ノウハウ システムリプレイスとは?失敗の原因を知り成功させるには?
更新日:2024年10月31日
投稿日:2024年07月22日
システムリプレイスとは?失敗の原因を知り成功させるには?
電子契約を検討しているものの、今のシステムに電子契約機能が搭載されていないのであれば、システムリプレイスを行いませんか?
- オンプレミス型の電子契約システムを利用中だが使い勝手が悪く、更新のタイミングを迎える
- 受注量の増加に伴い契約管理システムのスペックが足りない
上記のケースも、システムリプレイスをおすすめします。
システムリプレイスとは何をすることで、どのようなメリットがあるのでしょう。
手順と方式、成功のポイントも解説しているので、本記事を読めば失敗しないための注意点が分かるでしょう。あわせて、契約業務のシステムリプレイスの事例も紹介しています。
システムリプレイスとは
企業のITシステムを新しいものに置き換える・作り替えることです。「システムリプレース」と表記することもあります。
リプレイスは、「取り替える」という意味の英語のreplaceです。
似た言葉に「マイグレーション」があります。
マイグレーションとは、OSやプラットフォームや開発言語といった環境を変更して同じシステムを使い続けることです。既存のOSやプラットフォームのサポートが切れた、保守運用にかかるコストがかさんできた時などに実施されます。
マイグレーションは既存のシステムそのままに環境を変えること、システムリプレイスはシステムごと新しくする、という違いがあります。
システムリプレイスは、以下の3つに対応することを目的に行われます。
- システム老朽化
- 既存のシステムを知る技術者の減少
- ITを取り巻く最新トレンド
【関連記事】初めてでも失敗しない!システム導入のフローを分かりやすく解説
システムリプレイスの手順
- プロジェクトチームの発足
- 要件の洗い出し
- 移行計画の立案
- プロジェクト予算の確保
- システム開発
- 移行テスト
- 移行の実施
プロジェクトチームの発足
情報システム部門に加え、システムを使う部門もチームメンバーに入れることが求められます。実際にシステムを使うメンバーの意見を反映できるためです。
メンバーで以下の役割と担当者を明確にします。
- 予算の確保と管理
- システムの入れ替えを技術的な観点から検討
- 現場のシステム利用について
- プロジェクト全体の取りまとめ
要件の洗い出し
どのようなシステムに入れ替えるか検討する際、既存のシステムの振り返りは欠かせません。
今のシステムでできたことや改善が必要なことを洗い出すと、必要なシステムが見えてきます。
必要な機能などを技術者に共有することはもちろん、システムを使用する従業員にもヒアリングをして要件を整理しましょう。
システムを使う従業員が必要な機能が搭載されないと、使いにくいといった不満につながります。最悪、業務に使えない事態も想定されます。
移行計画の立案
要件をまとめたら、システム移行に向けた計画を立てます。
無計画のまま進めてしまうと、遅延や予算不足などが起こり得ます。データ移行までのスケジュールに加え、移行するデータや機能の範囲もまとめておきましょう。
予算設定に悩んだら、複数の開発会社への問い合わせをおすすめします。いくつかの事業者から提案された予算を見ることで、相場が見えてきます。
プロジェクト予算の確保
計画・予算案を参考に、社内フローに応じて予算の承認を得ます。
システム開発
システム開発は開発ベンダーによって行われます。
開発会社は以下の手順で開発を進める
- 要件定義:システムに求められる機能や性能を明確にすること
- 設計
- プログラミング
- テスト
オンプレミス型は自社でシステム開発が必要になりますが、クラウド型ならシステム開発の手間を省ける分、時間と費用を削減できます。
移行テスト
システム移行の際にトラブルが起こらないよう、本格的に移行する前のテストは欠かせません。
テストで問題が発生したら、移行までに対処が必要です。テスト段階で課題をなくすことでスムーズに移行でき、実際の業務ですぐにシステムを使えます。
移行の実施
テストで問題なく移行できると判断されたら、本格的な入れ替えに移ります。
移行が終わり次第、新しいシステムに入れ替え前のデータが反映されているか必ず確認してください。
システムリプレイス実施の目安
国税庁は、一般的なソフトウェアの耐用年数を5年と定めています。(研究開発用や複写して販売するシステムの原本は3年)電子契約といったシステムであれば、導入から5年を目安にすると良いでしょう。
とは言え、耐用年数にあわせてシステムリプレイスを実施しなければならないと決められているわけではありません。
例えば、システム事業者のサポートが終了する場合、リスクに備えて5年を待たず実施した方が良いでしょう。
その他に、現場の状況にあわせて行うべき時もあります。
保守切れ
