ノウハウ 契約業務で発生する具体的なリスク、課題とその解決方法
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年07月1日
契約業務で発生する具体的なリスク、課題とその解決方法
法務部門の中心を占める業務といえば契約業務。しかし契約業務には、法改正への対応や統制が効いているかといった様々なキーがありリスク管理が重要です。しかし、アナログで人の頼らざるを得ない作業工程により課題が多く残る業務でもあります。
本記事ではそうした課題やリスクについての解説と解決策について解説します。
契約業務の全体像
契約業務と一言で言ってもその業務の内容には、契約書作成業務、契約書審査業務、契約書管理業務など様々な業務があります。
契約書作成業務は、事業部門等の依頼を受けて契約書案を作成する業務です。そして契約書審査業務は、相手方から提示された契約書案について自社に不利な条項が無いか等について確認する業務です。最後に契約書管理業務は締結済みの契約書を保管し、契約書の有効期限などを管理する業務です。
いずれも契約書に関する業務は事業部門からの依頼の受け付けからスタートし、契約書案の審査を行い、締結に至れば最終的には契約書管理業務へと一連の流れで構成されています。
【関連記事】契約の発生から締結、管理までの流れとツールを解説
契約業務であげられる課題
契約業務では以下の様な課題が一般的に挙げられます。
受付窓口が複数あり案件振り分けが困難
依頼の受け付けチャンネルが口頭やメール、チャットなど複数ある場合、どれくらいの案件の依頼が来ているか把握するのは困難です。
こうした場合にはそもそもどのくらいの案件を抱えているのか把握できていないため、案件のメンバーへの振り分けが困難となってしまいます。
期限管理をミスする
人間の手作業で契約の期限管理を行う場合には契約書の期限の見落としなどのヒューマンエラーが起こりがちです。その結果契約書の有効期限が切れてしまったといった事態に陥ってしまいます。
必要な人が見られるように整備していないため契約書の情報を探すために手間と時間がかかる
契約書管理はただ単に締結済みの契約書を保管しておけば良いというものではありません。
必要なタイミングで契約書にアクセスできる状態で管理しておかなければ、後で契約書を見返す必要が出てきた場合に手間と時間がかかってしまいます。特に紙で契約書を保管している場合には取り出すのに時間がかかりがちです。
バージョン管理がアナログである
契約書案を作成する際には、内容が変更される毎に新たなバージョンが増えていきます。このバージョン管理のための方法には様々な方法がありますが、ファイル名の変更で行うケースは少なくありません。
こうしたファイル名によるバージョン管理はファイルが増えるとどんどん分りにくくなっていき、どの時点のものか分らなくなってしまうケースは少なくありません。
証跡が残らずトラブルの際に反論できない
契約書の条項について趣旨を尋ねたり、解釈を確認するケースは少なくありません。こうした際のやりとりは後に契約の解釈について争いが生じた際に有効な証拠となりますが、メール等で埋もれてしまい発見できなくなってしまい、いざという時に活用できなくなってしまうケースがあります。
承認ルートが正規なもの以外でなされる
契約書の承認は通常社内の稟議などを経て行われます。稟議にかけなければいけない契約とそうでないものが存在していたりと通常の承認ルートと異なる決定がなされている場合には、回覧が必要な関係者が閲覧・判断の機会を失ってしまうケースが考えられます。
部署別管理で情報に網羅性がない、きちんと管理されているか不明
契約書の管理方法は、1つの部門で一元管理する方法以外にもそれぞれの部門で管理するといった方法でなされる場合もあります。
こうした場合に、管理をそれぞれの部門に任せっ切りになってしまうと、きちんと管理されているか不透明になってしまいます。
属人化する
契約業務は法的知識やノウハウ以外にも社内の情報や事業に関する情報など様々な情報を用いて審査・作成を行います。こうしたノウハウは担当者に帰属するため、特定の担当者に業務が集中しがちになってしまいやすくなりがちです。その結果、業務の属人化が起きてしまうケースが少なくありません。
締結リードタイムが長い
紙の契約書で締結する場合、当事者双方の押印がそろって初めて契約が締結されることになります。そのため、契約の締結に当たっては、押印して返送してさらに返送を受ける必要があります。
その結果、契約締結までのリードタイムが長くなってしまうといった課題が生じます。
紙と電子で作業フローが異なるなど複雑
契約書には紙のものと電子契約書の場合の2通りがあり得ますが、紙の場合には押印手続きが必要なのに対し、電子契約の場合には電子署名が必要など契約の締結手続きが異なります。そのため、どちらを用いるかによって業務フローが異なるため手続きが複雑になってしまうケースがあります。
やり方が浸透しておらず問い合わせ対応に追われる
契約の締結までには相手方との交渉や社内承認を得るなど様々なプロセスを踏む必要があります。こうしたプロセスは不文のものが多く、多くの担当者は経験に基づいて行っています。
その結果、会社によっては事業部門の担当者がこうした契約締結の作業になれておらず、手続きについての問い合わせが多く寄せられるといった事態も考えられます。
ステータスが分からず滞留する
契約書の多くは契約書案を作成し、互いに案を検討し交渉を行い、最終案ができあがっていくという流れを取ります。こうした交渉を重ねていく際にはどちらにボールがあるのか分らなくなってしまい、自身にボールがあるにもかかわらず、それに気がつかず案件が滞留してしまうといった事態におちいることもあります。
