ノウハウ 総務の生産性を向上させるには?改善アイデアやおすすめツールを紹介
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年06月20日
総務の生産性を向上させるには?改善アイデアやおすすめツールを紹介
総務は日々多様な業務をこなしているうえに具体的な成果も見えにくいため、生産性低下の要因に気が付きにくい部門のひとつです。
しかし組織全体の事務全般を担っている総務だからこそ、生産性向上への取り組みに注力する必要があります。
そこで今回は、総務の生産性を低下させる課題としてありがちなケース・生産性向上アイデア・総務で活用したいツールなどを解説します。
企業における生産性向上の基本概念と影響
企業における「生産性向上」とは、効率よく利益を生み出すための仕組み作りを指す言葉です。
少ない労力で多くの商品や利益を生み出すというのは、企業として理想的な姿といえます。
その実現には生産に関わる諸々の要素を効率的に利用しながら、最大限の結果を出せるように業務改善へ取り組む必要があります。
生産性向上の重要性とは
生産性向上を目的とした業務改善は、すべての国内企業に重要とされている取り組みです。
製品を生み出すには人件費・原材料費・設備費など様々なコストがかかります。
それらのコストが増幅して利益が減っている、つまり生産性が低下している状態が続けば、企業としての成長が見込めないどころか存続すらも危うい事態となりかねません。
しかし、日本企業は世界的に見ても企業の生産性が低いという事実が問題視されています。
公益財団法人日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2023」によると、日本の時間当たり労働生産性は52.3ドルであり、OECD加盟38ヵ国の中では30位です。
1970年以降最も低い順位にまで落ちており、国内企業の生産性低下が進んでいることが示唆されています。
ビジネスのグローバル化に加え労働人口が減少傾向にある現代日本において、国内企業が海外に後れを取らず生き残るには、生産性向上への取り組みが欠かせません。
生産性向上のメリット
生産性を向上させることで、以下のようなメリットが生じます。
・企業の競争力を強化できる ・労働力不足に対処できる ・労働環境が改善される |
生産性向上に際して、主に既存の業務フローに存在する無駄を削減しながら、価値のある商品を多く生み出すための策を講じることになります。
そのため小規模な企業でも他社と戦って生き抜く力がつくだけでなく、各従業員にかかる業務負担も軽減されるため、人員の定着や労働環境の改善にもつながります。
総務部門に存在する課題
総務は円滑な企業活動をサポートするためになくてはならない部門であり、総務の生産性を向上させれば他部門の従業員にも好影響を与えます。
しかし、総務は多様な業務を担っているがゆえの深刻な課題を抱えており、その課題に生産性向上が阻まれているケースも珍しくありません。
ここでは、企業の総務部門が抱える課題としてよくあるケースを3つご紹介します。
突発的な対応を求められがち
総務は従業員からの問い合わせ対応・外部の取引先とのやり取り・採用業務など、多岐にわたる業務を担っています。
どこの部署が担うべきともいえない微妙な位置づけの業務を依頼されることもあり、他の部門と比べて業務の線引きが難しいことが特徴です。
そのため、「困ったことや面倒なことはとりあえず総務に依頼する」という風潮がある企業も少なからず存在します。
結果として様々な部門の従業員から突然の対応依頼を受け、その日の業務スケジュールが遅れるケースは多いです。
紙ベースの業務が定着していて無駄な時間が生じる
総務は、業務で用いる各種書類を紙で管理・共有するというやり方が主流となりがちです。
そのため書類作成や修正・保管のためのファイリング・必要な書類を探すといった際に、無駄な時間が生じます。
業務効率の低下だけでなくリモートワークも不可能になり、他部署と比べて働き方改革の対応が遅れてしまいます。
【関連記事】紙で締結した契約書の理想の管理方法、作業フローを解説
人手不足が慢性化している