システムやソフトウェアのベンダーによるサポートが終了すると、セキュリティ更新などのサポートが受けられなくなります。そのまま使い続けると、セキュリティにまつわるリスクが高まります。セキュリティ対策を考えると、システムリプレイスに取り組む十分なきっかけと言えます。
使い勝手が悪くなった
システムが古くなるとパフォーマンスが低下し、処理速度が遅くなります。業務効率が下がり、使い勝手が悪いと感じるようになります。
既存のシステムと新しいソフトウェア・ハードウェアとの互換性がなくなることもあります。
最新のソフトが使えないなど業務へのしわ寄せを感じるようになったら、システムの入れ替えを考えるタイミングです。
業務拡大でシステムがマッチしなくなった
業務拡大で処理すべきデータが増えると、既存のシステムでは対応しきれなくなる恐れがあります。
業務プロセスの変更で追加で機能が必要になったものの、既存のシステムと相性が悪いことも珍しくありません。
業務拡大でシステムを使いたい業務の範囲が増えると、今まで使っていたシステムとマッチしづらいです。業務拡大をきっかけにシステムを見直すのも良いでしょう。
システムリプレイスのメリット
セキュリティレベルやシステムの安定性を保ったり、業務のデジタル化を進めやすいといった利点が挙げられます。
セキュリティレベルの維持
古いセキュリティのままだと、サポートがいつ終わってもおかしくありません。最新のソフトに対応できないことも起こり得ます。また、サイバー攻撃のリスクも高まります。
適切なタイミングでシステムリプレイスを行えば、セキュリティレベルを高く維持し続けることになります。
システムの動作の安定性の確保
システムリプレイスによって、保存容量の増加や処理スピードのアップが叶います。データが保存できない、動作が遅くなるなどに事前に備えられるということです。
古いシステムは故障リスクが高いです。システムリプレイス実施目安を参考にしたり、組織が大きく変わったりといったタイミングで入れ替えることで、故障のリスクを少なくできます。
業務のデジタル化を進めやすくなる
業務のデジタル化には、複数のシステムの連携、法令の要件を満たす機能を搭載したシステムの利用などが必要です。
既存のシステム同士の連携ができない、法令に則った機能がないといった場合、システムリプレイスによってデジタル化に対応できるようになります。
システムリプレイスのデメリット
時間とコストがかかること、一時的にシステムを使えなくなる場合があることに注意が必要です。
時間とコストがかかる
必要な機能を洗い出したり、移行に問題がないかテストしたりと、すぐにシステム移行できるわけではありません。
また、新しいシステムの導入には費用もかかります。
一時的な運用中断が必要
既存のシステムから新しいものに入れ替える時、システムを使えないタイミングが発生します。業務効率はもちろん、サービス停止による顧客への影響も懸念されます。
新たなシステムに慣れるまで、スムーズに使えないなどで大変です。すぐに慣れるようマニュアルを用意し、必要があれば研修を行うと良いでしょう。
システムリプレイスの方式
4つの方法があります。
- 一括移行(一斉移行)方式
- 段階移行方式
- 順次移行方式
- パイロット移行方式
方式 | 特徴 |
一括移行(一斉移行)方式 |
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段階移行方式 |
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順次移行方式 |
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パイロット移行方式 |
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システムリプレイスが失敗する原因
システムリプレイスを実施する理由が明確でないと、失敗のリスクが高まります。
システム入れ替えの目的があいまい
システムリプレイスの目的が明確でないと、どのようなシステムに入れ替えるべきか分かりません。
ニーズに合わないシステムにしてしまうと、必要な機能を使えず、コストがかかるだけとなってしまいます。
既存システムより良いシステムを導入することが目的になっている
システムリプレイスのメリットを感じるためには、システムを入れ替える目的を設定することは必要です。
しかし、既存のシステムより良いシステムを導入することが目的だと、社内の課題解決につながるシステムを選ぶことは難しいです。
入れ替え後のシステムが自社とマッチしない
システムリプレイス実施の目的があいまいなために失敗することと重なりますが、実施する理由を整理しないと、必要な機能が見えてきません。結果、自社で必要なシステムを選定しにくくなります。
無料トライアルを提供するシステムもあるので、自社にマッチするシステムか悩んだら、試しながら検討するとミスマッチが起こりにくいです。
システムリプレイス成功のポイント
