ノウハウ 生産性向上に欠かせない業務可視化とは?見える化のやり方は?
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年06月25日
生産性向上に欠かせない業務可視化とは?見える化のやり方は?
生産性向上に取り組むには、業務の可視化・見える化が役立ちます。生産性が低下する要因は複数ありますが、業務を可視化・見える化することで原因を特定しやすくなります。
業務を可視化・見える化しないと、生産性の低下だけでなく、その他の問題も発生する可能性があります。しかし、可視化・見える化に取り組むことで、生産性向上以外にも多くのメリットが得られます。
本記事では、業務可視化・見える化のメリットとデメリット、具体的な方法と手順について解説します。また、ビジネスにおける生産性の定義と計算方法についても触れます。さらに、契約業務の可視化で明らかになる点についても説明しています。
ビジネスにおける生産性とは何か
生産性は、新たな価値を生み出す量や速さ、という意味を持ち、労働時間に対する成果の量を表します。
生産性が高いほど、多くの成果を上げられているということです。
ただし、事業内容によっては成果の量だけで生産性は測れないため、製品やサービスの質を見ることもあります。
また、働き方改革で、企業は残業時間の削減を求められています。労働時間に限らず資金や人材など、企業の資源には限りがあります。限られた資源で高品質の成果を多く上げるためには、生産性向上は欠かせません。
生産性向上と似た取り組みに、業務効率化があります。
生産性向上は、施策の前後で資源は変えずに成果を上げることです。業務効率化は、労働時間やコストといった資源を減らしても、削減前と同じ成果を出せるようにすることです。
目的が異なる故、取り組みも変わってきます。
生産性が低下するパターン
長時間労働や人手不足など、企業の抱える問題は生産性の低下とリンクします。
では、どのような問題が生産性に影響するのでしょうか。解説いたします。
長時間労働
長時間労働は、疲労により集中力が低下し、ヒューマンエラーが発生しやすい状態です。
ミスが起これば、成果を出すまでに時間を要します。
人手不足
人手不足は、リソースが不足している状態です。人手が足りないことで、従業員1人あたりの業務負担が大きくなります。あらゆる業務に注力しなければならず、集中力が散漫となることによるミスが起こるリスクの高い状態に陥ります。
人材が十分いないと作業を進めるスピードにも限界があり、生産性が低下します。
働き方改革が進んでいない
残業時間を減らしても業務に支障のない体制が整えられていない(例えば自動化できる工程はシステム化するなどに取り組まない)と、限られた時間で成果を出すことは難しいです。
働き方改革は、リモートワークなど多様な働き方を可能にします。
働き方の選択肢が広がると、従業員自身が働きやすいと感じる働き方を選べます。集中力やモチベーションアップによる生産性向上を期待できるということです。
ところが企業が働き方改革に対応できていないと、従業員がモチベーションの高まる働き方を選択できません。生産性アップの可能性が広がらないということです。
アナログな場面が多い
例えば、契約書などの書類を紙で管理している場合があげられます。
手書きだと書き損じた際に訂正する手間がかかったり、誤りがあっても気づきにくいなどの課題があります。結果、修正や確認までに時間がかかる分、業務完了に時間を要します。
生産性の計算方法
ビジネスにおける生産性は、以下の2つに分けられます。
- 物理的労働生産性
- 付加価値労働生産性
物理的労働生産性とは、労働者1人あたり、または、1時間あたりに生み出す生産物の量や大きさを図る指標です。
付加価値労働生産性とは、企業が生み出したモノやサービスの金銭的な価値を図る指標です。付加価値は、外部から調達した原材料やサービスなどに自社で付け加えた価値を表します。
それぞれ以下のように計算します。
物理的労働生産性=生産物の産出量÷労働量(労働時間や労働人数など) |
1日の生産量や1時間あたりの生産量を求められます。
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量 ※付加価値額=売上高-原材料などの購入価格 |
原材料の価格などで生産性が変動しやすいことが分かります。
可視化とは
可視化とは、見えないデータをグラフなどを用いて見えるようにすることです。
例えば、季節によって売上に変動のある製品について。気温が何度になったら売上が大きく変わるのか分かるよう、売上と気温の関係をグラフにするといった作業です。
見える化とは
見える化とは、業務の進捗や成果など、データ化が難しいものを誰が見ても分かる形にすることです。
例えば、業務の進捗状況を把握できるシステムを導入するなどがあげられます。
見える化のメリット
見える化には、業務効率化の他、従業員の負担軽減や組織の抱えるリスクの早期発見などに役立ちます。
