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ノウハウ 内部統制を強化するための契約業務改善

更新日:2024年10月17日

投稿日:2024年06月11日

内部統制を強化するための契約業務改善

内部統制を強化するための契約業務改善

昨今では企業には高いコンプライアンス意識とガバナンス体制が求められています。こうしたガバナンス体制構築のためには内部統制が非常に重要となります。また、内部統制を適切に行うためには企業の対外的活動である契約の締結も適切になされる必要があります。

 

本記事では内部統制のための契約業務改善について解説します。

 

 

内部統制とは?

内部統制とはそもそもどのような意味を有するのでしょうか。まずは金融庁の内部統制の定義についてご紹介します。

 

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動 に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセ スをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

 ○ 業務の有効性及び効率性とは、事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めることをいう。 

○ 財務報告の信頼性とは、財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することをいう。

 ○ 事業活動に関わる法令等の遵守とは、事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することをいう。 

○ 資産の保全とは、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ることをいう。

引用: 金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準

 

つまり内部統制には、4つの目的と6つの基本的要素で構成されていると金融庁は定義しています。

 

【関連記事】内部統制とは?基本から具体的な構築方法まで分かりやすく解説!

内部統制の4つの目的

内部統制の4つの目的とは以下のものを指します。

①業務の有効性・効率性を高める

企業活動にとって人・物・金・情報といった資源を効率よく利用することは非常に重要な事柄です。内部統制を強化することで各業務がもつリスクを軽減し効率化を図ることができます。

②財務報告の信頼性を確保する

財務報告は投資家や債権者にとって非常に重要なものであり内容に誤りがあれば会社の信頼に強くかかわります。そのため、こうした財務報告に誤りがないか確認することも内部統制の大きな目的の一つです。

③法令等の規範の遵守を促進する

企業には法令遵守が強く求められ、法令違反を起こした場合には企業の社会的な信頼を大きく低下させ、最悪の場合事業の継続性が困難となるリスクもあります。また企業が守ることを求められるのは法令だけでなく社会的な倫理も強く求められます。これらを遵守し、企業の信用を守ることも内部統制の大きな目的です。

④会社資産の保全を図る

事業を行う上で会社の資産は健全な活用が求められます。万が一経営者や従業員によって不正に活用したり横領されたりすると、最悪の場合事業の継続が困難となってしまいます。そのため、会社の資産が適切に管理・利用されているか確認することも重要です。

6つの基本的要素

内部統制における6つの基本的要素とは以下のものを指します。

①統制環境

統制環境とは企業風土や企業の姿勢を意味するもので、6つの要素の中で最も基本的なものを指します。企業理念や経営戦略、経営方針といったものも含まれます。

②リスクの評価と対応

企業が抱えるリスクを「識別」し、「分析」・「評価」を行った上で、「対応」をおこなうという一連のプロセスのことをいいます。

③統制活動

企業には多種多様な部署が存在し、それぞれに異なる業務を行っています。異なる部署がそれぞれ経営者の指示に従った業務を行うための活動が統制活動です。

④情報と伝達

情報と伝達とは、情報が適切に処理されたのち、必要な情報が組織内の関係者相互に正しく伝達されるという情報伝達の一連のプロセスを言います。

⑤モニタリング

モニタリングとは内部統制が有効に正しく機能しているか監視することをいいます。単に監視するだけでなく評価・改善をすることも含まれます。

⑥ITへの対応

IT技術の導入により業務や情報の効率化を図ることは有効な内部統制システムの構築に有用です。

内部統制が効いていない状態とそのリスク

内部統制が効いていない状態だと様々な不祥事が発生し、対外的な会社の信頼を大きく損なってしまう可能性があります。

 

例えば、上場会社であるA社は売上高の97%を架空計上していたことが発覚しました。その結果、上場廃止となり、投資家などの信頼を損なった結果破産してしまいました。経営者の倫理観等が欠けている点で「統制環境」がしっかりとできていなかったケースといえるでしょう。

内部統制と契約との関係

契約の締結は企業の対外的活動の一つですが、正しい財務報告がなされるためには適切で実態のある取引に基づいた契約が締結される必要があります。

 

また、不正取引を防ぐためには会社が締結する契約が正しい承認者によって承認されるなど社内ルールに沿った手続きが行われる必要があります。

 

正しい承認者による正しい契約手続きを踏むことは法令に沿った契約を締結するという法令遵守の観点からも重要です。

内部統制を強化するための契約業務の要素

では内部統制を強化するために内部統制の要素と契約業務はどのような関係に立つのでしょうか。それぞれの要素と契約業務の関係を見ていきましょう。

リスクの評価と対応

リスクの評価と対応は、組織目標の達成を阻害するものをリスクとして識別、分析及び評価し、当該リスクへの適切な対応を行うことをいいます。

 

契約においてもレビューの際には経営目標の達成を阻害するような要素を除外し、契約の目的を達成する必要があります。

統制活動

統制活動とは、経営者の命令及び指示が適切に実行される状態が保たれていることを指します。

 

契約を締結するべきかしないべきかの判断に当たっては経営者の意思が伝達されそれに従って適切に対応される必要があります。

情報と伝達

情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内の必要な人間に伝達・共有されている状態であることをいいます。

