ノウハウ 法務の業務効率化の方法とは?生産性向上のための解決策を解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年07月16日
法務の業務効率化の方法とは?生産性向上のための解決策を解説
法務は企業の法的トラブルを未然に防ぎ、トラブルが生じた際には適切に解決する重要な役割を担っています。
企業活動が進むにつれて、法務業務が膨大になることも珍しくありません。企業活動をより円滑に進めるためには、法務業務の効率化や生産性向上が非常に重要です。
この記事では、法務業務を効率化するための方法や、業務効率化にあたっての注意点について紹介します。
法務が関わる業務
法務部門が関わる業務として、主に契約業務や株主総会の運営、コンプライアンス業務、紛争対応、知的財産管理などが挙げられます。
日々の企業活動においては取引先や顧客との契約が交わされるため、法務部門の業務の多くは契約業務となることがほとんどです。
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日々様々な事業部から契約書の作成やレビュー依頼、法的な相談などを受けるため、契約業務の効率化はより重要視されます。
また、法律相談だけでなく、締結した後の契約の期限管理なども法務において重要な業務です。
契約業務の効率化を実現することで、企業の取引を円滑に進められるだけでなく、法務部門の負担も軽減できます。
法務の関わる業務の中で非効率とされるもの
日々の法務業務を行う中で、非効率的な作業が発生し、課題となることがあります。企業が抱える企業は主に下記のようなものがあります。
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1つずつ詳細にご説明します。
1つ目が、各契約の担当者や進捗状況を把握するための作業です。
契約業務は、作成・レビュー・交渉・締結・管理の段階に分けられ、現在どの段階にあるかを把握・管理しておくことが大切です。
この管理ができていないと、契約業務が滞ってしまう可能性があります。
例えば、取引先や事業部から契約の進捗に関する問い合わせがあった際、担当者や進捗状況が分からず、確認して折り返すという作業は大変非効率的と言えるでしょう。
2つ目が、締結済みの契約期限を確認する作業です。
ほとんどの契約書には有効期間が設けられますが、その期間は取引先によって異なります。
各契約の期限管理ができていないと、「いつの間にか契約が終了していた」、「次の更新時期に解約予定だったのに契約内容に従って自動更新されてしまった」という事態が起こり得ます。
そのため、法務部門では、締結済みの契約の有効期間や自動更新の有無などを管理し、期限が迫っていないか確認する作業が発生するのです。
エクセルやスプレッドシートを使って契約一覧表を作成し、期限管理をするケースがありますが、日々の管理が必要であり、確認を怠ると期限を見逃してしまうリスクがあります。
特に取引先が多岐にわたる場合は契約書の量が増えるため、1つ1つ期限を確認するのは非常に手間と言えます。
3つ目が、過去に作成したものと類似した契約書を一から作成する作業です。
契約書作成の依頼を受けた際、過去に作成したものと似た契約内容であるにもかかわらず、再度作成する作業は大変非効率的です。
過去に作成した契約書を流用する場合であっても、その契約データを探すために時間を要することがあります。
4つ目が、締結済みの契約内容を確認するため、契約書の原本やデータを探す作業です。
契約書の原本やデータの保管場所がバラバラであったり、書面保管のものとデータ保管のものが混在していたりすると探すのに時間がかかり、非効率と言えます。
きちんと保管されていない場合、最終的に必要な契約書を見つけることができず、取引先に契約データを送ってもらうといった手間が生じることもあります。
5つ目が、契約締結するための郵送作業です。
書面で契約を交わす場合、製本や取引先への郵送作業が発生します。
原則、契約書を2通作成・押印後、取引先へ郵送し、1通を返送してもらう流れとなります。そのため、契約締結までに数日かかってしまうことがあり、効率が悪いと言えます。
【関連記事】契約法務とは?目的や業務内容、業務における重要ポイントを解説
業務の非効率さの解決方法
先述したとおり、法務業務を行っていると、非効率的な作業が生じることがあります。
これらの課題を解決する方法としては、以下の5つが挙げられます。
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ここからは、業務を効率化するための解決方法をそれぞれ詳しく紹介します。
業務フローの整備を行い、改善する
1つ目は、業務フローを整備し、改善を試みることです。
契約業務においては、契約書の作成、レビュー、交渉、契約押印・契約管理までの一連の業務のフローを作成しておくことが挙げられます。
業務フローがないと、契約手続きをどのように進めればよいのかわからないという事態がおこるでしょう。
例えば、本来法務部門による契約書のレビューが必要であるにもかかわらず、その工程を経ずに押印手続きを進めてしまう、押印手続きの担当部門が分からず、異なる部門に問い合わせてしまう、などが挙げられます。
業務フローを作成し、社内で共有しておくことで、契約業務を進める際のバラツキを防ぎ、効率的に業務を進めることができるでしょう。
ただし、企業の組織変更などでフローの変更が必要となることもあるため、定期的な見直しや更新作業が必要です。一度業務フローを作成して終わりでなく、最新の状態となるよう整備を継続することで、業務効率化を向上させることができるでしょう。
【関連記事】契約の発生から締結、管理までの流れとツールを解説
ひな形を整備する
2つ目が、ひな形を整備することです。
