ノウハウ 企業のリスクマネジメントで重要な文書管理とは?目的や進め方など解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年09月24日
企業のリスクマネジメントで重要な文書管理とは?目的や進め方など解説
企業のリスクマネジメントとしては、契約書や企画書など重要な情報が含まれている文書の管理方法を最適化することも重要です。
本記事では、なぜ文書管理が重要なのか、文書管理をどのように進めるべきなのかについて詳しく解説します。
「現状の文書管理方法を改善したい」「取り扱う文書が膨大で管理に手がつけられなくなっている」などでお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
企業は情報資産のリスクマネジメントも必要不可欠
企業経営においては様々なリスクが潜んでいますが、企業の運営に甚大な影響を及ぼすリスクのひとつに「情報資産の保有に伴うリスク」があります。
情報資産とは、個人情報・顧客情報・契約情報・財務情報・事業計画書など、組織や個人にとって価値のある情報のことです。
紙媒体だけでなく、電子ファイルやソフトウェア、社内システムのソースコードなども情報資産に含まれます。
情報資産を保有すると、「持ち出しによる情報漏洩・紛失」「外部からの不正アクセス」といったリスクを伴います。
特に紙媒体の情報資産は、データとは違い物理的な持ち出しが可能なため、情報漏洩・紛失のリスクが高いため、厳重なリスクマネジメントが重要です。
情報資産のリスクマネジメントが不十分だと、ビジネスにおける大きな損失や信用の失墜につながります。
コンプライアンスにも関わる?文書管理の重要性とは
IT技術の発達に伴い情報媒体が多様化したことで、企業は情報の管理体制に関していっそう厳しく見られている傾向にあります。
社会的なコンプライアンス意識が強まった現代において、情報漏洩や法的要件を満たさない情報の取扱い方など、情報に関わるコンプライアンス違反が発生すれば重い罰則・制裁の対象となることは避けられません。
こうしたコンプライアンスリスクを避けるには、重要な情報が含まれる文書管理の徹底が重要です。
また、文書管理はコンプライアンスの観点だけでなく、様々な理由により企業が徹底すべき取り組みのひとつといえます。
ここでは、企業にとって文書管理が重要な理由を解説します。
文書の紛失と情報漏洩の防止
文書管理にける最大の目的は、紛失と情報漏洩の防止です。
重要な文書は金庫や鍵付きのキャビネットなどで厳重に管理する場合が一般的ですが、紛失や持ち出しのリスクを絶対に回避できるわけではありません。
また、書類整理の際に誤って破棄してしまうリスクも伴います。
会社法などの法律で一定期間の保管が義務付けられている書類を紛失・破棄してしまえば、重大なコンプライアンス違反として相応のペナルティが科せられます。
データ保存している文書であっても、十分なセキュリティ対策を講じていなければ従業員のミスや外部からの不正アクセスにより、情報漏洩が発生する可能性は否めません。
したがって、適切なルールの設定や環境構築といったポイントを押さえた文書管理が重要になります。
業務効率化・生産性向上
事業を続けるうえで紙媒体の文書が増えていくと、しだいに管理が難しくなります。
過去の文書を確認しようにも、どこへ保管したのかすぐに把握できず、遡るだけでも時間がかかり業務効率が低下します。
顧客とのやり取りでこのような事態が発生すれば相手に不満・不安感を与えてしまい、機会損失につながる可能性も考えられます。
しかし適切な文書管理を実施すれば必要な文書をすぐに引き出せるため、無駄な時間の削減が可能です。
これにより業務効率化・生産性向上だけでなく、迅速な対応による顧客満足度の向上にもつながります。
迅速な情報開示対応
コンプライアンスの面ではただ情報を守るだけでなく、「必要な情報を迅速に開示できること」も求められます。
万が一自社の経営で不正・不適切な行為が発生したり疑われた場合、企業として説明責任を果たす必要があります。
ステークホルダーや社会に向けて事実を説明するには、これまでの活動や財務状況などに関する記録の開示が欠かせません。
また、場合によっては法的調査に際して文書の提示を求められることもあります。
