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ノウハウ 新リース会計基準の適用時期はいつから?草案の概要と改正への備え

更新日:2024年10月17日

投稿日:2024年08月27日

新リース会計基準の適用時期はいつから?草案の概要と改正への備え

新リース会計基準の適用時期はいつから?草案の概要と改正への備え

新リース会計基準の適用時期は、当初の予定から延期されました。この準備期間の延長により、対応策について検討する期間も延長されます。

 

本記事では、従来の会計基準との変更点を明確にするために、新リース会計基準の草案の概要を紹介します。また、改正の影響やポイント、新基準への対応に向けて企業が取るべき措置についてもまとめました。

 

 

新リース会計基準とは? 草案の概要は?

新リース会計基準とは、2023年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)が公開した「企業会計基準適用指針及び実務対応報告の 改正に関する公開草案(本公開草案)」のことです。

 

本記事では新しい会計基準の開発方針などのポイントをいくつか紹介します。

全容の詳細は企業会計基準公開草案第 73 号「リースに関する会計基準(案)」等の概要もご確認ください。

借手の費用配分の方法

全てのリースを金融の提供と見なし、使用権資産にかかる減価償却費とリース負債にかかる利息相当額を計上する会計処理モデルが提案されています。

 

これは、国際的な会計基準である国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(IFRS第16号)の会計処理モデルを採用しています。ただし、借手の会計処理に関してIFRS第16号の内容全てを採用するのではなく、主要な内容のみ取り入れる方針です。

このアプローチにより、第16号を適用して連結財務諸表を作成している企業が個別財務諸表に用いても、基本的には修正不要で使える会計基準となることを目指しています。

借手のリースの会計処理

リース開始日における使用権資産とリース負債の計上方法について、従来はリース契約締結時に合意されたリース料の総額から、利息部分を見積もって差し引く方法が採用されていました。

 

新しい基準では、IFRS第16号に倣い、リース開始日に計算したリース負債の額に加えて、リース開始日までに支払ったリース料や付随費用を含めて使用権資産を計算します。リース負債の計上額を求める際は、リース開始日に未払のリース料から利息部分を見積もって差し引き、その現在価値を計算する方法が提案されています。

短期リースと少額リースに関する扱い

短期リースについては、企業会計基準適用指針第16号とIFRS第16号同様、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたって原則として定額法で費用計上することを認める提案をしています。

 

少額リースについては、次の1)または2)の場合、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することを認めることが提案されています。

なお、2)については、a)かb)の選択肢から一つを選び、その方法を適用し続けることが求められます。

 

  1. 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース

    この基準額は、通常取引される単位ごとに適用し、リース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができる。
  2. 次のa)またはb)を満たすリース
    1. 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりの借手のリース料が 300 万円以下のリース

      1 つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれている場合、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができるものとする。
    2. 原資産の価値が新品時におよそ 5 千米ドル以下のリース

      リース 1 件ごとにこの方法を適用するか否かを選択できるものとする。

引用元企業会計基準公開草案第 73 号「リースに関 する会計基準(案)」等の概要

借地権の設定に係る権利金等

借地権の設定にかかる権利金などは、使用権資産の取得価額に含め、原則、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うことが提案されました。

貸手のリースの会計処理

貸手のファイナンス・リースの会計処理について、従来認められていた「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」が廃止されました。

 

代わりに、以下が提案されています。

 

商品・製品の販売が主な事業の企業が、同時に貸手として同一の商品・製品を原資産としている場合で、貸手として行ったリースが所有権移転外ファイナンス・リースと判定される時、貸手は、リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額をリース投資資産として計上します。

 

原資産の帳簿価額により売上原価を計上、原資産を借手が使用するために支払う付随費用がある場合は、付随費用を売上原価に含める会計処理を行います。

 

各期に受け取るリース料は利息相当額とリース投資資産の元本回収額とに区分し、前者を損益として処理し、後者を元本回収額として会計処理します。

 

貸手が原資産と同一の商品・製品を販売することが主な事業でない場合で、貸手として行ったリースが所有権移転外ファイナンス・リースと判定される時、リース開始日に原資産の現金購入価額(付随費用を含む場合もある)で、リース投資資産を計上します。

受取リース料の会計処理は、商品・製品を販売することを主たる事業としている企業と同様の会計処理を行います。

リースの定義について

「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」と定義されます。

 

従来は定義していませんでしたが、IFRS第16号との整合性を図るため、借手と貸手双方に適用されることになりました。

 

つまり、これまで会計処理されなかった契約にリースが含まれると判断される可能性があるということです。

リース期間

解約不能期間: 借手が原資産を使用する権利を持つ期間

延長オプション: 借手がリース契約を延長することが合理的に確実である場合の期間

解約オプション: 借手がリース契約を解約しないことが合理的に確実である場合の期間

 

これらを合計して、借手のリース期間を決定します。これは、IFRS第16号と同様のアプローチです。

 

一方、貸手のリース期間は従来の方法が引き継がれる見込みです。

借手の表示・注記について

使用権資産については、次のいずれかで貸借対照表において表示します。

  • 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める
  • 対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産または投資・その他の資産)において使用権資産として区分する