計画を立てる時の注意点など7つのポイントを紹介します。
リスクを想定した計画を立てる
テスト段階で多くの問題が見つかり、予想以上に移行までに時間がかかるといった事態は起こり得ます。
移行まで余裕を持ったスケジュールを立てることはもちろん、システム入れ替え後に従業員に使い方を共有する時間も加味することで、スムーズに使えるようになるでしょう。
信頼できる開発ベンダーと協力しながら進める
システムリプレイスには専門的な知識が必要です。故に、開発ベンダーに依頼することは珍しくありません。開発会社と協力することで、自社だけでは気づけなかった課題からニーズを満たすシステムが見えることもあります。
ただし、事業者に任せきりは好ましくありません。自社でも課題や目的を整理しないと、何を依頼すれば良いか分からないためです。
必要な機能やどのように使えるシステムが良いか整理する段階に、システムを使用する部門にも必ず参加してもらいましょう。
事業者の質が高いほど、システムの質、スケジュール管理、導入後のサポートの点で安心です。実績を確かめるなど信頼できると思える業者に依頼しましょう。
要件の洗い出しと計画を立てる工程を軽視しない
要件定義が甘いと、後の工程で仕様の抜け漏れが発覚します。スケジュールの遅延にとどまらず、システムを使ってやりたいことができなくなることも懸念されます。
要件定義は、システムリプレイスの結果を左右すると言っても過言ではありません。システムの現状を整理し、必要なシステムについて具体的にイメージすることが重要です。
予算や納期が限られているために、完璧に理想のシステムにすることが難しいこともあるでしょう。そこで、要件を細かく洗い出すことで、優先度の高いものに絞ったシステムにすることもできます。
システムの品質と業務継続性を担保する
要件の洗い出しといった上流工程の段階で、どのように設計・開発・テストを行うことでシステムの品質を保証するのか明らかにすることが大切です。品質保証についてシステム部門、利用者はもちろん、経営層からも合意が必要です。
システムを入れ替えても、既存業務を継続できなければなりません。テスト段階で見つかった問題と移行後に想定されるリスク、それぞれ適切と思われる対処法を示すことで、業務中断のリスクを減らせます。
システムリプレイスの難しさを経営層とも共有する
要件定義のあいまいさが原因で開発すべきシステムが見えずテスト段階まで課題に気づかない、想定以上の課題が見つかって計画が遅れるなど、システムリプレイスは容易ではありません。
予算やスケジュールを十分に確保してもらうためには、経営層がシステムリプレイスの難しさを把握していることが重要です。
既存システムとの連携を事前に確認する
既存のシステムを他のシステムと連携していて、システムリプレイス実施後も連携を考えているのであれば、開発会社に連携できるかご確認ください。
使用中のシステムの他にも連携を検討しているシステムがあれば、連携できるか、連携できる場合は手順も確かめます。
システムが一時中断する場合は影響する範囲を把握する
移行中はシステムが使えなくなる場合があります。システムの停止を伴う場合、停止による影響を確認しましょう。
システム停止は、業務の進捗に限らず、取引先や顧客にも影響が及ぶ可能性があります。システム停止のリスクを把握した上で、移行方式を決定することをおすすめします。システムの停止が生じるようなら、対策も考えておきましょう。
契約業務システムのシステムリプレイスした事例
株式会社キューソー流通システムでは、契約業務の電子化は既に行われていました。ところが、捺印・押印申請・承認フローが複雑でした。メンバー間の共有が難しく、システムのカスタマイズを繰り返していたということです。
オンプレミスでの運用だったため、リリースアップのタイミングでクラウドサービスへの移行を検討していました。複数のサービスを比較検討する中で、課題解決にマッチするとのことで弊社のContractS CLMを導入いただくことになりました。
導入効果
- グループ会社を含めて導入し、契約申請から捺印、保管までの進捗の把握が容易に
- 契約全体を「ContractS CLM」で一元管理。案件ごとに可視化され業務がスムーズに
- 電子契約の推進により印紙代や郵送代など紙の契約書にまつわるコスト面削減
- 「ContractS CLM」の導入に際全社の契約業務の仕組み、ルールを改めて周知できたことでリスクマネジメント強化に
全国拠点の契約を「ContractS CLM」へ集約。 物流ビジネスのリスクを防ぐ法務のインフラに
まとめ
システムリプレイスとは、企業のシステムを最新のものに更新し、老朽化や最新トレンドに対応するために行われるものです。
このプロセスは、計画段階から実施後に至るまで、入念な準備が不可欠です。成功させるためには、目的の明確化、リスクの把握、および対策の準備が求められます。
自社に適したシステムへの入れ替えは、組織の成長と競争力を維持し続けるための重要な一歩となるでしょう。