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ノウハウ 新リース会計基準の適用が延期に?適用時期や新基準の影響など解説

投稿日:2024年08月27日

新リース会計基準の適用が延期に?適用時期や新基準の影響など解説

新リース会計基準の適用が延期に?適用時期や新基準の影響など解説

2023年5月に新リース会計基準の公開草案が公表され、一時は2026年度の適用が予想されていました。しかし最終基準化や適用時期に関わる公式な情報は未だ公表されておらず、延期となった可能性が考えられます。

 

今回は新リース会計基準の内容や企業への影響をおさらいしつつ、適用時期の延期についても詳しく解説します。

新リース会計基準の対応準備の進め方も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

リース会計基準とは?

リース会計基準とは、ASBJ(企業会計基準委員会)が策定している日本の会計基準です。

企業がリースを利用する際の会計処理や、リース取引の定義などについて明記されています。

 

国際会計基準のIFRSと米国会計基準を参考に作成されており、現在に至るまで何度か内容の改正が行われています。

 

なお、リース会計基準はすべての企業に適用されるわけではありません。

以下の条件に当てはまる企業が対象とされています。

 

・株式上場会社

・株式店頭公開会社

・社債・CP等有価証券発行会社

・会社法上の公開会社およびその子会社

・資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社およびその子会社

・会計監査人を設置する会社およびその子会社

2023年5月に新リース会計基準の公開草案が公表

2023年5月、ASBJは新しいリース会計基準の公開草案を公表しました。

従来はリース取引の種別によって異なる会計処理をするものと定められていましたが、本公開草案ではほぼすべてのリース取引における会計処理を統一するという案が出ています。

 

この新リース会計基準が適用されれば、企業によっては従来の経理業務に大幅な変更が生じると共に、負荷の増大も見込まれます。

新リース会計基準の公開草案の内容

新リース会計基準の公開草案では、どのような内容が記載されているのでしょうか。

ここでは全体の記載項目や特に知っておきたいポイントについて、詳しく解説します。

新リース会計基準の公開草案の概要

新リース会計基準の公開草案の記載項目をまとめると、以下の通りです。

 

・本公開草案公表の経緯

・開発の基本的な方針(借手の費用配分の方法、 IFRS第16号と整合性を図る程度)

・会計基準の開発方法

・貸手の会計処理

・範囲(他の会計基準等との関係、個別財務諸表への適用)

・リースの定義

・リースの識別

・リース期間

・借手のリースの会計処理(使用権資産及びリース負債の計上、 利息相当額の各期への配分、使用権資産の償却、短期リースに関する簡便的な取扱い など)

・サブリース取引(基本となる会計処理、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合、転リース取引)

・借地権

・開示(表示、注記、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項)

・適用時期

・経過措置

参考:企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等の公表 

新リース会計基準における主な変更点

新リース会計基準の内容で特に知っておきたいポイントが、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引の区別がなくなるということです。

 

従来のリース会計基準では、ファイナンスリース取引に限りそれに支払った費用はオンバランス処理(賃借対照表に費用を計上する)の対象でした。

しかし新リース会計基準の公開草案では、オペレーティングリース取引に加え、設備などのレンタル契約や不動産賃貸契約の賃料もオンバランス処理の対象にするという案が出ています。

 

新リース会計基準が適用されれば、ファイナンスリース取引でなくともその契約を使用権資産・リース債務として貸借対照表に計上しなければなりません。

 

従来はファイナンスリース取引以外の契約について、リース料・賃借料は支払いごとに費用を計上するだけの会計処理とされていました。

それを踏まえると、会計処理の工数増加が余儀なくされると考えられます。

ファイナンスリース・オペレーティングリースとは?

リース取引は、以下のように定義づけられています。

 

特定の物件の所有者である貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対して、合意された期間にわたり使用収益する権利を与え、借手は合意されたリース料を貸手に支払う取引

 

上記に該当する取引をリース取引といい、大きく「ファイナンスリース取引」と「オペレーティングリース取引」の2種類に分けられます。

それぞれの特徴は、以下の通りです。

 

