ノウハウ OCRとは?契約書管理での有効性や活用ポイントを解説
更新日:2025年03月31日
投稿日:2024年07月22日
OCRとは?契約書管理での有効性や活用ポイントを解説

業務改善などの観点からペーパーレス化の重要性が説かれている一方で、すべての書類をデジタルで作成することは難しい場合もあるかと思います。
「紙の書類がどうしても必要なのでペーパーレス化は諦めている」とお悩みの方には、OCRの活用がおすすめです。
今回はOCRとは何か?どんな効果があるのか?どんなツールで使えるのか?などについて詳しく解説します。
OCRとは
正式名称を「Optical Character Recognition(Reader)」というOCRとは、紙の書類に記載された文字を認識・抽出し、テキストデータに変換する機能のことです。
契約書・請求書・納品書など取引で使う書類は、取引先に電子化への移行を拒まれる・法的に電子化が不可能といった理由から、やむを得ず紙で作成のうえ保管しているケースもあります。
しかし紙の書類をすべて保管するとなれば十分なスペースが必要なだけでなく、後から取り出す際に探す手間も生じることが難点です。
とはいえ、書類の内容を手入力でExcelやシステムに転記のうえ電子化するとなれば、入力ミスや業務負担の増大というデメリットを伴います。
OCRなら、紙の書類に記載された文章を正確かつ迅速に電子化することが可能です。
これにより紙の書類を完全に排除できない業務でもペーパーレス化を推進でき、効率アップの効果を得られます。
OCRとAI-OCRの違い
OCRの開発技術は進化を続けており、近年は「AI-OCR」も登場しています。
AI-OCRとは文字通りAI技術を搭載したOCRのことで、従来のOCRよりも高精度な文字認識が可能です。
例え文字認識に誤りがあっても、AIが「誤った文字」も学習するため、使用を続けるにつれて認識の精度がさらに高くなっていきます。
領収書などフォーマットが決まっていない書類も事前設定なしで文字を抽出できたり、読み込んだデータを外部システムに自動入力できたりといったメリットもあります。
契約ライフサイクル管理システム『ContractS CLM』のAI-OCRについての詳細はこちら
OCRの仕組み
OCRに読み込ませた書類の文字が電子化されるまでの基本的な仕組みを解説します。
書類を画像に変換する
まずは電子化したい書類をスキャンして、画像データに変換します。
その際、書類の表面の汚れやゴミなどがない状態にするとより高精度に文字を認識できます。
これはOCRを使うための事前準備であり、次のステップから文字を認識してテキストデータに変換します。
画像内のレイアウトを認識する
スキャンで画像データにした書類をOCRが読み取り、「どこに文字列があるのか」というレイアウトを認識します。
文字・罫線・写真などをもとに画像全体のレイアウトを把握してから、抽出すべき文字を確認するというプロセスです。
なお、通常のOCRではレイアウトが一定ではない書類を読み取る場合、その都度書類のレイアウトに合わせた設定を済ませておく必要があります。
AI-OCRの場合は、過去に学習したデータを活用して設定なしでレイアウトを認識することが可能です。
文字列や文字を認識する
抽出すべきと認識した文字列から、文字のまとまりを1行ずつ分解します。
分解したらさらに1文字ずつ分解し、その文字を認識していきます。
文字を認識する際は、形状から変換候補をマッチングし、最も形状が近い文字を判断します。
なお、文字のかすれやカラー文字などが混在していると文字認識の精度が下がるため、くっきりと印刷された黒字を読み取らせるのが望ましいです。
すべての文字を認識したら、最後は人の目で誤字の有無を確認のうえ修正します。
OCRでは文字の誤認識が発生している場合がほとんどなので、必ず確認しましょう。
AI-OCRの場合は学習データをもとに自動で文字を訂正できることがありますが、いずれにしてもデータの正確性を担保するにはダブルチェックが必要です。
データ化した書類を出力する
抽出した文字を処理して、データに変換します。
