ノウハウ 業務改善の効果を高める「洗い出し」の方法とは?フレームワークも解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年08月27日
業務改善の効果を高める「洗い出し」の方法とは?フレームワークも解説
労働力不足が深刻化している現代において、どんな企業でも業務効率化や生産性の向上は重要性が高い取り組みです。
それらを実現させるには、既存の業務に潜む課題を洗い出して改善に努める必要があります。
とはいえ業務の洗い出しとは何なのか?何から手をつけるべきなのか分からない方も多いことでしょう。
そこで今回は業務の洗い出しについて、具体的なやり方・フレームワークなどを解説します。
業務改善ではなぜ洗い出しが重要なのか
業務改善へ取り組むにあたって、「洗い出し」は重要なプロセスです。
洗い出しとは既存の業務に潜んでいる課題・問題点を見つけ、その原因を明らかにすることを指します。
洗い出しをせずいきなり業務改善へ取り組んでも、解決すべき課題・問題点が分からず活動の効果を十分に得られません。
また、洗い出しをしてもそこで問題の本質を掴めなければ、効果的な施策を生み出すことはできません。
結果としてリソースと時間を無駄に消費することになるため、業務改善の前には適切な方法による洗い出しが必要不可欠です。
適切な洗い出しを経て行われた業務改善の効果
業務改善を達成するためには既存の業務に存在する無駄な作業の削減、つまり業務効率化が必要です。
しかし業務効率化をしたくても、「そもそも何が無駄な作業で、それがなぜ発生しているのか」は容易に把握できるものではありません。
何となく現場を観察しているだけでは上辺の情報しか掴めず、問題となっているポイントへの効果的なアプローチは叶わなくなります。
一方で、正確な情報を掴める手法で業務の洗い出しを行えば、上辺だけでは見えない重要な問題も把握できるようになり、業務効率化の成功率も高まります。
業務効率化を成功させれば、無駄な作業の削減による「人件費のカット」、少ない労力で高い成果を出せる「生産性の向上」といった効果が得られます。
業務改善のために問題点の洗い出しを行う方法
業務の問題点を洗い出す方法は複数あり、現場の状況や目標に合わせて選んだり併用したりするのが望ましいです。
ここでは、業務改善における問題点の洗い出しに活用できる方法と、それぞれの特徴を詳しく解説します。
社内でのヒアリングとアンケートの実施
既存の業務にある重要な問題点を突き止めるためにも、現場の声は欠かせません。
業務改善を実施する範囲に関わる従業員に対し、ヒアリングやアンケートで現状の問題とその原因について意見を聞いてみましょう。
意見を集めるにあたって、ヒアリング・アンケートの実施範囲はできるだけ広く設定するのがおすすめです。対象者が多いほど様々な意見を得られるため、洗い出しの精度も高まります。
また、どんな従業員も遠慮なく意見を述べやすい雰囲気づくりも大切です。いち従業員の意見だからと軽視せず、意見に込められた気持ちの理解に努めましょう。
顧客アンケートの活用
社内だけでなく顧客にもアンケートの協力を依頼して、外部の意見を集めるという手段も検討しましょう。
顧客が関わる業務であれば、社内では発見しきれない問題が潜んでいる可能性もあるからです。
自社のサービスや製品を受け取る側ならではのリアルな意見を取り入れ、洗い出しの精度を高めましょう。
顧客の意見を取り入れた業務改善を実施すれば、従業員だけでなく顧客満足度の向上にもつながり、自社の信用アップにも期待できます。
他社の成功例を参考にする
競合他社では業務改善にどのような施策を講じて、どのような結果を出しているのかといった情報収集もおすすめです。
自社と同じ分野でビジネスを展開する企業の成功例を参考にすれば、自社に適した業務改善策の輪郭がより鮮明に見えてきます。
単に施策のヒントを得るだけでなく、競合他社との差別化戦略にも有効な手段です。
情報収集を通して強み・弱みや特徴を推察し、自社と他社でどのような差があるのかを明確にすれば、競争力強化につながる施策を立てやすくなります。
競合他社の情報を収集する方法としては、インターネット上でのリサーチやアンケート調査、企業への直接訪問などがあります。