ファイナンスリース取引

【所有権移転】

・物件の所有権がリース期間終了時に借手に移転すると認められる

・リース契約に基づくリース期間中、原則として中途解約はできない

・物件の使用に伴うコスト(保険料、維持費など)は、借手が実質的に負担し、リース料に含まれる場合が多い


【所有権移転外】

・所有権移転ファイナンスリース取引に該当しないファイナンスリース取引。つまり、リース期間終了後も物件の所有権が貸手に残るリース取引

・この場合、借手はリース期間中に物件を使用する権利を有するが、リース期間終了後は物件を返却することが通常

オペレーティングリース取引

ファイナンスリース取引に該当しないリース取引

 

従来のリース会計基準では、オペレーティングリース取引の費用は経費として直接計上できました。

新リース会計基準が適用されれば上記の区別はなくなり、どちらもオンバランスでの会計処理に統一されます。

 

ただし、一部の短期リースや少額資産のリースはオンバランス処理の対象外です。

新リース会計基準の目的

新リース会計基準開発の背景には、IFRSや米国会計基準との差を埋めることにあります。

 

すでにIFRSや米国会計基準では、リース取引においてオンバランス処理が義務付けられています。

日本もそのルールに足並みを揃えるという意図から、ASBJではすべてのリース取引で資産・負債を計上するための基準開発に着手したということです。

 

海外と日本の会計時基準の差を埋めることで、海外の投資家は日本企業への投資を検討する際、決算書から正確な分析ができるようになります。

新リース会計基準の適用時期

新リース会計基準の適用に向けた準備を進めるにあたって、いつ頃を期限とすれば良いかは悩みどころです。

適用時期の前には準備を済ませたいところですが、そもそもいつ適用されるのかが分からない方も多いことでしょう。

 

ここでは、新リース会計基準の適用時期について解説します。

基本的に適用時期は公開基準が公表されてから2年後

新リース会計基準の公開草案では、原則として「会計基準の公表から2年後の事業年度の期首」に適用されると記されています。

これは公開草案ではなく最終的な会計基準の公表から2年後に適用されるという意味ですが、本記事執筆時点(2024年8月)では未だ会計基準の公表には至っていません。

新リース会計基準は2027年に延期となる可能性あり

新リース会計基準の公開草案の公表時期が2023年5月だったことに加え、公開草案には「適用は原則2年後」と適用までの期間について明記されています。

そのため2024年度に最終基準化が公表され、2年後の事業年度の期首である2026年4月頃に適用されるという予測もありました。

 

しかし2024年8月時点で最終基準化に関する情報は公表されておらず、依然として適用時期は不明です。

今から最終基準化を公表するにしても、2026年4月までの期間は2年未満となってしまいます。

したがって、新リース会計基準は早くとも2027年度に適用される可能性が考えられます。

新リース会計基準が及ぼす企業への影響

新リース会計基準が適用されると、主に経費処理や自己資本比率への影響が見込まれます。

具体的にどのような影響が及ぶのか、以下より解説します。

経費処理の負担が増える

新リース会計基準の適用後は、ファイナンスリース取引ではないリース取引でも賃借対照表に使用権資産やリース負債を計上する必要があります。

 

使用権資産は物件をリース期間にわたり使用する権利、リース負債はリース契約に基づく債務です。

リース料の支払いに伴い、使用権資産の減価償却費やリース負債の支払利息も区別のうえ処理しなくてはならず、仕訳パターンが増えて経理業務の負担増大につながります。

特にリース取引の件数が多い企業なら、従来と比べて大きな負担を強いられることでしょう。

 

また、新リース会計基準の適用に伴い、各種税法との整合性に注意が必要です。

現行の各種税法は既存のリース会計基準に則った内容とされており、新リース会計基準に合わせて税法が改正されなければ、その差分についての対応も考えなければなりません。

自己資本比率が低下する

新リース会計基準の適用後、従来は計上していなかった使用権資産・リース負債を追加することになります。

これにより、使用権資産が新たに計上されるため、企業の総資産が増加します。その一方、リース負債も新たに計上されますが、純資産(自己資本)は変わらないため、自己資本比率が低下します。

 

つまり、総資産が増えている一方で純資産は変わらないという状態、自己資本比率の低下を招きます。

 

自己資本比率は企業の安全性を測る指標であり、悪化すれば融資において不利となる可能性があります。

新リース会計基準で企業はどう対応すべきなのか

新リース会計基準の適用に向けて、ファイナンスリース取引とそれ以外の取引における会計処理を統一しなければなりません。

ほぼすべてのリース取引でオンバランス処理や毎月の償却・支払い時の利息計上などが必要な分、経理業務の工数増加が見込まれます。

従来の業務体制では対応しきれない可能性が高いため、経理担当者の増員や業務効率化に取り組むなどの対策に講じることが大切です。

 

