ノウハウ 契約書のバージョン管理・最新版管理とは?システムで誤りの内容を反映させない方法とは
更新日:2024年11月21日
投稿日:2024年05月27日
契約書のバージョン管理・最新版管理とは?システムで誤りの内容を反映させない方法とは
契約書の適切なバージョン管理と最新版管理は、業務効率化や信頼できる取引に欠かせません。
契約業務は重要な業務であるものの、人の手で作業を進めるとヒューマンエラーのリスクが高まり、不適切な管理につながりかねません。ヒューマンエラーを減らしながら版管理の効率化にもおすすめの方法は、システムを使うことです。
そこで、リーガルテックを導入して版管理を行うメリットとツールでできることを解説します。
契約業務上のバージョン管理、最新版管理とは
バージョン管理とは契約書のファイルに変更が加えられた時、いつ・誰が・どのような変更をしたか記録することです。一般的にはシステムを用いて行われます。
最新の契約書を特定できるようにすることが最新版管理です。
バージョン管理が適切に行われていれば、正確に最新版管理できていると言えます。
文書管理における最新版管理の重要性
文書管理でミスの防止と業務効率化につなげるためには、最新版管理は重要です。
最新版を正しく把握できないと、適切な書類に基づいて業務を進められません。誤った書類が使われると、トラブルの原因となることが懸念されます。最新版がすぐに分かると、正しい書類が用いられ、トラブルのリスクを減らした取引ができます。
最新版の特定に時間がかかれば、業務の進捗に影響します。システムの記録で最新版がひと目で分かるようになっていれば、正しい文書をすぐに見つけられ、業務が円滑に進むでしょう。
契約業務での最新版管理の重要性
契約書をすぐに見つけられることで契約業務の効率化を図れます。加えて、法的リスクの回避や企業の信用を守る上でも、最新版管理が重要な役割を果たします。
最新でないバージョンは、法改正が反映されていない可能性があります。また、自社に不利な条文が修正されないことで、契約違反を犯すリスクを抱えることになります。
先方が持っている契約書と自社が持っている契約書の内容が異なるために、トラブル対処に困難が生じることもあるでしょう。
また、最新の情報に基づいて契約できることで契約者も安心です。問題のない書類の作成から契約締結までスピーディーな企業への信頼度は高いです。
契約書に内容が正しく反映されない場合について
契約書の締結に至るまでには、相手方と交渉を行い、何度か契約書を変更し、最終案にいたるという流れが通常です。
こうした契約業務の中では、複数の書類のバージョンが作られる中で適切なリスク管理者が把握しない内容が最終案となるケースは少なくありません。
また、良くないケースとして、契約書の交渉途中で相手方の案を法務は受け入れられないと主張していたところ、事業部が交渉で負けた場合に事業部が意図的に適切な権限者に知らせず契約書の改ざんを行うといったケースも考えられます。
契約書の最新版に正しい内容が反映されないミスを防ぐ方法
最新バージョンに誤った内容が反映されないようにするために取り入れるべき3つの方法を紹介します。
バージョンごとに内容を確認する
バージョンが変わるたびに契約書の内容を前回のものと照らし合わせて確認する方法です。
修正の有無にかかわらず確認を行えば、見落とさない限り、契約書の内容がが最終版か確認できるでしょう。
しかし、この方法は非常に時間と工数のかかる点がデメリットです。特にPDFなどで契約書案のやりとりをしている場合には法務担当者が目で見て2つの契約書に違いが無いか確認する必要があるため生産性にも大きく影響します。
バージョンごとにファイル名を変更する
契約書のファイルの命名ルールを作っておき、ファイル名で最終版か確認するという方法もあります。
具体的には、「日付_契約書名_種別」や「日付_契約書名_バージョン番号」といった形でバージョンごとに異なるファイルを作成します。例えば、2024年2月24日に作成された売買契約書で2回目のやりとりが行われた際に作成された契約書であれば、「20240224_売買契約書_V2」といった形でファイル名をつけるようにします。
この方法のメリットは費用がかからず、すぐにできるため、ルール作りさえしてしまえば導入できるという点が挙げられます。
一方で、結局は人間が手作業で行うためヒューマンエラーによる作業漏れの可能性がある点や、意図的な改ざんを防ぐことができないという点はデメリットと言えるでしょう。
また、相手方と同じルールを共有できていないとこちらで修正が必要になる点もデメリットとして挙げられるでしょう。
