマンエラーを大幅に減少させることができます。また、ツールが反復的な業務を代行するため、社員はより重要な業務に集中できるようになり、その結果、仕事の質も向上します。デジタル技術は、業務プロセスのスピードと精度を同時に向上させるため、業務全体のパフォーマンスを底上げします。
デジタル化が進むと、スピード感が競争力を左右する要素としてますます重要になります。他社よりも早く市場に新しい製品やサービスを提供することが、競争優位性を確保する上で重要です。デジタルツールによる業務の効率化は、このスピード感を支え、変化の激しい市場環境でも柔軟かつ素早く対応できる企業となることができます。
また、データの活用により、企業は需要が高く供給が少ない分野や、自社の強みをより明確に把握できるようになります。デジタルツールの活用で得られる市場データや顧客データをもとに、企業は新たな製品やサービスを開発する機会を見出し、それが新たなビジネスモデルの創出につながります。このような取り組みによって、自社が市場に変化をもたらすリーダーとなることが期待されます。
DXは単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を駆使して業務効率化を実現し、競争力を高め、新たな価値を創出することを目指す変革プロセスとされています。
日本企業が直面するDX推進の課題
DX人材やITリテラシーが不足している傾向にあるのが、日本企業のDX化を遅れさせる要因のひとつです。DXの重要性を理解していないために、DX推進のための施策に予算をかけられず、思うように進められないという事情もあります。
DX人材の不足
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)公表の「DX動向2024」によると、DXに取り組む予定はない、取り組むか未定と答えた企業のうち、「DX推進を引っ張る人材不足」を理由として挙げる企業が多いことが分かります。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p9
DX推進にはIT技術に関する知識だけではなく、DX化に向けた戦略を立てたり現場のDX化をまとめたりと、IT以外の知識・スキルも求められます。
複数の分野で高いスキルや豊富な知識を持つ人材は限られ、人材確保もひと苦労です。そのため、外部の人材や企業にDX推進に必要なスキルを委託するケースは少なくありません。
しかし、自社で人材育成しないと、DX推進に必要な知識・スキルを持つ人材を育成するノウハウが蓄積されません。求める人材を育成するまでの計画や施策が分からず、社内の人材育成が進まないという悪循環に陥ることも懸念されています。
ITリテラシーの不足
ITリテラシーとはITや情報の適切な活用に必要な知識やスキルを指します。
多くの日本企業では、紙の契約書を使用するなどアナログ作業が今も多く見受けられます。業務フローを見返すと、アナログな作業が数多く残っていることがあるでしょう。このような環境では、古いシステムがそのまま放置され、新しいツールの導入を躊躇するケースも少なくありません。
アナログ作業に慣れているため、ITツールに対する苦手意識が根強く、新しいシステムに移行しても、従業員が使いこなせるまでに時間がかかることが多いです。また、ITに関する知識やデジタル化のメリットが社内で共有されていない場合や、ITに関する人材育成が十分に行われていないことも、従業員のITリテラシーが低い要因となります。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、経営層などのリーダー層がそのメリットを十分に理解していないと、DX化に向けた戦略を立てることが難しく、全社的なデジタル変革が進まないケースも見られます。企業が競争力を強化し、効率化を図るためには、ITリテラシーの向上と、全社的なデジタル化の取り組みが不可欠です。
セキュリティへの懸念
DXはツールによって蓄積されたデータの利活用が求められる段階です。
