ノウハウ スキルマップとは?メリット・デメリットや作成方法など解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年05月20日
スキルマップとは?メリット・デメリットや作成方法など解説
煩雑化した業務を見直す際に行いたい「業務の可視化」には複数の手段がありますが、その内のひとつにスキルマップがあります。
しかしスキルマップとは、具体的に何のために・どうやって作成するのかなどが分からない方も多いことでしょう。
今回は作成の目的・メリットやデメリット・活用シーン・作成方法など、スキルマップの理解に必要な情報を一挙解説します。
テンプレートや作成に使えるツールもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
スキルマップとは?
スキルマップとは、企業や組織に属する従業員の能力を評価のうえ、一覧表にまとめたものです。
ここでいうスキルとは、以下のように業務に直接必要となる技能全般を指します。
・パソコンやソフトウェアを操作する能力 ・特定の業務に関する専門的な知識 ・同僚と上手にコミュニケーションを取る能力 ・海外の取引先や顧客に対し英語で対応する能力 ・適切なスケジュール・タスク管理など自己マネジメントができる能力 など |
スキルマップでは各業務に必要なスキルに関して、従業員がどれくらいのレベルなのかを業務内容や職責の程度に応じて設定します。
スキルマップを作成する目的
スキルマップは、主に以下のような目的で作成します。
・従業員の育成計画の参考とするため ・従業員のモチベーションを保つため ・自社の組織力を強化させるため |
また、近年は「2025年の崖」を見越して国内企業におけるDX推進の重要性が説かれています。
IT技術の進歩と併せて目まぐるしく変化を続ける現代社会で競争力を維持するには、変化に対し新たな技術を取り入れて柔軟に対応し得る体制が必要です。
新しい技術の導入に伴う従業員の配置・教育をスムーズに実施するためにも、スキルマップは重要な存在といえます。
スキルマップ作成のメリット
スキルマップを作成するメリットは、以下の通りです。
・従業員のスキルが可視化される ・部署や役職ごとに必要なスキルを具体的に把握できる ・適切な人事評価ができる |
スキルマップは従業員それぞれのスキルや部署・役職ごとに必要なスキルを把握できるため、自社の成長を促すためにどんなスキルを伸ばすべきなのかが見えてきます。
これにより、効率的に従業員を成長させられる育成計画を立てやすくなります。
また、組織力の成長に伸び悩む企業にとっても、自社に不足しているスキルを見直すきっかけになります。
また、 客観的な視点から従業員の能力を評価できるため、「公平に評価される」という信頼感から従業員のモチベーションが安定するのも大きなメリットです。
スキルマップ作成のデメリット
様々なメリットがあるスキルマップですが、以下のようなデメリットがあることも留意すべきです。
・評価者によってスキル評価の基準が変わる可能性がある ・作成に時間がかかる |
業務に要するスキルによっては、熟練度を定義する基準が分かりやすいものもあれば、評価者の価値観によって基準が変わりがちなものもあります。
例えばコミュニケーション能力やアイデアを生み出す力など、物質的な成果にはつながらないスキルの評価は評価者の感覚で左右されます。
スキルマップを作成する際はその点も考慮しつつ、余裕のあるスケジュールで取り組むことが大切です。
スキルマップの活用シーン
スキルマップは、元より製造業で多く取り入れられていました。
高度な技術力や専門性を要する業務が発生することから、スキルマップを使った社内のスキル管理に対する重要性が高いためです。
スキルマップを参考に、組み立てや加工など製造に伴う各工程に合ったスキルを持つ人員を配置するといった活用方法が多いです。
また、IT業界においても高頻度で最新のシステムやツールを導入することから、定期的なスキル評価とその結果をまとめたスキルマップが重要とされています。