各担当者へリマインドをする工数が多く業務を圧迫している
前述のように案件が滞留し始めると、法務から各担当者へリマインドする数が多くなってしまいます。
また、更新期限の管理の際にリマインドを何度も行わねばならないなど本来の業務を圧迫してしまうリスクもあります。
契約業務の進め方が適切でない場合のリスク
案件の振り分けがうまくできずマネジメントに支障をきたす
受付窓口が複数あり案件の振り分けが上手くできないと、法務側のマネジメントに支障を来すことになってしまいます。
特にどのくらいの和の案件があるのか不明確だと、各部員の業務の負担状況が分からず適材適所に人を動かすことができずチーム全体の作業効率の悪化を招きます。
契約の更新時期を逃してしまい、契約が終了してしまう
契約の更新時期を見落としてしまった場合、契約終了となり、ビジネスに必要な契約が締結されていない状態になってしまいます。
契約が終了してもビジネスが継続している場合、取引でトラブルが起きた場合にはどうやって解決するのかなどについて争いが生じるリスクを抱えることになります。
契約書へのアクセスが効率的にできないため業務効率が悪化する
契約書の管理がうまくできておらずすぐに契約書を取り出すことができないといった状態だと、契約書へのアクセスがどうしても非効率となってしまいます。
そのため契約書を確認した上で進めるべき業務の効率も低下してしまい、業務全体の効率の悪化を招いてしまうリスクがあります。
交渉の経緯が不明確になるリスク
契約のバージョンを手動で行っていると、バージョンの数が増えた場合にどのバージョンか分らなくなってしまい、交渉の経緯が不明確になってしまうリスクがあります。
不利益な契約となるリスク
契約の解釈について争いが生じた際に、以前のやりとりが残っていないと、結局自社に不利益な方向での解釈を受け入れざる得ないといった事態になってしまうリスクがあります。
内容について適切でない契約が締結されるリスク
契約の承認ルートが適切でないと、契約の締結前に内容を閲覧すべき人が閲覧できず、結果として不適当な内容の契約を締結してしまうリスクがあります。
必要な契約書が消失してしまい、内容が確認できないリスク
契約書の管理が不十分な場合、紙の契約書は最悪紛失してしまうといったリスクがあります。そうなってしまうと内容が確認できず、取引でトラブルが生じた際の解決策が不透明になるリスクを抱えることになります。
業務が属人化してしまい他の部員が担当できないリスク
契約業務が属人化してしまうことによる最大のリスクは、他の部員が担当できなくなってしまうことです。契約業務は法務のコア業務のためこうした業務を一部の担当者しかできないというのは大きな問題です。
ビジネスを適切なタイミングで始めることができないリスク
契約締結までのリードタイムが長くなってしまうとビジネスを適切なタイミングで始めることができなくなってしまうリスクが生じてしまいます。
それぞれの手続きについて業務ミスなどが生じるリスク
電子契約と紙の契約書とで手続が異なり、複雑な場合にはそれぞれの手続でミスが生じるリスクが高まります。契約業務は基本的にミスは許されないためこうしたリスクは決して小さいものではありません。
コア業務の効率が低下してしまうリスク
問い合わせ対応などに追われているとその業務が時間を圧迫することになるためコア業務の効率が低下してしまうリスクが発生します。
ビジネスのタイミングを逃してしまうリスク
契約のステータスが不明確でどちらにボールがあるのか分らない状態になると、契約の交渉に不必要な時間がかかってしまいます。
その結果、ビジネスのタイミングを逃してしまい、適切なタイミングで契約が締結できないといったリスクが生じてしまいます。
契約業務の課題解決方法
・電子契約システム
電子契約システムは契約を紙では無く電子ファイルの形式で締結し、締結の方法も押印では無く、電子署名の方法によって行います。そのため、契約のリードタイムを非常に短くできる点がメリットです。
また、契約書の管理も紙では無くデータになるため、必要な契約書へのアクセスが容易になる点もメリットと言えるでしょう。
・契約管理システム
契約書管理システムは契約書を電子ファイルの形式で取り込み、契約書をデータベース化します。
そのため、必要なタイミングで必要な人間が契約書へのアクセスすることが容易になります。
また、契約書の期限管理もアラート機能があるため契約更新時期を逃すことがない点も契約書管理システムの大きなメリットの1つです。
・契約ライフサイクル管理システムCLM
契約書案の作成段階から契約の交渉段階、契約の稟議・承認、契約の締結、契約の管理、締結後の管理まで一元管理が可能となります。
契約の交渉段階からその契約に係る情報が一元管理されるため、業務一つ一つの効率を上げながら自体のやりとりの証跡が無くなってしまったりといったリスク回避ができます。
また、一度入力した情報が契約交渉の後の業務に用いられるため、手入力による入力ミスや二重入力などの面倒な作業を大幅に軽減する事ができます。
【関連記事】CLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは?システムや概念を徹底解説
まとめ
契約業務に関わる様々な課題はリーガルテックの導入によって解決が可能です。
その中でも、契約ライフサイクル管理システム(CLM)は、締結済みの契約書の管理や契約書の締結といった契約業務の一場面に限らず、契約締結前から契約締結後までの情報や業務プロセス全てを対象とするテクノロジーです。そのため、契約業務の様々な場面における課題を解決することができます。
契約業務に関する様々な課題でお悩みの企業様は、ぜひ契約ライフサイクル管理システム(CLM)の導入をご検討ください。