こうしたデータの効果的な活用のためには、ツールの利用が不可欠であり、特にクラウドサービスの導入が多く見られます。クラウドサービスはインターネットを介して利用するため、場所を問わず作業が進められ、業務効率の向上が期待できます。
しかし、クラウドサービスの利用に伴い、不正アクセスや情報漏えいなどのセキュリティリスクが懸念されます。多くのクラウドサービスは高いセキュリティレベルを備えていますが、問題はその選定を行う従業員のITリテラシーにあります。もし選定を任された従業員が十分な知識や経験を持っていなかったり、または予算の制約で必要なセキュリティ対策が施されたツールを選べない場合、適切なツールの導入が難しくなることが予想されます。
その結果、情報漏えいによる企業の信頼喪失を恐れるあまり、DXに不可欠なツールの導入自体が見送られることも考えられます。こうした事態を避けるためには、従業員のITリテラシー向上と適切な予算の確保が不可欠です。セキュリティと利便性を兼ね備えたクラウドツールの導入は、DX推進の重要な要素として慎重に進める必要があります。
組織体制や文化の問題
DX推進において、IT部門とその他の部門では異なる問題が浮かび上がります。IT部門は、ITリテラシーの高い方が集まっており、そのためDX推進をリードする役割を担うことが多いです。この部門には、システム選定やデジタルツールの導入、さらには市場動向や他社事例の調査といった新たなタスクが求められます。そのようなタスクを処理することのできる組織体制が必要とされます。
DXのメリットや目的を十分に理解していない場合、DX推進に伴う変化に対して抵抗感が生じる可能性があります。これにより、協力を得られにくくなり、全社的なDXの推進に障害が生まれることがあります。
DXは、単なるツールの導入だけではなく、企業全体の変革を目指す取り組みです。そのため、部署を超えたコミュニケーションの活性化が非常に重要です。もし組織内の連携がスムーズに行われなければ、情報共有が滞り、DX移行のスピードが大幅に遅れるリスクがあります。組織全体で協力して進める姿勢が求められ、各部門の役割と目的を共有し、スムーズに連携することがDX成功の鍵となります。
経営戦略の明確化不足
DXで何を実現したいか明らかにされていないと、推進に向けた計画立案を進めにくいです。従業員がDXに向けてできることややるべきことが分からず、前向きな取り組みを難しくします。
必要なツールが見えてこない、業務フローの変更が必要か否か分からないなども、推進を遅らせます。
DXの予算確保と投資
既存のシステムの保守運用にコストがかかっていると、新しいシステムの導入や人材育成・確保に予算をかけられず、DX推進がスムーズに進みません。
経営層がDXの重要性を理解していないことも、予算の分配を不利にする要因です。ただしDX動向2024を見ると、継続的な予算確保状況は向上しているようです。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p10
DX推進の課題が「予算」と回答した企業の場合、可能な範囲で電子化・デジタル化に取り組み、成果が出れば、予算配分の見直しなどでDX推進の予算確保に努めて継続していきたい企業は多いのではないでしょうか。
具体的なDX推進手順
- 経営層のビジョンと目的の明示
- 目的の周知
- 現状把握と課題の抽出
- 専門チームの設置と環境づくり
- 社内体制の整備
- 情報資産の分析と戦略的なシステム刷新
- PDCAサイクルの実施
経営層のビジョンと目的の明示
DX推進の成功において、目的を明確にすることは非常に重要です。目的が具体的であれば、それに基づいたアクションプランややるべきことが見えてきます。目的の設定が曖昧であると、計画自体がぼやけ、進行が遅れるだけでなく、社内の協力も得にくくなります。
DXを進める中では、単にデジタルツールを導入するだけでなく、社内制度や業務フローの変更が必要となることもあります。例えば、業務のデジタル化やプロセスの自動化によって、これまでのルールや役割が変わる可能性があります。そのため、DXを推進するにあたり、経営陣が何を目指しているのか、どのような変革を期待しているのかを把握し、戦略に組み込むことが重要です。