上記の業界は一例ですが、スキルマップは記載する項目次第でどんな業界でも有効活用できます。
スキルマップの作成方法
活用する業界や部署によってスキルマップの記載内容は変わりますが、基本的な作成方法に大きな違いはありません。
以下より、スキルマップの基本的な作成方法を6つのステップに分けて解説します。
スキルマップの目的を明確にする
スキルマップでは従業員ごとに様々なスキルの熟練度を示すことになりますが、どんなスキルについて記載すべきかは「目的」で変わります。
例えばスキルマップを活用した適切な人事評価を目指すのであれば、業務遂行能力に関わるスキル項目の設定がおすすめです。
業務効率化を図るなら現状の作業内容を洗い出し、その内容に基づく項目を設定する必要があります。
実際に目的を定めるにあたって、業務に要するスキルの全体像を理解しており、なおかつ経験や知識を持つ管理職以上の人員の協力も求めましょう。
業務の棚卸しをする
スキルマップ作成の目的を定めたら、後でスキルマップの記載項目を定めるために業務の棚卸しを行います。
実際にその業務を担当している従業員へのヒアリングやマニュアルの確認を通して、具体的な業務フローや主な業務を整理しましょう。
スキルマップの項目を決める
実際にスキルマップに配置する項目を定めます。
業務の大枠から段階的に細かな作業項目へ枝分かれさせていくというやり方で設定すると、誰が・どんな分野のスキルを・どれくらい持っているかが分かりやすいスキルマップになります。
スキルの評価基準を決める
スキルマップには、スキルそのものに加えて各スキルの熟練度を評価する基準も定める必要があります。
厚生労働省では、職業能力の評価方法に関して4段階のレベルを設けるという手法を提唱しています。
入社から間もない時点でのスキルレベルを1として、より高度かつ大きな責任を伴う業務の遂行が可能となるにつれて、4を限度にレベルが上昇していくというものです。
スキルの熟練度を数値で示すことで、各従業員が持つスキルの総合値も算出できるようになります。
設定するレベルは必ずしも4段階がベストであるとは限りませんが、少なすぎると適切にスキルを評価できなくなり、多すぎると運用が難しくなりやすいため注意しましょう。
スキルマップを試験導入する
スキルマップがおおむね完成したら、まずは試験導入しましょう。
実際のスキル評価者にスキルマップの内容を共有し、不足しているスキル項目や評価基準の適正性についてフィードバックを得て、必要に応じて修正します。
そのうえで、対象の部署を絞り込んで実際にスキルマップを取り入れて運用を試しましょう。
評価者だけでなく、評価される従業員の意見もヒアリングすることでより精度の高い検証結果を得られます。
スキルマップの運用を開始する
試験導入でスキルマップの内容をブラッシュアップしたら、本格運用を開始します。
その際、なぜスキルマップを作成する目的や背景・活用方針・評価基準などを明記したマニュアルも作成しましょう。
長期的に取り組むうちに、スキルマップが本来の目的や役割を失い形だけの存在となる「形骸化」のリスクを伴うからです。
また、運用の開始後は従業員のスキル習得に変化が起きているか、目的として定めた結果に近づいているかどうかもチェックしましょう。
対象の部署やチームの管理職・従業員から定期的にヒアリングを行い、必要があれば内容のアップデートを重ねていくことも大切です。
スキルマップの主な記載項目
主な職種ごとに、スキルマップでよく用いられる項目の例をご紹介します。
■営業職
・製品やサービスの知識 ・コミュニケーション能力 ・顧客に対する理解力 ・交渉力 ・ヒアリング能力 ・自己マネジメント能力 など |
■製造技術職
・生産管理能力 ・マルチタスク能力 ・加工スキル ・検査スキル ・部品取り付けスキル ・精度測定スキル など |
■ITエンジニア
・プログラミングスキル ・コミュニケーション能力 ・マネジメント能力 ・システム要件定義スキル ・システム設計スキル ・資料・書類作成スキル |
