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ノウハウ 契約法務とは?目的や業務内容、業務における重要ポイントを解説

更新日:2024年10月17日

投稿日:2024年04月25日

契約法務とは?目的や業務内容、業務における重要ポイントを解説

契約法務とは?目的や業務内容、業務における重要ポイントを解説

「法務」は企業の法的トラブルを未然に防ぐために、重要な役割を担う部署です。

近年、企業のコンプライアンスが重要視される中で、法務の存在の重要性も高まっています。

ただ、法務がどのような業務を行っているのかよく知らないという方は多いのではないでしょうか。

 

この記事では、法務の中でも特に重要な「契約法務」に焦点を当てて解説します。

契約法務の業務内容、重要性、業務を行う上でのポイントも詳しく説明するので参考にしてください。

 

 

契約法務の基礎知識

「契約法務」と言っても、なかなかイメージが湧きにくいのではないでしょうか。

まずは、契約法務が何なのかを解説します。

また、法務の種類の1つに「商事法務」があり、その違いについても詳しく解説します。

契約法務とは

契約法務とは、主に契約書に関連する業務を行う法務を指します。

企業では日常的に取引先との契約が交わされていますが、契約内容が法律上適正か、企業のリスクが最小化されていることがとても重要となります。

契約法務は、適正かつ法的リスクを最小限にした契約書の作成や、契約内容のレビューなどを行います。

 

ただし、契約法務で注意すべきなのが、あらゆるリスクを排除し自社にとって有利な契約書を作成すればよいわけではない点です。

あまりに偏った内容だと取引先も受け入れられず、交渉が難航し、最悪取引自体が無くなってしまう可能性があります。

自社の利益だけでなく取引先の事情も考慮したうえで、バランスのとれた契約書を作成することが重要となります。

 

商事法務とは

商事法務とは、株主総会や取締役会の運営に携わり、企業内部の運営が適法に行われるためのサポートを担う法務を意味します。

 

具体的な業務内容としては、企業活動を行うにあたってどのような手続き(株主総会決議または取締役会決議など)が必要かの判断や招集通知の作成、議会進行などが挙げられます。

端的にいうと、会社法で定められた手続きを実行することが商事法務の役割となるのです。

 

商事法務は、役員や他部署の人間と関わる機会が多いため、会社法などの法律知識だけでなく、コミュニケーション力も必要となります。

契約法務は外部の取引先に向けた契約業務であるのに対し、商事法務は企業内部の運営業務という点で、両者は大きく異なります。

契約法務の目的と重要性

契約法務の目的は、主に取引内容の明確化リスクの最小化企業の法令遵守の3点です。

ここからは、それぞれの目的とその重要性について詳しく解説します。

取引内容の明確化

契約書には、取引内容や取引条件、当事者の義務や責任、権利の所在などを明確に定めます。


これらを明確化しておくことで、どのような条件のもと取引を実行するかを明らかにでき、当事者間の認識ずれなどを解消することができます。


また、有事の際の対処法や責任分担を明確に定めておくことで、万が一、当事者間でトラブルが発生しても、時間や労力をかけすぎず早期解決を目指せます。

リスクの最小化

契約書の作成やレビューを行う際は、自社のリスクを最小化することを意識することが重要です。


仮に、取引先から提示された契約内容に、「A社(取引先)に損害が生じた場合は、B社(自社)が一切の責任を負う」という定めがあったとします。

万が一、B社の帰責事由によりA社が損害を被った場合、B社は青天井で損害賠償金を請求される可能性があり、B社にとって不利と考えられます。


実務上は、様々な事情を考慮して賠償額が決定しますが、契約の段階で、自社にとって大きな損失となり得るリスクを取り除いておくことが重要です。

企業の法令遵守

契約法務の業務は、法令遵守の観点からも重要です。


原則的に、契約書を取り交わすかは双方の自由であり、書面がなくても契約は成立します。しかし、法律では、契約書などの書面作成が義務付けられる場合があります。


例えば、建築基準法では、着工前に請負契約書を交付することを義務付けており、交付しないと法律違反となるのです。


その他にも、不動産の賃貸借契約を締結する際、条件によっては公正証書を作成しないと契約が有効に成立しないなど、法律上、書面作成が必要となるケースがあるのです。

 