その企業の規模が大きいほど情報の集約には手間がかかるため、後述するフレームワークや分析ツールを活用すると良いでしょう。
フレームワークを利用する
ビジネスにおけるフレームワークとは、目標の達成や課題解決のために役立つ「論理的思考の枠組み」です。
業務改善に向けた洗い出しや改善策の実施は自社にマッチしたやり方で進めることが大切ですが、ゼロからすべてを組み立てようにも何から考えるべきか悩むはずです。
フレームワークを活用すれば、枠組みに業務内容などをひとずつ当てはめて自社の現状を可視化できます。
業務の全体像がひと目で分かるようになり、問題をスムーズかつ的確に特定することが可能です。
なお、フレームワークにも様々な種類があり、どのように業務改善をしたいかで活用に適したものは変わります。
業務改善の洗い出しに使えるフレームワーク
業務改善に活用できるフレームワークとしては、PDCAサイクル・ECRS・ロジックツリー・バリューチェーン分析がおすすめです。
それぞれの特徴について、以下より解説します。
PDCAサイクル
PDCAサイクルというフレームワークの名称は、以下4つの頭文字を取っています。
・Plan(計画) ・Do(実行) ・Check(評価) ・Action(改善) |
端的に言えば、PDCAサイクルは上記4つのプロセスを繰り返し行っていくことです。
具体的には改善に向けた行動計画の策定から始まり、施策の実行と効果を測定し、測定結果に基づき改善を検討します。
この流れを経て、以降はより良い改善策を実行できるようになります。
ECRS
ECRS(イクルス)は「改善の4原則」とも呼ばれており、業務改善に必要な4つの要素の頭文字を取った名称のフレームワークです。
ECRSには、以下4つの要素が含まれています。
・Eliminate(排除) ・Combine(結合) ・Rearrange(入れ替え) ・Simplify(簡素化) |
既存の業務をECRSに基づき改善する場合は、排除→結合→入れ替え→簡素化の順で実施するのが良いとされています。
まずは本来なら不要な業務などを排除し、次に似ている業務を一元化できないか検討します。
必要に応じて作業の順序を入れ替えたり担当者を替えたりしたうえで、作業工程を簡素化して誰でも実行できるようにするというやり方です。
ロジックツリー
ロジックツリーは、問題や原因などを構成する要素をツリー上に書き出して解決法を見つけるフレームワークです。
例えば自社の利益が少ないという問題の解決法を見つける場合、「利益が少ない」という問題を頂点に置きます。
その下に、「売上高が低い」「コストがかかっている」など、問題の原因として考えられる要素を置きます。
そこからさらに、各要素の原因となり得る要素を置いていき、少しずつ問題を細分化していくという流れです。
このように、ロジックツリーで現状を細かく掘り下げていくことで、問題の根本的な原因を可視化できます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、商品の製造から販売に至るまでの流れを可視化して、工程ごとに分析するマーケティング手法です。
バリューチェーン分析をするにあたって、自社の事業活動を「主活動」と「支援活動」という2つの枠に分類します。
主活動とは購買物流・製造・販売・サービスといった、利益を生み出すための活動です。
一方で支援活動は、人事労務管理・技術開発・企業インフラなど、主活動を支えるための活動が該当します。
自社の活動を上記のように分けて可視化することで、具体的に何が利益をもたらし、何が利益に支障を出すのかが把握できるようになります。
業務改善での洗い出しを進める際のポイント
業務の問題点をより効率的に洗い出すためには、以下のポイントを意識して取り組むのがおすすめです。
現状の作業について正しく把握する
問題点の把握における精度は、現状をどれほど把握できているかで変わります。
洗い出しの作業へ入る前に、業務フローを可視化する・現場の従業員へヒアリングするといった現状把握のプロセスも怠らないようにしましょう。
特に、「マニュアルや資料に記載されていない作業」の有無には注意が必要です。
