ノウハウ タイムスタンプとは?取得方法や各法律との関係などわかりやすく解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年05月22日
タイムスタンプとは?取得方法や各法律との関係などわかりやすく解説
電子契約など、インターネット上の取引・手続きに用いられる文書は改ざんのリスクを伴います。
タイムスタンプとは、文書データの改ざんを防止する際に必要な機能のひとつです。
今回はタイムスタンプとは何か、具体的な役割・取得方法・仕組みなどのポイントに分けてわかりやすく解説します。
タイムスタンプに関わる知識を簡単に網羅できる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
タイムスタンプとは?
タイムスタンプとは、付与した時間に当該の電子データが確かに存在していたこと、それ以降は内容が改ざんされていないことを証明するための技術です。
電子データの文書は、紙よりも簡単に改ざんが可能なうえに痕跡が残りにくいというデメリットがあります。
そこで当該文書に対応するタイムスタンプを第三者機関が発行のうえ付与して、その文書が存在している事実や作成後に変更されたかどうかを隠ぺいできないようにします。
タイムスタンプがよく活用されている文書は、以下の通りです。
・国税関係書類(領収書・請求書・納品書・注文書など) ・電子契約書 ・電子カルテ ・研究報告書 など |
タイムスタンプの役割
タイムスタンプは電子データの存在・非改ざん性の証明だけでなく、「電子帳簿保存法に対応する」という役割もあります。
電子帳簿保存法とは、仕訳帳・総勘定元帳・貸借対照表・損益計算書・領収書・請求書などの国税関係書類の電子保存に関する取り決めを定めた法律です。
対象書類を電子保存する場合、電子帳簿保存法で定められた要件を満たさないと、公的な書類と認められない恐れがあります。
その要件を満たすために活用できる技術が、タイムスタンプです。
タイムスタンプと電子帳簿保存法の詳しい関係については、後ほど解説します。
タイムスタンプの取得方法
タイムスタンプを付与するにあたって、文書の作成方法はデジタルと紙のどちらでも問題ありません。
文書を作成したら、以下の流れでタイムスタンプを取得のうえ付与しましょう。
書類を電子化する
まずはタイムスタンプを付与したい書類の用意が必要です。
パソコンで作成するか、紙で作成した書類をスキャンして電子化しましょう。
なお、電子帳簿保存法の対象書類に関しては、紙から電子化する場合に解像度や色の階調などの基準が決められています。
その基準を満たすことができれば、スマートフォンなどで書類を撮影しても問題ありません。
システムに書類データをアップロードする
電子化した書類のデータを、タイムスタンプ機能が備わっているシステムやクラウドサービスにアップロードします。
データ形式はPDFが一般的ですが、サービスによっては異なるフォーマットでの保存が必要な場合もあるため事前に確認しておきましょう。
時刻認証局にタイムスタンプの発行を依頼する
書類データをアップロードしたら、時刻認証局(TSA)という第三者機関へハッシュ値を送付します。
ハッシュ値とは当該データをもとに生成される固有の文字列で、書類の内容が違うとハッシュ値も変わります。
タイムスタンプが発行される
タイムスタンプの発行依頼を受けた時刻認証局は、時刻情報とハッシュ値を合わせた「タイムスタンプトークン」を生成して依頼者へ送信します。
これにより、そのハッシュ値をもつデータが特定の時刻に存在していることが証明されます。
タイムスタンプの仕組み
タイムスタンプがデータの存在と非改ざん性を証明できる理由としては、タイムスタンプ発行までの流れに出てきた「時刻認証局」と「ハッシュ値」が大きく関わっています。
それぞれどのような役割を持つ存在なのか、以下より詳しく解説します。
時刻認証局とは
時刻認証局とは、TSAや時刻認証業務認定事業者と呼ばれる事業者です。
総務大臣による認定を得ており、公的書類にも使える信頼性の高いタイムスタンプを発行することができます。
時刻認証局はタイムスタンプの発行依頼者からデータのハッシュ値を受け取り、時刻情報と組み合わせてタイムスタンプを発行します。
この一連の過程を、当事者ではなく第三者機関の時刻認証局が行うことで、データの正当性が担保される仕組みになっています。
