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ノウハウ DXを進めるには「守り」から?「攻め」との違いや事例など解説

投稿日:2024年09月24日

DXを進めるには「守り」から?「攻め」との違いや事例など解説

DXを進めるには「守り」から?「攻め」との違いや事例など解説

DXには、「攻め」と「守り」の概念があることはご存知でしょうか。

攻めのDX・守りのDXは互いを補うものであり、DXの成果を高めるにはどちらも理解のうえ取り組む必要があります。

 

今回は攻めのDXと守りのDXの特徴・メリット・違いを詳しく解説すると共に、事例もご紹介します。

自社はどのようにDX推進に取り組むべきか悩む方に有用な情報を記載していますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

「攻め」のDXとは

攻めのDXとは、主に顧客やステークホルダーなど「外部」に着目し、デジタル技術で変革をもたらすことです。

具体的には、以下のような取り組みが攻めのDXに該当します。

 

・新しい製品やサービスの開発

・新規事業への参入

・新しいビジネスモデルの開発

・既存商品・サービスの品質向上  など

 

SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)、MA(マーケティング業務自動化システム)などのデジタルツールを使い、顧客データや市場データを収集して事業戦略に活かすという方法で進めます。

攻めのDXのメリット

攻めのDXの一環として、顧客からのフィードバックを事業戦略に反映させ、よりニーズにマッチした製品・サービスを生み出すことで顧客満足度の向上や新規顧客の獲得が見込めます。

 

また、デジタル技術を事業戦略に活かすために自社のデジタル基盤を整備する必要があります。

攻めのDXを通してデジタル基盤を整備することで、マーケティング施策に有効な最新のデータを即座に取得・分析できるようになります。

結果として市場の変化へ柔軟かつ迅速に適応でき、自社の競争力が向上するという点も大きなメリットです。

 

要約すると、攻めのDXは主に「収益性」や「競争優位性」においてメリットが得られる取り組みといえます。

「守り」のDXとは

守りのDXとは、デジタル技術を活用して企業文化・風土や業務に変革をもたらすことです。

具体的には、以下のような取り組みのことを守りのDXといいます。

 

・業務の自動化・効率化

・無駄な業務の削減

・文書の電子化

・SNSなどを活用した店舗の宣伝  など

守りのDXのメリット

守りのDXでは既存の業務やこれまで利用していたシステムの見直しを行うことになるため、より低コストで大きな成果を生み出せる状態、つまり生産性の向上を目指せるというメリットがあります。

 

攻めのDXに比べてリスクが低い反面、見込める効果も限定的です。

しかし守りのDXにより既存の業務が効率化されることで、無駄なコストの削減や商品・サービス品質の向上など、ビジネスの継続に欠かせない基盤を固められます。

攻めのDXと守りのDXの違い

攻めのDXと守りのDXは、それぞれ異なる対象にフォーカスしてデジタル技術を活用し、変革をもたらします。

攻めのDXは自社の利益や競争優位性の強化のために外部へ向けた変革を、守りのDXは業務効率や生産性向上のために社内へ向けた変革を目指すというテーマがあります。

 

なお、メディアなどでは、「DX=新しいサービスやビジネスモデル(攻めの領域)の変革」というニュアンスでDXが語られることも多いです。

しかし実際の定義としては、攻め・守りのどちらにおいてもその領域を変革することをDXといいます。

ビジネスの革新だけがDXの本質ではないことを念頭に置き、自社の現状に合わせて攻めと守りのどちらに取り組むかを選択すると良いでしょう。

攻めのDXと守りのDXの事例

攻めのDXと守りのDXは、どちらも国内で数々の企業が実施しています。

 

以下より、国内の有名企業における攻めのDX・守りのDXの事例をご紹介します。

攻めのDXの事例

【ユニクロ】

「ユニクロ」は、株式会社ファーストリテイリングが展開しているカジュアルファッションブランドです。

従来は自社で洋服のデザイン設計・生地調達・縫製をして店頭に並べるという、一般的な製造小売業と同様の方法を採用していました。

 