経営層がDXの目的やメリットを認識し、リーダーシップを発揮することによって、組織全体が同じ方向を向き、変革がスムーズに進みやすくなります。経営陣が率先して変革を支持し、推進することで、従業員も安心して新しいツールや制度に適応でき、組織全体の一体感が生まれます。
目的の周知
経営層を含めたDXを推進チームと従業員で目的が共有されていることで、同じゴールに向かって変革を進められます。関わる全員にDXを進める目的を周知することが大切です。
DX推進のメリットも分かると、より前向きに取り組めるはずです。メリットもあわせて説明しましょう。
現状把握と課題の抽出
DXの目的を妨げるだろう現状と課題を洗い出します。例えば紙の書類を多く扱うために管理や業務の効率が悪いなどです。
DX化で業務フローの変更はもちろん、システムの入れ替えが必要となることもあります。課題やシステムの要望について現場の従業員へのヒアリングも欠かせません。
専門チームの設置と環境づくり
DXは通常業務と並行して進めるため、後回しにならないよう、DXを先導するチームの存在が必要です。
チームにはITに詳しい人材やリーダーシップを発揮できる人材の他、データ活用が得意な人材など、IT部門以外の人材もメンバーにすることが推奨されます。
DXは順調に進むことばかりではありません。上手くいかない時、失敗を恐れるのではなく、今後に活かすことが大事と考えられる環境づくりが求められます。
社内体制の整備
DX推進に伴い、新しいツールやシステムの導入が必要となるケースは多々あります。この際、従業員が新しいシステムに早期に慣れることがDXの成功には欠かせません。そのため、適切な研修やITリテラシーの向上を目指した教育機会の提供が重要になります。
まず、従業員全体が基本的なITスキルを習得することが出発点となります。新しいツールの使い方やシステムの基本的な操作方法を学べる社内研修の実施は有効です。段階的なトレーニングを行うことで、システムをよりスムーズに運用できるようになります。また、従業員のITリテラシー向上が進めば、ツール導入に対する抵抗感や不安を軽減することができ、より積極的に新しい技術を活用できる環境が整います。
必要に応じて、外部のセミナーや講座を活用することも有効です。外部の専門家によるセミナーでは、最新の技術動向や業界のベストプラクティスを学ぶ機会が得られ、社内では得られない知識や視点を取り入れることができます。また、こうした外部リソースを活用することで、短期間で従業員のスキルレベルを底上げできる可能性もあります。
情報資産の分析と戦略的なシステム刷新
システムの入れ替えを実施するためには、既存のシステムの中で使われていないものやDX推進に向けた施策と相性の悪いものを洗い出すことが必要です。
新しいビジネスや市場環境に対応できるツールか、他のシステムと連携できるかなどから評価します。優先度の高いものからシステム刷新していくことで、コストを抑えながら新しい技術に対応できるツールを導入できます。
PDCAサイクルの実施
新しい業務フローやシステムの導入だけでDXが成功したとは言えません。課題の把握と、解決策の立案・実行、改善しているか否か評価し、新たな課題に向き合うことを長期的に続けましょう。
DX推進における調査結果
「DX動向2024」の中から、DX人材の育成と確保、DX推進のための人材を確保する手段、日本企業のDX推進状況を紹介します。
DX人材の確保と育成
社会全体の人手不足も相まって、DXを進める人材の数・質共に「大幅に不足している」と回答する企業の割合が増えています。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p36
量は2021年度30.6%だったところ、2022年度49.6%、2023年度62.1%と推移しています。
質の推移は2021年度30.5%、2022年度51.7%、2023年度58.1%です。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p36
DXを進める人材をどのように確保するのか?