ハッシュ値とは
タイムスタンプの発行に欠かせないハッシュ値とは、その時点でのデータの内容を元に生成された文字列で、暗号のような役割を持っています。
タイムスタンプを発行するためには、システムなどを通して時刻認証局へハッシュ値を送信する必要があります。
時刻認証局は送信されたらハッシュ値と時刻情報を含んだタイムスタンプを提供し、その時点で文書が改ざんされていないことを証明しているのです。
ハッシュ値は文書の内容が一文字でも異なるだけで変わるため、そのデータのハッシュ値とタイムスタンプに含まれるハッシュ値を照合すれば、改ざんの有無が判明する仕組みになっています。
タイムスタンプ付与のため発信側・受信側がすべきこと
電子取引においては、データの発信者側がタイムスタンプを発行していれば受信者側のタイムスタンプの用意は不要です。
一方で発信者がタイムスタンプを付与しておらず、受信者によるデータの編集・削除が制限されていないシステムが使われている場合、受信者がタイムスタンプ発行の用意をする必要があります。
電子書類に用いられるタイムスタンプの例
タイムスタンプそのものの信頼性を確保するには、総務大臣の認定を得た事業者のタイムスタンプを活用することが大切です。
2024年4月時点では5社が総務大臣の認定を得ており、総務省ホームページにて確認できます。
事業者ごとにサービスの内容は変わるため、各社の特徴を比較して自社に合うものを選びましょう。
例えば認定事業者のひとつであるセイコータイムスタンプサービスは、既存のインターネット回線を利用しており、迅速に信頼性の高いタイムスタンプを発行できます。
高速かつ高精度なサーバーを活用した時刻認証であらゆるデータの真正性を保証でき、知的財産保護やシステムへの組み込みなど多様な分野での活用が可能です。
タイムスタンプに関わる法律
タイムスタンプは、電子文書についての取り決めを定めた以下の法律に関連しています。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、「国税関係書類」に該当する書類を電子データとして保存する際の取り決めを定めた法律です。
従来の国税関係書類は紙での保存が原則でしたが、電子帳簿保存法で定められた要件を満たせば電子データでの保存も認められます。
電子帳簿保存法で定められた要件は、以下の4つです。
真実性の確保 | タイムスタンプを付与する など |
可視性の確保 | ・システムの概要を記載した関連書類を備え付けること ・保存場所にプログラムやディスプレイ、プリンタとそれらの操作説明書を備え付けること ・取引年月日や取引金額など複数の項目で検索できるようにすること |
上記から分かるとおり、タイムスタンプは国税関係書類の電子保存要件を満たす手段として明記されています。
ただし、2022年の電子帳簿保存法改正により、以下の2つの要件を満たす場合にはタイムスタンプが不要となりました。
・訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け ・訂正や修正した場合に履歴が残るシステム、もしくは訂正や削除が行えないシステムを利用 |
e-文書法
e-文書法では、紙での保存が義務付けられている文書を電子保存する際の取り決めを定めています。
会社法・税法・商法・労働基準法など、各省庁が管轄している約250本の法律に関わる文書が対象となっており、電子帳簿保存法よりも適用の幅が広いことが特徴です。
e-文書法における電子保存の要件は各府省令によって変わりますが、経済産業省の場合は大きく分けて以下4つの要件を定めています。
・見読性の確保 ・完全性の確保 ・機密性の確保 ・検索性の確保 |
上記のうち「完全性の確保」とはデータの消失・破損・改ざんを防ぎ、改ざんされた場合は事実検証が可能な状態を確保することを指します。
この要件を満たすなら、タイムスタンプの活用が有効です。
電子署名法
電子署名法とは、電子署名を用いた電子契約の真正性を認める法律です。
電子署名は公開鍵暗号方式などの技術を活用し、当該契約に関して「本人によって付与(契約に同意)されたもの」「改ざんが行われていない」ことを証明できます。
とはいえ電子署名だけでは契約に同意したタイミングまでは証明できないため、確実性を高めるためにタイムスタンプと併用するケースが多いです。