しかし2017年以降、製造小売業に情報を組み込み「お客様が求めているものを、必要なタイミングで、必要な分だけ、作り・運び・販売する」というコンセプトに変革されています。

具体的にはリアルタイムの販売状況から来店客の嗜好や人気のコーディネート、商品の不満点といった情報を得て、それの情報を開発や生産量に活用するというものです。

 

デジタル技術により「製造小売業」から「情報製造小売業」へと業態を変革させたこのプロジェクトは、まさしく攻めのDXといえます。

 

【三越伊勢丹】

三越伊勢丹では、靴売り場における顧客満足度の向上に着目した「YourFIT365」を実施しました。

YourFIT365は3D計測機を使用して顧客の足のサイズを計測し、そこで取得したデータを元に、靴専門スタイリストのアドバイスを受けながら靴を選べるサービスです。

顧客は計測データをいつでもアプリで確認でき、データに基づき顧客に適した最新の靴もチェックすることが可能です。

守りのDXの事例

【SBI損保】

SBI損保では、保険料の概算を即時見積もりできる「カシャッピ」というサービスを提供しています。

カシャッピとはスマートフォンで自動車保険証券を撮影することで、AI搭載型OCRがその内容を読み取り、即座に概算保険料を表示するというものです。

これにより顧客は簡単に保険料を見積もることができ、スムーズな契約手続きを実現できます。

 

また、ガン保険の保険金を請求する際に必要書類を撮影すると、保険金支払いの対象か同課を自動的に判定する「AI保険金査定システム」も導入しています。

 

このようにSBI損保は複数のデジタル技術を活用し、顧客満足度と業務の省力化のどちらも実現しました。

 

【ブリヂストン】

タイヤメーカーのブリヂストンは、製造作業に高度な技術を要する航空機用タイヤや鉱山・建設車両用タイヤにおける「技術継承システム」を開発しました。

 

訓練者と熟練者の成型作業の動きをモーションカメラや慣性・圧力センサーで計測し、その差を作業ステップごとに評価するというシステムです。

作業員が得意・不得意とする作業がグラフで可視化され、その際に低評価となったステップを繰り返し訓練することで効率的に技能を習得できるようになりました。

 

効率的な人材育成だけでなく、高度なスキルを要するタイヤの製造でも生産性を向上しつつ、安定した品質での商品供給も実現しました。

日本におけるDXの現状と守りの重要性

株式会社NTTデータ経営研究所が公開している「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」では、国内の大企業・中堅企業14,509社のDX推進状況に関するデータが出ています。

 

「テーマ別の取り組み状況」では、業務処理の効率化・省力化に取り組んでいる企業は全体の84.0%、業務プロセスの抜本的な改革・再設計に取り組んでいる企業は61.1%という結果です。

この結果から、国内企業の守りのDXは進んでいることが見て取れます。

 

一方でビジネスモデルの抜本的改革に取り組んでいる企業は24.7%、顧客接点の抜本的改革に取り組んでいる企業は29.9%です。

大企業を含めても、攻めのDXは進んでいない状況にあると伺えます。

 

攻めのDXは企業成長や市場競争において大きな価値を持つ取り組みですが、成功のためにはビジネスに対する明確なビジョンと抜本的に改革するためのエネルギーが必要です。

加えてデジタル技術への深い理解も求められるため、アナログな手法に慣れてきた企業にとっては実行に移すこと自体が困難といえます。

 

攻めのDXを実行するには、まず守りのDXの推進に努めることが大切です。

守りのDXを進めれば既存業務の省力化・効率化につながり、時間に余裕が生まれます。

これにより攻めのDXに向けた戦略をじっくりと考えやすくなるだけでなく、守りのDXに取り組む中でデジタル技術に対する理解も深まります。

守りのDXの実践方法

DXは、やみくもにデジタル技術を取り入れても十分な成果につながりません。

自社に最適な戦略で、求めていた成果につながるDXを実現するためにも、以下のステップを踏んで実行に移しましょう。

DX戦略を策定する

DX戦略を策定するにあたってまず必要なことは、DXの目的や方針の明確化です。

 