2023年度の回答で最も割合が高かったのが「社内人材の育成」で59.1%、外部採用・中途採用(45.0%)、既存人材の活用※他部署からの異動含む(43.9%)と続きます。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p39
アメリカは「特定技術を持つ企業・個人との契約」が「社内人材の育成」と同じ42.5%に対し、日本は21.1%にとどまります。リファラル採用(自社の社員からの紹介・推薦)の割合も、アメリカと日本で大きく異なります。(アメリカ24.9%、日本9.6%)
DX動向では人材確保の課題についても知ることができます。
割合が特に高いのは「魅力的な処遇が提示できない(41.3%)」「戦略上必要なスキルとレベルを定義できていない(39.9%)」です。
2022年度からの推移を見ると、「魅力的な処遇が提示できない」の他「募集しても応募が少ない」の割合が18.5%から30%と大きく増えています。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p40
また、人材育成の課題についても見えてきます。
人材育成の予算の増減を見ると、「大幅に増加した」「やや増加した」どちらも割合はそれほど増えておらず、DX人材育成に予算をかけられないことが、DX人材不足の要因のひとつと思われます。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p41
下記の図表にある通り、DXを進める人材のスキル獲得を妨げる要因としても挙げられています。成果がでていないと回答した企業は35.8%と、成果が出ている企業よりも割合が高いです。
スキルを獲得させるための時間確保については成果が出ている・出ていない企業ともに課題と感じているようです。ただし、「育成戦略や方針が不明確」を要因と考える企業は、成果の出ていない企業(59.6%)の方が出ている企業(42.6%)よりも割合が大幅に高いです。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p42
DXを推進する人材像について、成果が出ている企業は出ていない企業より設定・周知を徹底しているようです。どのような人材を育成すべきかといった知識面も、DXの成果を出すうえでは重要であることが分かります。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p43
日本企業のDX推進状況
2021年度から2023年度の取組状況を見ると、日本企業のDXは進んでいるようです。
「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業の割合は順調に増えています。2023年度はアメリカの企業より割合が高いです。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p7
従業員の規模別で見ると、従業員数の多い企業ほど取り組みが進んでいます。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p7
業種別に見ると、DXに取り組む割合は金融・保険業が最も高く(97.2%)、サービス業が最も低い(60.1%)です。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p8
日本企業全体ではDX化が進んでいるものの、中小企業やサービス業といった遅れをとっている企業もあります。どちらも経済産業省公表の「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」と、中小企業庁公表の「中小企業白書」で生産性の低さを指摘されています。
自社で設定したDXの目的に対する成果が出ていると回答した割合は64.3%です。2022年度の58.0%から上昇していますが、アメリカ企業の割合が89.0%であることを考えると、日本は遅れをとっていると言わざるを得ません。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p11
従業員規模別に見ても、100人以下の企業でも54.0%は成果を出せています。
DXを3つのフェーズごとに分けて成果が出ているか質問したところ、「デジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタル化)」と「デジタライゼーション(業務の効率化による生産性向上)」では成果が出ている一方、デジタルトランスフォーメーション、中でも「新製品・サービスの創出」や「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」の割合は低く、DXの新しい価値の創出やビジネスモデルの変革に難しさを感じる企業の多さがうかがえます。
画像出典:DX動向2024, IPA独立行政法人 情報処理推進機構p14
DX推進の失敗例
DXを進めること自体をDXの目的と考えていたり、施策を一度で止めてしまうと上手くいきません。ここでは、DX推進の失敗例をご紹介します。
DX推進自体が目的になっている
DXは、ITツールなどを活用して顧客や社会に新しい体験を提供することまでが求められます。