また、オンバランス処理により賃借対照表や損益計算書の数字に大きな変化が生じる場合は、銀行や投資家などのステークホルダーへの適切な説明も必要です。

新リース会計基準でどれくらいの影響を受け、どのように経営指標が変化したのかを理解してもらい、信頼を保ちましょう。

新リース会計基準に対応する準備の流れ

新リース会計基準へ適応するには、早めに準備を進めておくことが大切です。

特に経理業務の負担が増えることを見越して、自社の現状に合った対策を講じておく必要があります。

 

新リース会計基準の準備を進める流れについて、以下より解説します。

現状の把握と影響度の分析

まずは自社のリース取引状況を把握し、新リース会計基準でどれくらいの影響が出るのかを分析します。

 

契約書を確認し、新たに資産や負債の計上が必要となる取引をすべて洗い出しましょう。

オンバランス処理の対象となる取引をリストアップしたら、会計処理にどれくらいの影響が出るのかを算定します。

併せて、現状の業務体制で処理しきれるボリュームかどうかも慎重に判断しましょう。

自社の対応方針を決める

現状と影響度の分析結果に合わせて、自社の対応方針を決定します。

新リース会計基準の適用後は経理業務の負担が増えることを前提として、業務設計の見直しや担当者の増員を検討すると良いでしょう。

 

業務設計の見直しでは、「書類の内容をExcelに手入力する」「膨大な契約書を紙で保管している」など、アナログかつ電子的な方法に移行可能な作業が存在していないかを確認しましょう。

これらはITツールの活用で効率化できる場合があります。

 

増員については、新たに経理担当者を採用する・派遣社員を投入するといった方法があります。

ただし基盤となる業務フローが適切に整っていないと、ただ人数を増やすだけでは対応しきれなくなる恐れがあります。

まずは業務設計を見直し、新たな業務フローに増員の必要性が生じた際に増員の方法を検討しましょう。

 

対応方針が決定したら社内の関係者や経営陣へ報告し、必要に応じて調整を行います。

そのうえで、新リース会計基準とその対応方針に合わせて社内規程を改訂しましょう。

対応方針に合わせてシステムを選ぶ

対応方針としてシステム導入となった場合、選定を行います。

 

システムを導入するにあたって、導入を最終目的にしないことを心がけましょう。

自社は何の業務でシステムを活用したいのか、機能性は自社の業務フローに合っているかといった点を踏まえて、最適なシステムを選ぶことが大切です。

 

例えば新リース会計基準の適用後も会計処理の負担を抑えたい場合は、取引データの入力を自動化できる会計システムの活用が適しています。

リース取引の会計処理の際に発生する契約の確認作業を省力化するなら、膨大な契約書も一元管理でき、検索機能ですぐに引き出せる契約管理システムがおすすめです。

 

会計システムとの連携ができれば、検索時間の短縮といった照会工数を中長期的に削減することもできます。

システムをトライアル利用する

導入するシステムが決定したら、まずは一定期間にわたりトライアル利用しましょう。

事前に慎重な検討を重ねても、自社の業務フローとシステムの相性を完全に測れるとは限りません。

また、いきなり本格運用を開始すると使い慣れないシステムに現場が混乱し、かえって効率の低下や従業員の負担増大につながります。

 

トライアル利用しながら、システムの使い勝手や業務への影響などを現場の担当者からヒアリングし、このシステムで運用を続けていくかどうか判断しましょう。

新リース会計基準の適用が延期されても準備は早めに!スムーズに対応するならITツールの活用がおすすめ

2026年度の適用が見込まれていた新リース会計基準ですが、「会計基準の公表から原則として2年後」といった旨の記述や未だ会計基準が公開されていないことを踏まえると、早くとも2027年度の適用になると予想されます。

とはいえ、企業によっては新リース会計基準の適用で会計処理や経営指標に極めて大きい影響が生じる可能性もあります。

そのため新リース会計基準の内容をよく確認のうえ、早期に準備へ着手することが重要です。

特に、会計処理や契約管理の負担軽減に有効なシステムは早めに導入しておくと、新リース会計基準の適用にも新たな業務フローへ移行しやすくなります。

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