また、契約書に法律上の強行規定に反する規定があると、その規定が無効となります。

例えば、借地借家法では借主に不利な定めを無効とする強行規定があり、消費者契約法でも消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする強行規定が存在します。

 

契約締結において、企業が法令に抵触しないためにも契約法務のリーガルチェックが重要なのです。

 

戦略法務、予防法務、臨床法務とは

ここまで契約法務・商事法務について解説しましたが、その他にも企業法務には、戦略法務、予防法務、臨床法務があります。

ここからは、この3種類について詳しく解説します。

戦略法務

戦略法務とは、企業の経営上の施策のために、法的観点から積極的にサポートを行う法務を指します。


具体的には、買収や合併などのM&Aの対応、海外進出にあたっての現地法規制の調査や英文契約の確認、新規事業の立ち上げ時のリスク検討など、企業活動の意思決定について法的サポートやアドバイスを行います。


企業がM&Aや海外進出などを実行するにあたっては、慎重なリスクコントロールが必要であり、戦略法務の存在が必要不可欠です。


また、企業によっては、企業ブランドや技術の知的財産権に関する業務も戦略法務の管轄となることがあり、特許権や商標権の取得を行うことがあります。


戦略法務は、高いレベルの法律知識に加えて経営者視点が求められるため、多くの場合、業界を熟知し長年企業法務の経験を積んだ人材が選任されます。

予防法務

予防法務とは、企業の法的トラブルを未然に防ぎ、仮にトラブルが生じても速やかに対処できるよう対策を行う法務を指します。


実際に法的紛争やトラブルが起きてから対処するのでは、企業が大きな損害を被る可能性があります。また、裁判ともなれば膨大な費用や労力がかかり、企業にとっては大きな損失となるでしょう。


予防法務は、このような事態を回避するためにあらかじめ対処しておく業務を担うのです。

具体的には、コンプライアンス規程や就業規則、社内規程などの作成・整備、他社の知的財産権を侵害しないかの事前確認などを行います。


また、取引のリスクを最小化するという観点から、契約書の作成や審査も重要な予防法務の1つと言えるでしょう。

 

【関連記事】予防法務とは?臨床法務・戦略法務との違いや企業法務の業務内容を徹底解説

臨床法務

臨床法務とは、企業で起きた法的紛争やトラブルに対処し、企業が被る損害を最小限に抑えることを目的とした法務を刺します。


具体的には、他社から知的財産権などの権利侵害で訴えられた場合の訴訟対応、従業員との労務トラブルの対応、行政処分や行政指導に対する対応、消費者からのクレーム対応などが挙げられます。


予防法務が、紛争回避のための事前対策を行うのに対して、臨床法務は有事の際に対処するという点で大きく異なるのです。

契約法務の業務内容詳細

契約法務の主な業務は、契約書の作成・契約内容の審査です。


具体的には、社内で流用できる契約書ひな型を作成したり、取引内容に沿って新たに契約書を作成したりします。

また、取引先から提示された契約内容や法務以外の担当者が作成した契約書をチェックします。

そして自社にとって不利益がないかリスクが最小限に抑えられているかなどを法的観点から確認し、リスクのある条項が含まれる場合は、契約内容の修正や削除などを行います。

 

さらに、契約法務は、関係部署や取引先と積極的にコミュニケーションをとり、問題点やリスクをしっかり説明することがとても重要です。

 

【関連記事】契約業務で発生する具体的なリスク、課題とその解決方法

企業の扱う契約書の種類

ビジネスシーンでよく利用される契約書として、以下の9種類が挙げられます。

 

