ノウハウ 社内プロジェクトの立ち上げに必要なこととは?プロセスや企画書の記載例を解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年06月20日
社内プロジェクトの立ち上げに必要なこととは?プロセスや企画書の記載例を解説
社内で何らかのプロジェクトを進めるにあたって、「立ち上げ」が必要です。
しかしプロジェクトに携わる経験が浅い方の場合、社内プロジェクトにおける立ち上げとは何なのか、立ち上げでは何をするのかなど不明な部分が多いことでしょう。
そこで今回は、社内プロジェクトにおける立ち上げの必要性や手順、重要なポイントなどを解説します。
企画書の書き方やよくある失敗例も記載していますので、そちらも併せて参考にしてください。
社内プロジェクトに「立ち上げ」が必要な理由
どんなプロジェクトも、最初に「立ち上げ」をする必要があります。
プロジェクトにおける立ち上げとは、プロジェクトを本格的に始動させるための大まかな計画を立案する、そのプロジェクトの価値を見直す、関係者の賛同を取り付けるといったことが含まれます。
一般的に「プロジェクト計画」といわれる段階に似ていますが、立ち上げはプロジェクト計画よりも前の段階であり、プロジェクトを大局的な視点で捉えながら実施するものです。
立ち上げでは主な関係者へ必要な情報を提供のうえ承認を得て、プロジェクトが実行可能かどうかを証明します。
そして、計画の段階で具体的な目標やロードマップを定めます。
計画の前に立ち上げを実施することで、そのプロジェクトにどの程度の価値があるのかを明らかにできます。
また、各関係者にプロジェクトの情報を共有する段階でもあるため、必要なリソースを確保したり意思決定がスムーズになったりといったメリットにもつながります。
これにより、プロジェクト開始以降に重大なトラブルが起こる可能性を減少させることが可能です。
プロジェクト立ち上げから進行までの手順
プロジェクトは、立ち上げから進行へ至るまでに様々な段階が存在します。
以下より、立ち上げを含めたプロジェクト進行までの基本的な手順を解説します。
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立ち上げの準備
社内プロジェクトの成功率を高めるには、周囲の人々の協力と積極的な巻き込みが重要です。
プロジェクトの立ち上げを1人で行うことは困難なため、まず周囲の人と話し合い、改善に乗り出すべき自社の課題とそれに対する意識を主張してみましょう。
そこで「何にどんな課題を感じているのか」について、自分と周囲の意識にずれがないことを確認します。
そのうえで課題解決プロジェクトを立ち上げようとした背景や目的を共有し、立ち上げに協力してくれる賛同者を集めます。
現状の把握とゴールの明確化
必要な人員が揃ったら、以降は立ち上げに取り組みます。
その際、まず自社が抱える現状をより明確に把握したうえでゴールを定めましょう。
課題とゴールが明確な状態でプロジェクトを開始させることで、各メンバーは指示に依存せず自力で動けるようになるからです。
大きな軌道修正の必要性が生じる可能性も下がり、最小限の工数で高い効果をもたらすプロジェクトになると期待できます。
課題とゴールの他、プロジェクトの予算の概要を含むプロジェクトスコープや、主要な関係者などを含めた「プロジェクト憲章」を作成します。
プロジェクト憲章は企画書のようなもので、次のステップを実施するために必要です。
プロジェクトの意義やメリットの共有
プロジェクトを遂行するにあたって、上層部などプロジェクトに関わることの決定権を持つ重要な関係者を特定します。
重要な関係者を特定しにくい場合は、プロジェクトの承認者・プロジェクトのリソース提供者・プロジェクトに影響を及ぼすような人は誰かを基準に考えましょう。
その中から「影響力の大きさ」と「関心の大きさ」という2つの軸に基づき、関係者を分類します。
影響力と関心のどちらも大きい関係者であるほど、プロジェクトをスムーズに進めるうえで重要な人物です。
重要な関係者に対し、前段階で作成したプロジェクト憲章を用いてプロジェクトの意義・メリットを共有して賛同を得ます。
これにより、プロジェクト立ち上げのメリットであるリソースの確保や重大なトラブルの回避といったメリットが生まれます。
プロジェクトの実現可能性を確認する
多くの資金を要する大規模なプロジェクトの場合、承認を得るにあたって「実現可能性」の有無も重要です。