総務は業務の範囲が広いからこそ従業員1人1人にかかる負担が大きく、ストレスの蓄積やモチベーションの低下による人材の離脱が起こりやすい部門です。
人手不足という状況は既存の従業員へさらなる負担をかけ、再び人材が離れ、新たに人材を採用してもまた離れていくという悪循環が生じます。
この悪循環が長く続くほど属人化が進み、再び人材が離脱すればその人が担っていた業務を誰も引き継ぐことができず、ストップしてしまうという事態に陥りやすくなります。
総務の生産性向上のためにできる改善アイデア
総務の生産性向上につなげる改善策としては、以下の3つがあります。
業務の見える化
総務業務を改善する際、まずは既存業務を見える化することが大切です。
従来の総務業務全般を、業務項目・工数・難易度といった視点から見直しましょう。
複数の視点で業務を振り返ることで、従来の体制では運用に無理があった部分や必要性のない工程が明確に見え、効果的に対処できます。
従来の業務に加えて、「必要だけど取り組めていない業務」とその工数も見える化すると、さらに生産性向上の効果を高めるための戦略を立てやすくなります。
アウトソーシングの利用
労働力不足や人材の定着が困難となっている近年、自社の人材だけで全部門の業務をこなすことのハードルが上がっています。
そのため、総務業務でアウトソーシングを利用する企業も多いです。
人材のアウトソーシングは会社ごとに得意分野が異なり、同じ総務業務に対応している会社でも、具体的に委託可能な業務内容は各社で異なります。
従来の総務業務で人手が足りていない部分、よりパフォーマンスを高めたい部分をカバーしてくれるアウトソーシングを利用すれば、効果的に生産性向上へつなげられます。
ただし、アウトソーシングを利用している間は業務上のノウハウが蓄積されにくくなります。
自社だけで総務業務を円滑に進める力がつかなくなる恐れもあるため、注意が必要です。
システム活用による業務の効率化
自社にノウハウを蓄積しながら総務業務を効果的に改善させる手法としては、「システムの活用」があります。
従来は人の手で行っていた書類の作成・管理・共有、データ入力、メール管理などは、システムで自動化が可能です。
細々とした業務をシステムに任せることでより重要な業務に集中できる他、人的ミスの減少やテレワークへの対応も実現できます。
なお、総務業務に活用できるシステムの種類は多岐にわたります。
総務の業務改善に役立つシステムの種類や特徴は後ほど詳しく解説しますので、そちらも参考にしてみてください。
【関連記事】契約マネジメントが日本企業の「部署間連携」「管理体制」「属人化」の課題を解決する
総務業務の生産性向上の進め方
総務業務の生産性向上へ取り組む際の具体的なプロセスは、以下の通りです。
1 現状の業務内容を明らかにして課題点を洗い出す 2 課題を抱えた業務ごとに対処の優先順位をつける 3 課題を解決するための施策を実行する 4 実行した解決策の効果測定を行い、必要に応じて新しい運用方法を改善する |
どんな方法で生産性向上へ取り組むにしても、業務の見える化を通して課題点を洗い出し、実行後に効果測定・改善を施すまでのプロセスは怠らないようにしましょう。
総務業務改革で知っておきたい「戦略総務」
「戦略総務」はただ定型業務を行うだけでなく、経営層や現場へ能動的に働きかけて、企業成長を支援するという総務の在り方を指します。
総務の主な業務内容としては、社内のインフラ整備・郵便物対応・勤怠管理・給与計算などがあります。
業務の範囲は多岐にわたるもののその多くが定型化しており、それらを日々受動的にこなすというのが総務としてのスタンダードな在り方でした。
しかし労働力不足やデジタル技術の進展など、現代社会はあらゆる面で変化が進んでいます。
企業の体質を改善し、時代の流れに後れを取らず適応するには、戦略総務の存在が重要です。
自社の総務を戦略総務という在り方にシフトさせるためにも、従来の総務業務の見直しによる職場改善と生産性向上の取り組みが必要です。
総務の業務効率化に有効なツール
総務業務の生産性向上を図るには、業務を効率化させるITツールの導入がおすすめです。
しかし、具体的に総務業務のどんなことを改善したいのかによって、選ぶべきツールは異なります。
以下より、総務の業務効率化に有効なツールとそれぞれの特徴を詳しく解説します。
