ノウハウ 合意証明書(合意締結証明書)とは?必要性や記載項目など解説
更新日:2024年10月31日
投稿日:2024年07月22日
合意証明書(合意締結証明書)とは?必要性や記載項目など解説
電子契約を取り交わす際、「合意証明書(合意締結証明書)」の発行が必要になる場合があります。
合意証明書は締結した電子契約に法的効力を与えるために重要な文書ですが、その言葉を目にする機会は少ないため、その内容が分からない方も多いことでしょう。
そこで今回は、合意証明書とはどんな文書なのか、目的・記載内容・活用方法などと併せて詳しく解説します。
最初に知っておきたい「契約締結日」の考え方
合意証明書について知る前に、契約締結日の考え方についておさらいしておきましょう。
契約締結日とは、契約によって発生する関係に対して当事者が合意した日を指します。
しかし、当事者によって「どのタイミングを契約締結日とするのか」の考え方は異なるため注意が必要です。
契約締結日とされるタイミングの例
契約締結日の考え方は様々ですが、以下5通りのうちいずれかのタイミングを契約締結日とするケースが一般的です。
・契約書に記載された契約期間の初日 ・当事者のうち、先に押印する方の当事者が押印した日 ・当事者のうち、後に押印する方の当事者が押印した日 ・当事者が契約条件に合意したと示された日(口頭での合意など) |
上記の中でも、「後に押印する方の当事者が押印した日」を契約締結日とするケースは特に多く見受けられます。
合意証明書(合意締結証明書)とは
合意証明書とは、「いつ・誰が・どんな契約書に合意したのか」を明確にした文書です。
これにより、電子契約の合意・締結があった事実を客観的に証明できます。
詳細は後述しますが、合意証明書に対応している電子契約サービスを利用していれば発行することが可能です。
電子契約サービスによっては、「合意締結証明書」「電子契約締結証明書」「契約締結情報」などと呼ばれることもあります。
合意証明書の目的・必要性
合意証明書は、主に電子契約を締結する際に発行される文書です。
電子契約は利便性が高い反面、電子契約サービスが利用できなくなる場合があったり、当事者がいつ・何に合意したかが確認しにくい場合があったりします。
しかし合意証明書には、契約を取り交わす当事者の情報や契約条件に合意した日時などが明確に記載されています。
そのため電子契約の締結に際して発行しておけば、万が一電子契約サービスを利用できなくなっても、当事者が契約に合意したことを客観的かつ容易に証明が可能です。
このことから、電子契約におけるトラブル発生のリスクを抑えることを目的に、合意証明書が発行される場合があります。
合意証明書の記載項目
電子契約サービスによって異なりますが、合意証明書は基本的に以下のような項目で構成されています。
・契約者の情報 ・送信者の情報 ・受信者の情報 |
ここでは、各項目でどのようなことが記載されているのか解説します。
契約書の情報
契約者の情報として記載されている内容としては、以下の通りです。
・当該契約書の名称 ・当該契約書に付与された管理番号 ・署名方式(電子署名か電子サインか) ・受信者の本人認証方法 ・当事者の合意後にタイムスタンプが付与された日時 など |
管理番号として当該契約書に埋め込まれたIDなどが記載されており、IDとの参照により当該契約書との関係性を確認し、契約の事実を証明できます。
電子署名・電子サインとは
電子契約では、紙契約における署名・印鑑の代わりとして「電子署名」または「電子サイン」が用いられます。
電子署名とは、事業者署名型(立会人型)と呼ばれるタイプの署名タイプです。
「公開鍵暗号技術」に基づく署名技術を利用しており、送信者本人が持つ秘密鍵に対応した公開鍵を受信者が使って署名することで、本人性・非改ざん性を証明できます。
電子署名法第3条では、同法2条で定められた定義を満たす電子署名なら、それが付与された契約書による契約は真正に成立したと推定できると記されています。
民事訴訟法第228条に基づき、その契約書データを契約の真正性を示す証拠として利用することも可能です。
一方で電子サインは、電子的なプロセスで署名(本人確認)を行うことの総称です。
電子署名も電子サインという大枠に含まれていますが、一般的には公開鍵暗号技術を用いない署名を指す言葉として使われています。
例えばタブレットにタッチペンで氏名を書いたり、紙に書いた署名をスキャンして電子保存することも電子サインに含まれます。
【関連記事】電子署名とは?電子サインのやり方、違い、仕組み、必要性、法律など基礎から解説
タイムスタンプとは
電子契約における「タイムスタンプ」とは、電子化された契約書に修正・改ざんが行われていないことを証明する技術です。
電子文書はその性質上、紙の文書よりも痕跡を残さず簡単に修正・改ざんできるというデメリットがあります。
そこで「時刻認証局」と呼ばれる第三者機関に、当該契約書がその日時・その内容で存在していたことを証明するタイプスタンプを付与してもらいます。
具体的には、当該契約書から生成された独自のハッシュ値を認証局へ送信し、そのハッシュ値に時刻情報を加えてもらうというプロセスです。
その契約書のハッシュ値と時刻認証局から付与されたタイムスタンプの時刻情報を照合のうえ、一致することを示せば非改ざん性を証明できます。
タイムスタンプの発行プロセスやタイムスタンプが必要な書類などに関しては、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】タイムスタンプとは?取得方法や各法律との関係などわかりやすく解説
送信者の情報
契約書の送信者に関わる情報として、以下の内容が記載されます。
