ノウハウ ビジネスにおけるデータ活用とは?ビジネスモデル別に事例を解説
更新日:2024年12月26日
投稿日:2024年07月22日
ビジネスにおけるデータ活用とは?ビジネスモデル別に事例を解説

急速にIT化が進む現代社会で企業としての成長を絶やさないためには、「データ活用」が重要です。
しかしデータ活用とは具体的に何をするのか、何から着手すべきなのか分からず対応に困る担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、ビジネスにおけるデータ活用の定義からデータ活用のポイント、事例まで詳しく解説します。
データ活用を行うにあたって必要な基礎知識を記載しているので、ぜひ最後までご覧ください。
ビジネスにおけるデータ活用とは
ビジネスにおけるデータ活用とは、業務や営業活動などの中で蓄積されたデータを収集・分析し、自社の事業拡大や課題解決に利用することを指します。
近年は業務データや顧客データだけでなく、様々な公的機関が発信した情報や不特定多数のユーザーによるSNS上の情報など、膨大なデータが日々更新され続けています。
それらのデータを継続的に集めて自社に蓄積させることで、常に業務状況の現状を明確に把握したり、今後の予測の精度を高めたりできます。
活用するデータの量が多いほど高い効果に期待できますが、十分な効果を得るには適切なやり方やポイントを理解しておくことが大切です。
データ活用とデータ分析、目的の違い
データ分析は、収集したデータを整理のうえ取捨選択したり、加工したりといったプロセスを通じてデータの成分や構成を明らかにする取り組みです。
データ分析を行えば従来とは異なる視点からデータを見ることができ、新たな「気付き」を得られます。
その結果、効果的かつ明確なビジネス戦略を立てやすくなります。
つまり、データ分析とはデータ活用に至るまでの過程のひとつであり、「収集したデータを活かすために必要な知見を得る」ことを目的としています。
企業にとってデータ活用が必要な理由・重要性
データ活用はどんな企業にも重要度の高い取り組みです。
理由としては、IT技術の発展に伴い消費者自身が自分で情報にアクセスのうえ取捨選択できるようになった、現代社会の傾向が挙げられます。
そのような中で、個人の経験・スキルだけでは消費者のニーズに最大限マッチするマーケティング施策を行うことは難しいものです。
また、データ活用はすでに国内企業の間で広く浸透している取り組みです。
時代に合わせてデータ活用を継続しなければ競合他社との差が大きくなり、自社の競争力が失われる事態にもなりかねません。
データ活用がビジネスにもたらすメリット
データ活用は、主に以下のようなメリットをもたらします。
利益アップ
自社が収集・蓄積したデータを活用することで、顧客ニーズに沿った提案や新製品・サービスの開発ができるようになります。
さらにリアルタイムでデータ集計をすれば、ビジネスチャンスを見逃さずに効果的なアプローチを行うことも可能です。
さらにデータ活用を通して業務上の工程・コストなどにおける無駄も把握しやすくなります。
売上の向上と業務コストの削減により、自社の利益をさらに高めることができます。
事業拡大チャンスの創出
データ活用では高精度な市場動向の現状把握に加え、過去に培われたデータとリアルタイムで収集したデータを合わせて、将来予測も可能となります。
市場の現状と予測した将来から、従来では気付き得なかったビジネスチャンスを見つけられる場合もあります。
新たな製品・サービス開発や事業拡大のタイミングを掴めずにいる企業にとっては、大きなメリットです。
ビジネスで活用できるデータの例
ビジネスで活用できるデータには様々な種類があります。
以下より、ビジネスで活用されているデータの種類や活用のメリットについて解説します。
顧客データ | 顧客の個人情報、問い合わせ内容、アンケート結果など |
取引データ | 売上・資産状況に関する情報など |
購買データ | 顧客の購入履歴や売上データなど |
ユーザーの行動ログ | サイトのアクセスログ、WEBサイトやSNSの記事データ、動画の視聴ログなど |
IoTデータ | GPSで取得した位置情報、速度や温度などのセンサーデータなど |
顧客データ
顧客データとは、顧客の氏名・年齢・住所・性別といった個人情報や、問い合わせ内容などが含まれるデータです。
スマートフォンの普及が拡大した現代では、顧客行動やニーズが複雑化しており、これまでの経験に基づく勘だけでは効果的なマーケティング戦略は打ち出せません。
顧客データを収集すれば、実際の行動に基づくニーズや成功・失敗のパターンを洗い出せます。
これにより、適切なターゲット設定とニーズへの対応が可能になります。