 

リース負債は、貸借対照表に区分して表示するか、リース負債が含まれる科目と金額を注記します。

リース負債にかかる利息費用は、損益計算書において区分して表示するか、リース負債にかかる利息費用が含まれる科目と金額を注記します。

 

貸手の表示・注記については、従来の表示・注記を引き継ぎ、所有権移転ファイナンス・リースにかかるリース債権と所有権移転外ファイナンス・リースにかかるリース投資資産は区分して表示することを提案しています。

改正のポイント

新リース会計基準に伴い、全てのリース取引を貸借対照表に計上しなければならなくなったことが本改正の大きなポイントです。

新基準の適用時期

当初は2026年度を見込んでいましたが、改正案の発表がずれ込んでおり2027年度以降の適用予定となりました。

 

小売業界や運輸業界といった改正の影響を大きく受けると見込まれる業界から、対応への準備期間が足りないことを理由に反対の声が上がったためです。

基準改正の背景と影響

2007年3月、ASBJは企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準(企業会計基準第 13 号)」と、企業会計基準適用指針第 16 号「リース取引に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第16号)」を公表しました。

リースに関する会計基準について、当時の国際的な会計基準とマッチしたものにすることが目的でした。

 

その後2016 年1月に、国際会計基準審議会(IASB)がIFRS 第16号を、同年 2 月に米国財務会計基準審議会(FASB)がTopic842を公表しました。

 

IFRS 第16号とTopic842では、借手の会計処理に関して、主に費用配分の方法が異なります。

 

一方、原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分にかかる資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、全てのリースについて資産と負債を計上することとしている点は共通です。

これにより、海外の2つの会計基準と日本の会計基準で、負債の考え方に相違が生じることになりました。

 

そこでASBJが財務諸表作成者や財務諸表利用者から幅広く意見を集め、借手のすべてのリースについて負債も計上する会計基準の開発が決定しました。

 

変更により、従来は計上しなかった資産と負債が追加され、自己資本比率が低下すると予想されています。

新リース会計基準への備え

契約管理や自社の経理規程の見直しなど、新基準への移行までにやるべきことは複数あります。

契約管理の整備

会計に紐づく契約書の内容について確認が必要となりました。

契約の観点でやらなければいけないことが、契約状況の確認です。

 

  1. 対象となる取引を特定する
  2. 影響額を算定する

 

まずは、新リース会計基準で新たに資産および負債が計上される可能性のある現行の賃貸借契約・リース契約を洗い出します。

洗い出す際には、契約書を確認していくことになります。リース期間が延長された場合、契約書上の契約期間だけでなく、契約更新を見積もった期間も算出が必要です。

契約当初までさかのぼって試算をしなければならないケースもあります。

 

契約書を確認し、改正の対象となるものである場合は、資産負債に計上される金額や損益に与える影響について影響額を算出し、自社の方針を決める材料にします。

自社の方針の決定

新リース会計基準の中には、複数から選択できる基準があります。最初に決定したものは原則変更できないため、自社の状況に適切なものを選択しましょう。

選択した方針を担当者が分かるよう、記録に残すことをおすすめします。

自社の経理規程の改訂

方針を決めて上層部から承認を得られたら、会計基準は確定したようなものです。

現在の経理規程と新会計基準に相違があれば、経理規程を会計基準に則ったものに変更する必要があります。

トライアル期間の設定

新基準に沿って業務フローが上手く進むか、期間内に会計処理を終えられるかなどをシミュレーションすると、本格的に新基準が適用された際にスムーズに移行できるはずです。

 

既存の契約書などを使って新基準で財務諸表を作成してみてください。

システムの操作で分かりにくい箇所があるなど、移行に際しての問題に気づくことができるかもしれません。マニュアルの変更や新基準と相性の良いシステムへの入れ替えといった必要な対策が見えてくるでしょう。

企業が講じるべき対策

  • 研修や新たな人材確保
  • 契約管理システムと経理システムの連携

 

経理担当者が新基準の理解を深めるための研修は有効です。外部講座の活用や、専門家の協力・アドバイスを得ることもおすすめです。

今いる従業員だけで対応が難しくなりそうなら、人員補充を検討する余地はあります。ただし、業務フローの見直しで、人材を増やさなくても対応できる場合もあります。

 

新基準や社内の経理規程に対応する経理システムへの改修はもちろん、契約管理システムとの連携も効率改善に役立ちます。経理システムと、契約管理システムとの連携で契約期間や内容の照会工数を削減しながら会計処理ができるためです。

まとめ

新リース会計基準が適用されたら、リース契約の多い業界・企業は特に、影響を大きく受ける可能性があります。

 

新基準への準備のひとつに、契約管理の整備が挙げられます。契約書の内容確認が必要なことを考えると、新リース会計基準の適用が延期されたとはいえ、スムーズな対応には契約管理システムと経理システムの連携をおすすめします。

 

ContractS CLMは、会計系システムと連携が可能です。企業が新基準に適合した財務報告を行うための強力なツールとなります。