具体的にどのようなメリットが見込まれるのかご紹介します。
業務の適切な割り当て
業務の見える化で、従業員間で割り振りに偏りがあれば気づくことができるため適切に業務を割り当てることができるようになります。
従業員のスキルも加味しながら、業務量を調整できるため、従業員の負担軽減につながります。
長時間労働への対処
長時間労働は、従業員の心身への負担やモチベーションにかかわります。
従業員の労働時間や進捗が分かれば、業務の無駄や効率化できそうな工程が見えてきます。
例えば、紙で作成している書類を電子化するなどです。
政府が労働時間の削減を推奨していることも考慮すると、長時間労働を減らす取り組みは重要と言えます。
属人化の防止
できる人の限られる業務が存在する状態をつくらないようにすると、業務分担がしやすいです。
業務分担によって、従業員ひとりひとりの負担軽減ができ、特定の人がいないと業務を進められない属人化も避けられます。
進捗や業務内容が見える化されると、従業員同士でサポートしたり、担当者が不在の時に代わりに進めたりもできます。
また、業務量を調整できると、納期に遅れるリスクを下げられます。納期までゆとりが生まれることで、仕事の質を高めることも期待できます。
組織の課題やリスクを早期発見できる
業務の進め方や組織の問題点にも気づきやすいです。
問題が見えれば、業務フローの見直しなどに取り組め、ミスの起こりにくい体制を築けます。最適な業務体制の構築により、将来的なリスクに備えることにもつながります。
組織の活性化や成長
抱える業務の多いメンバーをサポートするなど、チームの連携が強化されます。チームの雰囲気が良いおかげで、自然とコミュニケーションも活発になり日常的にコミュニケーションをとることで、重要な情報がすぐに共有されることも期待できます。
見える化で他の従業員の業務の進め方も参考にできるため、個々人が目指す先輩像、スキルアップのモデルが見つかりやすいでしょう。
業務効率化
どのようなタスクに時間がかかっているか見えるようになり、人員配置は適正か、省いても支障のない工程はないかなどを見直せます。
従業員同士の情報共有がスムーズになることで、コミュニケーションに費やしていた時間が短縮されることも、効率化に一役買います。
適正な人事評価
従業員の成果やスキルが見え、人事評価に反映できます。
それだけではなく、適正な人事評価により従業員満足度の向上し人材確保にもつながることが期待できます。
見える化されていない場合のリスク
業務が見える化されていないと、ミスやトラブル、効率や生産性の低下を招き、従業員の不満の要因にもなり得ます。
では、具体的にどのようなリスクがあるでしょうか。ご紹介します。
ミスやトラブルが増える
業務の進捗などが見えないと、他のメンバーからの協力が得られにくいです。焦りによるミスやトラブルが起こりやすくなります。
進捗が見えないことは、問題の発見が遅れる原因にもなります。
従業員の不満につながる
従業員の不満につながる可能性があります。属人化が進み、業務負担の不平等が起きやすいためです。
属人化を解消できないと、業務をできる人がいない時に進められないなどの事態も引き起こされます。
効率や生産性の低下
可視化や見える化がされないのは、業務を効率的に進められているか、生産性は高いのかなどが分からない状態です。
改善が必要だとしても、何を変えれば良いのか明確になりません。その結果、情報を有効活用できず、人員配置の変更などに取り組んでも生産性が上がらないばかりか、効率や生産性が低下することが懸念されます。
業務可視化の3つの方法
業務可視化には、以下3つの方法があります。それぞれご紹介いたします。
- スキルマップの作成
- プロセスマップの作成
- ツールの利用
スキルマップの作成
スキルマップとは、従業員ひとりひとりのスキルを図で表したものです。
従業員のスキルや得意をひと目で把握できることで、人材育成、スキルや得意を活かせる業務への配置に役立ちます。
【関連記事】スキルマップとは?メリット・デメリットや作成方法など解説
プロセスマップの作成
業務工程をチャート化したものです。担当者へのヒアリングなどを通して作成されます。
業務に必要な時間やコスト、スキルの他、業務の無駄も分かり、マニュアル作成や工程の見直しといった効率化の参考になります。
【関連記事】プロセスマップとは?作り方からおすすめツールまで徹底解説
ツールの利用
業務にかかる時間の分かるツールを利用することで、プロセスごとに必要な時間が見えてきます。進捗のチェックも可能です。
業務見える化の手順
業務可視化は、一般的に下記の手順で実施します。
- 見える化の目的を明確にする
- 業務フローや必要なスキルの整理
- ツールの導入
- 改善・改良
見える化の目的を明確にする
見える化の目的がはっきりしないと、改善活動中に目指す目標にぶれが起きたり、人によって認識が異なったりすることで業務可視化のメリットを受けることが難しくなります。