取引データ
取引データとは売上や資産状況に関するデータで、「財務データ」や「経理データ」とも呼ばれます。
金融取引や市場活動などの情報がまとめられており、代表的なものとしては以下のような情報があります。
・総売上高 ・経費の詳細 ・資産情報 ・市場動向 ・取引データ |
貸借対照表やキャッシュフロー計算書などの文書に含まれているこれらの情報から、企業の財務状況を把握する際に役立ちます。
購買データ
購買データは、顧客が購入した商品や費用、日時などの履歴が含まれているデータのことです。
購買データを分析することで、「売れる商品・売れない商品」の傾向を把握でき、ニーズに合った商品の販売につながります。
単純な売り上げアップだけでなく顧客満足度の向上にも寄与し、新規顧客の増加やブランドイメージの改善という副次的効果も得られます。
ユーザーの行動ログ
ユーザーの行動ログとしては、WEBの閲覧履歴・SNSの行動履歴・GPSの位置情報などがあります。
オフラインにおいては、店舗に訪問した回数や滞在した時間、支払い履歴なども行動ログになります。
顧客の年齢や性別といった「属性データ」と併せて活用することで、マーケティング精度の向上や潜在顧客の発見に役立ちます。
IoTデータ
IoTデータとは、インターネットを介してパソコン・スマートフォン・家電製品など、あらゆるモノから収集したデータのことです。
例えばPOSやコンピューターで自動的に記録された在庫情報、スマートウォッチに蓄積されたユーザーの生体情報、ビル全体の電力設備の使用状況などがあります。
IoTデータは、リアルタイムで製品の使用状況や顧客行動といった情報を収集できるため、マーケティング戦略において迅速な意思決定を可能とします。
また、AIとの組み合わせにより、過去のデータを参考とした未来予測やリスク回避も容易になります。
データ活用の手順
データ活用の基本的なやり方は、大きく以下8つのステップに分けられます。
1 データ活用の目的・目標を明確にする 2解決すべき課題や分析するデータを決める 3社内外でデータを収集する 4データの訂正や整理を行う 5データを数値・表・グラフなどで可視化する 6データを分析して活用できる要素を探る 7分析結果をもとに施策を講じる 8目標・目的の達成率を確認してPDCAを回す |
各ステップについて、以下より解説します。
データ活用の目的・目標を明確にする
先述の通り、ビジネスで活用できるデータは多岐にわたります。
どんなデータを・どんな視点で分析のうえ活用すべきかは、目的によって変わります。
そのため、「生産コストの削減」や「売り上げの向上」といった、データ活用で達成したい目標を定めましょう。
解決すべき課題や分析するデータを決める
目的・目標を達成するうえで解決すべき課題を洗い出し、課題の解決に必要なデータを決めます。
データの収集量が多いほど分析の精度も高まるため、この時点では限度を定めずに、常にデータの追加の余地がないかを意識しながら取り組みましょう。
社内外でデータを収集する
目的・目標や課題に必要なデータを収集します。
社内・社外にかかわらず、必要性のあるデータは積極的に収集対象としましょう。
また、情報は常にアップデートを繰り返しており、古いデータを参考にすると思うような成果を得られない可能性が高いです。
そのため、データ収集の際は「鮮度」も意識することが大切です。
データの訂正や整理を行う
収集したデータの内容を理解しやすくするために、加工のプロセスも必要です。
データの内容に誤りがないかを確認し、必要に応じて修正・削除を行います。
併せて、分析したい内容に必要なデータが揃っているかどうかも確認しておきましょう。
データを数値・表・グラフなどで可視化する
訂正・整理したデータを、数値化したり図表・グラフなどを用いたりして可視化します。
このプロセスを経て誰が見てもデータの内容を把握できるようにすれば、分析だけでなく議論にも活用しやすくなります。
データを分析して活用できる要素を探る
可視化したデータを観察し、事業に活用できる要素は無いかを探ります。
規則的に繰り返されること・データ全体から突出した値・特定の原因により発生したことなどなどがないかを、意識しながら、よく観察しましょう。
分析結果をもとに施策を講じる
データ分析を通して気付いた現象の存在や傾向をもとに、目的・目標を達成するための施策を定めます。
事業展開の中で生じた特定の課題に対する解決策を講じるなら、単発的なアクションプランを策定することになります。
一方で、需要の予測やトレンド分析など継続的な分析を行うなら、中長期的なアクションプランの策定が必要です。
