ノウハウ 監査業務にも有効な契約業務の効率化との関係性について解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年05月9日
監査業務にも有効な契約業務の効率化との関係性について解説
ある程度以上の規模の会社では、監査業務は内部監査室など独立した組織が行うケースが多く見られますが、小規模な会社では法務がこうした監査業務を行うケースが少なくありません。
しかし、監査業務は時間と工数のかかる業務のため効率化が求められる業務とも言えます。そこで契約業務をシステムの導入などにより監査業務のうち一部を効率化することが考えられます。
本記事では監査業務のうち契約業務の監査の効率化について解説します。
監査とは?
監査とは法令や社内規程に照らして、会社の会計や業務が適正に行われているかどうかをチェックする業務のことをいいます。
監査がなぜ必要とされるのかについては、会社の社会的な信頼性を担保し、ステークホルダーを保護するためと説明されます。
というのも、会社の債権者や投資家は財務諸表などを確認し、出資を行うか否かの検討を行います。
こうした財務諸表や経営状態について公表している状態と実態が乖離している場合、債権者や出資者といったステークホルダーは正常な判断をすることが困難な状態になります。このような状態を避け、会社の社会的な信頼やステークホルダーを保護するために監査は行われるのです。
監査で重要とされること
では、監査においてはどのような点が重要とされるのでしょうか。ここからは監査で重要とされる点について解説します。
リスク低減と不祥事の防止につながること
監査は財務諸表が会計原則に則って適切に作成されているか、業務が法令や社内規程に照らして適切に行われているかといった点について行われます。
そのため、業務が適切に行われているかという監査を通じて、業務の法令違反や不祥事を避ける事に繋がる監査が行われているかが重要となります。
業務の効率性と有用性の向上につながること
監査は後述するように業務が適切に行われているかといった業務監査も行われます。
こうした業務監査では単に業務が法令や社内規程に沿って行われているかを監査するだけで無く、効率性などの観点から業務が適正に行われているかを監査することも重要となります。
経営目標の達成度合いが明確になること
会計監査や業務監査を通じて業務の進捗状況や会社の置かれた状況が明確になります。
そのため、これらを通じて設定した経営目標の達成度合いを明確にすることができます。こうした経営目標の達成度合いが明確になることも監査の重要な役割の1つです。
法務が関わる監査対応の種類
監査には分類方法によっていくつか種類があります。ここではまず監査の種類について解説した上で、法務が関わる監査対応の種類について解説します。
監査の種類
法定監査・任意監査
監査には法で定められた監査と企業が任意に行う任意監査に分類されます。法定監査が義務づけられる会社としては、大企業、監査等委員会設置会社、会計監査人設置会社の3つが挙げられます。
法定監査では、主なものに「金融商品取引法監査」と「会社法監査」があります。どちらも、公認会計士や監査法人による監査が義務付けられている点には注意が必要です。
これに対して任意監査は法律などで義務づけられていない監査のことを指します。企業が自らの判断で行う監査を意味し、法定監査以外の監査は全て任意監査となります。任意監査は一般的には自社の監査部門が行いますが、外部の監査法人や専門家に依頼して行われるケースもあります。
内部監査・監査役監査・外部監査
監査は監査人がどういった立ち位置にあるかによっても分類可能です。
内部監査は、企業内に所属する内部監査部門等によって行われる監査です。内部監査で重要なのは独立した立場から経営陣に対し監査の結果、問題点や改善点を提言していく必要があります。
監査役監査は、会社法上の監査役、つまり株主総会の決議を経て選任された監査役によって行われる監査です。取締役会設置会社の場合には監査役の設置が義務づけられるため押さえておきましょう。
外部監査は、監査法人や公認会計士など社外の第三者によって行われる監査です。
前述の法定監査の場合には監査法人や公認会計士による監査が必須となるため、必ず外部監査である必要がある点には注意が必要です。
これに対して任意監査の場合でも専門的な評価や第三者による監査によって信頼性を担保するという目的で外部監査を導入するケースも少なくありません。
会計監査・業務監査
会計監査と業務監査は監査の対象の違いによる分類です。
会計監査は、企業が作成した財務諸表が適切な会計基準に従って作成されているかどうか、財務情報の信頼性はあるかといった点が監査の対象となります。
これに対して業務監査では、会計業務以外の業務活動全てが監査の対象となる点で会計監査と異なります。
業務監査では企業の組織体制や制度、運用効率、業務プロセス、リスク管理などを評価し、課題点を見つけ改善することが目的となります。
適法性監査・妥当性監査
監査の判断基準による監査の区別として適法性監査と妥当性監査があります。
適法性監査とは取締役の職務執行が法令及び定款に違反していないかといった点を監査するものです。
これに対して妥当性監査とは取締役の職務執行が法令や定款に違反しないものの、経営方針に照らして合理的であるか、効率的であるかといった観点から監査するものです。
法務が関わる監査の種類
前述のような監査の種類の中で法務が関わる監査の種類は何になるでしょうか。
まず法定監査は外部監査であるため、社内の組織である法務部門が実施することはできません。したがって、法務が行うのは任意監査となります。
また、法務は社内の組織のため、内部監査に該当します。
最後に監査の対象ですが、法務部門が会計監査を行うのは困難なため、実施するのは業務監査となるでしょう。
法務が関わる監査対応の具体的な業務内容