Wordの比較機能や修正履歴機能を活用する
Wordの比較機能を利用する方法も考えられます。
比較機能は2つの文書の差異や追加・削除された箇所がマークアップして表示されるため、効率的に2つの文書の違いを知ることができます。
また修正履歴機能をオンにしてお互いに契約書の修正をすることで原本からどこが修正されたか知ることもできます。
この方法のメリットはWordさえあればできるためすぐに始めることができる点や導入に費用が必要ない点もメリットとして挙げられるでしょう。
他方で、比較機能はその2つの文書のどこが違うのかが分るだけでどの時点でそうした修正が行われたのかまでは分らないという点がデメリットとして挙げられます。
内容が変更されたことを効率的に検知する方法
では、どのようにすれば効率的に不適切な内容変更が行われたことを検知することができるでしょうか。
これについては契約書をWordファイル化し、Wordの比較機能を用いて差分を発見するのが後述するリーガルテックの導入を除いては効率的と言えるでしょう。
ただし、前述の通り比較機能は2つの文書の全ての差異をマークアップする機能のため最初のバージョンと最新版しかファイルが無い場合には途中のどの時点で契約書の修正や変更が行われたかを知ることはできません。
そのため、この方法を有効に活用するためにはファイル名をバージョンごとに変更し、バージョンごとに新しいファイルとして保存する方法と併用することが必要不可欠です。
契約書のバージョン管理の課題
では、どのような課題が契約書のバージョン管理の方法にはあるでしょうか。ここでは課題について解説します。
バージョンごとに内容を確認する方法は工数がかかり非効率的
1つの方法はバージョンが変わるごとに内容の全てを確認し、変更が無いかチェックする方法です。
しかし、この方法は前述の通り非常に工数のかかる作業であり、こうした作業に手間を取られてメインの作業である契約書案の作成や交渉といった部分に割けられる労力を減らしてしまうという点で非生産的ともいえます。
このようにバージョンごとに内容を確認するという方法は作業コストが重いという課題があります。
ファイル名の変更はヒューマンエラーの可能性
もう一つの方法はバージョンが変わるたびに新たなファイルを作成しファイル名を変更していくという方法です。
この方法の課題は相手方とルールを共有する必要がある点や、人の手での作業のためヒューマンエラーによる更新漏れの可能性といった点が課題として挙げられます。
バージョンごとのファイルの紛失の可能性
交渉が重ねられるといくつも契約書のバージョンが発生することになります。
このとき、契約書をバージョンごとに名前を変え、別ファイルとして保存している場合、保存忘れなどからバージョンの途中のファイルが紛失してしまうといったリスクがあります。
契約書のバージョン管理を効率化させる方法
では、契約書のバージョン管理はどのようにすれば効率化できるでしょうか。ここではバージョン管理の効率化の方法について解説します。
修正履歴とコメント機能の活用
Wordファイルの場合、修正履歴をオンにした状態で編集を行うと修正履歴が残り、どこを修正したかがマークアップされるため一目でわかる状態になります。
この修正履歴機能を活用しつつ、修正した箇所にコメントを入れることでいつの時点でなされた修正・変更かある程度分かるようにすることができます。
ファイル名によるバージョン管理
ファイル名によるバージョン管理もバージョン管理を効率化させる上で有効です。
異なるファイルがバージョン毎に作成されるため、一定の時点まで戻りたいといった場合に検索が容易であるというメリットがあるため、効率的にバージョン管理をすることができます。また、導入が容易でコストもかからない方法で取り掛かりやすいでしょう。
しかし、ヒューマンエラーによる更新漏れの可能性があります。
リーガルテックの導入
リーガルテックの中には契約書の修正や変更を行った場合、その情報を共有できる機能を有するものがあります。
こうした機能を有するリーガルテックでは自動でバージョン管理をしてくれるため、手動でバージョンごとに名前を変更しなくてもすむことになります。
また、変更履歴も記録され、一定の時点まで戻ることもできるためバージョンごとに新しいファイルを複製する必要もありません。そのためヒューマンエラーによる更新漏れや保存漏れといった事態を防ぐことができる点は大きなメリットです。
システムの版管理の機能
契約管理システムには版管理の機能が備わっていることも多いです。版管理に役立つシステムの機能についてご紹介します。