タイムスタンプが必要な書類
タイムスタンプの付与が必要となるのは、一部を除く電子帳簿保存法の対象書類です。
電子帳簿保存法の対象書類は大きく分けて国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引という3つの区分があります。
また、国税関係書類はさらに決算書類・取引関係書類の2種類に分けられます。
タイムスタンプの付与が義務付けられているのは、紙から電子化した取引関係書類または電子取引でやりとりした取引情報です。
具体的には、以下の書類が対象となっています。
・請求書 ・領収書 ・納品書 ・注文書 ・見積書 など |
上記の書類を「紙で作成・受領のうえスキャナ保存した場合」または「電子取引でデータとして受け取った場合」は、タイムスタンプの付与が必要です。
ただし、利用しているシステムによっては対象書類でもタイムスタンプが不要になる場合があります。
書類にタイムスタンプが不要となる条件
上述した電子帳簿保存法の対象に該当する書類でも、以下の要件を満たせばタイムスタンプの付与が不要になります。
・訂正や削除の記録が残るシステムを利用している場合 ・訂正や削除ができないシステムを利用している場合 |
また、上記に該当するシステムを利用していなくても、「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を備えている場合はタイムスタンプの付与が不要です。
同規程については、国税庁が法人・個人事業主向けにサンプルを公開しています。
タイムスタンプを利用するには
タイムスタンプの仕組みには時刻認証局やハッシュ値といった、日常的に使う機会がない用語が出てきます。
そのため、タイムスタンプ付与のためには複雑な手続きや準備が必要とイメージする方もいることでしょう。
自社で直接時刻認証局へタイムスタンプの発行を依頼するには契約が必要なうえに、データからハッシュ値を取得するにはハッシュ関数というプログラムを扱わなければならず、手間がかかります。
より簡単にタイムスタンプを付与したいなら、プログラムの知識がなくても簡単操作でタイムスタンプが付与される機能が備わった、電子契約システムの利用がおすすめです。
タイムスタンプ機能がある電子契約システムの選び方
電子契約システムの種類は様々で、複数のポイントをチェックしながら自社に最適な仕様のサービスを選ぶ必要があります。
特に、電子契約システム選びにおいては以下のポイントが重要です。
・十分なセキュリティ対策が行われているか ・簡単に導入できるか ・既存システムと連携できるか ・紙の契約書も取り込みができるか |
また、ITツールの導入が初めてだったりITツールの扱いに不慣れだったりする場合は操作が簡単なものを選ぶと良いでしょう。
タイムスタンプに関してよくある質問
タイムスタンプを変更したらばれますか?
タイムスタンプが付与されたデータは、内容に変更が加わるとハッシュ値も変わるためその事実が判明します。
タイムスタンプそのものが変更された場合でも、ファイル内の様々な日時情報と矛盾せず情報を書き換えることは困難なため、ばれる可能性が高いです。
実際に、検察官がファイルのタイムスタンプの書き換えを行ったことが判明して逮捕に至った事例もあります。
タイムスタンプは何日以内に付与が必要ですか?
電子帳簿保存法では、対象書類に対し最長で「約2ヵ月とおおむね7営業日以内」にタイムスタンプの付与が必要とされています。
以前は受領者側が紙の書類をスキャン保存する場合、受領から3営業日以内の付与が必要でしたが、電子帳簿保存法の改正により約2ヵ月とおおむね7営業日以内に統一されました。
タイムスタンプはデータ改ざんの防止に必要!利用するなら電子契約システムで
タイムスタンプとは、文書データの存在と非改ざん性を証明するための技術です。
各文書データで固有のハッシュ値を時刻認証局へ送信すると、そのハッシュ値と時刻情報を含んだタイムスタンプが発行されて付与できるようになります。
電子帳簿保存法上の要件にもなっているため、ペーパーレス化を推進する企業ならタイムスタンプの理解を深める必要があります。
しかし自社で時刻認証局と契約のうえタイムスタンプを取得するには手間がかかるため、簡単かつペーパーレス化後の業務効率を向上させるなら、タイムスタンプ機能つきの電子契約システムがおすすめです。