利用するOCRによっては、テキスト・Word・Excelの他、PDFデータとして出力することも可能です。
AI-OCRの機能
AI-OCRは、AIを活用しているからこそ通常のOCRでは実現できない機能も備わっています。
AI-OCRならではの機能としては、以下の4つが挙げられます。
機能 | 内容 |
高精度な読み取り機能 | 手書き文字のような不規則な書き方の文字、印鑑修正などを認識する |
文脈を認識する機能 | 文字・文章の前後から正しい文脈を判断し、誤変換を直す |
ディープラーニング | 人間の頭脳と同様に過去の経験(データ)から学習し、認識の精度を高める |
RPAとの連携 | AI-OCRで読み取ったデータをもとにRPAで自動入力させる |
OCRの効果
紙の書類を使う業務へOCRを導入することで、以下のような効果が期待できます。
書類の検索性が向上する
紙の書類やスキャンしただけの画像データでは、必要な書類を探す際に時間がかかります。
書類を探すために無駄な時間が発生し、業務効率の低下を招く恐れもあります。
OCRで電子化した書類なら文字が解析・出力されているため、キーワード検索で瞬時に必要な書類を見つけ出すことが可能です。
過去の書類を確認したり、書類の内容を引用する必要のある業務も効率的に進められます。
さらにOCRで出力されたテキストデータは容量が画像やノイズをカットしてファイルサイズを縮小できるため、パソコンなどの端末のメモリーが圧迫されないというメリットもあります。
データ入力の手間を削減できる
紙の書類を作成したり書類の内容をシステム・Excelへ転記するにあたって、すべて手作業だと時間がかかります。
さらに膨大な量を手入力するとなれば、従業員への負担が増大するうえに誤入力や入力漏れといったミスが生じるリスクも伴います。
ミスが生じれば訂正にさらなる時間を要し、生産性が低下する事態になりかねません。
OCRなら自動で書類の内容をテキストデータにできるため、手入力の作業は不要です。
必要な作業は出力されたテキストデータのチェックと修正のみで、従業員の業務負担を大幅に削減することができます。
これにより従業員は転記をミスなく迅速に遂行すると同時に、コア業務へ集中できるため生産性の向上にもつながります。
ペーパーレス化が進む
紙の書類は保管にスペースが必要であることなど、業務効率の低下を招いたりテレワーク対応を阻んだりと様々なデメリットがあります。
さらに近年は国内企業が競争力の優位性を確保するためにDX推進の重要性が説かれており、その手段のひとつとしてペーパーレス化に注目が集まっています。
OCRなら紙の書類の内容を簡単にテキストデータへ変換できるため、効率的にペーパーレス化を進められます。
さらにそのデータをサーバーやファイル共有サービスなどに格納すれば、自宅や外出先でもすぐに内容を確認できるため、テレワークの推進にも役立ちます。
OCR導入時の注意点
OCRは主に業務効率化やペーパーレス化の面でメリットが大きい機能ですが、必ずしも導入によりそのメリットが発揮されるわけではありません。
また、いくつかの点に注意しないとかえってデメリットの方が大きくなる可能性もあります。
OCRの導入を検討している場合は、以下の注意点も知っておきましょう。
目視によるチェックは必要
OCRやAI-OCRは技術の進歩により文字認識の精度が向上しつつありますが、完全ではありません。
特に日本語は世界的に見ても複雑な言語であり、高性能なシステムのOCR機能でも誤認識する可能性があります。
OCRの機能性に依存せず、読み取り後は人の目による校正作業が必要になる点は留意しておきましょう。
認識できない文字もある
OCRは基本的にひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット・数字などの読み取りは可能です。
しかし、OCRにも苦手とする文字があり、認識の精度が下がったり読み取りに失敗したりする文字もあります。
例えば、乱雑な手書き文字や罫線が多い書類の文字、スタンプによる署名などはOCRでも誤認識・失敗するケースが多いです。