 

契約書に関する情報は秘匿性が高い情報もあるため、そういった情報が社内の必要な人間に限って伝わっている状態である必要があります。

モニタリング

モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいいます。

 

契約を締結するたびに正しい手順で契約が承認されているかといった点をチェックする必要があります。

ITへの対応

ITへの対応とは、業務の実施において組織の内外のITに対し適切に対応することをいいます。

 

契約業務との関係ではリーガルテックを導入し、業務効率の改善を図る事をいいます。 

契約業務の統制が効いていない場合に起こり得る問題

契約業務の統制が効いていない場合には以下のような問題が起こり得ます。

 

  • 契約を締結する前に業務を開始し、情報漏洩、資金の流用などが起きてしまい事後的な回復が困難になってしまった
  • トラブルが起きたときにどのような経緯で起きたかが分からず必要な対策がとれない
  • M&Aに関する契約書など限られた人のみに閲覧を制限しておきたい契約書がアクセスできるようになっており社内の人間を通じて情報漏洩が起こってしまった
  • 社内で規定したルールに則って契約業務が行われないため、不適切な内容の契約が締結されてしまった。

契約業務の統制を効かせるための業務改善のポイント

契約業務の統制を効かせるための業務改善のポイントはどのようなポイントにあるでしょうか。ここからは業務改善のポイントについて解説します。

社内ルールに則った申請先に申請し、承認を得て締結がされていること

契約は締結する前に稟議などの社内承認を得て行われるのが通常ですが、こうした適切な社内承認が行われるように定期的に見直しや確認をする必要があります。

閲覧者を制限できること

M&Aなど秘匿性の高い契約書は社内の全ての人が閲覧できるのは適切ではありません。こうした契約書については閲覧制限やアクセス制限がかけられるような状態にしておく必要があります。

不正が生じたときに経緯や原因を明らかにできること

不正が起こった際に重要なのは事実関係の確認と再発防止策の徹底です。そのためにはその業務を行った担当者が明確になっていることや原因などが明らかになる必要があります。


【関連記事】契約リスクとは?リスクの種類と最適なリスクマネジメント方法

履歴・証跡管理ができること

不正やトラブルが起こった際には契約書の内容をまずは確認する必要があります。そのためにはその契約書が「いつ・誰が・何の文書をレビュー申請して、承認し、締結し、どこに保管されているか」といったどのような手続きで締結されどこに保管されているのかといった点が明らかになる必要があります。

 

【関連記事】契約書のメタデータを活用した業務効率化とデータベース化の方法

反社チェックなどを抜けもれなく行える業務フローであること

コンプライアンス体制作りのためには反社チェックは非常に重要です。こうした反社チェックが必ず実施されるような業務フローになっているかどうかは確認する必要があります。

 

【関連記事】締結後契約書収納を適切に運用したい!マニュアル通りのルールで統制を効かせる方法

内部統制のための契約管理システムの選び方

内部統制を効かせるための契約書管理システムの選ぶポイントとしては以下のものが挙げられるでしょう。

 

  • 案件段階から一元的に契約書の管理ができるもの
  • 契約書に閲覧制限やアクセス権限付与が可能なもの
  • 契約書の締結にあたって承認者が明確になるもの
  • 契約書の有効期限が近づいてきた場合にアラートで知らせてくれる機能があるもの
  • 契約書がデータベース化されており、事後的に契約書の確認が容易なシステム

内部統制のための契約管理システムの機能要件

内部到底のための契約管理システムの機能要件としてはどのようなものがあるでしょうか。ここからは契約管理システムの機能要件をご紹介します。

履歴/証跡管理ができること

契約書が正しい承認ルートで締結されているかということを後から確認するためには、いつ、誰が、何の文書をレビュー申請し、誰が承認し、締結し、どこに保管されているかといった点について明確になっていることが必要です。

 

こういった点が明らかになっていないと後から契約の承認ルートや内容を確認することができないからです。そのため、まずはこういった点について備えたシステムであることが求められるでしょう。

閲覧に権限付与ができるシステムであること

前述の通り、契約書の中にはM&Aに関する契約書のように秘匿性の高い契約書があり、社内でも限られた人間のみがアクセスできる状態である必要があります。こうした状態を実現するためには契約書の閲覧に権限付与ができる機能を有している必要があります。

 

こうした機能を通じて必要な人間が必要な情報にアクセス可能な状態を実現することができます。

 

【関連記事】業務改善に有効なシステム導入の流れとは?注意点や準備のポイントも

まとめ

内部統制を効果的に効かせるためには契約書管理システムの導入が非常に有効です。内部統制を効果的に効かせることで社内の業務改善がなされるだけでなく、対外的な会社の信頼も高くなり、結果としてその会社の業績や経営状態の向上が望めます。

 

逆に、内部統制が効いていない状態だと不正等の温床となり、コンプライアンス違反などにより会社の信頼性を大きく損なってしまう事態になりかねません。

 

契約書管理システムを導入し、契約書業務を効率化・適正化することで内部統制を強化し、会社の経営基盤の強化や信頼性の保護を行いましょう。