■事務職
・労務に関わる知識 ・税金に関わる知識 ・コミュニケーション能力 ・スケジュール管理能力 ・パソコン操作スキル |
上記は各職種に求められる基本的なスキルであり、実際に担当している業務によっては他にも記載すべき項目があります。
現場の実情に合った記載項目を定めるためにも、業務の棚卸しや試験導入といった準備が必要です。
スキルマップの記載サンプル
ITエンジニア職で活用するスキルマップの記載例をご紹介します。
汎用的な書き方なので、他の職種でも具体的な書き方に迷った場合は参考にしてみてください。
スキル | 田中 | 鈴木 | 高橋 | 木村 |
プログラミング | 4 | 2 | 3 | 2 |
コミュニケーション | 4 | 4 | 2 | 2 |
要件定義 | 4 | 4 | 2 | 1 |
設計 | 3 | 3 | 1 | 1 |
マネジメント | 3 | 2 | 3 | 1 |
【評価基準】
1:補助が可能 2:補助があれば1人で実行可能 3:1人で実行が可能 4:指導が可能 |
スキルマップの作成に使えるツール
スキルマップを効率的に作成するなら、「タレントマネジメントシステム」が役立ちます。
タレントマネジメントシステムとは、従業員の基本情報・スキル・経歴・成果などを一元管理できるツールです。
タレントマネジメントシステムの中にはスキルマップの作成機能を備えたサービスもあるため、最初からテンプレートを作成する手間を省くなら活用をおすすめします。
スキルマップを作成できるタレントマネジメントシステムの例としては、以下の通りです。
・カオナビ ・One人事 ・WorQuest など |
それぞれに備わっている機能の詳細は異なるため、比較検討のうえ自社に合ったツールを探してみてはいかがでしょうか。
スキルマップ作成のポイント・注意点
スキルマップの効果を担保するためにも、以下のポイントに注意のうえ作成しましょう。
記載項目の設定時は必ず現場の声を取り入れる
スキルマップに記載する項目は、実際にその業務に従事している従業員や管理職にヒアリングのうえ、業務に必要なスキルは何かを把握しましょう。
各部署から現場の人員を選び、プロジェクトメンバーとして参加してもらうのもおすすめです。
現場の声を取り入れずにスキルマップを作成すると、実際の業務からかけ離れた内容となってしまい運用が難しくなります。
十分な作成スケジュールを確保し、丁寧なヒアリングから始めましょう。
評価基準に差が生じることを想定のうえ運用する
スキルマップの完成度が高くても、評価者ごとに基準の差が生じて運用方法が曖昧になってしまうリスクは避けられません。
そのため、運用前に加えて運用後も定期的に評価基準の認識をすり合わせる評価者研修を実施しましょう。
研修を通して評価基準を再確認したり、評価に迷った事例の共有と意見交換を行ったりして、評価の一貫性・正確性を保つことが大切です。
定期的に更新する
市場の変化・技術の進歩・事業の転換などの影響を受け、事業とその業務内容が変化する場合もあります。
変化の内容によっては求められるスキルが代わり、既存のスキルマップでは対応しきれなくなるケースも珍しくありません。
常に効果を発揮する方法でスキルマップ運用を実現するためにも、定期的な見直しと更新の機会を設けましょう。
更新に適した時期は各社で異なりますが、半年~1年に1回程度が目安です。
DX推進・ITリテラシー教育にも有効なスキルマップ作りは業務の可視化から!
スキルマップとは、各従業員が持つスキルとその熟練度を可視化した一覧表のことです。
製造業やシステム開発をはじめ、多種多様な業種に活用されています。
スキルマップを作成して従業員のスキルをひと目で理解できるようにすれば、自社に足りないスキルも把握して効果的な人材育成計画を立てやすくなります。
近年重要性が説かれているDX推進に取り組もうにも、DX人材の選任や採用の指針がないことに悩む企業にもスキルマップ作成がおすすめです。