ノウハウ プロセスマップとは?作り方からおすすめツールまで徹底解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年05月20日
プロセスマップとは?作り方からおすすめツールまで徹底解説
業務の生産性・効率向上を図るなら、業務の全体像を可視化する必要があります。
そこで役立つ手法が「プロセスマップ」ですが、具体的に何をすべきなのか?どうやって作成するのか?など不明な点が多く、着手できない方も多いことでしょう。
今回はプロセスマップとは何か、活用シーンや作成のメリットと併せて詳しく解説します。
具体的な作成方法も分かりやすくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
プロセスマップとは
プロセスマップとは、企業・組織における業務のプロセスを図示する手法のことです。
どんな業務にも様々なタスクが存在し、そのタスクがつながることで業務のプロセスが成り立ちます。
どんなタスクが・どんな順番でつながっているのかを、図形などを用いて可視化したものがプロセスマップです。
プロセス図とは
プロセスマップとして作成するプロセス図は、業務の起点から終了まで一連のタスクを時系列ごとに並べて作成するものです。
例えば生産業務の場合、「生産受注」から「生産終了」までに生じる各業務を上から下へ順に並べていきます。
起点となるタスクは1つに絞り、タスクごとに異なる図形や色を用いるなどして分かりやすく作成すれば、誰が見ても業務の全体像を把握できるプロセス図になります。
プロセスマップとフローチャートの違い
業務の流れを視覚的に示す手法としては、フローチャートも挙げられます。
フローチャートとは、特定のタスクをこなすために必要な手順を図示する手段です。
一方でプロセスマップは、特定の業務またはプロジェクトに含まれるタスクのすべてを図示して全体的な流れを把握できます。
つまりプロセスマップとフローチャートの主な違いは図示する範囲の広さにあり、業務改善のポイントを特定するならプロセスマップの活用が適切です。
プロセスマップの活用シーン
プロセスマップは、主に以下のようなシーンで活用される手法です。
システム導入に伴う業務プロセスの整理
業務改善のために導入するシステムを選ぶにあたって、まずは業務プロセスの整理が必要です。
従来の業務にどんな問題点・課題点があるのかを把握しないと、自社にとって必要な機能を搭載したシステムを選べないからです。
プロセスマップを作成すれば開始から終了までのプロセスを自ずと整理することになるため、その中で普段は気が付かず放置されていた無駄な業務や問題のある業務が見えてくる場合もあります。
これにより既存の業務プロセスに潜む問題点や課題を洗い出しやすくなり、どのように業務改善の策を講じ、そのためにどんなシステムを導入すべきかといった方向性が見えてきます。
事業におけるKPIの設定
KPIとは、企業・組織の目標を達成するために重要な業績評価の指標を指す言葉です。
事業のPDCAサイクルを実現するにあたって、KPIを設定・改善する必要があります。
しかしどのプロセスから測定できるのか?どのプロセスを改善したら既存のKPIに良い影響が出るのか?を考慮しなければ、効果的なKPIの設定は叶いません。
KPIの設定と、それに基づき改善するプロセスを紐づけて考えるためにも、プロセスマップの活用が役立ちます。
人員の育成計画を立てる
プロセスマップで示した各プロセスに、必要とされる職務・スキルを定義すれば人員の育成計画が立てやすくなるという効果もあります。
例えばスキルに関しては、「レベル1・2・3・4・5…」といった複数の区分を設けます。
レベルごとに遂行が可能とされる業務を定義し、さらに各プロセスで必要なレベルを振り分けます。
これにより、各業務を担当する人員をどの程度まで育成すべきなのか、またはどのレベルの人員が不足しているのかを見直すことが可能です。
プロセスマップを作成するメリット
プロセスマップを作成することで得られる具体的なメリットは、以下の通りです。
業務の流れ・進捗を明確に把握できる
プロセスマップにおける最大のメリットは、業務の流れと進捗の明確化です。