実現可能性を確認するには、フィージビリティスタディという手法が適しています。
フィージビリティスタディでは、一般的に以下3つの点を軸に当該プロジェクトが成功する可能性を評価します。
・技術(自社はプロジェクトの実行に必要な技術能力やリソースがあるか) ・予算(自社にプロジェクトを実行できるだけの資金とプロジェクトの採算性はあるか) ・運用面(法的要件・リスク・リソース・期間の面でプロジェクトを問題なく完了できるか) |
軸となる点のいずれかに不足がある場合、それに関係する人物や部門に協力を仰ぎ、実現可能性を強固なものとしましょう。
なお、フィージビリティスタディは時間のかかる大掛かりな手法です。
小規模なプロジェクトには労力とコストが見合わない恐れがあるため、実施するかどうか慎重に検討しましょう。
チームの編成
プロジェクトの承認や実現可能性の証明までクリアしたら、プロジェクトの本格始動に向けてチームを編成します。
プロジェクトに有利となるスキルを持つ人物をチームメンバーに迎えることが理想的ですが、短期間でそれが叶うとは限りません。
特に、プロジェクトの一部を外部の業者などに依頼する場合はより多くの時間が必要です。
プロジェクトの始動が許可された時点で、迅速にメンバー探しへ乗り出しましょう。
必要なメンバーと併せて、具体的なチーム構造も練っていきます。
各メンバーが同じ立場でプロジェクトを遂行していくのか、特定の区分でメンバーを分割してプロジェクトを進めるのかなど、最適な構造を定めましょう。
プロジェクトのタスクをスムーズにこなしていくため、チームに合ったコミュニケーションツールを活用するのもおすすめです。
プロジェクト計画の決定と進捗管理
チームの編成まで終えたらプロジェクトの立ち上げは完了となり、計画の段階に移ります。
立ち上げとして固めた土台を元に、具体的な目標・予算・マイルストーン・ロードマップ・スケジュールなどを決定のうえ計画を立てましょう。
プロジェクトの実行に移ったら、スケジュール全体の中で定期的な振り返り期間を設定し、進捗を確認のうえ必要に応じて修正などを行います。
定期的な振り返り期間を設けることで、トラブルの種となる要素を早期発見できます。
プロジェクト立ち上げのポイント
プロジェクト成功の可否は、立ち上げ時にいかにしっかりと土台を作ることができたかどうかで変わります。
立ち上げでプロジェクト成功に効果的な準備を行えるように、以下3つのポイントを意識して取り組みましょう。
必ずゴールを設定する
どんなプロジェクトでも、必ずゴールを明確に設定しましょう。
企業がプロジェクトを立ち上げる際、その時点でゴールを明確にせずにプロジェクトを進めてしまうケースは多いです。
プロジェクトに携わる1人1人が、自分たちは明確なゴールの認識を共有できているという思い込みが原因として挙げられます。
そのままプロジェクトを進めると各々の認識の齟齬が浮き彫りとなり、建設的な議論を行ったり的確な施策は何なのかを見極めたりできなくなります。
無駄に工数を増幅させずプロジェクトを円滑に進めるためにも、ゴール設定というプロセスに手間を惜しむべきではありません。
「やること」も「やらないこと」も定める
プロジェクトの準備段階では「何をやるか」を決めますが、「何をやらないのか」も明確に決めておく必要があります。
プロジェクトを進めていく間、最初に定めたゴールとは関係のない変更点が加わる場合があります。
例えば業務改善プロジェクトだと、「契約業務フローの最適化がゴールだったはずなのに、事業部の業務改善までプロジェクトに盛り込まれていた」といったことはよくあるケースです。
当初のゴールとは関係のない取り組みも盛り込んでしまうとプロジェクトの一貫性が損なわれる、つまりゴールとして目指すべき地点が見えにくくなります。
このような事態を避けるためにも、やること・やらないことの線引きをしておく必要があります。
プロジェクトの進行中、最初にやることとして定めた取り組み以外も必要となった場合は、別途プロジェクトを立ち上げて進めましょう。
チームメンバーごとに最適な役割を明確に割り振る
プロジェクトチームのメンバーが多いと、各メンバーがどんな役割を担うのかが曖昧になることもあります。
役割が曖昧なままだとどうしても日常業務が優先となってしまい、プロジェクトのタスクが進まなくなるといった弊害につながります。