このような事態に契約書・法的文書や重要な記録を含む文書へ即時アクセスできるようにするには、文書管理を通して適切に整理しておくことが重要です。
訴訟リスクへの備え
事業のグローバル展開に伴い、海外との取引が発生している国内企業も増えています。
海外、特に米国は「訴訟大国」とも呼ばれており、単に訴訟の数が多いだけでなく日本では認められていない懲罰的損害賠償があります。
そのため、万が一トラブルが発生して訴訟に発展すれば、甚大なダメージを被る可能性に注意が必要です。
海外との取引がなくとも、企業は日々の活動において取引相手から契約条件に関する訴えを受けたり、従業員から使用者責任を問われたりといった訴訟リスクと隣り合わせなことは変わりません。
訴訟となった場合は証拠収集が必要となりますが、その際に迅速に対応できるかどうかは日頃の文書管理体制に左右されます。
業務や相手との記録が含まれる文書を素早く取り出せるように管理しておけば、証拠収集のための社内コストや弁護士費用を最小限に抑えることも可能です。
内部統制と説明責任の確立
重要な文書の内容が外部へ漏れないように対策しても、内部での改ざんや誤破棄といったトラブルで文書を適切に保管できなくなるリスクは消えません。
トラブルが発生しても、管理体制が構築されていなければその事実の伝達すら難しくなり、対応に遅れが生じます。
こうしたリスクを防ぐためにも、文書管理における統制を強固にしておく必要があります。
例えば文書管理システムを利用し、文書データごとに閲覧制限を設けたり、証跡管理機能で改ざんを抑止したりといった手法が有効です。
また、文書管理の徹底に伴う内部統制の強化は、先述した「適切な情報開示対応」にもつながります。
有事の際、確かな事実に基づいて説明責任を果たすためには、適切な管理体制で内容が保全された文書を用いる必要があるからです。
文書管理はBCPの一環でもある
適切な文書管理は、BCPの強化にもつながります。
BCPとは、災害やテロなどの緊急事態が発生した際にも事業を継続させるための計画のことです。
毎年のように大規模な自然災害が発生する日本では、地震によるインフラの無効化や水害・火災による情報資産の消失といったリスクも避けられません。
重要な文書や情報を守り、いち早く事業を復旧できるような体制を整えるためにBCPへ取り組む必要があります。
耐震施設や対価施設で文書の原本を保管する、ネットワークの接続ができなくても文書データにアクセスできるようにUSBなどへバックアップを取るといった文書管理のやり方も、BCPの一環といえます。
BCPの重要性
「文書が消失するほどの災害なんて滅多に起こらない」といった油断から、BCPの策定が軽視されることもあります。
日本は災害大国とはいえ、企業活動へ影響を与えるほどに大規模な災害が頻発するわけではありません。
しかし、本当に大規模な災害が発生して自社の重要な文書の消失に至った場合、非常に大きなダメージを被る結果となります。
内閣府防災担当が公開している「事業継続ガイドライン」では、事業を継続するうえで必要な文書や記録(バイタルレコード)の管理方法の検討や緊急時の利用・活用手順の検討が望ましいと明記されています。
バイタルレコードが消失すれば、有事の際に事業を復旧させるまでに多くの時間がかかるものです。
その分だけ損失額は増幅し、資金繰りの難化により人員の解雇や事業の廃止に追い込まれる結果もあり得ます。
緊急事態が発生してからではなく、「いつか起こるであろう」緊急事態に備えて、自社にとってのバイタルレコードとは何かを特定のうえ管理の徹底に取り組むことが大切です。
リスクマネジメントとしての文書管理のルール
文書の保有にまつわるリスクを回避するためには、「管理ルールの策定」とそのルールを浸透させる「社内教育」で、適切な体制を構築するための基盤を整える必要があります。
文書管理のルール策定と教育のために取り組むべき内容を、以下より解説します。
ルールの策定・共有
文書管理においてまずやるべきことは、管理に関わるルールや運用マニュアルの作成です。
文書の発生・活用・保管・検索・廃棄といった基本のプロセスで、どのように対応するのかを現状の業務フローに併せて検討しましょう。
また、基本となるルールを策定したら、特別な対応が必要な文書それぞれの個別ルールを検討します。