自社が抱えている課題を洗い出し、その課題を解決するにはどのようにDXを進めるべきかを定めましょう。

課題に基づき、「何をもってゴールとするのか」を考えるとDX戦略の方向性も見えてきます。

 

自社にとっての理想像と現状を照らし合わせてギャップを探り、そのギャップを埋めるための戦略を立てましょう。

既存IT資産の最適化

DXの実現には、既存IT資産の最適化が欠かせません。

古い技術・仕組みで構築されたレガシーシステムを抱えたままだと、部分的なカスタマイズの繰り返しで複雑化したり、運用費・保守費が増幅したりといった弊害が及びます。

 

あらかじめ洗い出した自社の課題を踏まえて、「誰でも使いやすい仕組み」「他のツールとの連携が可能」といった、新システムに求める要件を定めましょう。

 

また、システムの刷新方法としては以下の3通りがあります。

 

・1からシステムを開発する

・既存のシステムを新しい環境に移行させる

・クラウド型のシステムを導入する

 

1から開発する場合やシステムを新環境に移行する場合、自社に十分なリソースがなければ外部のベンダーへの依頼も検討する必要があります。

カスタマイズ性よりも導入ハードルの低さを重視するなら、開発が不要なクラウド型システムがおすすめです。

DX実践に伴うコンプライアンスリスクの対策

DX推進において盲点となりがちなことが、コンプライアンスリスクの対策です。

 

例えばDXの一環としてリモートワークへの対応を進める場合、社外へのデータ持ち出しに関して十分にルールを設けておらず、情報漏洩の可能性が放置されているケースもあります。

また、顧客のプライバシーなデータを含むビッグデータは事業の改革に必要不可欠ですが、プライバシー保護の観点で顧客に不安感を与える可能性も考えられます。

DXの実践に伴いパーソナルデータを活用するのであれば、顧客のプライバシーを侵害しないための対策を講じて信頼性を保ちましょう。

 

企業のコンプライアンス違反が一層厳しく見られる現代において、コンプライアンスの遵守は経営戦略と同等に自社の利益へ影響する要素といっても過言ではありません。

DXにより生じる新たなコンプライアンスリスクの予測と対策も、積極的に行いましょう。

攻めのDXを行うには?

攻めのDXとして自社のビジネスを改革するには、顧客に対する商品・サービスの提供状況などのデータが必要になります。

そのデータを蓄積するには、守りのDXを成熟させることが大切です。

守りのDXの早期成熟を目指すなら、情報戦略を深く理解しながら企業を牽引する責任者の設置や、「データ民主化」を可能にするデータサイエンティストの育成にも注力しましょう。

 

また、どんな企業でも攻めのDXにおいて「絶対に成功する戦略」はありません。

いきなり全社規模で戦略を実行するのではなく規模や対象を絞ってスタートし、小さな失敗を経験しながら最適な戦略を見いだすことで、成功につながりやすくなります。

DX推進は「攻め」と「守り」のどちらも重要!まずは守りで基盤を固めるべし

DXには自社のビジネスを抜本的に改革する「攻めのDX」と、業務の省力化・効率向上を目的とした「守りのDX」があります。

国内の現状としては守りのDXを進めていても攻めのDXは進んでいない企業が多いですが、だからこそ今から攻めのDXにシフトすることで競争優位性をより確かなものにできます。

ただし、攻めのDXの推進は守りのDXで盤石なデータ活用体制を築いていることが前提となります。

攻め・守り共にDXが十分に進んでいない場合は、自社の現状から見える課題の解決に有効なデジタル技術を見極め、取り入れることから始めましょう。