自社の総務業務が抱える課題に合ったツールを選ぶ際の参考としてください。
契約管理システム
契約管理システムとは、契約書を電子データで作成・共有・管理できるシステムのことです。
紙ベースで契約書の管理を行っていた企業にありがちな悩みとして、取引先が多いほど契約書の数は膨大となり、保管にコストがかかるという点が挙げられます。
また、紙で契約書を作成すると記入ミスや紛失リスクといったデメリットも生じます。
契約管理システムはPC・スマホ・タブレットなどの端末で必要項目を入力できるため、場所を選ばずミスのない契約書作成が可能です。
さらに必要な契約書をすぐに取り出せる検索機能や、不正アクセスを予防するアクセス権限の設定機能で、より便利かつ安全に契約関連の業務を運用できます。
【関連記事】契約管理とは?|エクセル・クラウドサービスを使った具体的管理方法を紹介
勤怠管理システム
勤怠管理システムでは、出退勤時間の打刻・記録や残業・各種休暇の申請、労働時間の集計など、従業員の労働状況の管理全般を電子化できます。
従来の勤怠管理では紙のタイムカードや用紙に手書きで打刻し、それを元に勤務状況の確認や給与計算が行われていました。
しかし紙ベースの勤怠管理では確認作業に時間がかかるだけでなく、人的ミスの発生とその対処に伴う無駄な労働時間が発生します。
さらに、労働基準法などの法律の改正へスムーズに対応することも難しくなるといったこともデメリットです。
勤怠管理システムはデジタルだからこそ正確な打刻管理と給与計算が可能であり、勤怠管理にかかる時間の大幅な短縮につながります。
また、システムによっては法改正のたびに機能が自動的にアップロードされるため、自社で手間をかけずとも、常に最新の法律を遵守した適切な勤怠管理を実施できます。
チャットツール
社内のコミュニケーションを円滑にするなら、ビジネスチャットツールの活用が適しています。
ビジネスチャットツールは、社内や取引先などとリアルタイムでやり取りができるツールです。
口頭での会話に近い感覚でコミュニケーションを取れる他、履歴も残るため業務に関わる「言った・言わない」のトラブル回避にもつながります。
個人間だけでなく特定の部門やテーマ別にチャットルームを分けてコミュニケーションを取れるため、後で特定のやり取りや情報を迅速に引き出すことも可能です。
総務の場合、複数の部門または全社に向けた連絡事項をチャット上で共有したり、様々な書類データをチャットルームごとで共有・管理して情報を素早く引き出せるようにしたりといった活用方法があります。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、設定したパソコン作業を自動的に行ってくれるシステムのことです。
日常的に行っている作業の中にはパターンが固定され、いかに人の手でミスなく迅速にこなすかが課題となっているものも多いです。
そのような作業をRPAに登録すれば、正確かつ高速で処理しながら自動的に遂行されます。
これにより業務の品質低下を防止できるだけでなく、他の業務に集中するための時間を作りだせるため、生産性向上にもつながります。
業務の自動化という点ではExcelのマクロ機能と同一に思えますが、マクロ機能が対応しているのはExcelやofficeドキュメントを用いた作業だけです。
一方でRPAは多種多様なアプリでの作業の自動化に対応しており、データ入力だけでなく計算・ファイル名の変更・メール送信など、多岐にわたる作業で有効活用できます。
生産性向上が戦略総務へのシフトのカギ!業務改善ならITツール活用がおすすめ
突発的な対応が発生しやすい・アナログなやり方が定着している・常に人手が足りないといったことは、どんな企業の総務も抱えがちな課題です。
しかし現代ではより能動的に企業成長を支援する「戦略総務」へシフトする重要性が高まっており、そのためには既存の総務業務改善で生産性を向上させるための取り組みが欠かせません。
総務業務の生産性を向上させる方法としては、現状の課題解決に有効なITツールの活用がおすすめです。
総務に活用できるツールには様々な種類があるため、本記事の情報も参考に、まずは自社の総務業務に潜む課題を可視化のうえ最適なものを選びましょう。