・売買契約書

・賃貸借契約書

・業務委託契約書

・労働派遣契約書

・雇用契約書

・秘密保持契約書

・リース契約書

・代理店契約書

・保証契約書    など

 

もちろん、上記以外にも様々な種類の契約書が存在し、業種によって扱う契約書は異なります。

例えばメーカーであればOEM契約書やリベート契約書、不動産業界であれば媒介契約書、小売店であればフランチャイズ契約書などが使われます。

契約法務業務における重要ポイント

契約法務の業務において重要なポイントは、①自社に不利益な条項を見逃さないこと②リスクを最小限にすること③取引内容や自社の意向に沿った内容であることの3点です。

ここからは、この3点について詳しく解説します。

自社に不利益な条項を見逃さないこと

まず1つ目は、取引先から契約書を提示された際に、自社に不利益な条項を見逃さないことです。

当然ですが、基本的に相手方から提示される契約内容は、相手方に有利であることがほとんどです。

契約書を審査する際は、自社に不利益となり得る部分を見逃さず、必要な修正を行い、リスクをしっかり伝える必要があります。

 

例えば、相手方が売主・自社が買主となる商品売買契約書で、売主が契約不適合責任を一切負わない、商品納入時の買主による検査期間が短すぎる、返品を一切受け付けないといった内容は、買主にとっては非常に不利と言えます。

このような場合は、条項の修正や削除を行い、担当者にリスクをよく説明しなければなりません。

 

その他にも、自社が中途解約を申し出た際の違約金が高額であるケースがあります。

将来的に自社が大きな損失を被るリスクがあるため、担当者に交渉するよう勧めたり、適正な違約金額を提示したりする必要があります。

リスクを最小限にすること

2つ目は、目的のところでも述べましたが、自社に起こり得るリスクを最小限にすることです。

リスクを最小限に抑えるには、万が一の事態を想定して、契約書を作成・審査することが重要となるのです。

 

例えば、当事者間で法的紛争が生じた場合、自社に生じた損害を十分に補填できる賠償額を設定しておくこと、相手方に契約違反や債務不履行があった際に契約解除や損害賠償を請求できるよう規定しておくことなどが挙げられます。

取引内容や自社の意向に沿った内容であること

3つ目の重要ポイントは、契約書が取引内容や自社の意向に沿っており、これらが正確に反映されていることです。

そのためには、契約法務の担当者自身が、取引内容や意向をしっかり理解している必要があります。

事前に、取引の担当者にヒアリングを行い、契約書が実際の取引内容と乖離していないか、必要な条項が盛り込まれているか、不要な条項が無いかをよく検討することが重要となります。

契約法務のキャリアアップ・資格情報

契約法務としてキャリアアップするために役立つ資格は、以下のとおりです。

・ビジネス実務法務検定

・ビジネスコンプライアンス検定

・行政書士

・司法書士

・弁護士

 

ビジネス実務法務検定は、企業活動における法律知識を習得できる資格です。

1~3級まであり、2級以上を取得していると、企業法務として評価されやすくなります。

また、ビジネスコンプライアンスも、適切な企業活動を行うためのコンプライアンスに関する知識を習得できる資格であり、コンプライアンスに精通していることをアピールできます。

その他、行政書士、司法書士、弁護士などの国家資格があると、幅広い法律知識があると評価され、法務として活躍の場が広がります。ただ、士業資格は難易度が高いため取得に時間がかかり、特に弁護士などは取得に何年もかかる可能性があります。

契約法務の仕事を始めたばかりの方は、比較的取得しやすいビジネス実務法務検定やビジネスコンプライアンスがお勧めです。

まとめ

企業のリスクを最小限に抑え、利益を守るために契約法務はとても重要な存在です。

また、法律知識だけでなく、積極的に関係者とコミュニケーションをとることも必要となります。

 

企業法務の中でも特に重要でニーズの高い分野であり、やりがいを感じながら業務に取り組めるのではないでしょうか。

 

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