従業員個人の裁量で作業が行われている現状を放置すると、業務の属人化・ブラックボックス化の加速を招きます。
現状の業務に潜むリスクを特定するためにも、幅広く丁寧なヒアリングを心がけたり、業務一覧表で現状の全体像を可視化したりといったように取り組みましょう。
業務を可視化する一覧表のフォーマット
一覧表で業務の現状把握する際の基本的な流れとしては、改善対象の範囲で行われているすべての業務の洗い出しから始まります。
洗い出した業務を様々な項目に分けて書き出し、業務一覧表を作成しましょう。
作り方の例として、業務一覧表のフォーマットをご紹介します。
作成方法に決まりはありませんが、作成時の参考にしてみてください。
大項目 | 中項目 | 小項目 | 担当者 | 発生タイミング | 備考 |
営業事務 | 受発注 | 専用システムへの受発注 | ○○ | 都度 | |
受注数の管理・集計 | ○○ | 目次 | |||
書類作成 | 見積もり書・発注書・注文請書・納品書・契約書作成 | △△ □□ | 都度 | ||
請求書作成 | □□ | 月に1回 | |||
顧客対応 | 電話・メールの応対 | ○○ ×× △△ □□ | 都度 | ||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ||
総務 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | |
業務一覧表は、管理者だけでなく実務の担当者から新入社員まで、誰が見ても分かりやすい内容にまとめることが大切です。
一覧表を作成したら現場の従業員に共有し、業務の抜け漏れや内容の齟齬の有無などを確認してもらいましょう。
問題点に優先順位をつける
現状の業務から複数の問題点が見つかったら、それぞれの影響度を評価のうえ解決の優先順位をつけましょう。
影響度を評価する際、「重要性(事業やプロジェクトの成功にどれだけ関わるか)」と「緊急性(対応の時間的余裕があるかどうか)」という2つの軸で考えます。
最も優先的に改善すべきなのが重要性・緊急性のどちらも高い問題で、次に重要性が高く緊急性が低い問題の改善に取り組みます。
ある程度の緊急性があっても重要性が高くない問題はその次に改善し、最後にどちらも高くない問題に対応しましょう。
短期的な効果を重視しすぎない
業務改善は、必ずしも短期的な取り組みで得られるような効果のみで達成できるとは限りません。
問題によっては、長期的な取り組みにのみ得られる効果でしか改善できない場合があります。
業務改善の手段として、システムを導入して既存の業務フローを抜本的に改革するという手段があります。
システム導入にはサービスの選定やトライアル利用などに時間がかかる他、導入コストも発生します。
しかし業務にマッチしたシステムを導入できれば、作業の自動化で大幅な業務効率の向上につながり、導入までの労力・コスト以上の価値を実感できるはずです。
従業員への周知や教育を怠らない
業務改善を実行する際は上層部や管理者だけで進めるのではなく、従業員への周知と教育も徹底する必要があります。
周知や教育が不十分だと現場の理解を得られず、改善のために実行した施策がなかなか馴染まず、失敗に終わる可能性があります。
事前に洗い出した問題点やそれらを解決する必要性を説明し、改善策の実施時は新たな業務フローの共有と教育を行いましょう。
大幅な業務改善で周知・教育に手が回らない場合は、対象を各部門の代表者に絞り、他従業員への周知と教育を任せるという手もあります。
問題点の洗い出しは業務改善の成否につながる!解決に適したツールの活用も忘れずに
業務改善を成功させるには、問題の洗い出しを入念に行っておく必要があります。
適切な方法で問題の洗い出しを行えば、自社が抱えている重要な問題点を見逃さず、効果的な方法で改善に取り組みやすくなるからです。
洗い出しの手法としては、PDCAサイクル・ECRS・ロジックツリー・バリューチェーン分析といったフレームワークに沿った進め方をおすすめします。
問題を洗い出したらその解決に有効なITツールも上手く活用し、さらに改善の効果を高めましょう。