契約書のひな形がないと、事業部門から契約書の作成依頼を受けるたびに、一から作成しなければならず非常に非効率です。
過去に作成したものを使いまわす場合も、過去の契約データを探す時間が勿体ないと感じるでしょう。
よく作成依頼を受ける形態の契約に関しては、自社統一のひな形を作っておきましょう。
例えば、秘密保持契約や売買基本契約、労働者派遣基本契約、請負基本契約などは日常的に交わされる契約であるため、ひな形を用意しておくことをおすすめします。
また、法務部門の共有フォルダやクラウド上など決まった場所に、ひな形をまとめて格納しておくことで、探す手間も省けるでしょう。
さらに事業部門などにも、ひな形を格納したフォルダを共有しておくと、法務部門への問い合わせが不要となり、さらに効率的となります。
ただし、他部門に共有する場合は、ひな形の契約内容を変更されないよう編集制限を設けるようにしましょう。
窓口を一本化する
3つ目は、法務相談の窓口を一本化することです。
契約書のレビュー依頼などは、メールに契約データを添付して送られてくることが多いと思われます。直接法務相談を受けることもありますが、その後はメールでやり取りすることが多いのではないでしょうか。
そのため、「契約相談窓口」のように、契約相談や依頼受付専用のメールアドレスを設けて窓口を一本化しておく、契約管理のシステムからの受付に統一するか、情報連携をしシステムにすべての案件が集約されるようにするなどがおすすめです。
窓口を一本化することで、事業担当者が「誰に相談すればよいのか」と、迷うことがなくなり、効率的に業務を進められるでしょう。
また、専用メールアドレスの宛先に、法務部門のメンバー全員を登録しておくことで、どのような依頼があったかをメンバー全員が把握できるメリットもあります。
窓口の一本化は、契約業務だけでなく、コンプライアンス業務や紛争対応業務などにも有効です。
「コンプライアンス専用窓口」、「トラブル案件専用窓口」など窓口を設け、社内に共有しておくことで従業員が迷うことなく相談できます。
また、法務部門としても案件の振り分けや管理をしやすくなるでしょう。
【関連記事】契約審査の受付を一本化する方法とは?効率化のポイントを解説
電子契約を利用する
4つ目は、電子契約を利用することです。
電子契約ツールを活用することで、インターネット上で契約を締結することが可能です。
具体的には、契約データを電子契約システム上にアップロードし、双方が電子署名を行い、システム上で契約データを保管・管理する流れとなります。
契約書の押印手続きや取引先へ契約書を郵送する手間が省けるため、効率的であり生産性の向上を目指せます。
また、取引先への郵送代や印刷代、印紙代などの費用がかからないため、コスト面でもメリットがあります。
ただ、契約締結日のバックデートが難しかったり、システム導入にあたって費用がかかったりするため、社内で十分に検討が必要です。また、導入費用や月額利用料が発生し、またサービスによっては契約書を送信するのに手数料がかかることがあります。そのため、少しでも費用を抑えたいという方や企業には不向きと思われます。
一元管理する
5つ目が、契約を一元管理することです。
契約書の作成・レビューから契約締結、管理までの一連の業務をすべてシステム上で一元管理できる契約管理ツールを利用する方法があります。
一元管理を活用することで、各契約の進捗状況や担当者などをすぐに把握できるようになります。そのため、取引先や事業部門から問い合わせがあった際に、時間をかけず迅速に状況を確認することが可能となります。契約業務における無駄を省くのに非常に有効と言えるでしょう。
契約管理ツールを利用することで、締結済みの契約書を一元管理することも可能です。
先述したとおり、紙で保管されている契約書とデータ保管されている契約書が混在しているなど、統一した管理ができていない場合、契約内容を確認する際に手間と時間が生じます。
また、すべてデータ保管している場合でも、格納しているフォルダがバラバラで確認したい契約書をなかなか見つけられないということもあるでしょう。
締結済みの契約データを一元管理することで、契約書の所在が明瞭となり、探す手間が省けます。
また、契約管理ツールを利用すると、締結済みの契約期限の管理が可能となります。
アラート機能が搭載されたサービスもあり、契約書の契約終了日を登録しておくことで、期限が近づくと自動でアラートメールが送信されます。日々担当者が各契約の期限を確認する手間が省け、効率的に期限管理を行うことができるため、契約期限や更新時期の見逃しを防止できるでしょう。
【関連記事】契約データを一元化するCLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは?
法務の業務効率化の注意点
法務業務の効率化は、企業にとって重要な要素です。
積極的に取り組むことで、円滑な企業活動を実現できる可能性があります。
ただし、法務業務の効率化を行う際は、情報セキュリティ面に注意が必要です。
契約管理や電子契約ツールなどの外部サービスを利用することで、企業の機密情報や個人情報の漏洩のリスクが高まるためです。
例えば、契約データにアクセスできる人間を関係者のみに限定したり、アクセスするのにパスワードを求めたりといった、アクセス制御を行いセキュリティ対策を講じる必要があります。
まとめ
法務の業務効率化のための解決方法を紹介しました。
契約管理ツールや電子契約システムなどを導入することで、効率的に契約業務を進めることが可能です。
なお、システムを導入せずとも、業務フローの整備・改善やひな形の整備、相談窓口の一本化など、工夫を凝らすことで、効率化を図ることもできます。まずは自社の法務業務に関する課題を洗い出し、どの方法が自社にとって最適であり、生産性向上を実現できるか、よく検討することをおすすめします。