誤認識や読み取りが失敗する箇所が多いと、場合によっては修正対応により業務効率が下がる可能性もあります。
必要に応じて、あえて読み取りはせず手入力するという手段も視野に入れましょう。
システム導入時に費用がかかる
OCRを利用するには、OCR機能を搭載した既存システムの導入や新たなシステムの開発・構築が必要です。
どちらも初めて利用する場合は学習コストが発生する他、開発・構築から始める場合は初期開発コストもかかります。
具体的にどれくらいのコストがかかるのかは、現状の業務や書類の項目・文章量などによって変わります。
コストに見合う効果を得るためにも、自社に合った仕様のシステムを選択することが大切です。
一般的なOCRの利用方法
OCRを利用する主な方法としては、以下の3通りがあります。
・OCR専用ソフトウェアを導入する
・OCR機能を搭載したシステムを導入する
・スマホ用のOCRアプリを使う
OCRを主な機能とした専用ソフトウェアは、文字認識の精度が高い傾向にある他、画像編集機能や文字検索機能といった機能も搭載されています。
また、名刺管理システムや契約管理システムなど、特定の書類作成や管理が可能なシステムにもOCR機能が搭載されている場合があります。
特定の業務における書類の管理を効率化させたい場合は、このようなシステムの利用がおすすめです。
より手軽にOCRを使うなら、スマホ用アプリをインストールしても良いでしょう。
スマートフォンで撮影した書類をアプリにアップロードするだけで、テキストデータに変換できます。
ただし、名刺や帳票などの小さな書類でなければうまく撮影できず、読み取れない可能性がある点に注意しましょう。
OCRが使えるツールの例
OCRは、具体的にどのようなツールで利用できるのでしょうか。
例としてOCR機能が搭載されたツールとそれぞれの特徴を、以下よりご紹介します。
ContractS CLM
ContractS CLMは契約業務に特化したマネジメントシステムで、契約書作成の作成から承認・締結までワンプラットフォームで実現可能な点が特徴です。
Word・PDF・HTML形式のテンプレートで簡単に契約書を作成できる他、作成した契約書はクラウド上で押印申請・承認を行えます。
承認フローの可視化と制限ができるため、進捗状況の迅速な把握と承認漏れも防げます。
電子契約の導入を考える企業に多く利用されているContractS CLMですが、AI-OCR機能が搭載されているため紙ベースの契約業務の効率化にも有効です。
契約書をアップロードすれば40秒程度で契約項目がシステム上に自動入力され、入力の負担を削減しながら必要な情報を記録できます。
Free Online OCR
OCR専用のオンラインサービスであるFree Online OCRは、画像・PDF形式の書類データからテキストを抽出できるサービスです。
ユーザー登録不要かつ、無料で書類のアップロードからデータ出力まで行えます。
抽出したテキストはPDF・Word・Excel形式への変換に対応しており、日本語の他にも様々な言語に対応しているため、様々な書類の電子化に役立ちます。
光学式文字認識技術ソフトウェアの活用により、高精度にテキスト抽出できる点が特徴です。
ただし、無料版のゲストユーザーは「1時間あたり15ファイル」という容量制限があります。
さらにゲストユーザーのアカウントからアップロードされたファイルは、テキストデータに変換すると自動的に削除されてしまうため、業務活用の際は有料版が適しています。
Adobe Scan
Adobe Scanは、スマートフォン専用のOCR搭載アプリです。
アプリを起動してスマートフォンのカメラで紙の書類を撮影すると、PDF形式のファイルとして電子化されます。
撮影時は、自動で書類の境界を検出のうえ背景を分離・修正します。
さらにAIで遠近感の統制や不要な影の除去なども施されるため、よりクリアに電子化して文字を高精度に抽出できる点が特徴です。
書類はAdobeのクラウドストレージである「Document Cloud」にアップロードされ、アプリ内からいつでも参照可能です。