どちらにしても、最初に設定した目的や課題という軸からブレずに、現実性の高いアクションプランを策定することを意識しましょう。
目標・目的の達成率を確認してPDCAを回す
策定したアクションプランを実行したら、効果を測定します。
設定した目標や目的をどれくらい達成できたのか、プランの実行に伴い得られるデータに基づいて評価しましょう。
想定していた達成率を実現できなかった場合は、アクションプランを改善のうえ取り組みを継続します。
このようにPDCAを回すことで、より精度の高いデータ分析や、成功ノウハウの蓄積が可能になります。
企業のデータ活用の課題
データ活用は思い立ったらすぐに着手できるものではなく、取り組む中でどんな企業にも陥りがちないくつかの課題をクリアする必要があります。
その中でも特に対策が重要な課題は、「データ分析の手法の確立」と「人材の確保」です。
現状のデータ分析手法で主流とされているのが「Excelなどの計算システムの利用」であり、非効率な分析によりデータを最大限活用できない企業も珍しくありません。
効率的かつ効果的にデータを活用するなら、ITシステムの利用が適しています。
また、効果的なデータ活用を行うにはデータ分析のスキルを持つ人材も必要です。
しかしIT人材そのものの不足が問題視されている現在、データ分析を専門としない人材を担当者に据えていることが多く、特に中小企業ではその傾向が顕著に現れています。
上記2点の課題については、総務省が公開している「5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」内の第3章第2節でも言及されています。
データ活用のポイント
データ活用の成果を高めるためにも、以下3つのポイントを意識しながら取り組みましょう。
自社が活用できるデータを知る
先述したように、ビジネスで活用されるデータには様々な種類があります。
その中から、自社のビジネスにはどのようなデータが活かせるのかを理解することが大切です。
合わせて、活用するデータの信頼性にも注意のうえ取捨選択することをおすすめします。
具体的には、数値や単位に誤りがないか、事実が正確にあらわされているかといったポイントに注目する必要があります。
不適切なデータを取り入れると正しいデータ分析ができなくなり、データ活用という取り組みそのものの瓦解につながります。
業界・分野とデータ活用の相性を理解する
データ活用は幅広い業種・分野の企業にとって重要な取り組みですが、すべての業種・分野と相性が良いわけではありません。
例えば経営企画・業務改善・製品やサービスの企画・マーケティングといった分野に関わる目標なら、データ活用は有効です。
その一方で、保守・メンテナンスやリスク管理といった分野はデータ活用に期待できる効果は薄いです。
自社とデータ活用の相性も考えながら、実行に移すかどうかを検討しましょう。
データ分析を担う部門を設置する
データ活用に必要なデータ分析では専門性の高い知識が必要となるため、いち従業員にコア業務の片手間に取り組ませることは望ましくありません。
とはいえ、多くの国内企業には「IT人材の不足」という壁が立ちはだかります。
その問題を克服し、いかにしてデータ分析専門の部門を設置するかが重要です。
データ分析部門を作るためには、まずデータ活用で達成したい目標を明確に定めてから、全社規模でデータ分析リテラシーの向上に取り組みます。
これによりデータ分析手法を合理的に決定できる他、データ分析への理解向上でデータ活用の文化を根付かせやすくなるからです。
そのうえでデータ分析の必要性を社内へ浸透させるために役員・執行役員などが主責任者となり、データ分析の推進部門を作ります。
IT部門と連携しながら、デバイスやシステム導入などデータ分析に必要な整備を進めていきましょう。
データ活用に最適な企業
データ活用は、以下のような目標・課題がある企業に最適な取り組みです。
DXを推進したい企業
DXを推進するにあたって、データ活用は必要不可欠です。
そもそもDXの定義とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して得た顧客や社会のニーズに基づき、業務やビジネスモデルを変革すること」とされています。
やみくもに既存業務をデジタル化するのではなく、業務改善や新たなビジネスモデルの創出につなげるため、データの収集・分析・活用するための環境を整えなくてはなりません。
ITツールを上手に生かしながらデータを分析し、業務の現状や消費者ニーズを見直すことで、効果的なDX施策を展開できます。
業務改善・効率アップを狙う企業
データ活用は事業活動という大規模な目的だけでなく、特定の業務改善・効率化にも有効です。
