ノウハウ メールやチャットで契約関連のやりとり(社内)を行う際の課題と解決方法
更新日:2024年10月31日
投稿日:2024年06月18日
メールやチャットで契約関連のやりとり(社内)を行う際の課題と解決方法
契約書に関するコミュニケーションツールには様々なものがあります。その中でもメールやチャットツールの利用は多くの企業で利用されているツールではないでしょうか。しかし、契約書などの文書をメールやチャットでやりとりするのは様々な課題や問題があります。
本記事では、契約書に関するやりとりをメールやチャットで行う場合の課題とその解決方法について解説します。
メール、チャットで契約関連のやりとりを行う際の課題
メールやチャットツールで契約関連のやりとりを行う場合には以下のような課題があります。
情報が属人化する
メールで契約書の確認や作成の依頼をするのはよくあるパターンですが、こうしたメールでの依頼は担当者とCCに入った人以外には見られません。そのため、案件の把握ができず、その担当者のみしか対応できないという状況になってしまいます。
こうした状況は業務の属人化を招くほか、業務のブラックボックス化にもつながります。
また、マネジメントする側も部下にどのくらいの数の案件が来ているのかが分からず、適切なマネジメントができなくなってしまうおそれがある点にも注意が必要です。
バージョン管理が煩雑
契約書のやり取りを社内でメールで行うことはよくありますが、その際、やり取りの中で変更があった場合には契約書のバージョンが変わることになります。
このバージョン管理について上手くコミュニケーションが取れていない場合、契約書のバージョンがいつの間にか変わってしまうといった事態になりかねません。
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メールボックスの容量を圧迫する
契約書のやり取りをメールやチャットで行う場合、送信側と受信側それぞれに同じファイルのコピーができることになります。
メールボックスの容量には制限があり、契約書ファイルは場合によっては非常に重い容量のファイルになることがあります。
そのため、メールボックス内の容量を消費してしまい、削除せざるを得ないといった事態にもなりかねません。
しかし、削除してしまうとメールに記載された契約書に関する情報が全て消えてしまうため、必要な情報が失われてしまいます。
人の手によるバージョン管理が難しい
メールでやり取りするたびに契約書のバージョンが増えていくことになりますが、契約書のバージョン管理を行うためには、契約書のファイル名を一定のルールで変更し、バージョン管理を行う方法が考えられます。
しかし、この方法は人力で行うため、ヒューマンエラーによる更新漏れなどの問題が起こり得ます。
また、バージョンが増えるに従ってファイル名が長くなるため、一目でどのファイルか把握することが難しくなってしまいます。
そのため、バージョン管理には限界があるという点も課題の1つと言えるでしょう。
知見の再活用ができない
契約書のレビューや作成には法的な知識はもちろんのこと、ビジネスに関する様々な情報が必要になります。
こうした情報も法務担当者の貴重なノウハウであり、本来であれば部門内で共有できるのが望ましいと言えるでしょう。
しかし、メールやチャットは基本的に担当者と依頼者しか見ることができません。そのため、情報の共有ができず、特定の担当者に情報が集中してしまうといった事態になりかねず、業務の属人化を招く危険性もあります。
このように、メールやチャットでのやり取りでは担当者と依頼者との間でのみやり取りが行われるため、案件で得られたノウハウや知見を他の法務部員と共有したり、再活用するといったことができない点も課題の1つと言えるでしょう。
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重要なメールが埋もれるリスク
社内メールは、日々宛先となって送られてくるものだけでなく、CCやBCCに入れられたメールなど、様々なメールが送られてきます。
特に法務は法律相談業務も行っているため、契約書に関するやり取りだけでなく、法律相談に関するメールまで様々なメールが送られてきます。
そのため、メールボックス内は常に様々なメールであふれており、一目でどれが重要なメールか分かる人は少ないかと思います。
こうしたメールボックスを様々なメールが圧迫してしまう問題は、重要なメールが重要度の低いメールに埋もれてしまうリスクを増大させます。そのため、メールで契約書に関する情報のやり取りをする際には、重要な箇所は別途フォルダに保存しておくといった対処が必要となります。
情報が分散する
契約書のファイルは本来、案件の進捗状況や社内折衝の経緯など、その背景を踏まえて確認を行います。
しかし、そうした情報が契約書案の中や、メール、その他ツールに分散していると、契約業務に必要な情報へのアクセスが難しくなり業務効率の低下を招きます。
【関連記事】契約の経緯・履歴情報がないことのリスクとその解決方法
最新のファイルが分からなくなる
前述のように様々な役割を扱うため、重要なメールが埋もれやすくなりがちです。
こうした問題を解決するために、契約書案の添付されたメールをメールボックスに保管したり、添付ファイルだけをフォルダに保存するといった方法で対応することが考えられます。
しかし、数が多くなってくるとどれが最新版のファイルなのか分らなくなってしまうといったリスクが考えられます。
契約書管理台帳への転記ミス
契約書管理をする方法として、Excelなどで作成した契約書管理台帳を利用している会社は多く見られます。
契約書がいくつかのバージョンを作成した後に締結に至った場合には、この契約書管理台帳に契約書の情報を転記していくことになります。