電子化した書類の内容はOCRでテキストデータに変換でき、書類内の文字列の検索や特定のキーワードが含まれる書類のリストアップなどができます。
基本無料ですが、有料版では書類ファイルの結合やパスワード保護なども可能になります。
契約書管理にOCRを活用することのメリット
機密情報をも含む契約書の管理は徹底すべき一方で、その数が膨大になれば業務負担が増大し、管理の煩雑化による効率の低下や契約書の紛失リスクといった問題が生じます。
上記のような契約書管理における問題の解決にも、OCRは効果を発揮します。
契約書管理にOCRを活用することのメリットは、以下の通りです。
・契約書の内容の大半を手入力せずに取り込めるため業務効率化になる
・契約書管理システムと連携して業務を最適化できる
・ペーパーレス化推進の足掛かりになる
契約書管理においては台帳を利用する場合が多いですが、OCRなら自動的に内容を読み取るため入力作業時間の短縮とミスの削減につながります。
また、類似案件の契約書では過去の契約書と内容が重複することもあります。
その場合、対象の契約書をOCRで読み取ればあとは詳細内容を調整するだけで契約書ドラフトを作成できるため、締結前のプロセスも省力化できます。
契約業務におけるOCRの活用方法
契約業務におけるOCRの活用方法としては、以下のような事例が挙げられます。
・相手から紙で受領した契約書の入力や保管の効率化
・各契約書の重要情報の一元管理
契約書は、他の書類とは違い、有効期限や権利義務など、常に把握しておくべき重要情報が存在するため適切な管理が特に重要です。
しかしいくつもの管理台帳に保管された各契約書の情報をすべて把握することは困難であり、結果として適切に契約が履行されないリスクが生じます。
OCR搭載の契約関連システムなら、各契約書の内容を手入力しなくてもシステム上に記録できるため、契約管理の適正化の一助になります。
契約書の電子化でOCRを活用する際のポイント
契約業務にOCRを導入するにあたって、以下のポイントに留意しましょう。
・業務フローの変更を検討したり従業員に周知したりといった事前準備が必要
・ツールによってOCRで読み取れないファイル形式がある
・安全に契約書を管理するためにもセキュリティ対策が万全なツールを活用すること
OCRを導入するとなれば、既存の業務フローに変更点が生じることもあります。
必要に応じて業務フローの変更を検討し、社内にOCR導入の旨を説明のうえ理解を得ることから始めましょう。
また、具体的な機能性やセキュリティ対策はサービスごとに異なるため、よく比較しながら選ぶことが大切です。
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「契約書管理にAI-OCRは適さない」は本当?
ODR・AI-OCRは、「契約書管理には適さない」と語られることもあります。
その理由は、契約書の形式が一定でないことから、スムーズに読み取りができない可能性があるという懸念です。
また、AI-OCRは認識精度が高いとはいえ、内容が複雑となりがちな契約書の読み取りにおいては学習が困難というデメリットもあります。
しかし、契約業務への活用を前提に開発されたAI-OCR搭載システムなら、契約書の読み取りに特化した機能開発が施されています。
契約書特化型のAI-OCRの活用により、「読み取りにくい」「学習コストがかかる」といった課題も解決できます。
もちろん、他の分野に関しても特化型AI-OCRは存在します。
どんな業務にAI-OCRを活用するのかを明確にしたうえで、各システムの導入実績も参考にしながら、目的にマッチしたものを選ぶことが重要です。
書類管理をラクにするならOCRの活用がおすすめ
OCRとは、書類を写した画像を読み込ませることで、その書類に記載されている文章をテキストデータに変換できる機能です。
取引先の都合や法律上の観点から電子でやりとりできない書類も、OCRで電子化することで楽に管理できるようになります。
契約業務、特に契約書管理においてもOCRは有用です。
非効率な契約書管理に悩む担当者の方は、OCR機能搭載の契約関連システムを導入してみてはいかがでしょうか。