例えば自社やベテランの従業員が積み重ねてきたノウハウ・ナレッジを分析のうえ可視化することで、現場にそのノウハウ・ナレッジを共有できます。
その結果、幅広い社員が高いレベルで業務を遂行できるようになり、改善や効率アップにつながります。
新商品を開発する企業
自社に蓄積された販売データや顧客関係のデータを活用することで、現状の顧客ニーズや敷こう、行動の傾向などを高精度に把握できます。
これにより新しい製品・サービスの開発が進むうえに、ターゲットにマッチした商品販売が可能となるため、売上や自社ブランドの工場という効果にもつながります。
営業効率に悩む企業
市場や顧客行動の複雑化が進む現代では、個人の経験や想像だけを頼りに戦略の意思決定を行うことは困難です。
その結果、営業効率が低下する事態となります。
ITツールを使ったデータ活用を実施すれば、膨大で複雑なデータを簡単に収集・分析のうえ可視化できるため、ビジネスチャンスをいち早く見つけることが可能です。
スピード感のある意思決定とアプローチの効果アップにもつながり、効率的な営業活動で生産性も向上します。
【ビジネスモデル別】企業におけるデータ活用の事例
データ活用の事例として、データ活用から構築されたビジネスモデルの例をご紹介します。
ユーザーのデータに基づくサービスの開発
大手家電メーカーでは、スマートホームやIoT関連製品を展開しています。
これらの製品を通して収集したユーザーの生活パターンや行動履歴を分析し、活かしていることが特徴です。
よく使うメニューや興味のある情報を優先的に提示したり、ニーズの低いサービスの改善・廃止につなげたりして、自社サービスの開発を進めています。
データ分析ツールを活用した在庫管理の最適化
現場作業・工場作業向けウェアや関連用品を販売する企業では、操作が簡単なExcelを使ったデータ分析を全社規模で実施しています。
すべての社員がExcelの操作を恐れないように入念な研修を実施した結果、現自は店舗に配属された従業員自らがExcelで売上データなどの分析を行っています。
分析されたデータは、店舗在庫の最適化や品揃え・棚割の改善などに役立てられています。
SNSのデータを参考とした景況感指数調査
とある証券会社では、SNSユーザーの投稿内容を参考にして景況感指数調査を実施しています。
景況感指数とは、現在や今後の景気に対する消費者の感覚の指標です。
SNSからデータを収集し、AI技術で大量のテキストから必要なものだけを抽出したり、抽出されたテキストから景気感を評価したりしています。
ビジネスのデータ活用に関してよくある質問
ビジネスのデータ活用に関する、よくある質問について解説します。
ビッグデータとは何ですか?
ビッグデータの明確な定義はありませんが、多くの場合は「人間ではすべて把握できないレベルのデータ群」を指します。
量・多様性・速度においてレベルが高く、一般的なデータよりもさらに充実した知見や発見を得られます。
ビジネスインテリジェンスとは何ですか?
ビジネスインテリジェンスとは、事業の意思決定に関わる情報の分析から得られた知見を活用する仕組みです。
企業内に蓄積された様々なデータを収集・分析・可視化して、製品・サービスや業務の改善に有効な情報を提供します。
大量のデータの分析や加工も簡単にできて、迅速に自社の現状を把握できることがメリットです。
データ活用はどのような難しさがありますか?
分析対象のデータが膨大であり、何から着手すべきか分からず取り組みが停滞するというケースは珍しくありません。
これは、「データを見てから仮説を立てる」という意識で取り組んだ場合にありがちな例です。
このようなケースを避けるには、まず仮説から立てて収集したデータに向き合う必要があります。
「商品ごとの売上」など、結果に関するデータの傾向や変化を把握し、その内容に基づく仮説を立てましょう。
データ活用は業務改善にも有効!ITツールによるデータ活用で自社の課題を解決しよう
顧客データ・取引データ・購買データ・IoTデータなどを活用することで、時代に合ったマーケティング戦略や業務改善などのメリットにつながります。
近年はデータ活用に取り組む国内企業が多いことも相まって、競争力を失わないためにも重要な取り組みといえます。
しかし、データ活用はただ適当と思わしきデータを収集すれば良いというわけではありません。
自社の目的・目標に必要なデータを設定し、専門部署の配置やITツールの導入といった準備を行ったうえで、データ収集・分析を行う必要があります。
必要に応じて、データ分析のために従業員へのITリテラシー教育に注力することも検討しましょう。
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