ノウハウ 法務デューデリジェンスとは?調査内容と進め方
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年06月25日
法務デューデリジェンスとは?調査内容と進め方
法務デューデリジェンスとは、M&Aで欠かせない調査です。何を調べてどのように進められるのでしょうか。
本記事では、法務デューデリジェンスの目的、進め方や調査項目をご紹介します。また、日常業務の効率化と、法務デューデリジェンスの関係性についても解説します。
法務デューデリジェンスとは、意味
法務デューデリジェンスは、法務DDと略されることもあります。
では、法務デューデリジェンスのデューデリジェンス(DD)とは何なのでしょう。デューデリジェンスは、M&Aが最終合意に至る前に、買い手企業が売り手企業のリスクを調査することです。
法務デューデリジェンスは、法務の観点から行われるデューデリジェンスの一種です。株式や債務や資産、労働環境や法令遵守、訴訟など、複数の観点から調査が行われます。
法的リスクは、買収価格や条件などを左右します。リスクが見つかった場合、M&Aが中止となることもあります。法務デューデリジェンスは、M&A実施前には重要な調査とされています。
法務デューデリジェンスの目的
法務デューデリジェンスは、売り手企業の法的な問題点やリスクを把握し、M&Aの条件に反映させること、買収後のトラブルを未然に防ぐことが目的です。
具体的にどのようなことを確認するかご紹介します。
M&Aを妨げる法的リスクの有無を確認
取引先との契約内容、労働環境や賃金の支払いに問題がある、法令違反しているなど、売り手企業の抱える法的な問題や訴訟によっては、M&A後に対応を迫られます。
抱える問題が大きすぎれば買収しない方が良い、つまりM&Aの中止という判断に至ることもあります。
企業価値を減少させるリスクの有無を確認
法的な問題を解決したことで、企業の収益や資産は減らないか調査します。例えば、労働環境を整えても、生産性が低下する心配はないかなどを分析します。
事業継続できるか調査
企業の損失の原因となる事業や、中断する可能性のある事業を抱えていないか調査します。
例えば、商標権や著作権の侵害を訴えられている事業などは、リスクの高い事業と見なされます。
法務デューデリジェンスの実施内容
何を調査するかは企業の状況で異なりますが、下記について実施することが多いです。
- 組織・株式の内容と株主の運用状況
- 契約上のリスク
- 訴訟・紛争
- 事業を進める上で必要な許認可の取得状況
- コンプライアンス
- 資産、負債(不動産や知的財産含む)
- 労務
- 環境問題
次のチェックリストで、調査内容の詳細を解説します。
法務デューデリジェンスのチェックリスト
先に紹介した実施内容について、何を参考にするのかまとめました。
| 組織・株式の内容と株主の運用状況 |
契約書 | 契約上のリスク |
| 訴訟・紛争 |
必要な手続きが行われた書面 など | 事業を進める上で必要な許認可の取得状況 |
| コンプライアンス |
| 資産、負債 |
| 労務 |
| 環境問題 |
上記をなぜチェックすると良いのか、いくつか補足します。
契約書について
契約書の内容によっては、自社に多大な損害を及ぼす恐れがあります。というのも、書き方によって、自社が不利になることが懸念されるからです。
特にチェックすべきなのが、チェンジオブコントロール条項(COC条項)の有無です。COC条項とは、M&Aなどで経営権の変更・異動が生じた際、契約内容の変更や一方の当事者による契約解除を可能とする規程です。
訴訟、紛争について
過去および現在の訴訟や紛争の状況を確認することで、現状の取引への影響に及ぼすリスクを把握できます。
コンプライアンスや労務について
法令違反は、企業の信用に関わります。M&Aで自社が不利な要素を抱えずに済むよう、コンプライアンスなどが守られているか調査します。
資産、負債について
登記簿の登録状況や担保権の設定有無なども確認します。
知的財産権(特許や商標、著作権など)は、組織にとって貴重な資産です。
知的財産権の登録状況や保有状況と、管理体制の評価も、法的リスクを減らすことにつながります。
環境問題について
法務デューデリジェンスで実施する場合、環境調査報告書といった資料やインタビューからリスクの有無を検討します。環境に配慮しない企業への目は厳しく、環境問題にまつわるリスクについても、事前に知っておくと良いとされます。
法務デューデリジェンスの進め方
法務デューデリジェンスは下記のように進めます。
- 方針・調査体制の検討
- 資料開示請求
- 資料の確認
- マネジメントインタビュー
- 現地調査
- 中間・最終報告会
方針・調査体制の検討
買い手企業が、対象企業の何をどのように調査するか決めます。
M&Aにあたり、売り手企業の調査項目は多岐にわたります。しかし、コストも時間も限りがあることを考えると、例えば、グループ会社まで調査するのかなど重点的に調査する範囲は決めておく方が良いです。
調査を依頼する専門家も、最初に決定する事項です。
資料開示請求
対象企業に必要な資料を請求します。売り手企業は高く買収してもらいたいため、自社に不利な情報は提出しない可能性があります。必要な情報を確認できるよう、適切な開示が求められます。
資料の確認
資料を分析し、訴訟などのリスクはないか確認します。調査中に必要になった資料があれば、追加で請求します。
マネジメントインタビュー
経営層へインタビューを行い、資料の不明点などを質問します。
現地調査
対象企業へ赴き、社外への持ち出しが禁止されている資料を確認します。
中間・最終報告会
発覚した問題点や検討結果は、報告書にまとめ、関係者に報告します。調査で法的リスクが発見された場合、買収価格や条件を見直します。
契約業務の効率化とデューデリジェンスの関係
契約業務の効率化は、法務デューデリジェンスのプロセスに大きく影響します。なぜなら、情報のアクセスと可視化、正確性と完全性、リスク管理、コストと時間の削減がされていることで法務デューデリジェンスを効率的に進めることができるためです。
契約業務の効率化方法には、電子化、自動化ツールの導入、標準化、ワークフローの導入とがあり下記のような効果があります。
- 必要な書類にすぐにアクセスできる
- ひな形管理により記載内容が一貫して正確であることが期待できる
- 契約の履歴や修正履歴が明確になり全体を把握できる
- 書類の保管期限や更新のタイミングを管理できるためリスク管理になる
このような体制の整備より法務デューデリジェンスを効率的に進めることができます。
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まとめ
法務デューデリジェンスは、M&Aにおいて重要な調査で、買収の条件などを左右します。法的リスクの有無を分析するには、多岐にわたる観点からの調査が想定されます。
必要な情報を漏れなく円滑に提供する上で、契約管理システムのようなシステムが役立ちます。業務効率化を可能とする理由に、必要な書類をすぐに見つけ出せる状態にあるためです。法務デューデリジェンスの効率化を進めるなら、契約管理システムなどのシステムの導入を検討してみてください。