プロジェクトを遅滞なく進めるため、チーム編成の際に各メンバーの役割を明確に定めたうえで、タスクを割り振りましょう。
社内プロジェクト立ち上げの企画書に記載する項目例
プロジェクトの立ち上げ時に作成する企画書、つまりプロジェクト憲章を作成するにあたって、何を記載すれば良いのでしょうか。
プロジェクトの内容によって変わりますが、プロジェクト憲章では基本的に以下のような項目を記載します。
現状の課題
なぜプロジェクトを立ち上げるのか、その背景にある現状の課題を記載します。
業務改善プロジェクトの場合だと、「アナログな業務により無駄な時間が発生している」「事業拡大に伴い既存の業務フローでは対応しきれなくなっている」といったことが挙げられます。
プロジェクトの目的
現状の課題を踏まえて、当該プロジェクトを経てどんな変化をもたらすかという目的を記載する項目です。
なぜこのプロジェクトに取り組む必要があるのか、このプロジェクトにどんな価値があるのかを明確に説明しましょう。
施策
目的の次は、プロジェクトの詳細を記載します。
目的を達成するための具体的な施策、その施策を講じたことで見込まれる効果を記載することで、企画書としての説得力が補強されます。
併せて、プロジェクトを進めるうえで課せられる条件も記載します。
ビジネスでは、何事にも時間や金銭的・人的コストなどの面である程度の前提条件・制約条件があります。
プロジェクトの進行において「縛り」の要因となる条件を記載しておくことで、不足の事態でプロジェクトに遅れが生じるリスクを抑えられます。
スケジュール
いつまでに・どのようにプロジェクトを進めていくのかが把握できるように、スケジュールも記載しましょう。
スケジュールを定める際は、まずいつまでにゴールを達成するかという期日を設定します。
その期日から、必要となるタスクや時間的制約などを考慮のうえ逆算していくと、適切なプロジェクト期間が見えてきます。
また、プロジェクトに関わる工程1つ1つの所要時間の目安も記載しておくとコストを把握しやすくなります。
予算
プロジェクトの遂行に必要な予算も提示します。
そのプロジェクトにどれだけの価値があったとしても、承認するか否かの判断材料として予算や採算性の目安が必要になるからです。
しかし具体的な予算を提示するとなれば時間がかかるため、プロジェクト憲章作成の時点で予想できる範囲で記載しましょう。
社内プロジェクトでよくある失敗例
社内プロジェクトの成功には立ち上げで入念な準備が必要であることは先述した通りですが、逆に失敗するとなればどのようなケースに陥るのでしょうか。
社内プロジェクトにおいて多い失敗例としては、以下のようなケースが挙げられます。
・議論がうまくまとまらず立ち上げが進まない ・話し合いで似たような施策ばかりが挙げられて効果的かつ斬新な意見が出ない ・メンバーの予定が合わずプロジェクトが進まない ・限られた人ばかりがタスクを多く抱えている |
「社内だけのプロジェクトだから」「業務の片手間にやるから」などの理由で、納期に対する意識の低下や方針のブレを許容する雰囲気となってしまうがゆえに、上記のような失敗へとつながります。
社内プロジェクト失敗を回避するための対策
上記のような失敗を回避するには、プロジェクトマネジメントに注力しなければなりません。
プロジェクトのリーダーだけでなく、各メンバーがプロジェクトマネジメントの基礎を知る時間を作りましょう。
具体的には、プロジェクト憲章作成の必要性や、スコープ・スケジュール・品質・コスト管理などの考え方を理解するための時間です。
また、業務の傍らでプロジェクトを進めるにしても、少しずつ長期的に取り組むよりもメインのスケジュールをうまく調整して短期集中でプロジェクトに取り組むことをおすすめします。
大きな成果も出ない取り組みをいつまでも続けるより、週に何回かプロジェクトに専念する日を設けて進めた方が成果も見込めます。
社内プロジェクト成功には立ち上げのプロセスが重要!ポイントを押さえて成功に導こう
社内プロジェクトは、規模にかからず立ち上げでしっかりと準備することが大切です。
立ち上げの際はゴールの明確化・プロジェクトの価値のアピール・チーム編成など、必要なプロセスを着実に踏んで計画へ乗り出しましょう。
関係者にプロジェクトをアピールして承認を得る際、「プロジェクト憲章」という企画書も作成する必要があります。
本記事で解説した手順やポイントを参考に、自社に有意義な社内プロジェクトを実施して成功へつなげましょう。