「デジタル化」はDXの目標達成のための手段であって目的ではありません。
デジタル化できる作業が増えた、新しいシステムに入れ替えたなどだけでは、DXを実現していると言えません。
DX推進で果たしたいことまで考えてDXを取り入れる目的を設定することが重要です。
例えば「業務効率化のため」DXを進めるでとどまるのではなく、「業務効率化によって新製品の展開スピードをアップしたい」といった具体的な目標を掲げましょう。
一度の取り組みで終えてしまう
DX推進手順で説明したように、DXは一度の取り組みで完結するものではありません。
一度の取り組みでDXが定着しないこともあり、取り組みにより新たな課題が見えた場合には新しい施策を立案・実行して改善することが求められます。
成功する企業とそうでない企業の違い
試行錯誤を良しとする企業か否か、スピーディーに意思決定できるか否かが、DX成功と失敗を分けます。
柔軟性の有無
システムの入れ替えや従来の業務フローの変更など、DXには変化が伴います。
これまでのやり方が変わることを許容する文化があると、市場の変化へ対応しやすくなります。特にデジタルの活用を前提とするDXは、スピード感が重視されます。従来のフローを見直して効率アップを図ることで、市場のスピードに追いつく足掛かりとなります。
新商品・サービスの開発に積極的なことはもちろん、良いやり方があれば試してみることが当たり前の組織は、DX推進によるツールやフローの変更も抵抗なく進められます。DXにもスピーディーに取り組めます。
チャレンジのしやすさ
DXは改善を繰り返しながら定着を図り、目標達成に向かうことが求められます。
従来のやり方を変えれば必ず上手くいくわけではありません。しかし、失敗を恐れて試行錯誤しないことは、ビジネスチャンスを獲得する可能性を狭めます。トライアンドエラーを良しとする文化は、DXで実現したいことに向かって改善策にも積極的に取り組めるでしょう。
意思決定のスピード
意思決定までのフローが複雑な企業は、新しい施策の立案・実施、業務フローの変更、ツールの選定などの時間がかかること傾向があります。
他部署との連携が進んでいないために円滑なコミュニケーション・情報共有が妨げられ、意思決定に遅れが生じるケースもあります。
DXは組織全体で進めるものです。部署を越えてのコミュニケーションが活発、部署やチームに関係なく協力し合える体制ができているといった組織は、DX推進と相性が良いです。スムーズな情報共有は、スピーディーな意思決定も可能とします。DXに関する意思決定のメリットにもなります。
DXの課題解決のための方法
DX推進目的を具体的にして周知する、人材の確保と育成はもちろん、DX化を進めるための予算確保や適したシステムへの入れ替えもポイントです。
推進目的を明らかにする
DXが滞る原因が、推進理由が分からないことにある場合があります。例えば、「上から言われたからシステム選定をしているが、指示の理由は分からない」といった場合は、課題や目指したいところから逆算したうえで計画を立てることができないため、進めづらいです。
目的が分かるようになるだけで、今後の方針を考えられ、円滑に進められるようになります。
DX推進を担える人材の確保と育成
DXの推進には、デジタルスキルへの理解とリーダーシップを持った人材が欠かせません。
先にご紹介した資料から分かるように、DXに携わる人材の確保は容易ではありません。そこで、デジタルを幅広く学べたり、リーダー育成を目的とした研修の活用で、自社の人材のスキルアップを図ることは有効な手段です。
もちろん、人材育成に課題を感じる企業も少なくないでしょう。自社の人材育成と並行してDX推進に携わったことのある人材採用を検討するのもおすすめです。
古いシステムの廃止と入れ替え
導入から長期間が経過し、見直されたことがないレガシーシステムを使い続けることは、効率の課題、セキュリティリスクを抱えた状態です。
無駄な保守運用コストをなくすためにも、使っていないツールや使い勝手の悪いものは新しいものを検討することをおすすめします。
システムを一気に入れ替えると、現場は混乱します。新しいシステムが問題ないことを確かめてから組織全体で入れ替えを進められるよう、緊急度の高さや導入難易度の高さを総合的に考慮し実施することがポイントです。
部署の垣根を越えて協力し合える組織づくり
部門間の連携が上手くいかないことは、DX推進が遅れる原因となり得ます。
また、異なる部署のメンバーでチームを結成し、プロジェクトを進める経験も良いきっかけとなります。DXはあらゆる部署からメンバーが集められるだろうこと、組織全体で協力して進めることが必要なためです。
予算確保
DX推進には人材育成・採用やツールの導入など、コストがかかります。
既存のシステムの見直しで無駄なツールが省かれると、DX推進に費やせるコストを増やせる可能性を高めますコスト調整が難しい場合、小規模なプロジェクトから試してみて、効果が出たら段階的に予算を増やす方法も検討してみましょう。
まとめ
デジタル化にとどまらず、ビジネスモデルや業務フロー全体の変革を通して新しい価値を生み出すことで、DXの成果が出たと言えます。
本記事を通じてDX推進の手順やポイント、日本企業に多い課題と解決方法が具体的に理解いただけたかと思います。自社の課題を洗い出し、緊急性の高いものからできる施策に取り組んでみてください。取り組む際はPDCAサイクルを心がけましょう。