目的は、活動の始めに明らかにすることが重要です。現状の課題を把握し、業務効率化など可視化で実現したいことを設定します。
業務フローや必要なスキルの整理
業務フローや業務に必要なスキルを整理することで、業務の全体像と可視化すべきことが見えてきます。
整理する際には、スキルマップやプロセスマップなどを作成するとスムーズです。
ツールの導入
業務可視化にあたり、ツールの活用も方法の一つです。
使用する際には、操作性が良く、可視化したいことが分かりやすいものを選ぶことがポイントです。ツールを導入したら、マニュアルを用意したり研修を実施したりして、スムーズに活用できるようにします。
改善・改良
業務可視化は、一度行えば効果が継続するものではありません。一度の実施では生産性向上などの改善が見られないこともあります。
モニタリングや従業員の意見を収集するなど定期的に見直し、必要があれば修正していくことが大切です。
業務可視化の失敗例
業務可視化の目的を共有できていなかったり、可視化が目的となっていたりすると、取り組みは上手く行きません。
業務可視化の失敗例をご紹介します。
可視化の目的を共有できていない
目的が曖昧だと、何を改善するために可視化を行うのか関わる人に見えません。
どのデータが必要なのか分からず、必要な情報を取り出せない結果、効果的な対策を講じることができません。
何のために取り組むか分からないと、自身にとって有益だと感じられないため実施する必要性を感じない従業員がいてもおかしくなく、非協力的な方が出てくる恐れがあります。
業務可視化に取り組むことが目的になっている
業務可視化に取り組むことが目的になると、組織の課題が見えた、可視化に役立つツールを導入したなどの行動が達成基準となり、根本的な生産性向上まで至りません。
業務可視化で見えた課題を解決すると得られるだろうメリット(例えば生産性向上など)まで考え、新たな改善策に取り組むことが必要です。
契約業務における業務可視化
契約業務の流れややりとりの履歴、契約の締結前後に行う作業が見える化されると、契約に関する業務の効率化に役立ちます。
ここでは、契約業務における業務可視化がどのように生産性向上に関わるかご紹介いたします。
締結前、進行状況の見える化
契約締結前には、契約書の文章を作成するために、営業担当者と法務部担当者間でやり取りを行ったり、当事者間で署名したり、書類を送付したりと、やることが多く不備があれば、締結までに時間がかかります。
そこで、作業の進行状況を可視化することで、どこまで進んでいるのか、誰がどのタスクを担当しているのか明らかになり、完了までのプロセスがスムーズになります。
締結前に時間がかかる原因の多くは、各タスクの見落としや処理ミスですが、進行ステータスが分かることで自分のフォローしやすくなったりと進行管理が可能なため最終的な締結までのリードタイム短縮にも一役買います。
【関連記事】契約のステータスとは?契約の管理方法、おすすめの管理ツールを紹介
契約後、管理状況の見える化
契約締結後には、契約の更新や書類の管理といった業務が発生します。契約更新をする場合には契約書で申告期限の前に、更新の意思表示を行い、解約の場合には期限前に解約の手続きを行う必要があります。というように、管理状況の可視化が重要です。
更新期限をすぐに分かるように台帳を整備したり、更新期限が近くなったら通知が来るように設定することで、期限の見落としを防ぎます。
手順の見える化
マニュアルを用意するなどで契約業務の手順を明確にすることで、誰もが同じように業務を進めることができます。
例えば、契約書作成依頼の際に必要な情報の伝達がされず、情報引き出しのために何度もやり取りを行う必要があるといった課題が良くあげられます。そのような場合には、どのような情報の伝達が必要かを見える化することで、伝達する情報を平準化し過度なコミュニケーション回数の改善につなげることができます。
やりとりの見える化
誰がやりとりをして承認したかが分かると、トラブルが発生した時の責任の所在が明確になり、原因究明に役立ちます。
ミスを減らすために、コミュニケーション履歴や承認履歴、操作ログの可視化が役立つでしょう。
トラブルは複数の原因によって発生します。やり取りが詳細に見える化されることでどのような手順により引き起こされたものか様々な面から原因分析が可能で最適な対策が立案できます。
【関連記事】契約の経緯・履歴情報がないことのリスクとその解決方法
まとめ
業務可視化は、生産性向上以外にも企業と従業員に複数のメリットを与えます。
業務可視化に取り組むことで、業務効率の向上に加えて従業員のコミュニケーション活性化にもつながります。
ただし業務可視化は、一度実施すれば良いものでない点にご注意ください。
契約業務など幅広い業務で見える化できるため、生産性向上が課題の企業はぜひ現在の業務の棚卸から始めてみることをおすすめします。