特定の業務を複数の部署や取引先と連携しながら進める場合、プロセスの複雑化により業務の流れが見えにくくなります。
1つずつ業務プロセスを見直しながらプロセスマップを作成すれば、業務全体の流れが明確化され、各メンバーが担当すべきタスクも簡単に把握できます。
また、あらかじめプロセスマップで業務の流れを可視化していれば、誰がどんなタスクに着手しているのか、どこまで進んでいるのかといった状況の把握も容易となります。
よりリアルタイムに近い進捗管理が実現するため、業務中にミスやトラブルが生じてもスムーズな対処が可能です。
チーム内の認識の齟齬を防げる
プロセスマップを作成すると、業務のスタートからゴールに至るまでの過程が明確になります。
そのため業務遂行の方向性について、チームのメンバー間で認識の齟齬が起こりにくくなる点もメリットです。
メンバー1人1人が、今何をすべきか・何の目標に向けてタスクをこなすべきなのかという共通認識を持って業務に取り組めます。
業務の属人化を防げる
プロセスマップで業務プロセスを可視化すると、各プロセスに関わる担当者・業務内容・目的の適正化にもつながります。
プロセスに含まれるタスクを誰もが同じ手順で行える環境を構築しやすくなり、特定の人でなければ業務を遂行できなくなる「属人化」を防ぐことが可能です。
業務の属人化が生じると客観的に業務の効率性を評価しにくくなるうえに、何らかのトラブルで担当者が不在となった場合、その業務を遂行できる人材がいなくなり業務の停滞につながります。
プロセスマップで業務の属人化を予防すれば、有事の際も代わりの担当者を迅速に配置のうえ対応できるようになります。
プロセスマップ作成の手法
プロセスマップに用いる図には、様々な種類があります。
ここでは、プロセスマップの作図における代表的な手法をご紹介します。
業務プロセスモデル図(BPMN)
業務プロセスモデル図はビジネスプロセスモデリング(BPMN)表記法とも呼ばれており、既存のプロセスを俯瞰することに特化しています。
業務プロセスを構成する様々な要素や流れを図形・アイコン・記号などで示し、プロセスに含まれる機能・内容・成果物を可視化していることが特徴です。
これにより、チーム内の認識を共有したり業務プロセスを標準化させたりできます。
すでに業務の手順が決まっている・業務のプロセス数が多い・1つの業務に対し複数の部門を横断して進める必要があるといった場合に適した手法です。
フローチャートの国際標準規格(ISO19510)を元に作成するため、企業・国を問わず幅広い場面で利用できます。
スイムレーン図
業務横断マップとも呼ばれるスイムレーン図は、行(レーン)ごとにプロセスに関わるタスクが配置されており、そのタスクの担当者が示されている図のことです。
水泳のレーンに似た形状から、そのまま「スイムレーン図」と名付けられました。
スイムレーン図は、主に「タスク/プロセス」「人員(部門)/スキル」「時間」という3つの要素で構成されています。
例えば飲食店の業務プロセスを示す場合、顧客・店員・販売ターミナル・厨房という4つの部門ごとに行を設けます。
そして注文・注文の記録・調理など各部門が担うタスクを時系列ごとに行の中で並べていき、最後に実際の業務プロセスとしての順にタスクを矢印などでつなぎます。
各業務の担当者やタスク同士の相互関係を示せるスイムレーン図は、業務における説明責任の所在を明確にしたり、業務の進捗状況を把握したりする際に役立ちます。
バリューチェーン図
バリューストリームマップとも呼ばれるバリューチェーン図は、製品の製造やサービス提供に関連する流れを分析する際に使われる図です。
マップの中で業務に関連する各部門の象徴となる図形を配置し、各部門が行う業務がどの部門へつながるのかを矢印などで示します。
他の図のようにタスクを細かく切り分けて示すのではなく、業務の全体的な流れを把握するために必要な情報だけを示しているシンプルな図です。
全体的なプロセスの中に潜む無駄な過程を特定し、事業の改善に活かすといったように使われています。
統一モデリング言語(UML)
統一モデリング言語とは、ソフトウェア開発においてシステムの分析を視覚的に示すために用いられる、設計図の統一ルールです。