- 班ごとにシステムに自動で保存する
- 版の内容を確認する
- 版を切り替える
- 全ての版を検索する など
版ごとにシステムに自動で保存する
人の手で版管理を行うとファイル名のミスや誤ってファイルを削除してしまうなど、ヒューマンエラーのリスクがあります。
システムによっては各バージョンが自動で保存されるようなものもあります。版ごとにファイルが保存されるため保存忘れがないことはもちろん、変更の経緯などの正確な把握が可能です。
版の内容を確認する
版ごとに自動保存されるため、変更箇所や理由も確認できすることができます。
版同士の差分をボタン一つで比較できるような差分比較機能が備わっていれば、変更箇所の確認がより楽に行えます。
版を切り替える
過去のバージョンが必要になった時、版を切り替えて以前の内容に戻すことができます。
全ての版を検索する
システムを活用することで、過去のバージョンを含めた文書の検索が可能になります。キーワード検索を使用すれば、必要な契約書やその履歴、修正内容などを迅速に見つけ出すことができ、特定の版を即座に取り出すことができます。
システムで版管理をするメリット
システムで版管理をするメリットには以下のようなものがあります。それぞれ詳しくご紹介します。
- 作業の問題点を発見しやすい
- 過去のバージョンに戻せる
- 複数人で作業を進めやすい
作業の問題点を発見しやすい
版管理システムによって、いつ・誰が・どのような変更を加えたか自動で保存され、後から確認できます。
業務そのものの問題や疑問が生じた時はもちろん、システムトラブルが発生した時にはトラブルが発生したタイミングやトラブル前の状態が分かります。文書やシステムにまつわるエラーの修正にスムーズに取りかかれるでしょう。
過去のバージョンに戻せる
システムを使わないバージョン管理だと、バックアップが残っていなければ復元できません。
システムであれば、全ての版が変更履歴と合わせて保存されます。状況によっては過去の版の方が最新版より適切なこともあるかと思います。適切と思われる版に戻したい時には、簡単な操作で過去のバージョンに戻すことが可能です。
複数人で作業を進めやすい
複数人で作業を進める際には、他の人のファイルに上書きしないようにするなどへの注意が求められます。
一方、システムを活用すると操作を誤っても過去の版に戻せるため、作業前の状態に戻せて安心です。
また、システムによって作業者を把握できるため、ます。間違った変更に気づいた段階で本人とコミュニケーションをとって軌道修正を図れます。
契約書改ざん防止、バージョン管理を効率化させるツール
では、契約書改ざん防止、バージョン管理を効率化させることができるツールにはどのようなものがあるでしょうか。具体的なサービスをご紹介します。
ContractS CLM
ContractS CLMは、契約業務を一気通貫で管理できる機能と構造を備えたシステムで、契約書の修正や変更があるたびに自動でバージョンが保存されるため手動でバージョンごとの管理をする必要がありません。
また、全てのバージョンが自動で保存されるため過去バージョンの契約書を紛失する、見つけられなくなってしまう、といった事態になりにくいのがメリットの1つです。システムに備わっている差分比較機能を用い、それぞれのバージョン毎の差分を比較することでこれまでの交渉の過程を振り返ることも可能です。
このように契約業務で発生する手間や確認作業から解放されるため、効率的に契約業務を進めていくことができます。
まとめ
契約書のバージョン管理・最新版管理は、契約業務などを円滑に進めること、そして信頼できる取引の継続に重要な役割を果たします。
契約書のバージョン管理にはいくつか方法があります。例えば契約書のバージョンが変わる度にひとつひとつ文書を確認する方法や、ファイル名のルールに沿って確認する方法などです。
また、修正があった事の連絡忘れといった簡単なエラーで法務の検知しない修正が出てしまうなど簡単なミスで非常に高いリスクが生じてしまいます。
変更履歴などを確実に把握する手段としておすすめなのが、リーガルテックの導入です。
システムを使った版管理は、適切なバージョンに簡単に戻せたり、システムトラブルのスムーズな対応などを可能とします。
複数人で業務を進める際のシステムエラーのリスクを下げられることや、改ざんを起こしにくい点でもメリットが大きいです。
バージョン管理・最新版管理の効率化を図りながら文書管理や契約業務のミスが発生するリスクを減らしたいのであれば、ご検討をお勧めします。