文書によっては法律で保管すべき期間が定められており、その期間に基づくルール策定が必要な場合があります。
法改正によって保管期間が変わる可能性もあるため、ルールは一度決めたらそれで終わりではなく、定期的な見直しと改訂を継続していきましょう。
ルールを策定したら、社内に共有します。
内容を改定した際も、同様に変更の旨を社内全体に伝え、作業時の際に確認するよう促しましょう。
ルールの遵守・確認
管理ルールを策定しても、従業員の管理意識が低ければルールに反する作業によるトラブル発生のリスクを伴います。
ルールの策定後は教育の機会を設け、「なぜこのルールを守る必要があるのか」「ルールに反して不適切な文書管理を行うとどんなトラブルが起こり得るのか」などについて説明し、各従業員が自分事として適切な管理を徹底できるような意識を育てましょう。
また、文書管理の体制を開始したあとも定期的なチェックが重要です。
開始前には見えなかった運用の問題点を探し、必要に応じて速やかな修正を実施します。
日々文書を取り扱っている従業員にヒアリングして、問題点や希望に関する意見をもらっても良いでしょう。
文書管理の進め方
文書管理のルールを策定しようにも、具体的にどんな方法で管理すべきかを理解できなければ取り組みを進めることはできません。
企業ごとに適切な管理方法は変わりますが、基本的なやり方としては文書を分類したうえで、紙の文書をファイリングしたり、電子化したりといったやり方が一般的です。
ここでは、文書管理の基本的なやり方について解説します。
文書を分類する
文書を探しやすくするために、内容や部署などに基づいて分けることから始めましょう。
文書の分け方としては、以下の3通りがあります。
・ワリツケ式:大分類→中分類→小分類といったようにトップダウン方式で分ける ・ツミアゲ式:小分類→中分類→大分類といったようにボトムアップ方式で分ける ・ハイブリッド式:大まかなカテゴリを設け、ツミアゲ式で分類した文書を各カテゴリに割り振る |
文書の分類方法は必ずしも全社で共通にすべきとは限りません。
ある部署では効率的と思える分類方法でも、別の部署ではかえって管理しにくくなり業務効率が低下する可能性もあります。
部門や書類の内容に応じて、分類方法の柔軟な変更を許容することも大切です。
分類した文書をファイリングする
分類した文書は、ファイリングしてキャビネットや金庫などに収納します。
分類のプロセスで設定したカテゴリに合わせて異なる色のファイルを使ったり、分かりやすい番号・タイトルをつけておくと、文書を探しやすくなります。
また、ファイリングの方法にも複数の種類があります。
主なファイリング方法としては、以下の3種類です。
・バーティカルファイリング:個別のファイルに書類を入れて垂直に収納する ・簿冊式ファイリング:バインダーや厚型ファイルに書籍を綴じて収納する ・ボックスファイリング:専用のボックスに文書を収納する |
保管スペースや文書の量に合わせて、管理しやすい方法を採用しましょう。
文書を電子化する
文書管理を効率化させるなら、文書の電子化と管理が可能なシステムの活用がおすすめです。
文書管理に特化したシステムは、特定の文書作成から保管・廃棄まで一元管理が可能です。
ペーパーレス化の促進で保管スペースとコスト消費を抑えられるだけでなく、アクセス制限や閲覧・変更履歴の保存によりセキュリティ対策の強化にもつながります。
なお、帳票類や契約書など電子保存について法律で要件が定められている文書を電子化する場合は、システム選びの際に要件に即した機能の有無を確認しましょう。
文書管理はどの企業にも重要!管理システムを活用して自社をリスクから守るべし
企業が文書管理を怠ると、コンプライアンス違反により自社の信用の失墜を招くリスクが高まります。
また、訴訟や災害など万が一の緊急事態が発生した際、スムーズに対応しその後も事業を継続させるためにも適切な文書管理が必要です。
文書管理のやり方としては、文書の作成から管理までひとつのプラットフォームで行えるシステムの活用がおすすめです。
取り扱う文書の量が多く管理方法の最適化にお困りなら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。