・電子契約サービスに登録している企業名や屋号 ・契約書の送信者の名称 ・契約書の送信者のメールアドレス ・契約書の送信者の本人認証方法 ・契約書の送信日時 など |
受信者の情報
契約書を送信者から受信・承認した人、転送された当該契約書の受信者にあたる人に関わる情報では、以下の内容が記載されています。
・受信者のメールアドレス ・契約の合意に使用した名称 ・契約の合意に使用した企業名や屋号 ・契約を合意した際の場所 ・契約の合意が完了した日時 など |
合意証明書の活用方法
合意証明書は電子契約において必ず発行すべきというわけではありませんが、リスク管理や業務効率化という面でメリットがある文書です。
特に、以下のようなケースでは合意証明書が役に立ちます。
電子契約の法的効力を保つ
電子契約を締結するにあたって、自社で電子証明書を取得する必要がない電子契約サービスを利用する場合が多いです。
電子契約サービスは導入すればすぐに電子契約を締結できる一方で、何らかのトラブルでサービスが終了したりアカウントが使えなくなったりといったリスクも伴います。
サービスが使えなければいざというときに電子契約が合意された事実を証明できず、さらなるトラブルに発展する恐れがあります。
しかし、あらかじめ当該の電子契約に関して合意証明書を発行しておけば、たとえ電子契約サービスが使えなくなっても契約の事実を証明できます。
万が一に備えたリスク管理の一環として、合意証明書の発行は有効です。
電子契約の信頼性に対する懸念を払拭する
先述したように、契約書データに要件を満たした電子署名が付与されていれば、その電子契約は書面契約と同等の法的効力があるとされています。
しかし、IT分野に慣れていない契約相手や電子契約を深く理解できていない契約相手などは、電子契約の信頼性に不安を覚える場合があります。
そこで電子契約の信頼性をより確かなものとするため、合意証明書を発行して契約に合意があった事実を確認できるようにするという活用の仕方も可能です。
電子契約と紙の契約書をアナログで一元管理する
自社が電子契約の導入を決めても、すべての取引先が紙契約から電子契約への切り替えに対応してくれるわけではありません。
電子契約と紙の契約が混在する状態でも契約管理を効率化させたい場合は、合意証明書が役立ちます。
電子契約の締結時に合意証明書を発行しておき、それを印刷します。
印刷した合意証明書と紙の契約書をまとめて保管しておけば、紙契約と電子契約の締結を証明するものをひとつの場所に保存し、必要なときに引き出すことが可能です。
【関連記事】電子契約を行うメリット、デメリットは?導入検討のポイントを分かりやすく解説
合意証明書の活用における注意点
合意証明書を活用するにあたって、以下の点に注意が必要です。
契約書原本の代わりとしては使えない
合意証明書には締結された電子契約の内容が含まれているとはいえ、契約書原本とは別物です。
電子帳簿保存法で定められた保存要件が適用されるのは、契約書原本です。
その要件に対応できないからといって、適用外である合意証明書を契約書原本として代用するという活用方法はできません。
合意証明書は、契約に合意があったことを証明するための文書ということを念頭に置いて活用する必要があります。
すべての電子契約サービスで発行できるわけではない
利用している電子契約サービスによっては、合意証明書の発行に対応していない場合があります。
合意証明書は発行義務がないため、発行できない電子契約サービスを利用しても法律上は問題ありません。
しかしリスク管理や業務効率化のために必要であるなら、あらかじめ合意証明書の発行の可否を確認のうえ、電子契約サービスを選ぶことが大切です。
一般的な合意証明書の発行方法
合意証明書の具体的な発行プロセスは電子契約サービスによって変わりますが、一般的には以下のような方法で発行します。
・電子契約サービスの管理画面から締結済みの契約書を選択して合意証明書を発行する(送信者) ・締結後に届く確認用メールに記載のURLから合意証明書を発行する(受信者) |
なお、電子契約サービスによっては締結前に合意証明書を発行するための設定を済ませていないと、発行できない場合があります。
契約の前に操作方法をよく確認しておき、スムーズに合意証明書を発行できるようにしましょう。
CotractS CLMの合意証明書の発行方法
契約ライフサイクルシステム『ContractS CLM』では、合意証明書の発行が可能で具体的には以下の手順で発行ができるようになっております。
1:契約書詳細画面からダウンロードする場合
2:締結完了メールからダウンロードする場合
アカウントを持っていない締結相手の方も含め、締結の当事者は「締結完了メール」から、合意証明書のダウンロードが可能です。
また、閲覧者、確認者も同様に「締結完了メール」から合意証明書のダウンロードができます。
合意証明書は契約に合意した事実の証明に有効!上手な活用で電子契約を適切に管理しよう
合意証明書とは、電子契約において「いつ・誰が・どんな契約に合意したのか」を明確に記した文書です。
具体的には契約者・送信者・受信者に関わる様々な情報が記載されており、契約が双方で合意のうえ締結されたものであると客観的に証明できます。
合意証明書は、電子契約サービスが使えなくなったときに備える・電子契約の信頼性をより確かなものとする・紙契約と電子契約をまとめて管理するといった場合に役立ちます。
電子契約の締結日を双方の合意があったタイミングとするなら、合意証明書はさらに重要な文書となります。
これから電子契約サービスを導入する予定の方は、ぜひ自社の運用方法を念頭に置きながら合意証明書の発行の可否もチェックしつつサービスを選んでみてください。