ソフトウェア開発に関わるユーザーのすべてに、ソフトウェアの構造について正しく理解してもらうための共通言語として使われています。
統一モデリング言語には、クラス図・コンポーネント図・オブジェクト図・ユースケース図など14種類が定義されています。
例えばクラス図の場合、システム上に存在する「モノ」が持つ構造(クラス)を配置して、それぞれの関係を線で結び関係性を表現します。
統一モデリング言語は種類ごとにシステムに関連する要素の関係性の示し方が異なるため、システムが持つ様々な側面を表せます。
プロセスチャート
プロセスチャートは、データやプロセスの全体的な流れを視覚的に理解するために図式化したものです。
プロセスの開始から終了に至るまでの過程(活動や意思決定)について、標準化された記号で示します。
業務における一連の流れの互換性・非効率性などを明確化し、業務プロセスの無駄を省くといった改善活動に有効です。
プロセスマップの作り方
プロセスマップには様々な手法がありますが、効果的なプロセスマップを作成するための基本的な手順は共通しています。
作成の際は、以下の手順を参考にしてみてください。
1 図示したいプロセスを定める 2 プロセスの開始地点と終了地点を定める 3 プロセス全体でどのようなステップ(作業・アクションなど)が行われるのかを定める 4 各ステップ図形にして順に並べる 5 どのステップがどのステップにつながるのかを線で結んだり矢印で示したりする 6 作成したプロセスマップの全体を見直して分かりやすさや正確さなどを確認する 7 プロセスに関わるチーム・従業員・ステークホルダーなどに共有する |
専用ツールやネット上で配布されているテンプレートを活用すると、よりスムーズにプロセスマップを作成できます。
また、プロセスマップは作成するだけでなく、ビジネスモデルやビジョンの変更に合わせて更新や改善を重ねて最適化を続けていきましょう。
【無料あり】プロセスマップ作成に役立つツール
プロセスマップの作成を効率的にしてくれるおすすめのツールを、2種類ご紹介します。
Miro
Miroは、無地の画面にテキストや図形を書き込めるオンラインホワイトボードツールです。
2011年からリリースされており、2022年には日本語版が登場したことで日本ユーザーも増加しています。
無制限のスペースに自由な書き込みが可能な「ホワイトボード」、思考やアイデアを広げて可視化できる「マインドマップ」、タスク管理に役立つ「カンバンボード」という3つの機能が備わっています。
プロセスマップ作成に使えるテンプレートも登録されており、有料プランに加入していればテンプレートを自由にカスタマイズして自社に最適なプロセスマップを作成できます。
複数のユーザーとリアルタイムで共同編集ができるため、メンバーで話し合いながらプロセスマップを作成することも可能です。
Lucidchart
Lucidchartはクラウド型のオンライン作図ツールです。
フローチャート・UML図・マインドマップ・ネットワーク図など、実に様々な種類の図を作成できます。
クラウド型のツールはインストール型と比較して挙動にタイムラグが発生しやすい傾向にありますが、Lucidchartは操作の俊敏性に優れており、ストレスなく作図ができる点が特徴です。
操作性に関しては基本的にドラッグ&ドロップで好きな図形をキャンバスに配置するだけであり、マウス操作で完結します。
GoogleDrive・OneDrive・Slackなど、30種類にもおよぶクラウドサービスとの連携にも対応しています。
ツールを使えば簡単!プロセスマップ作成でさらなる業務改善へ
プロセスマップとは業務の全体像を把握するための手段であり、作成すれば自社に最適なシステムを導入するためのヒントを得られたり、人材育成に役立ったりといったメリットを得られます。
プロセスマップには様々な種類があり、中には聞き慣れない名称に「作成が難しそう」とイメージした方もいるのではないでしょうか。
近年はネット上でプロセスマップの作成を簡単にしてくれるテンプレートやツールが広く出回っているため、それらを上手に活用すると良いでしょう。
作成したら業務プロセスの現状を整理し、今後の改善活動に活かしてみてください。