法務が監査対応を行う業務としては、前述の通り業務監査が考えられます。業務監査の中でも業務が契約書や法令・社内規程に則って適切に行われているかを監査することになります。
具体的には、経費の支出は決裁基準に従っているか、契約書の締結の承認は決裁基準に従っているか、与信管理が適切になされているか等の点について監査を行うことになります。
特に契約のプロセスや業務が法令に従ってなされているかといった点の監査では法務の腕の見せ所と言えるでしょう。
監査の観点で重視される契約プロセスのポイント
では、監査において契約プロセスではどのような点がポイントになるでしょうか。ここでは、監査の観点で重視される契約プロセスのポイントについて解説します。
証跡が残ること
業務が契約に従って行われているかを監査するための前提としては、そもそも契約書が残っている必要があります。このように契約した証跡が残っていなければ業務が適切に行われているかを監査するのは困難です。
そのため、監査を適切に行えるようにするためには契約の証跡が残っていることが重要となります。
【関連記事】契約の経緯・履歴情報がないことのリスクとその解決方法
承認者が分かること
前述の通り監査には契約が決裁基準に従って締結されているかといった点も含まれます。
そのため、決裁権限を有する人が承認を行ったのか明確になるよう承認権者が分ることも監査の上で重要なポイントとなります。
契約内容の法的妥当性が検討されていること
契約書に従って、業務が行われているかという点は重要な監査のポイントですが、そもそも契約書の内容が法的に妥当な内容になっていないと契約に従って業務を行うと法令違反を引き起こしてしまうといったリスクが生じてしまいます。
そのため、契約の内容が法務部などによって法的妥当性が検討されたものであることも監査の重要なポイントの1つと言えるでしょう。
契約業務がアナログな場合に生じる監査上の課題
契約の締結方法や保管・管理方法にはいくつか方法がありますが、紙の契約書で契約を締結し、紙で保管しているというアナログな方法で行っていた場合、監査にも影響を生じることがあります。
ここでは、契約業務がアナログな場合に生じる監査上の課題について解説します。
契約書の消失・紛失
紙で契約書を保管している場合、契約書を消失してしまったり紛失してしまうと、監査の際に参照するべき契約書が無い状態になってしまいます。
契約承認者が不明確に
一般的に契約書を保管する際には契約書の原本は保管されますが、その過程の稟議書や承認に関する書類までは保管していないというケースが少なくありません。
そうなると、契約を締結する際に誰が承認したのか決裁権限基準に従って締結された契約書なのかどうか監査の際に判断がつかなくなってしまいます。
契約書の内容の妥当性判断が不透明に
前述の通り紙で契約書を保管している場合には、契約書のみが残っておりそれに付随する書式や情報は何も残っていないというケースは少なくありません。
そのため、契約書の内容が法的観点から妥当なのかどうかという判断も不透明になってしまいます。
監査で必要な契約周りの証跡が残るルールの作り方
監査のために契約書に関するルールを以下のように定めると良いでしょう。
契約書等の文書の保管に関するルールの明確化
まずは契約書などの文書をどの範囲で誰が保管するのかについてルール化し明確化しましょう。
併せて契約書管理ツールなどを導入し、契約書をデータベース化することで保管コストや紛失リスクを抑えることができ、監査対応の際にも円滑に対応が可能となります。
契約書の重要性に応じた承認権者に関するルールと承認証跡
承認権者が不明確になっているという課題に対しては、契約の重要性に応じて適切な承認権者を設定するルール作りとそれによる明確化をまずは行い、契約書と併せて承認した証跡を残すような体制作りをすることが重要です。
法務審査の回答内容の保存・保管
契約書の内容の法的妥当性が不透明であるという課題については、法務が契約書の審査を行った際の回答内容や記録を保管・保存しておくことで対応が可能です。
どの期間、どこが保管するのかといった点はルール作りを行い、明確になるようにしておきましょう。
監査対応の円滑化に役立つツール上の要件
監査対応を円滑に行うためには契約書管理ツール等を導入する方法が考えられます。では、どのようなツールが求められるかについて解説します。
契約書のデータベース化がされていること
前述の通り紙での契約書の保管は紛失や消失のリスクがあるだけで無く、監査の際にわざわざ探して取り出すという手間もかかってしまうため業務効率だけで無く監査の効率も下げてしまいます。
そこで契約書を電子ファイルの形式で登録でき、データベース化されていれば必要な契約書へのアクセスがスムーズに進み、監査の効率化を図ることができます。
【関連記事】契約書データベース化のメリットとデメリット。手順と解決できること
監査に必要な項目をCSVで出力できること
契約書がデータベース化されており監査に必要な項目がCSV(Excel)で出力できれば、監査の効率は大きく高まります。
単にデータベースとして登録できるだけでなく出力できる形式についても注意してシステムやツールを選ぶようにしましょう。
案件段階から契約書に関する情報が一元化されていること
案件段階から契約書に関する情報が一元化されていると、契約に関する法務の回答や注意すべき点などが明確となるため、監査の際にもこうした情報を活用できるため監査の効率化や水準の向上を期待することができます。
▶契約ライフサイクル管理システム「ContractS CLM」では監査に必要な情報をCSV出力する機能が備わっています「CSV出力機能拡張」
まとめ
システムの導入は契約業務を効率化させるだけでなく監査業務の効率化にもつながります。
監査業務を円滑に行い、業務を適正に行う体制作りのためにも管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。