しかし、メールが埋もれてしまい、最新版が分からなくなってしまった場合や、最終案を勘違いしてしまった場合には、異なる情報が契約書管理台帳に記載されることになり、有効な契約書管理ができなくなってしまうリスクがあります。
各課題の解決方法
以上のような課題に対して解決方法としては以下のものが考えられます。
専用アドレスを作り共有する
法務部員内で契約書のやりとりに関する情報を共有するために、契約書確認依頼用のアドレスを作成し、このアドレスを共有する形で情報の共有を行うという方法があります。
情報の一元化を図ることができるため、契約書に関する情報が分散してしまうという課題の解決にもなります。
ただし、すべての契約書に関するやり取りをこのアドレスで行うことになるため、メールボックス内の情報が過多になってしまい、必要な情報にアクセスするのが難しくなるリスクや、重要なメールが埋もれてしまうリスクもあります。
メールボックスを整理する
メールボックス内にあるメールはすべてが有用なわけではありません。むしろ、大部分はあまり重要度の高くないCCなどで送られたメールが多いのではないでしょうか。
こうしたメールボックスの容量の圧迫は、こまめにメールを削除し、重要なメールで容量の大きいものは別途フォルダに保存するといった対処をするようにしましょう。
ファイルの命名ルールを作る
契約書のバージョンが変わった際には、管理方法はいくつかありますが、メールごとにバージョンが変わるたびに保存する場合には、ファイル名の付け方にルールを作り、整理できるようにするのが一番導入しやすく手軽な管理方法です。
例えば、バージョンが変わるたびに変更された日の日付をファイル名に入れていく方法などが比較的よく取られる方法ではないでしょうか。
CCに法務部員全員を入れるなど情報の共有化を図る
担当者と事業部門だけのやりとりで仕事を進めようとした場合、情報の共有がなされず業務の属人化やブラックボックス化を招くおそれがあります。
そこで、契約書に関するやりとりについてはCCに法務部員全員が入るようにし、情報の共有ができるようにしておくといった方法も考えられます。
メールボックスを分ける
重要なメールが埋もれないようにするためには、メールボックスを整理することが重要です。
特に、よく依頼が来る人や重要人物からのメールについては、メールボックスを分けておくといった対処法も有用でしょう。
情報のやりとりの一元化
コミュニケーションツールには、メールやチャット、さらには口頭など様々な方法がありますが、コミュニケーションがそれぞれバラバラの方法で行っていると情報が分散してしまうことになります。
そうなると、その契約書がどういう経緯でその修正を行ったのか分らなくなってしまう可能性もあります。そこで、契約書に関するやりとりはメール、チャットなど一元化することで情報の散在を防ぐことができます。
改善方法
では、改善方法としてはどのような方法が考えられるでしょうか。ここからは改善方法についてご紹介します。
契約業務専用のアドレスを作成する
先ほどもご紹介したとおり、契約業務に関するやりとり専用のアドレスを1つ作成し、そのアドレスに情報を一元化するというのも1つの改善方法です。メールアドレスを作るだけで良いので導入しやすくコストもかからないのでお手軽な手段として導入することができます。
ただし、そのメールアドレス宛にメールが集中することになり、情報量が多くなるため、必要な情報が埋もれてしまうリスクがある点には注意しましょう。
こうしたメールアドレスを作っても重要なメールについてはフォルダ内に別途保存するといった対応が必要となります。
チャットツールで契約業務専用のチャンネル・トークルームを作成する
チャットツールをメインのコミュニケーションツールとして利用している場合には契約業務専用のチャンネルやトークルームを作成し、そこに情報の一元化を図るといったことも考えられます。
他方、チャットツールは新しいメッセージがどんどん上書きされていくため、必要な情報や重要なメッセージ、契約書ファイルを添付したメッセージなどが埋もれてしまうリスクが高くなってしまいます。
依頼数が多い場合や契約業務の件数が多い場合には不向きな方法と言えるでしょう。
契約管理システムを導入する
契約書管理システムにはいくつかの機能がありますが、案件段階から契約書の管理まで、契約書に関する情報を一元管理できる機能を備えたものもあります。そのため、情報の散在や必要な情報へのアクセス効率が下がるといった問題を避けることができます。
また、契約書管理システムには、契約書の修正が行われるとバージョンを自動的に保存してくれる機能を持つものもあります。これにより、バージョン管理が容易になり、バージョン違いの契約が抜け落ちるといったリスクを回避することができます。
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まとめ
メールやチャットでの契約書のやりとりには、情報が埋もれてしまうリスクなど様々な課題があり、必ずしも契約書に関するやりとりを行うためのコミュニケーションツールとして適しているとは言い難い部分があります。
契約書に関する情報を一元管理することで、必要な情報が埋もれてしまうリスクを避け、必要なタイミングで契約書の必要な情報へアクセスできる状態を実現することができます。
また、人の手では難しいミスの防止も、システムに任せることで確実に実行することができます。
契約書に関するやりとりの効率化や情報へのアクセス効率の低下でお悩みの方は、契約書管理ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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